怜二「両替を頼みたい。今日は青いカナリアが窓から入ってきたんだ。きっと、ツイてる」
剣護「………憑いてる」
キンジ「ブフッ」
合言葉であるセリフを言いながら係員にアタッシュケースを渡す怜二。その一歩後ろでボケる剣護と吹き出すキンジ。
現在、3人は黒のスーツにサングラスという格好でカジノ『ピラミディオン台場』に来ている。
怜二が若手のIT社長、キンジと剣護はそのボディガードという構成になっている。
怜二「すごく綺麗なところだね」
キンジ「そうだな。流石カジノってところか」
剣護「テーマパークに来たみたいだぜ」
怜二「テンション上がるなぁ!」
キンジ「早速ボケんな」
剣護「見ろよキンジ。飲み物もすんごいキラキラして見えるぜ」
キンジ「あぁ……アレどういう名前してんだよ」
剣護とキンジが見ているバーのメニューには赤・青・白のトリコロールの炭酸飲料『RTスパークリング』クリアブルーと金色の2種類あるゼリードリンク、恐らくグレープ味であろう紫色の『クラックアップカクテル』等など、なんか剣護の心をくすぶりそうな名前の飲み物がたくさんあった。
「飲み物はいかがですか?」
剣護「あ、じゃあコーヒー1つ」
怜二「僕も」
キンジ「お、俺は、結構です」
バニーガールからコーヒーを受け取る剣護と怜二。キンジはヒステリア的な危険性があるので目をそらす。
剣護「どれ、ここのコーヒーは…」
怜二「カジノのコーヒーっていいヤツ使ってそうだよね…」
剣・怜『マズッ⁉︎』
キンジ「不味いんかい」
アリア「何してんのよアンタたち」
あかり「あはは……」
コーヒーの味に悶絶する2人を見ているとバニーガールの格好をしたアリアとあかりが話しかけてきた。
キンジ「ここで油売ってていいのかよ」
アリア「だって誰も注文してこないんだもん」
キンジ「あー……まあ…」
剣護「顔立ち良くても容姿が……」
アリア「シッ!」
キンジ「おごぁ⁉︎」
あかり「フッ!」
剣護「ウッ」
アリアがウサ耳をキンジの目にぶっ刺して、あかりが剣護にパルスを乗せた腹パンを叩き込む。
アリア「余計なことを言わんでよろしい!」
あかり「そうですよ!」
キンジ「俺何も言ってない……」
風魔「し、師匠、大丈夫でござるか?」
キンジ「お前はあまり近づくな…」
怜二「2人よりスタイル良いしn…」
あかり「らぁ!」
怜二「うごおぁ⁉︎」
アリア「せいっ!」
怜二「ひでぶ⁉︎あべし⁉︎」
あかりがウサ耳で目を突き、アリアがウサ耳で往復ビンタを繰り出し怜二がノックアウト。
キンジ「よし、退散だ」
剣護「とりあえず回ろう!そうしよう‼︎」
キンジ「……そういや白雪は?」
剣護「なんか裏の方に逃げてくのが見えた」
怜二が復活してからカジノ内を回っているとルーレットのエリアで大勢の見物客が集まっている所にレキを見つけた。
レキの格好はアリア達のようなバニーガールではなく金ボタンのチョッキとズボンの格好をしている。
「ははっ……初めてだよ…この僕が1時間も経たない内に3500万も負けるとはね……君は本当に運を司る女神かもしれないな」
レキ「……………」
「残りの3500万……これを全て『黒』に賭けよう!」
レキ「『黒』ですね。では、この球が黒に落ちれば配当金は2倍です。よろしいですか」
「ああ。だが配当金はいらない。僕が勝ったら…キミをもらう!」
剣護「何言ってんだこいつ…頭キチってんじゃねえか」
キンジ「お前に言われたらおしまいだわ」
レキ「……あちらの方なら良いですよ」
「え?」
レキの指す方を見るとそこには見回りとして徘徊している男前の係員がいた。
その人物にキンジ、剣護、怜二は見覚えしかなかった。
阿部「ん?俺かい?」
剣護「阿部じゃねーか‼︎」
金・怜『うっそだろお前……』
なんとそこには日本娯楽研究部の部員の1人、阿部高則がレキと同じようにチョッキを着て歩いていた。
思わぬ返しに若手社長も困惑せずにはいられなかった。
「い、いやぁ……流石に僕でもそっちの気は……」
阿部「別に構わないぜ?俺はノンケだって歓迎するさ」
「え、えっと……あの……」
剣護「いかん、あのままだとあの社長さん喰われるぜ」
キンジ「仕方ない。助け舟を出してやるか……怜二」
怜二「……それ僕が勝ったら僕が喰われない?」
剣護「大丈夫だって。そんときゃ俺がなんとかする」
怜二「………わかったよ」
そう言うと怜二はルーレットの方へ行き、若手社長の隣に立つ。
怜二「あー、すみません。僕も入れてください。えーと…僕もその子狙ってまして…」
「あ、あぁ…」
阿部「ん?」
怜二が入ってきて阿部はその後ろを見て、キンジと剣護を見つけるとそちらに向かう。
阿部「よう。大将に遠山。あんたらがここに来るとは珍しいね」
キンジ「……なんでお前がいるんだよ」
阿部「ん?俺か?俺はここでバイトしてんだよ。趣味を楽しむにしても金が無いとな」
剣護「なーるほどねぇ。そういうことか」
阿部「で?あんたらは?オーナーからは今日は手伝いが多いからよろしく頼むとしか言われてないんだが」
剣護「緊急任務でな。変装してこのカジノの警備さ」
阿部「あーそういうわけね。確か2人とも単位足りてなかったっけ」
キンジ「ちょうどいい。阿部、白雪のサポートしてくれないか?さっき裏に引っ込んでしまったんだ」
阿部「了解。ルーレットも決着したようだしな」
剣・金『ん?』
ルーレットの方を見ると、おそらく怜二が指定した場所にレキが入れたのであろう。赤の23番に球が入っていた。
それにより怜二は一気に大金持ちになった。7千万も負けた若手社長はガックリと落ち込むどころかむしろホッとしたような顔をしていた。
「た、助かった……」
怜二「………良かったっすね」
レキ「それではお引き取りください。今日はもう、帰った方がいいですよ」
「せ、せめてメアドだけでも教えてくれないか…?」
怜二(懲りないな〜……)
レキ「お集まりの皆さんもお帰りください」
そう言いながらレキは剣護達の方に視線を送る。
レキ「良くない風が吹き込んでいます」
剣護「レキ……?」
レキの言葉に剣護とキンジは不穏な表情をする中、阿部がフロアの片隅の方へ視線を向けると何かがこちらに走って来ているのを見つけた。
阿部「大将!何か来るぜ!」
剣護「ッ‼︎」
阿部の言葉と共にレキの後ろに隠れていたハイマキが飛び出し、同時に剣護も疾走する。
剣護「ハイマキ!体当たり!」
ハイマキ「ぐるぁ‼︎」
ハイマキは走ってくる相手に体当たりをかまし、剣護も一緒に飛び蹴りを繰り出して吹っ飛ばす。
吹っ飛ばした何かは全身が真っ黒で頭はジャッカルの頭をしていた。
剣護「アヌビス……?」
剣護がそう呟く中、ハイマキがジャッカル男の腕に噛み付くが、ジャッカル男は腕を振り回して強引に引き剥がした。
阿部「なんだありゃあ……」
キンジ「阿部、客の避難を頼む」
阿部「了解!」
阿部に指示を出すとキンジは銃を抜いた。
キンジ「怜二、お前銃は?」
怜二「あんま得意じゃないけど、一応持ってるよ」
怜二もネクタイを外して捨てると銃を抜く。
キンジ「P226か」
怜二「ぶっちゃけ刀振りたい」
キンジ「我慢しなさい。剣護!銃は?」
剣護「今回はコイツらだ!」
そう言って剣護が抜いたのはM19とピースメーカー。M19はコンバットマグナムとも言って某有名な怪盗の相棒がよく使っているリボルバーである。ピースメーカーは言わずもがな金一が忘れて帰った物である。
キンジ「なんでお前が兄さんの銃持ってんだよ」
剣護「前来た時に落としてったらしい。せっかくだからファイブセブンの代わりに使わせてもらう」
キンジ「本当リボルバー好きだなお前」
剣護「カッコいいじゃん」
白雪「
突然、火球がカーブを描きながらジャッカル男に直撃する。
白雪「キンちゃん!逃げて!この敵に触れると呪われちゃう!」
キンジ「何?」
白雪は札を取り出すと火球に変えてさらに放つ。
白雪「キンちゃんには指一本触れさせn…」
剣護「白雪、邪魔‼︎」
白雪「うわぁ⁉︎」
敵目掛けて突っ込もうとする白雪を髪を巻きつけて後ろに投げる。
剣護「本当にあんたって子はキンジ絡むと周りが見えないんだからもー」
白雪「ご、ごめん……」
剣護「ほら銃貸すから」
キンジ「いやお前どうすんだよ!」
怜二「来てる!来てる!敵来てる!」
剣護「こうすんだよぉ‼︎」
斧を振り上げて走ってくるジャッカル男に剣護は手を銃に見立てると人差し指の先が光り始める。
剣護「霊気弾!」
指先から光弾が放たれてジャッカル男を貫く。ジャッカル男はザァッと砂鉄に変わり中から虫が出ていった。
その虫も光弾で撃ち抜く剣護。
キンジ「今のアレ夏祭りのやつか?」
剣護「そだよ」
白雪「キンちゃん!剣ちゃん!まだ来てる!」
白雪が叫び、階段の方を見るとゾロゾロとジャッカル男が現れる。
キンジ「チッ!」
キンジはベレッタを3点バーストで撃つ。が……
キンジ(ッ⁉︎弾が2つしか出ない⁉︎)
平賀の魔改造は腕は良いのだが不具合も多いことで有名である。
そのせいでキンジのベレッタは3点バーストで弾が2発しか出なくなっているのである。
怜二「こんの!」
怜二も銃を撃つがあまり得意でないが故に命中精度はあまり良くない。
キンジ「本当に下手だな」
怜二「言ったじゃん。得意じゃないって。あーもー刀振りたい」
剣護「2人とも伏せろ」
キンジと怜二の後ろでは、パキパキと音を立てて髪を変化させている剣護が。
剣護「常世針!」
金・怜『あぶな!?』
変化させた髪から針を連射してジャッカル男を次々針山にして砂鉄に還していく。
キンジ「おいおい…どーすんだこれ…」
怜二「あーもう、めちゃくちゃだよ…」
白雪「お店の物まで壊してない…?」
剣護「コラテラルコラテラル」
アリア「ちょっと!やりすぎよ!」
バスバスとガバメントを掃射しながらアリア達が合流してきた。
キンジ「アリア!みんな!」
阿部「大将!怜二!」
阿部も一緒だったようで、店に預けていた剣護と怜二の刀を投げ渡す。
剣護「ナイス!」
怜二「ありがと!」
2人は刀を受け取ると抜刀し、目の前の2体のジャッカル男目掛けて疾走。
剣・怜『ハッ!』
すれ違うと共に一閃。ジャッカル男は砂鉄になり崩れていく。
『ガルルル……』
志乃「先輩!入り口からも敵が!」
キンジ「クソッ…キリがないな…」
上も下も敵だらけ、あまりにもキリがなさすぎる。
アリア「行くわよ!レキ!」
剣護「合わせるぞ!怜二!」
怜二「オケ!」
アリアはシャンデリアに飛び乗り、剣護と怜二は下に降りて疾走する。
レキがシャンデリアの金具を掠めるように撃ち、その衝撃でシャンデリアが回転し、そのままアリアは銃を掃射していく。
剣護「月島流!」
怜二「柳生新陰流!」
剣護「
怜二「逆風の太刀!」
回転斬りの連撃と瞬時の斬り返しで、次々と敵を倒していく剣護と怜二。
その様子に息を飲む後輩達。
志乃「すごい…!」
陽菜「お互いに合わせて技を出してるようでござるな」
白雪「流れを読める剣ちゃんだからできることなんだよ」
キンジ「それにしてはやりすぎだろ……ん?」
剣護と怜二が掃討している内の1体が窓を破って逃げ出した。
怜二「1体逃げたよ!」
剣護「チッ、キンジィ!」
阿部「そこのモーターボートを使え!」
キンジ「あぁ…行くぞ!アリア!」
アリア「え"っ⁉︎」
キンジは近くのモーターボートに飛び乗るが、アリアが水が怖いのか固まってしまう。
アリア「せ、せめてライフジャケット……」
キンジ「そんな時間はない!」
アリア「うきゃぁ!」
キンジはアリアを引っ張って乗せ、引っ張られたアリアはキンジにひしっと抱きつく。
剣護「Foo↑お熱いね…っとウラァ!」
怜二「やりますねぇ!……ってオラァ!」
キンジ「攻撃しながら茶化すな!」
アリア「き、キンジッ、だめ、だめ、あ、あたしッ…!」
キンジ「ちょ、おまッ………ッ!」
ドクンッ!と脈打つように体の芯が熱くなり、キンジは成っていく………ヒステリアモードへと……
その時、新手が入り口を破壊しながら襲撃してきた。
ライカ「剣護先輩!」
剣護「えっ」
剣護が振り向くと横薙ぎに振るわれた大剣が迫ってくる。
剣護(いなしは間に合わない…ガード!)
剣護「富嶽返し!」
剣護は咄嗟に刀の柄で防ぐが、勢いが殺しきれず上にかち上げて弾く。
相手の方を見ると、見た目はジャッカル男達と変わりはないが身長が3メートルよりちょっと下くらいでキンジや剣護を余裕で超えるほどのデカさだ。右手には武骨な大剣、左手には両刃の斧を持っている。
どちらの武器も重量が重く、破壊力が高い武器であり、一撃でも喰らえばひとたまりもないだろう。
剣護「ふうっ……」
キンジ「剣護、そっちは任せるよ」
剣護「おう、そっちもヘマすんなよ」
怜二「気をつけてね」
アリア「行くわよ!キンジ!」
キンジとアリアはモーターボートを走らせ逃げたジャッカル男を追っていく。
剣護「………さてと、阿部ぇ!」
阿部「ん?」
剣護「みんなを頼む!それとオーナーにここの修理と弁償は蔵王重工がやるって伝えといてくれ!」
阿部「あぁ、任しときな!大将!」
剣護の頼みにサムズアップで返す阿部。
剣護「……さてと」
怜二「これは流石に本気出さないとだね。
剣護「だな。いっちょやってやるか!」
「グルアアアアアアアア‼︎」
雄叫びを上げて威嚇してくるジャッカル男に剣護と怜二は刀を構えると相手目掛けて駆け出す。
剣・怜『行くぞおおおおおおおお!!!!』
後から気づいたことですが、この『オタク剣士が武偵校で剣技を舞う!』もとうとう投稿数が50話になりました。
これからも更新は遅いでしょうがよろしくお願いします。