アドシアードが終わってから、バンドの男衆とチアの女子達の打ち上げの後、ファミレスでは魔剣を逮捕したということで祝勝会が開かれていた。
アリア「それじゃ、魔剣による誘拐事件の解決を祝って乾杯!」
一同「カンパーイ!」
ガチンと飲み物が溢れるような勢いでコップを合わせる。
乾杯するまでにアリアが白雪に奴隷発言したり、キンジ達の部屋のカードキーが勝手に作られてたりしたが。
怜二「良いのかな僕もここに居て……」
アリア「良いの良いの!レキと一緒に剣護を地下倉庫に連れてってくれたじゃない」
怜二「まあそう言うならお言葉に甘えて……」
アリア「うんうん!」
白雪「さてと……」
キンジ「ん?どうした白雪」
白雪の表情が真剣になりキンジは問いかける。それに釣られて他の皆もそちらに向く。
白雪「剣ちゃんに聞きたいことがあります」
剣護「ギクッ…………」
白雪にジト目で睨まれ、剣護はシュバッと勢いよく目を逸らした。
剣護「ま、まあ今は事件も終わったんだし何もこんな所で聞かなくても……」
白雪「ダメです。キンちゃん達にも聞いて貰わないといけません」
金・アリ・怜『え?』
レキ「…………」
剣護「いや俺怪我してるし……」
白雪「現にここにいるじゃない」
剣護「ぅぐ…………」
白雪「大丈夫大丈夫、素直に答えてくれれば良いから。素直に……ね?」
剣護「ワッ…ワァ…ァ…」
若干黒雪モードに入っている白雪に迫られ、どこぞの小さくて可愛い生き物みたいな声をあげながら青ざめる。
白雪「話してもらうのは常世の神子に関してです」
剣護「あ、はい」
アリア「ジャンヌの時の白いやつね」
白雪「そう。本当なら剣ちゃんがその力を宿していることはあり得ないことなの」
キンジ「あり得ない?」
剣護「常世の神子は俺の先祖の代で役目を終えて消えたんよ」
白雪「その本来この世に存在しないはずの力を剣ちゃんは宿してる……」
剣護「なんでかは俺も親も知らねえよ?」
白雪「うーん……ともかく制御する為になんとかしないと…」
怜二「……あのさぁ…………」
キンジ「俺達……」
アリア「話についていけないんですけど……」
あまりにも話の内容について行けず3人は話を遮る。
白雪「え、えーと……要するに剣ちゃんは本来存在しないはずの力を持ってて、その力が結構危ないもので…えっと」
アリア「んー……まだ聞きたいことはあるけどこの話はこれでおしまい!折角の祝いなんだから湿っぽい話は無しよ!」
キンジ「良いんかい」
白雪「……うん、そうだね。折角のお祝いだものね」
剣護「んだな。よっしゃ!食いまくるぞオラァ!」
キンジ「そういやお前ほとんど何も食ってなかったな」
若干湿っぽい雰囲気をアリアがパンパンと手を叩いて切り替え、それからはまたワイワイと賑やかになっていった。
その様子を別の場所から見られていたことに気づかずに。
剣護達の席からかなり離れた位置にある席ではあかり達が打ち上げをしていたのだが、あかりとライカの視線がほぼ剣護にしか向いてなくて志乃と麒麟はギリギリとハンカチを噛んでいた。
あかり「剣護先輩……カッコイイなぁ……」
ライカ「だなぁ……」
志乃「くっ……妬ましい……!」
麒麟「パルパルパルパルですの……!」
志乃と麒麟の様子を気にしていないかのように2人は話を続ける。
ライカ「……あかりってさ」
あかり「うん?」
ライカ「…………剣護先輩のこと好きなのか?」
志乃・麒麟『ブッ!?』
あかり「大好きだけど?」
志乃「グフゥ!?」
あかり「そういうライカはどうなのさ?」
ライカ「も、もちろんあたしも好きだけど……」
麒麟「ガハァ!?」
大体予想はしてたが備えることはしてなかったのか2人の答えに志乃と麒麟は吐血してぶっ倒れた。
あかり「ど、どうしたの2人!?」
ライカ「だ、大丈夫か?」
志乃「えぇ、大丈夫ですよ。あかりさん」
麒麟「問題ありませんわライカお姉様」
あかり「そ、そう」
ライカ「なら良いんだけどさ」
志乃(くっ……!既にあかりちゃんがこんなことになってるなんて……月島剣護許すまじ……!)
麒麟(慈悲などないですの……!)
キャイキャイと恋バナに花を咲かせる2人をホッコリと眺めながら志乃と麒麟は嫉妬の炎を燃やすのだった。
〜とある廃工場〜
アリア達が打ち上げをしている同時刻、とある場所にある廃工場では1人の女性が拉致されていた。
他には誰もいないのか工場内はガランとしている。
???「……っ…………ぅ……」
女性は椅子に縛り付けられており、目隠しをされていた。
その傍らには砂や埃を被ってボロボロの魔導書と銃で撃たれたのか同じくボロボロの人形が転がっている。
???(……知らない場所に来たと思ったらいきなり拉致されるなんて……油断してたわ……)
???「…………誰か……助けて……」
彼女の弱々しい声は誰かに届くことなく虚空に消えるだけであった。
キンジ「…………あん?なんだこれ?」
次の日の朝、キンジが起きてくると玄関のドアの側に『果たし状』と書かれた紙が置かれていた。
キンジ「……おーい、剣護ー。なんか来てるぞ」
剣護「あー?……なんこれ果たし状?」
怜二「差出人は……佐々木さん?」
剣護「あいつかー……今日休みなんですけど」
キンジ「どうすんだよ」
剣護「そりゃ受けるに決まってんじゃん。断れば侍の名折れよ」
怜二「流石ブシドー精神」
剣護「それジャスト回避のやつや」
そうやりとりしながら剣護達は朝食を用意する。
しかし、彼らは今日この日がとんでもない日になるとは思いもしなかったのだった。