オタク剣士が武偵校で剣技を舞う!   作:ALEX改

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第38話 吸血鬼の降臨

 

 

キンジとアリアが紅鳴館で働く最終日、即ちロザリオ奪還の作戦決行の日である。

結果を言えば、作戦はヒステリアモードになったキンジがロザリオを取り返したことで成功し、何事もなくキンジ達は紅鳴館を後にした。

 

 

 

そして現在、ランドマークタワー屋上

 

 

 

理子「キーくぅーん!」

キンジ「ほらよ。こいつだろ?」

理子「おぉ〜!ありがとナス!」

アリア「約束通り、ママの裁判に出てよね?」

理子「わかってるって!はいこれプレゼント。リボン解いてね」

キンジ「お、おう……」

 

差し出されたリボンを特に怪しむこともなくキンジは解くと……

 

 

 

 

チュッ

 

 

 

 

キスをした。

理子が、キンジに

 

その一瞬でキンジは再びヒステリアモードへとなってしまう。

 

アリア「な、何をするだァーーーーー!!!?」

 

周りがポカンと口を開けて驚く中、アリアが1番早く復帰して、まるで愛犬を蹴られた紳士のように叫んだ。

怒鳴るアリアを他所に理子は軽やかに側転を繰り返しキンジ達の後ろの扉の前に立つ。

 

理子「ごめんねぇーキーくぅーん。理子って悪い子だからぁー。ロザリオさえ戻ってくれば、理子的には欲しいカードはそろっちゃったんだぁ」

志乃「……と言うと?」

キンジ「約束は嘘だった、ってことだね。だけど俺は許すよ。女性の嘘は嘘にならないからね」

アリア「薄々こうなるかもって感じはしてたけどね……キンジ、闘るわよ。合わせなさい」

理子「くふふ……それでいいんだよアリア。ロザリオを取り戻してアリア達を倒せばそれでいい」

アリア「そう簡単に行くかしら?こっちには奥の手があるのよ」

理子「何それ聞いてないですけど」

アリア「言ってないもの。キンジ、アレ出して」

キンジ「ん?……あぁ、アレね」

あかり「アレって……?」

ライカ「あたしが知るわけないだろ」

 

首を傾げる理子らを他所にキンジは懐に仕舞ってあった小さな透明な袋を取り出した。袋の中には小さな黒いメモリーカードがいくつか入っている。

 

理子「んん?なにそれ?何かの情報でも入ってるのかな?」

アリア「あんたのゲームのメモリーカードよ」

理子「………What⁉︎」

アリア「これを粉々に粉砕するわ」

理子「はいいいいい⁉︎ちょ、おま、な、何で理子のゲームのメモリーカード持ってるのさ⁉︎」

キンジ「こいつの提供は剣護からお送りしております」

理子「あの野郎おおおおおおおおお!!!!!待って!それだけは!それだけは勘弁して⁉︎まだ全クリしてないのもあるのにぃ!」

アリア「恨むんならこんな展開にした自分を恨みなさい」

理子「待って!お願い!マジで勘弁して‼︎なんでもしますから‼︎」

 

全員『ん?今なんでもするって……』

 

理子「あ………………」

 

アリア「皆、聞いたわね?」

あかり「はい。しっかりと」

志乃「録音も完璧にしてあります!」

理子「の、ノーカウント!ノーカウントだよ!ノーカン!ノーカン!」

キンジ「理子、なんかどっかの班長みたいになってるよ?」

理子「ッ〜〜〜‼︎全員、ぶっ殺してやらあああああああ!!!!!」

 

やけっぱちになった理子はワサワサと髪を動かして大型のナイフを持ち、ワルサーを抜き、キンジ達を血祭りにあげようと駆け出す。

 

その時

 

 

 

バチッッッッッッ!!!

 

 

 

理子「ッ⁉︎」

 

突然、理子の全身に電撃が走り、理子は前のめりに倒れてしまう。

キンジ達は理子の背後に立つ人物に驚きの表情を浮かべる。

 

理子「…な……んで………おま……え…が……」

 

アリア「小夜鳴先生………⁉︎」

 

小夜鳴は恐らく理子を痺れさせる時に使ったであろう大型スタンガンを足元に捨てると、胸元から拳銃を取り出し理子の後頭部を狙う。

彼の背後には二頭の銀狼がキンジ達を今にも飛びかからんと睨んでいた。

 

小夜鳴「無様ですねぇ……リュパン4世」

アリア「なんであんたがリュパンの名前を知ってるのよ!まさか……あんたがブラドだったってわけ⁉︎」

小夜鳴「彼は間もなく、ここに来ます。それまでに一つ、君たちに講義をしましょう」

 

警戒するキンジ達を気に留めず小夜鳴は一方的に話し始める。

 

小夜鳴「遺伝子とは気まぐれなものです。父と母、それぞれの長所が遺伝すれば有能な子、それぞれの短所が遺伝すれば無能な子になります。そして……この子はリュパン家の血を引きながら」

理子「言うな‼︎オルメスたちには関係ない‼︎」

小夜鳴「優秀な能力が全く遺伝していない。遺伝学的に、この子は無能な存在だったんですよ。それは自分が一番よく知っているでしょう、4世?あなたは初代リュパンのように一人で何かを盗むことができない。先代のように精鋭を率いても……この通りです。無能とは悲しいですね。4世さん?」

 

散々言われた理子は額を地面に押し付け、きつく目を閉じてボロボロと涙をこぼす。

 

アリア「いい加減にしなさいよあんた……!理子をいじめて何の意味があるっていうの‼︎」

小夜鳴「絶望が必要なんですよ。彼を呼ぶにはね。おかげでいい感じになりましたよ……遠山君。よく見ておいてください。私は人に見られている方が、掛かりがいいものでしてね」

 

小夜鳴の言葉に眉を寄せるキンジは言葉の意味をすぐに理解した。それと同時に気づいてしまう。小夜鳴の雰囲気が切り替わっていくことに。遠山家の人間にはわかる、あの独特のスイッチが切り替わるような気配に。

 

キンジ(ヒステリアモード……だと………⁉︎)

 

絶句するキンジを他所に小夜鳴の雰囲気がヒステリアモードのそれからさらに変わっていく。

 

 

 

小夜鳴「さあ かれ が きたぞ」

 

 

 

ビリビリとスーツは破けて、肌は赤褐色に変色し、肩や腕の筋肉が不気味な音を立てて盛り上がっていき、露出した脚は毛むくじゃらである。

その姿は360°どこから見ても"バケモノ"としか言いようのない姿だった。

 

ブラド「はじめまして、だな」

全員『っ⁉︎』

 

本物のバケモノを目の前にしてキンジたちは絶句し、嫌な汗を流す。

ブラドは理子の頭を大きな指で掴むと、片手で軽々と吊り上げた。

 

ブラド「久しぶりだな4世。そういや、お前は知らなかったんだよな。オレが人間の姿になれることをよぉ」

理子「騙したな……!オ、オルメスを倒せば、あたしを解放するって……約束した、くせに…!」

ブラド「お前は犬とした約束を守るのか?ゲゥゥウアバババハハハハハ!」

 

キバを剥いて笑うブラドに、キンジにアリア、あかりたちまでもが怒りの表情を浮かべる。

 

ブラド「どこに逃げてもお前の居場所はあの檻の中だけなんだよ!ほれ、これが人生最後の、お外の夜景だ。よーく目に焼き付け……」

キンジ「ダッシャオルアアアアア!!!!」

ブラド「ごげば⁉︎」

 

ブラドの言葉は最後まで続かず、キンジの飛び後ろ蹴りがブラドの喉にめり込んだ。

思わずブラドは理子を離してしまい、落ちてくる理子をキンジは優しく受け止めた。

 

理子「……えっ…」

キンジ「……あーあ、思わずやっちまったよ。まあ我慢の限界だったし、仕方ない仕方ない」

理子「な、なんで………」

キンジ「例え騙してたとしても、理子は大事な仲間だからね。それにアイツだったら多分同じようにして助けるだろうし」

理子「………………」

キンジ「聞かせてくれないかい?本当の君の言葉を」

 

理子「あ、アリア………キンジ……あかりん………しののん……ライライ……………」

 

キツく目を閉じて、喉の奥から搾り出すように、ホームズの末裔とそのパートナーと1年達の名を呼び。

そして一呼吸置いて最後の1人の名を呼ぶ。1枚の青い木の葉が目の前に舞い落ちてきたのと同時に。

 

 

 

 

 

理子「…………剣護ォ………………たすけて…………!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……言うのがおせーよ。この意地っ張り』

 

 

 

 

 

 

 

理子「……ふぇ…?」

 

聞き慣れた声が聞こえた瞬間、ボンッ!と屋上一帯を覆いつくさんばかりの煙幕が上がった。

 

ブラド「うおっ⁉︎な、なんだ⁉︎」

アリア「ゲホッ!ゲホッ!ちょっとなによ!」

キンジ「…やっと来たか。タイミングが良いのか悪いのか…」

理子「………あっ……」

 

煙が晴れてくると、理子の目の前には自身がよく知る背中があった。

 

 

 

剣護「よっ。待たせたなお前ら」

理子「剣護ォ………!」

アリア「もう少し早く来なさいよ!」

志乃「そうですよ!」

あか・ライ『まあまあまあまあ』

剣護「なんでそこまで責められないといけないんですかねぇ…」

キンジ「それよりも目の前のことに集中しなきゃいけないんじゃないか?」

剣護「あん?」

 

視線をブラドに戻すとなにやら苛立っている様子でこちらを睨んでいた。

 

ブラド「てめぇは月島か……この俺を無視するとは良い度胸だなおい‼︎」

剣護「おい、なんだあの毛むくじゃらで筋肉モリモリマッチョマンの変態は」

アリア「あれがブラドよ。小夜鳴先生に擬態してたらしいわ」

剣護「はえ〜……あ、そう興味ねえわ。小夜鳴先生の授業以外」

ブラド「てめぇ……余程この俺を怒らせるのが好きらしいな‼︎」

剣護「うん‼︎大好きSA!!!!!」

ブラド「」

 

剣護「まあ何にせよ………………俺の仲間を泣かす奴は吸血鬼だろうが何だろうが許す気はサラサラねえから覚悟しろ」

 

 

 


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