アリス「…………参ったわね……」
廃工場に囚われていたあかり、ライカ、桜、アリスの4人は脱出を試みようと扉の隙間から外の様子を伺うが、外には多数の見張りや巡回している黒服達がいた。
あかり「流石に多いね……」
桜「何かで陽動できれば……」
ライカ「………うーん……ん?」
ライカはふと部屋の上の方に視線を向けると階段の先にハシゴがあり天井が開けるようになっている。
ライカ「あそこからいけるんじゃないか?」
アリス「確かに上からなら大丈夫そうだけど……一応警戒しておきましょう」
誰も来ないことを確認してから4人はハシゴを登り天井に出る。
まだ誰も気づいてないのか誰も上に注意を向けている者はいなかった。
ライカ「よし、このまま逃げよう」
桜「手錠とかも取られてますしね……」
アリス「気づかれる前に急ぎましょう」
あかり「うん…………っ!」
その時、あかりは何を感じ取ったのか急に背後を振り返る。
するとそこには黒いロングコートに短パン、少しウェーブがかった黒髪の少女が立って刀を抜いていた。
あかり「走って!!」
瞬間、あかりは反射的にアリス達を前に突き飛ばした。
そして少女は刀を構え、あかりの方へ突進してくる。あかりもギリギリバックステップで避けるが軽く頬を斬られる。
桜「あかり先輩!」
あかり「大丈夫!先に行って!」
ライカ「っ!」
走り去るライカ達を少女は追跡しようとするがそこにあかりが立ち塞がる。
あかり「ここは……行かせない……!」
「無駄です。あなたは私に敵わない」
あかり「確かにそう……あたしはあなたに勝てない。それでも……時間を稼ぐことはできる!」
「…………良いでしょう。別に始末しても問題ないのですから」
あかり(まずは…相手の刀を奪う!)
あかりは少女目掛けて一気に駆け出す。対して相手は刀を抜いたままその場から動かなかった。
あかり「鳶穿!」
間合いを詰め鳶穿を仕掛けるが、接触する瞬間にスルリと相手をすり抜けてしまった。
あかり「え?」
「影心流、夜霧」
正面にいたはずの少女はいつの間にかあかりの背後に立っていた。慌ててあかりは距離を取り構える。
あかり(刀を奪うのは無理そう……なら!)
右手右足を前に出し左手を口に添えて指を曲げる。その構えから放つのは間宮の技の1つ『鷹捲』。
それに対して相手の少女は刀を脇に構える。
あかり「間宮流……」
「影心流……」
そして2人同時に駆け出す。先手を取ったのはあかりだった。
あかり「鷹捲!」
走りながら飛び回転してパルスを収束しながら相手に向かって飛んでいく。しかし、相手は臆さず冷静に技を繰り出した。
「
彼女はタンッと高く飛び越えて鷹捲を避け、鳥のような形の黒い斬撃を放った。
あかり「うあぁぁぁ!?」
当然技を出していた途中のあかりは避けることもできず飛んできた斬撃を受け、ゴロゴロと屋根を転がり地面に落ちていった。
ライカ「あかりぃ!」
アリス「っ!来るわ!」
ライカ「っ!飛び降りろ!」
ライカの声で2人は屋根の上を走り飛び降りる。すると次の瞬間先程までライカ達がいた場所がバラバラに切り裂かれた。
ライカ「強い……!」
あのままあの場所に留まっていれば自分達もあんな風にバラバラになっていたかと思うとライカは冷や汗が止まらなかった。
3人は着地するとすぐにあかりの方へ駆け寄った。
ライカ「あかり!大丈夫か?」
あかり「っ…………ぁ……ぐっ……」
背中はバッサリと斬られており防弾防刃であるはずの制服を真っ赤に染めていた。
黒服「おい!脱走されてるぞ!」
黒服「囲め!囲め!」
ライカ「クソッ!」
そうこうしてるうちに完全に壁際に包囲されてしまい手も足も出せなくなってしまった。
そして組織のリーダーらしき灰色のロングコートを着た男が4人のところへ現れた。
「脱出しようとしたようだが……彼女の存在に気づかなかったようだな。そこの小さなお嬢さんはすぐに気づいたようだが」
アリス「あんた……こいつらのボスね?」
「そうだ。俺がこいつらのリーダー、長宗だ」
ライカ「……なんであたしらを拉致した?」
長宗「ふむ、折角だ。冥土の土産に教えてやろう。ラクーン台場の事件は覚えているかな?」
あかり「た……しか…………麒麟ちゃんが……誘拐……された……」
ライカ「寄せあかり!喋るな!」
長宗「そう。その誘拐事件を行なったのが紛れもない、私の部下だ」
アリス「……それで捕まった部下の無念を?」
長宗「そういう訳ではない……煮湯を飲まされたお前達を商品と一緒に売り飛ばしてやるのも良いが、人質に他の奴らを誘い出して叩くのも一興かと思ってな」
あかり「……そんなこと……!」
重傷を負った体に鞭を打ちあかりは立ち上がる。そして鷹捲と同じ構えを取った。
長宗「ほう……その体で立ち上がるか」
あかり「ハァー……ハァー……」
桜「あかり先輩!やめてください!」
あかり「ハァー……ねぇ……ライカ」
ライカ「…………?」
あかり「この人達が他の武偵をおびき出すとして……誰が来ると思う?」
ライカ「そりゃ…………あっ」
あかり「……来るのはあの人……でも何度も迷惑かけてられない……だから!」
長宗「……仕方あるまい。殺しはしたくなかったがな」
長宗が腕を振り上げた瞬間、あかりは今の状態で出せる最高速で駆け出した。相手側の少女があかりに向かって駆け出すがそこにライカが割り込む。
「っ!」
ライカ「行かせるか!」
長宗「チッ!撃て!!」
アリス「させない!!操符『乙女文楽』!」
黒服「な、なんだありゃあ!?」
黒服「構うな!撃て撃てぇ!!」
アサルトライフルやハンドガン、ショットガンの弾丸とアリスの放つ色鮮やかな弾幕が交わると同時にあかりの姿が消えた。
長宗「な……なに!?」
あかり「……間宮流我流……」
宗牙が気がついた時には既にあかりは相手の懐に潜り込んでいた。
あかり「
そして体と腕を捻りパルスを纏った掌底を打ち込む。ドゥッ!バチィッ!と掌底の衝撃と共にパルスが流れ宗牙を吹っ飛ばした。
あかり「はぁ……はぁ……っぐ!?」
さっきの一撃で力を出し切ったのかガクッと膝をつくあかりにパンッという乾いた音と共に激痛が走る。背中が熱くなっているところ、そこを撃たれたらしい。
あかり「が、ガハッ…………」
黒服「こ、このガキ……よくもボスを!」
黒服「撃て!撃てぇぇぇぇぇ!」
ライカ「あかり!」
あかり「っ!」
黒服達の銃から弾丸が放たれる瞬間、ライカがあかりに覆い被さりバチバチと大量の銃弾を受ける。
ライカ「ぐくっ…………ぅぁ……」
あかり「ラ………イカ…………」
ライカ「っ…平気だ…この程度…!」
「………………」
あかり「…………っ!!」
2人が倒れてるところに少女がトドメを刺さんと禍々しく光る刀を振り上げる。
桜「あ、あかり先輩!!」
アリス「くっ!ま……間に合わない……!」
「あなた達に特に怨みとかはないですが……死んでもらいます」
あかり(……だ……嫌だ……まだ死にたくない!)
ライカ(こ、こんなとこで……死んでたまるか!)
あかり・ライカ(まだ先輩にあたし達の想いを伝えてない!だからまだ終われない!)
しかし、心の中で誓ってもどうすることもできず無慈悲にも刀が振り下ろされようとした時だった。
ボゴオオオオオオオン!!
黒服達『グワーッ!?』
「!?」
突然の衝撃波と轟音と共に黒服達が吹っ飛んだのである。
突然のことで驚いたのも束の間、衝撃波の中から少女の方へ白いものが突っ込んできて手に持った黒刀を振るう。
「オラァ‼︎」
「っ!何者……!」
剣護「こいつらの……先輩だ!」
桜「月島先輩!!」
白いものの正体は常世の神子に覚醒した状態の剣護だった。目の前で鍔迫り合いをしている少女に剣護はアイサツをする。
剣護「ドーモ。月島剣護です」
結月「……ドーモ。月島剣護=サン。
剣護「随分と後輩が世話になったじゃねえか……キッチリ倍返しさせてもらうぜ……」
結月「……できるものならn「オラァ!」ぐっ!?」
相手の少女、結月が話してるにも関係無しに剣護は思い切り殴り飛ばす。常世の神子を解除して桜達の方へ駆け寄る剣護。
剣護「桜!……と、えーと」
アリス「アリスよ。アリス・マーガトロイド」
剣護「アリスね。あかり達を連れて行って欲しいんだが……いけるか?」
アリス「えぇ、任せてちょうだい」
剣護「よし。あいつらは俺が引き付ける。頼んだぞ」
桜「は、はい!」
桜とアリスはすぐさま、あかりとライカの方へ行き担ぐと出口の方へと走って行く。
黒服「逃すな!追え!追え!」
その後を黒服達が追いかけようとするが巨大な斬撃に阻まれる。
剣護「そうはいかねえ……こっから先は通行止めだ!」
黒服「く、くそぉ……こいつからやれぇ!」
結月「待った」
黒服「!な、何を……」
結月「あの人とは私がやります。あなた達は下がって」
黒服「っ…………り、了解した」
結月が一睨み効かせると黒服達は後ろに下がっていく。2人は刀を構えお互いに相手の出を待つ。
剣護・結月「!!」
瞬間、2人同時に飛び出し火花を散らしながら激突する。
剣護「おおおおあぁぁぁ!!」
結月「はあああぁぁぁぁ!!」
ドガガガガガガッ!とまるでマシンガンの撃ち合いのような連撃が繰り広げられる。
必殺の一撃を放っては防ぎ、放っては避けて、放っては捌いての繰り返しで両者一歩も譲らない。
剣護「月島流!」
結月「影心流……!」
剣護「富嶽虎逢断ち!」
結月「黒三日月!」
剣護は虎の爪のような3本の斬撃を、結月は黒い三日月状の斬撃を繰り出しぶつかり合う。
さらに2人は次々と技を出していく。
結月「影心流、上弦ノ太刀!」
剣護「月島流、富嶽昇り龍!」
剣護「月島流、富嶽霞潰し!」
結月「影心流、下弦ノ太刀!」
結月「影心流、
剣護「月島流、富嶽独楽返し!」
円を描く斬撃がカウンターの回転斬りに弾かれたところで2人はお互い距離を取る。
剣護「ふー……ふー……」
結月「はぁ……はぁ……」
黒服「す、すげぇ……」
黒服「2人とも一歩も譲らねえ……」
長宗「そらそうだ」
黒服「ぼ、ボス!ご無事で!?」
長宗「あぁ、あの嬢ちゃんなかなかいいもん打ってきたよ。話を戻すがあいつの実力はかなりのもんだ。まだ隠してるもんもあるしな」
黒服「確か
長宗「そら、いよいよソレが出るぞ」
宗牙がそう言った時、結月は自分の前に刀を横に構えて左手を添えた。
剣護「む…?」
結月「少々、本気を出させていただきます」
剣護「へぇ……まだ何かあんのか」
結月「これでも……G14の
すると刀の刀身がだんだんと黒いもやのようなものに包まれていき黒刀になる。
結月「影纏。私の能力は影…このように刀等に纏わせることもできます」
剣護「まさか影の中に隠れられるとか言わねえよな……?」
結月「さて……どうでしょう…ね!」
剣護「うおぉ!?」
結月が刀を振るうと黒い刀身が伸びて剣護に襲いかかる。咄嗟に横っ飛びで剣護は避ける。
剣護「リーチも伸びるのか……」
結月「ええ、この通り」
剣護「厄介だなー……」
そう言うと剣護は小太刀を抜いて二刀流に、結月は脇構えの構えを取る。
剣護「月島流秘技」
結月「影心流暗技」
そして繰り出すのはお互いの本気の技。
剣護「富嶽
結月「