オタク剣士が武偵校で剣技を舞う!   作:ALEX改

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第54話 舞うは桜、猛るは緋炎

 

 

 

剣護「よお、シャーロック。三途の川から帰ってきたぜ…」

シャーロック「確かに心臓を撃ち抜いたはずなのだがね……何故生きて…」

 

シャーロックに撃たれたはずの剣護。

しかし、その撃たれたはずの本人は多少ふらつきながらもキンジの隣に立っている。

 

剣護「さあな。でも死にかかっていたのは確かだよ」

キンジ「三途の川行ってたんかお前……」

剣護「おかげで1時間くらい閻魔様の説教聞くはめになったわ」

シャーロック「それは……なかなか出来ない体験をしたね」

剣護「まあな、アリアがラッツォを打ってくれてなかったら確実に川渡ってたぜ…そんでシャーロックよ」

シャーロック「何かね?」

剣護「………なんで俺の髪が赤くなってんの」

 

剣護が言った通り、その姿は普段とはかなり異なっていた。

髪型は常世の神子と同じだが、その髪と瞳の色はアリアに撃ち込まれた緋弾と同じような緋色に染まっていた。

 

シャーロック「ふむ……恐らく君に撃ち込んだ銃弾に少しながらイロカネが含まれていたのかもしれないね。それが君の力と何らかの反応が起きたことでその姿になったのだろう。憶測に過ぎないがね」

剣護「ふーん……やっぱイロカネか」

キンジ「……お前、平気なのか?」

剣護「あ?んなわけあるか。心臓撃たれてんのになんかドクンドクンいってるし、体痛くてガタガタだし立ってるだけで精一杯だわ」

キンジ「お、おう………………つまり?」

剣護「最高のコンディションでございますキンジ軍曹」

キンジ「よーし、大佐。その状態で行くぞ」

剣護「了解であります。二等兵殿」

キンジ「なんで降格してんだよ‼︎」

 

こんな状況にも関わらずギャーギャーと騒ぐ2人の様子に、シャーロックは小さく吹き出す。

 

シャーロック「フッ……本当に君達は面白いね。君達のようなパートナー……いや友人と言うべきか。それを持ったアリア君は幸せ者だね」

 

そう言うとシャーロックはスクラマ・サクスを構えた。

 

シャーロック「さて……時間もない。そろそろ…」

キンジ「あぁ、こっちもとっくに限界なんでな」

剣護「さっさと終わりにしようぜ」

 

キンジはナイフを、剣護はイロカネアヤメを構える。

 

金・剣『おおおおおおおおおおお!!!!!』

シャーロック「!」

キンジ「シッ!」

 

キンジが先に駆け出し、その後に剣護が続く。

キンジが逆手持ちでナイフを振るい、シャーロックは剣で受け止める。

 

剣護「せいっ‼︎」

シャーロック「ぐっ……!」

 

そこへ剣護のミドルキックが打ち込まれ、シャーロックは後ずさる。

 

キンジ「オラァ‼︎」

シャーロック「ガハッ!」

剣護「月島流!富嶽突き!」

 

さらに下がったシャーロックの顔面に、キンジが膝蹴りを叩き込み、続いて剣護が刀の柄による打突を胸に叩き込む。

 

シャーロック「グフッ……!くっ……!」

剣護「月島流!」

キンジ「おおおおお……!」

剣護「富嶽昇り龍‼︎」

 

剣護は斬り上げを放ち、シャーロックはスクラマ・サクスで防ぐが、剣護はガードされたまま打ち上げた。

そして姿勢を低くした剣護の背中を蹴り、キンジが飛び上がる。

 

キンジ「スマッシュダンク‼︎」

 

打ち上げられたシャーロックのさらに上に飛んだキンジは、落下の勢いを乗せて拳を叩き込み床に向かって打ち下ろした。

 

シャーロック「ぐあ………!」

 

ダメージが蓄積されてきているのか、動きが鈍くなっているシャーロック。

その隙を逃さないキンジと剣護。

 

キンジ「剣護!」

剣護「おう!」

 

キンジは纏ったオーラを足に集中させ、剣護も緋色のエネルギーを足に収束させる。

そしてその場で飛び上がると、シャーロック目掛けて飛び蹴りを放つ。

 

キンジ「レイジングドライブ!!!」

剣護「流星烈光弾!!!」

 

2人のダブルキックをシャーロックはガードするが2人の勢いは止まらず、ガードをこじ開けられ吹っ飛ばされる。

すかさずキンジはクラウチングスタートの構えを取った。

 

キンジ「決めてやる…!絶対に躱せない一撃を!」

 

そう言ってキンジは全速力で駆け出す。

 

キンジ「この桜吹雪………散らせるものなら‼︎」

 

最大速で駆けて時速36kmを造り出し、爪先、膝、腰と背、肩と肘、手首を一瞬だけ同時に動かし、合わせて時速1236kmを出す。

 

キンジ「散らしてみやがれッ!!!!!」

 

放たれる超音速の一撃。ナイフからは円錐水蒸気が発生し、衝撃波でキンジの腕が引き裂かれ、右腕から鮮血が飛び散る。

 

まるで、桜の花びらが散るかのように。

 

キンジ「桜花ァ!!!!!」

 

キンジの自身を右腕を犠牲にした最後の攻撃。

シャーロックはそれを躱さずに、あろうことか受け止めた。片手で、それもかつてジャンヌと戦った時に使用した二本指での真剣白刃取りで。

 

シャーロック「惜しかったね。キンジ君」

 

シャーロックが剣をキンジに向けて振るう。

自身に迫るそれをキンジも同じように二指真剣白刃取りで止める。

 

キンジ「惜しくねえよ」

 

ニィッと笑うと、キンジは深く、深く息を吸って大きく頭を後ろに反らす。

 

キンジ「そう来ることは………」

 

この状況から繰り出すのは、先祖代々伝わる遠山家の隠し技。

 

キンジ「分かってんだよ‼︎」

 

ガスッ‼︎と大きく鈍い音をたてて、世界最高の頭脳にキンジの頭突きが炸裂する。

 

キンジ「最後頼むぞ………剣護‼︎」

 

キンジがそう言うと、後ろの方でドゴォ‼︎と轟音をたて床を踏み砕いて剣護が飛び出す。

手には鞘に納めたイロカネアヤメが握られ、シャーロックに向かって流星の如く突撃する。

 

剣護「月島流奥義……絶剣!!!」

 

 

 

 

 

【絶剣】

 

 

常世の神子での使用を前提とした、剣護が編み出した月島流の奥義を超える剣技。

今の体の状態で放つとどうなるか分からないが、そんなものは後で考えれば良い。

 

キンジの頭突きで体勢を崩したシャーロックは、迎え撃つべく突きを放とうと構える。

しかし、剣護はキンジの隣に迫った所でさらに強く踏み込み、その姿を消した。

 

シャーロック「なっ……!」

 

シャーロックが気を取られると同時に緋色の光が視界を塗り潰し、熱風が顔を撫でる。

そして、背後からポツリと剣護の声が聞こえた。

 

剣護「神無神威(かんなかむい)……!」

 

瞬間、シャーロックの胸から鮮血が飛び散り、血を吐いてシャーロックは膝から崩れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キンジ「ハァ……ハァ……」

剣護「…ヒュゥ………ヒュゥ………」

 

キンジは今までのダメージと赤いオーラの反動で体がガタガタの状態で、剣護は変化が解除され刀を杖にして膝で立ちギリギリで意識を保っていた。

するとアリアが2人の元へ駆け寄ってくる。

 

アリア「キンジ………剣護………」

キンジ「……アリア」

 

アリアは超偵用の手錠を取り出すと、倒れたシャーロックの元に跪く。

 

アリア「曾お爺さま………いいえ、シャーロック・ホームズ。あなたを……逮捕します」

 

そう言って、その手首に手錠をかけた。

 

 

 

 

 

 

 

シャーロック「素敵なプレゼントをありがとう。それは曾孫が僕を超えた証に頂戴しよう」

 

金・ア『!?』

金一「上だ!」

 

頭上からの声に、キンジとアリア、金一は慌てて顔を上げる。

そこにはICBMの扉に捕まって、手を振るシャーロックの姿があった。

 

シャーロック「キンジ君。さっきの君の一撃は僕にも推理できなかったよ。そして剣護君。僕が調べたものとは別に君が発現したイロカネの力には心底驚かされたよ。君ならその力を正しい方向に使ってくれると信じているよ」

 

キンジが倒れている方のシャーロックに視線を戻すと、その体が砂金になって崩れ落ち、左手で手錠を頭上のシャーロックにパスした。

 

キンジ「シャーロック、どこへ行く気だ……!」

シャーロック「どこにも行かないさ。昔から言うだろう?『老兵は死なず、ただ消え去るのみ』ってね」

アリア「曾お爺さま………!待って!」

 

アリアは小太刀を抜き、飛び立とうとするICBMの表面に刃を突き立てよじ登っていく。

 

キンジ「待て!アリア!」

 

シャーロック「アリア君……短い間だったが楽しかったよ。最後に形見として、君に名前をあげよう」

アリア「曾お爺さま………」

シャーロック「僕は緋弾という言葉を英訳した二つ名を持っている。『緋弾のシャーロック』……その名を君にあげよう」

アリア「曾お爺さまの……名前………」

 

シャーロック「さようなら。『緋弾のアリア』」

 

 

 

ICBMはアリアを張り付けたまま、ゆっくりと飛び立ち始める。

 

キンジ「アリア……!クソッ!」

 

キンジはその場に転がっていたシャーロックのスクラマ・サクスを拾い上げるとナイフも使って、ICBMに突き立てよじ登る。

ふと、剣護の方を振り向くと剣護は刀を握ったままうつ伏せに倒れていた。

 

キンジ「剣護⁉︎」

 

キンジは張り付きながら呼びかけるが、反応は無くピクリとも動かず、やがてその姿はICBMからの白煙に包まれた。

そしてICBMはキンジとアリアを張り付かせたまま、イ・ウーから空へと飛び立って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ICBMが飛び立った後、金一は力尽きて倒れた剣護を連れてイ・ウーから脱出しようと駆け寄る。

しかし、白煙が収まった時には剣護の姿がなかった。

 

金一「剣護!どこだ!剣護!」

 

静かな艦内で何度も呼びかける金一。

するとコツ、コツ、と背後から誰かが靴を鳴らして近づく音が聞こえてくる。

金一はピースメーカーを抜き、背後にいる者に向ける。

 

金一「………誰だ」

 

金一はピースメーカーを構えたまま問いかける。

しかし、相手は臆することなく金一の方へと近づいていく。

 

 

 

「武器を納めてくださいな。あなたに危害を加えるつもりはありませんので」

 

 

 

そう言って金一の前に現れたのは、道士服風の前掛けとフリルドレスを合わせたような服装を身につけた金髪の女性だった。

 

金一「………信用するとでも?」

「警戒するのは仕方ありません。ですがこちらにはあなたを襲う理由も必要もありませんわ」

金一「………その前に質問に答えてくれ。剣護を攫ったのはお前か?」

「ええ。攫った…というよりは保護した、と言った方が正しいですわ」

金一「……その目的は?」

「あなたも見たでしょう。彼が発現した力を」

 

剣護が死の淵から戻った際に発現した、シャーロックによって左胸に撃ち込まれた緋々色金の力。

彼女が何故そのことを知っているのか疑問に思ったが、金一はそれを頭の中に留めた。

 

金一「……それがお前と何の関係がある?」

「知り合いの者も調べていたのですよ。その色金について」

金一「何だと……!誰だ、それは…」

「あなたも、あなたの弟さんもよーく知ってる方ですわ。遠山金一さん?」

金一「っ⁉︎」

 

名前も知らぬ女性から自分の名前を聞かされて、金一は目を見開く。

 

金一「な、なんでお前が俺の名を……⁉︎」

「……その前に口調戻させてもらうわね。コホン。なんで名前を知ってるだけど、まあ簡単に言えばその人から聞かされてたのよね。昔話とか」

金一「は、はぁ………」

「あの人ったらあなた達のことも話しちゃうもんだから……」

金一「お、おい待て!うちのことを知ってる人は限られ……っ!」

「……気づいたみたいね?このことは弟さんには秘密にしてもらえるかしら?色々と面倒なことになるし」

金一「あ、あぁ……どうせ戻ったら姿を消すつもりだからな…」

「そう。ならいいわ。話を戻すけど、彼を保護したのは療養ってのもあるけど修行が主ね」

金一「修行?」

「ええ。あの力が暴走とかしたら危険でしょう?だから制御するために修行させるってわけ。そこで私が管理してる所がうってつけなのよ。何人か知り合いもいるようだし。それに…」

金一「……それに?」

「あの子たちには恩というか借りというか…そんなのがあるのよ。それも兼ねてよ」

金一「………そうか」

「あなたが返せと言うなら、大人しく彼は返すけど……どうする?」

金一「………………………」

 

金一は少し考えてから………ピースメーカーをホルスターに戻した。

 

金一「……いや、あんたに任せよう」

「………………本当に良いのね?」

金一「あぁ、剣護を………俺の弟分をよろしく頼む」

「………えぇ、わかったわ」

金一「キンジには俺がなんとか言っておこう。あいつの仲間も心配しているだろうしな」

「そうねぇ………変なことにならないといいけど…まあなった時はなんとかしましょうか」

金一「……その時は頼む」

「えぇ。それじゃあ外まで送るわ」

金一「良いのか?」

「えぇ。行くわよー………えいっ」

金一「ゑ?うおおおおおお⁉︎」

 

次の瞬間、金一の足元に裂け目が現れ、金一はその中に落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金一「うおおおおおお、おお⁉︎」

パトラ「ぬおっ⁉︎キンイチ⁉︎」

 

金一が落とされた先は、救命ボートの上だった。

そこにはアンベリール号からボート使って脱出していたのだろう、パトラが乗っていた。

 

パトラ「お、お主、一体どこから……」

金一「あー………まあ、ちょっとな。それよりキンジ達は…」

パトラ「ちょうど落ちてきておる。あそこぢゃ」

 

パトラが指差す方を見るとキンジと髪を翼のように広げたアリアが降りてきていた。

 

金一「キンジ………」

 

弟とそのパートナーが無事なのを内心ホッとしつつ、剣護のことについてどう説明したものかと金一は心の中で頭を抱えるのだった。

 

 

 


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