オタク剣士が武偵校で剣技を舞う!   作:ALEX改

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第35話 氷の魔女と新たな武器

 

 

 

狼騒動があったその日の夜、理子に呼ばれてガーゼだらけのキンジと剣護は部屋に来ていた。

 

剣護「……今思えば女子の部屋って初めてだな」

キンジ「あっそ……」

 

 

理子「ほほう、しののんもライライもなかなか大きいですな〜」

ライカ「そ、そうですか?」

志乃「あ、あまり見ないでください…」

アリア「……あかり、アタシより大きくない?」

あかり「へ?そうですか?」

 

隣の部屋から聞こえる声にキンジは居心地悪そうな表情を浮かべながら茶を啜る。

横に座っている剣護はというと、持ってきたPSvitaでダラダラとゲームをしていた。

 

理子「終わったよ〜…ってツッキーめっちゃ寛いでますやん」

キンジ「さっきからずっとカチカチやってる」

剣護「んあ?終わった?ちょっと待ってもうちょいでオメガモンできるから」

キンジ「いや、やめろよ⁉︎」

剣護「しょうがねえなぁ〜」

 

セーブをして電源を切ると他の皆もメイド服に着替えて出てきた。

 

理子「それじゃあまずはお手本見せるね。おかえりなさいませご主人様」

 

理子がお手本としてお辞儀をする。

 

志乃「おかえりなさいませご主人様」

 

志乃も同じようにお辞儀をする。少しぎこちない感じだがなかなか様になっている。

 

ライカ「お、おかえりなさいませご主人様…」

 

顔を真っ赤にしてお辞儀するライカ。恥ずかしそうにする姿に思わず剣護はニッコリと微笑む。

 

あかり「お、おかえりなさいませ…ご、ごご主人様…」

剣護「……可愛い」

あかり「ふぁい⁉︎」

 

同じく顔を赤くしてお辞儀するあかり。ぷるぷると少し震えながらする姿に自然と剣護の口から可愛いという言葉が出てきた。

 

アリア「お…お…ゲホーッゲホーッ!」

 

一方アリアは一文字言っただけで咳き込んでしまった。

 

アリア「む、無理よ!いきなりやれって言われても」

理子「頑張れ頑張れ!できるできる!」

剣護「絶対できる!頑張れもっとやれるって!」

理子「やれる気持ちの問題だ!頑張れ頑張れそこだ!」

剣護「そこで諦めんな!絶対に頑張れ!積極的にポジティブに頑張る頑張る!」

理子・剣護『諦めんなお前ッ!!!!!』

アリア「熱苦しいわ‼︎」

 

理子と剣護の某元テニスプレイヤーのセリフラッシュに吠えるアリア。

 

理子「ふぅ……じゃあキー君主人ね。何か注文してみよー!」

キンジ「え?……じ、じゃあ洗濯でも頼めるか?」

理子「アリアー?胸で洗濯しちゃダメだよー?」

アリア「風穴あああああ!!」

 

 

バリバリバリバリッ!

 

 

理子のセリフと共に発砲音が響き渡る。

またこれか…とキンジと剣護は溜息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、雨降る放課後で傘を忘れたキンジと持ってるがなんとなく付いて来た剣護が校舎内をブラブラ歩いてると音楽室からピアノの音が聞こえた。

 

キンジ「ん?この曲は……」

剣護「えーと…『火刑台上のジャンヌ・ダルク』だっけか」

金・剣『……ん?』

 

ふと嫌な予感が頭の中をよぎり、2人は音楽室へと向かった。

 

キンジ「……うっ!」

剣護「お〜〜〜う……なーるほどなー」

 

音楽室を除くと武偵高の制服を着た銀髪のサファイアのような瞳をした美少女……かつてアドシアードにて激闘を繰り広げた相手……魔剣ことジャンヌ・ダルク30世がそこにいた。

ジャンヌは2人に気づくとこちらに来るようにドアに流し目した。

 

剣護「お久ージャンヌ」

キンジ「軽いな⁉︎っと…司法取引ってことか」

ジャンヌ「あぁ、そういうことだ。ところで…」

剣護「あん?」

 

ジャンヌはジーッと剣護の顔、腕、体のあちこちを見ている。

 

剣護「な、なんだよ」

ジャンヌ「……気のせいか?傷が増えてる気が…」

剣護「ゔっ」

キンジ「あー……まあ気にすんな」

ジャンヌ「そ、そうか…なら気にしないでおく」

剣護「そ、それよりも…ここではあれだし場所変えようぜ」

 

音楽室から3人は移動してファミレス『ロキシー』に向かった。

ドリンクバーを注文して3人は人けのない店内の隅っこの席に着く。

 

ジャンヌ「さて、それでは本題に入るとしよう。ブラドについてだ」

キンジ「あぁ、頼む」

ジャンヌ「…とその前に理子についても話さねばな」

キンジ「理子のこと?」

ジャンヌ「あぁ、実は理子は幼い頃監禁されていたのだ」

剣護「………何?」

キンジ「リュパン家は怪盗とはいえ高名な一族のはずだぞ」

ジャンヌ「没落したのだ。理子の両親が亡くなった後にな。使用人たちは散り散りにり、財宝は盗まれた。最近、母親の形見の銃を取り返したようだがな」

剣護「それで……理子はどうなった?」

ジャンヌ「その頃まだ幼かった理子は、親戚を名乗る者に『養子に取る』と騙され……フランスからルーマニアに渡り、そこで囚われ、長い間監禁されたのだ」

キンジ「……マジかよ。一体誰に監禁されてたんだ」

剣護「いや、もうわかったようなもんだろ」

ジャンヌ「月島が察してる通りだ。理子を監禁した張本人の名は『無限罪のブラド』。イ・ウーのナンバー2だ」

キンジ「ブラド……」

ジャンヌ「知らない名前ではないだろう。お前達が盗みに入ろうとしている紅鳴館は、奴の別荘の1つだ」

剣護「へー…つっても俺にはあんま関係ないか」

ジャンヌ「館に行かないとしても戦うつもりなのだろう?」

剣護「もちろんです。剣士ですから」

ジャンヌ「ならばブラドについて知っておいた方が良い」

キンジ「それなら俺なんかよりアリアに教えておいた方が良いんじゃないか?」

ジャンヌ「いや、お前たちの方がいい。アリアに教えると猪突猛進にブラドを襲って返り討ちに遭い、反撃の手が私にまで及びかねないからな」

金・剣『………あぁ………』

 

『否定できねぇ…』と言いたげな様子でキンジと剣護は視線を逸らした。

 

ジャンヌ「ここからの話は、非常時にのみアリアと共有しろ。いいな?まず、先日ここに現れたというコーカサスハクギンオオカミのことだ。あの狼のことは情報科で調査中だが、私と見立てでは……ブラドの下僕と見て、まず間違いない」

キンジ「しもべ……?」

剣護「使い魔的な感じだろ」

ジャンヌ「使い魔というかペットに近い感じだな。放し飼いだが」

キンジ「つまり、俺たちの動きがブラドにバレてると?」

ジャンヌ「いや、そこまでは私も確証がない。狼は狙撃科の少女に奪われてブラドの所に帰れなかったし、奴の下僕は世界各地にいてそれぞれかなり、直感頼みの遊撃をするようだからな」

剣護「エサとかどうしてんだろうね?」

ジャンヌ「へ?い、いやそれは……さあ…?」

キンジ「話逸らすんじゃねえよ」

剣護「ちょっとコーラとオレンジをジンバーミックスしてくる」

キンジ「自由だなおい⁉︎あとジンバーって何だよ⁉︎」

 

キンジのツッコミをスルーして剣護はドリンクバーの方へとスタコラサッサと行ってしまった。

 

ジャンヌ「……自由だな。あいつは」

キンジ「…まあ大体あんな感じなんだよ」

ジャンヌ「そ、そうか。それでえっと…どこまで話した?」

キンジ「ブラドの下僕が世界各地にナンタラカンタラ」

ジャンヌ「あぁ、そうだそうだ」

キンジ「でもなんでそんなにブラドに詳しいんだ?」

ジャンヌ「我が一族とブラドは仇敵なのだ。3代前の双子のジャンヌ・ダルクが初代アルセーヌ・リュパンと組んで、3人組でブラドと戦い……引き分けている」

キンジ「ブラドの……先祖と、か?」

ジャンヌ「いや、ブラド本人とだ」

キンジ「ブラド本人だと……?そんなに長い間生きてる人間なんていないだろ」

ジャンヌ「奴は人間ではない」

キンジ「………そっち系かあ…」

 

ヤケクソ気味にメロンソーダをあおっていると剣護がコーラ×オレンジを持って戻ってきた。

 

剣護「途中から聞こえてたが…人間じゃねえならブラドは何だ?」

ジャンヌ「うむ……私も日本語で何といえばいいのかは知らないのだが……強いていえば…オニ、だ」

キンジ「鬼……?」

剣護「鬼……ブラド……」

ジャンヌ「ブラドは自力で逃亡した理子を追って、イ・ウーに現れた。理子はブラドと決闘したが敗北した。ブラドは理子を檻にもどすつもりだったのだが、そこで成長著しかった理子に免じてある約束をした」

キンジ「約束?」

ジャンヌ「『理子が初代リュパンを超える存在にまで成長し、その成長を証明できれば、もう手出しはしない』と」

剣護「てかブラドってどんな物なのよ?」

キンジ「物って言っちゃったよ」

 

訊ねるとジャンヌは少し考えるような顔をしつつ、胸ポケットから縁なしメガネを取り出した。

その時に制服の中で胸が少し揺れ、キンジは目を逸らし、剣護は手を合わせ拝もうとしてた所をキンジに脇腹を殴られ『ヴッ』と小さく呻き声を上げた。

 

ジャンヌ「どこ見てるんだお前はぁ!!」

剣護「へぶっ⁉︎なぜ俺だけ⁉︎」

 

そして案の定ジャンヌからのビンタもいただきました。

 

剣護「あ、繋がった」

金・ジャンヌ『今のビンタで⁉︎』

キンジ「ていうか何が繋がったんだよ」

剣護「ブラドの正体」

キンジ「ドライブかお前は……そういや前に似たようなアーマー着てたな」

ジャンヌ「えっと、じゃあ聞かせてもらえるか?」

剣護「ほいほい。実は理子から聞いた時からブラドって名前を聞いたことあるなー…ってちょっと引っかかってたんだよな。そんでジャンヌからオニと聞いてさらに引っかかってな…さっきのビンタで思い出した」

キンジ「どんな思い出し方だよ……」

剣護「そんでキンジ、FGOあったやん?」

キンジ「ん?あぁ…それがどうし……ん?たしか…」

剣護「いたよな?バーサーカーで同じやつ」

キンジ「あ……!ヴラド三世か⁉︎てことは…鬼…吸血鬼か⁉︎」

剣護「そう!つまりブラドは吸血鬼…ドラキュラだ!」

金・ジャンヌ『おぉ〜』

ジャンヌ「なかなかやるじゃないか月島。お前の言う通りブラドの正体はドラキュラだ」

キンジ「情報元がゲームで閃き方がビンタだけどn「黙れ」アッハイ」

剣護「んで、話戻すけどブラドに弱点とかあんの?」

ジャンヌ「あぁ」

 

ジャンヌは鞄からペンとノートを取り出すと何かを描き始めた。

 

剣護「んん?なにこれ?」

ジャンヌ「ブラドの絵だ。もし万が一ブラドが帰ってきたら即刻作戦を中断して逃げろ。絶対に勝てない。もし戦いになったとしても、逃げるための戦いをしろ。双子のジャンヌ・ダルク達はブラドを銀の銃弾で撃ち聖剣デュランダルで突いたが…ヤツは死ななかった、と記録にある。ヤツは、死なないのだ」

 

きゅっ、きゅっ、とジャンヌは迷うことなく絵を描いていく。

 

ジャンヌ「イ・ウーで聞いた情報だが……ブラドには全身に4か所の弱点がある。それを同時に破壊しなければならない。4か所のうち3か所までは判明している。ここと、ここと、ここだ…昔、バチカンから送り込まれた聖騎士に秘術をかけられ、自分の弱点に一生消えない『目』の紋様をつけられたのだ」

キンジ「………あ、あのさ、ジャンヌ…」

ジャンヌ「ん?なんだ?」

剣護「……下手すぎて全然わかんないっす」

ジャンヌ「んな⁉︎し、失礼な!ブラドはこういうヤツなのだ!お前たちは私を疑うのか⁉︎」

キンジ「いや、疑う疑わない以前に……」

剣護「んー……ジャンヌ、ちょっとペン貸してくれ。そんでもっかい弱点の場所を教えてくれ」

ジャンヌ「むぅ……」

 

ジャンヌからペンを受け取ると剣護は簡単に人型の図を描くと、ジャンヌの言う通りの場所に印を付けていく。

 

剣護「……っとこんな所か?」

ジャンヌ「うむ、この通りだ」

剣護「……最初からこうすれば良かったな…ほれ、キンジ。持っとけ」

キンジ「あ、あぁ……」

剣護「そんでジャンヌが描いたやつは俺がいただきます」

キンジ「え?なんでまた」

剣護「まあせっかく自信満々に描いてくれたし…な?」

ジャンヌ「そ、そうか……とにかく気をつけるのだぞ?」

 

剣護の言葉を聞いてジャンヌはちょっとだけ嬉しそうに頬を赤らめたことには誰も気づかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロキシーから女子寮までジャンヌを送っていった剣護は部屋まで来たところでジャンヌに呼び止められた。

 

ジャンヌ「ちょっと良いか?」

剣護「ん?どうした?」

ジャンヌ「お前に渡しておきたい物がある」

 

そう言ってジャンヌが出したのは銀色の大きな長方形のケースだった。

 

剣護「おぉ?結構デカいのな」

ジャンヌ「開けてみてくれ」

 

言われた通りにロックを外してケースを開けてみると、そこには白い鞘に収まった一本の脇差が入っていた。

 

剣護「こいつは……」

ジャンヌ「前に私が折ったお前の刀の刃と折られたデュランダルの刃を合わせて打ち直して貰って一本の刀に仕上げたのだ」

剣護「あ、どうりであの時、折られた刀身だけ見つからなかったわけだ」

ジャンヌ「すまない。あの時なにを思ったのか、つい持って行ってしまったのだ…」

剣護「いやまあ別に構わんけどさ。ところでこの刀は銘は無いのか?」

ジャンヌ「あぁ、名付けるなら渡す本人に付けてもらった方がいいと思ってな」

 

剣護は脇差を手に取るとそれを抜くと、少し青みがかった刀身が現れ剣護の顔を照らした。

 

剣護「……なかなかの業物だな。ふむ……よし、決めた」

ジャンヌ「ん?」

剣護「……『氷花(ひょうか)』。青っぽい刀身と氷を操るお前のあの技にちなんで命名させてもらった」

ジャンヌ「氷花……オルレアンの氷花からか…なんだか照れるな…」

剣護「合ってるだろ?」

ジャンヌ「あぁ…良い名だ」

 

剣護は新たな刀『氷花』の刀身を戻すと腰に差した。他に二本差してるので少し窮屈だが気にしない。

 

剣護「ありがとな、ジャンヌ」

ジャンヌ「良いさ。あの時の詫びだ。それと月島」

剣護「おん?」

ジャンヌ「……くれぐれも私と戦った時のような無茶はするなよ?」

剣護「あー……うん、なるべく善処するわ」

ジャンヌ「全く……」

剣護「あはは……そんじゃーな」

ジャンヌ「あぁ、また」

 

2人は別れ剣護は男子寮へと駆け出し、ジャンヌは自分の部屋へとお互いに戻っていった。

 

 

 


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