オタク剣士が武偵校で剣技を舞う!   作:ALEX改

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第52話 VSシャーロック

 

 

剣護「月島流!富嶽巌砕突き‼︎」

 

剣護の螺旋状の斬撃を纏った突きをシャーロックはステッキでいなす。

 

キンジ「シッ!」

 

反対側からキンジが脇腹に掌底を放つが、その前に腕を掴まれて止められる。

 

シャーロック「なかなかのコンビネーションだけど、僕には推理できてたよ」

キンジ「っ!」

剣護「シャオラァ!」

 

剣護の左拳をシャーロックはステッキの先で止め、押し返す。

キンジはシャーロックの手を振り払うとナイフを振るい、シャーロックは避けるとナイフを持った腕を掴み背負い投げで叩きつける。

 

キンジ「ガハッ……!」

剣護「月島流!富嶽双連斬!!!」

シャーロック「フッ!」

剣護「ぐほっ!」

 

剣護は氷花を抜き二刀を振るうが、シャーロックはステッキで鳩尾を突き、剣護は血を吐きながら下がる。

 

剣護「クッソ……!」

 

剣護はしめ縄を乱暴に外し、常世の神子に変化する。

 

シャーロック「全力全開ってわけだね」

剣護「でなきゃ敵わなそうなんで……な!」

 

そう言って剣護は二刀を振るい、シャーロックはステッキと左手で受け止める。

 

キンジ「オォォ!」

 

キンジが疾走し、シャーロックの背後から飛び後ろ回し蹴りを叩き込む。

 

シャーロック「ぐうっ!」

剣護「月島流!富嶽双龍牙!!!」

 

シャーロックが体勢を崩したところに、二刀での牙の如く鋭い斬撃を叩き込む。

 

剣護「っ………どうだ…!」

キンジ「モロに喰らってたが流石に………っ!」

 

ビリッ、と電流のような悪寒が2人に走る。

最初に会った時よりも圧倒的な存在感を纏い、その気配はキンジと金一がよく知るものだった。

 

キンジ「ヒステリアモードだと……⁉︎」

シャーロック「礼を言わせてもらおう。君達のおかげで…なることができた」

金一「ヒステリア・アゴニザンテか……!」

 

金一の言う通り、元々死にかけだったシャーロックはキンジと剣護の攻撃で追い込まれたことでヒステリア・アゴニザンテを覚醒させたのだ。

 

シャーロック「今度は僕から行かせてもらうとしよう」

キンジ「何………がっ!」

 

一瞬で間合いを詰められ、シャーロックのソバットがキンジを吹っ飛ばす。

 

剣護「キンジ!」

シャーロック「気にかけてる場合かい?」

剣護「っ!」

 

シャーロックはステッキで突きを繰り出し、剣護は辛うじて刀で防ぐがステッキで刀を絡め取られてしまう。

 

剣護「しまっ……!」

シャーロック「はっ!」

剣護「あがっ!」

 

剣護の左肩をシャーロックの突きが命中し、走る激痛に剣護は動きを止めてしまう。

 

シャーロック「はっ!ふっ!はぁっ!」

剣護「ぎっ……!」

 

その隙を逃さずシャーロックの連続突きが剣護を襲う。

 

シャーロック「はあぁぁぁ……はっ!」

剣護「っ……うおおあああああ‼︎」

 

眉間目掛けて繰り出される突きを剣護は頭突きで迎え撃つが、止めきれず額と左肩から血を流しながら後ろに吹っ飛ぶ。

 

シャーロック「さて、ここからは…君達がこれから戦うであろう難敵の技を予習させてあげよう」

 

そう言うとシャーロックはステッキを床に叩きつける。粉々になったステッキの中からは一振りの刀、スクラマ・サクスがその姿を露わにする。

 

シャーロック「銘は聞かない方がいい。これは女王陛下から借り受けた大英帝国の至宝。それに刃向かったとあっては、後々、君達の一族が誹りを受けるおそれがあるからね」

キンジ「名前なんて興味ねえよ。どうせエクスカリバーとかラグナロクとかだろ」

シャーロック「ははっ。凄い推理力だ。君には探偵の素質がある。僕が保証しよう」

キンジ「………あんたも適当な男だな」

シャーロック「もうあまり時間もないようだ。1分で終わらせよう」

キンジ「奇遇だな。俺たちもそのつもりだ」

 

そう言って互いに駆け出し、刀とナイフがぶつかり合う。

瞬間、シャーロックの刀から雷球が発生し、その雷撃によってキンジと剣護は吹っ飛ばされる。

 

キンジ「ぐっ!」

剣護「つっ!電撃……!」

 

気づけば2人の周囲には霧が発生している。

そして何かが2人の身体を防弾ベストごと撃ち抜いてくる。

 

剣護「いって!」

キンジ「これは……水?」

 

キンジの言った通り、高圧で飛んでくる無数の水弾が2人の全身を撃ち抜く。

 

剣護「つ、月島流…!富嶽山嵐‼︎」

 

剣護の巻き上げるような斬り上げによる斬撃の竜巻が霧と水弾を吹き飛ばすが、今度は鎌鼬が2人を切り刻んでいく。

 

剣護「ぐあっ!」

キンジ「ぐっ!」

シャーロック「ハアッ!」

 

鎌鼬が止むと同時にシャーロックはキンジに接近し、スクラマ・サクスを振るう。

 

キンジ「っ!」

剣護「キンジ!」

 

間一髪で剣護が割り込んでガードして、そのまま鍔迫り合いになる。

 

剣護「っ……おっも…!」

シャーロック「なかなか素早いね。けれどパワーは、こちらが上だ」

剣護「うおっ⁉︎」

 

シャーロックはスクラマ・サクスを振り抜き剣護を吹っ飛ばす。吹っ飛ばされた剣護は勢いよく壁に叩きつけられた。

 

剣護「ゴハッ………」

キンジ「オォ!」

 

キンジはナイフを振るうがシャーロックはキンジの拳に飛び乗ると、そのまま拳を足場にフワリと宙返りする。

 

剣護「そこぉ‼︎」

 

剣護は壁を強く蹴って、飛翔するシャーロックのさらに上に飛び上がると刀を振りかぶる。

 

剣護「月島流、富嶽……!」

シャーロック「甘いよ」

 

シャーロックがスクラマ・サクスを剣護に向けると、電撃が剣護に直撃し撃墜した。

 

剣護「がっ……⁉︎」

キンジ「剣護!」

剣護「ゴヒュッ……ゲホッ!ケホッ!」

 

常世の神子が解除され、床に叩きつけられる剣護。そこにキンジが駆け寄る。

 

その時、室内に流れるモーツァルトの『魔笛』がソプラノパートに入った。

 

シャーロック「このオペラが独唱曲になる頃には君達を沈黙させているつもりだったのだがね。君達は僕が推理したよりも長い時間を戦い抜いた。もう少し君達と戦いたいところだが……申し訳ない。この独唱曲は最後の講義……『緋色の研究』についての講義を始める時報なのだよ。紳士たるもの、時間にルーズであってはいけないからね」

 

キンジ(緋色の研究………?)

 

するとシャーロックの体が光り始め、光は勢いを増していき緋色へと変わっていく。

 

剣護「…あれって…アリアの、やつと…同じやつ……?」

キンジ「だろうな…」

 

シャーロック「僕がイ・ウーを統率できたのは、この力があったからだ。だが、僕はこの力を不用意には使わなかった。『緋色の研究』ーーー緋弾の研究が未完成だったからね」

 

語りながらシャーロックは銃を抜いた。

 

キンジ「あの、『緋弾』を……撃てるのか、お前も」

シャーロック「君が言っているのは、恐らく違う現象だろう。アリア君がかつて撃ったはずの光球……それは緋弾ではない。古の倭詞で『緋天・緋陽門』という、緋弾の力を用いた一つの現象に過ぎない」

 

そう言いながら、シャーロックは銃のマガジンから1発の銃弾を取り出した。

その弾頭は血、もしくは薔薇や炎のような緋色をしている。

 

シャーロック「この弾丸が、『緋弾』だ。日本では緋々色金と呼ばれる金属でね。峰理子・リュパン4世が持っていた十字架を覚えているだろう。あれも、この弾と同族異種の金属を極微量に含むイロカネ合金なのだよ。イロカネとは……あらゆる超能力がまるで児戯に思えるような、至大なる超常の力を人間に与える物質。いわば『超常世界の核物質』なのだ」

 

そう言うとシャーロックは緋弾を銃に籠め直す。

 

シャーロック「さて、この弾を使用するのは少し後にするとして……もう一つ、お見せするとしよう」

 

シャーロックは右手の人差し指をキンジに向ける。

 

シャーロック「これだろう?君達が見た現象は」

 

するとシャーロックの体を覆っていた緋色の光が指先に集まっていく。

 

キンジ(あ、アリアの時と同じ……!)

 

その時、後ろから緋色の光が発せられ始め、振り返って見るとアリアの体からもシャーロックと同じ緋色の光が指先から発せられていた。

 

キンジ「アリア……!」

アリア「な、何……これ……?」

シャーロック「アリア君。それは『共鳴現象(コンソナ)』だ。質量の多いイロカネ同士は、片方が覚醒すると共鳴する音叉のように、もう片方も目を覚ます性質がある。その際はイロカネを用いた現象も共鳴するのだ。今みたいに僕と君の人差し指が光っているようにね」

 

そう言いながらシャーロックは、緋色の光を蓄えた指でキンジ達に狙いをつける。

 

シャーロック「僕はこの『緋天』を君達に撃つ。僕が知る限り、それを止める方法は同じ『緋天』を衝突させることのみ」

アリア「曾お爺さま……」

シャーロック「アリア君。君は僕を撃つんだ。その光で」

アリア「………わかりました…!」

シャーロック「キンジ君。すまないが……」

キンジ「…あんたに頼まれるのは癪だが……わかったよ」

 

キンジはアリアの側へ行くと、金一に目配せする。金一は小さく頷くと剣護の方へ駆け寄り、剣護を担いでその場から少し離れる。

 

金一「大丈夫か?剣護」

剣護「……っ……ぉぅ………」

金一「…ギリギリってところか…」

 

 

 

アリア「キンジ……」

キンジ「心配するな、アリア」

 

キンジはアリアの手を掴むと、シャーロックに向けて人差し指を伸ばさせると、両手で支える。

 

キンジ「アリア。お前はパトラと戦った時に、無意識にだが一度この力を使っている。大丈夫、お前ならきっとできる」

アリア「っ………ええ…!」

キンジ「安心しろ。最後まで俺がついててやるさ……何がどうなろうとな」

 

シャーロックと同じようにアリアの指先に光が集まっていく。

 

シャーロック「良いパートナーを見つけたね。アリア君」

 

2人の光景を見て、緋色の光の向こうで微笑むシャーロック。

 

シャーロック「ホームズ家の人間には相棒が必要だ。かつて僕にワトソン君がいたようにね。人生の最期に……2人が支え合う姿を前にできて、僕は………幸せだよ」

 

シャーロックが光を放つと、アリアも同じように光を放つ。

光と光がぶつかり合うと静かに合わさっていく。

合わさった光球は緋色からだんだんと透明になっていき、レンズのような形へと変わっていく。

さらにそのレンズのようなものから何かの映像が映し出され始める。

 

シャーロック「これだ…!これが日本の古文書にある『暦鏡』ーー時空のレンズだ。実物を前にするのは、僕も初めてだよ」

 

興奮を含んだシャーロックの声を他所に、キンジ達は目の前の映像に愕然とする。

 

キンジ(あれは………アリア……?)

 

レンズに写っていたのはアリアだった。しかし、いつものピンク髪とカメリアの瞳ではなく、亜麻色の髪と紺碧の瞳をしていた。

 

シャーロック「アリア君。君は13歳の時、母親の誕生日パーティーで銃撃されたことがあるね?」

アリア「は、はい……撃たれました、何者かに。でも、それが今、何だと……」

シャーロック「撃ったのは僕だ」

アリア「!」

金・剣『っ⁉︎』

シャーロック「いや、正確にはこれから撃つのだ。僕は今から3年前の君に、緋弾を継承する」

 

シャーロックはレンズの中のアリアに向けて拳銃を構えた。

 

キンジ「や、やめろ‼︎シャーロック‼︎」

 

レンズに向かって、キンジは本能的に駆け出す。

剣護も身体からスパークを発しながらシャーロックに向かって駆け出す。

 

剣護「やらせるかぁ‼︎」

金一「止せ!剣護‼︎」

 

シャーロック「なに、心配には及ばないさ。僕は銃の名手でもあるからね」

剣護「月島流……!」

 

拳を構える剣護。

その時、シャーロックの手元が光る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビシュッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遅れてくる銃声と共に左胸に痛みが走ると共に血が吹き出す。

 

 

剣護「っ………⁉︎」

シャーロック「すまないね。だが、この儀式を台無しにされるわけにはいかないのだよ」

剣護「ガフッ………」

 

アリア「う…嘘………剣護ぉ‼︎」

金一「っ……クソッ‼︎」

キンジ「っ……!」

 

前のめりに倒れ込む剣護。

すぐさま金一とアリアが駆け寄り、剣護を連れて後ろに下がる。

キンジは倒れた親友に駆け寄りたいのを堪えて、レンズに向かって駆ける。

 

キンジ「シャーロックゥゥゥゥゥ!!!」

 

シャーロックへと向けたキンジの叫びが聞こえたのか、レンズの中のアリアが振り返り、キンジと目が合う。

しかし、キンジの叫びも虚しく1つの銃声が響き、その背中に緋弾が撃ち込まれた。

驚愕の表情で倒れる過去のアリアと共に暦鏡も薄れていき、消えていった。

 

 

 


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