今回から「」の前にキャラの名前を表示していきますので、何かあれば気軽に言ってください。
それと今回、急に場面が変わりますのでご注意下さい。
それではどうぞ!
剣護「う…………うーん……?」
剣護が目を覚ますと見知った天井見えた。なんとか体を起こし周りを見回すとそこは寮の寝室だった。隣のベッドを見るとそこにはルームメイトのキンジが寝ており、心なしか少し顔が赤く苦しそうにしていた。
キンジ「よう……起きたか」
剣護「おうキンジ……なんで俺はここに?あとなんでお前も寝てんだ」
キンジ「アリアと怜二が運んできたんだよ……俺はアリアに海に落とされて……それで風邪ひいた……」
剣護「お前一体何したんだってばよ……どうせろくでもないことだろうが……」
キンジ「うるさい黙れ」
剣護「キンジ、寝苦しいだろ?寝かせてやるよ……永遠にな!」
キンジ「やめておくれ……なんでその重傷で元気なんだよ」
剣護「まあいいや……てかめっちゃ痛い」
キンジ「そりゃそうだろ……あと絶対安静だとよ」
剣護「ええぇぇぇ…………」
キンジ「じゃ……俺は寝る……」
そう言ってキンジは目を閉じ寝息を立て始めた。それを見て剣護も大人しく眠りについた。
午後の2時あたり。キンジは熱に慣れたのか起き上がった。隣のベッドを見るとルームメイトがクークーと寝息を立てて眠っていた。
ふらふらとベッドから降りて寝室を出てドアを閉めようとして、ガサッと取っ手に引っかかっていたビニール袋に触れる。中を探ると大和化薬『
(白雪が持ってきてくれたのか……でもあいつに話したことあったっけ?)
そう思いつつ、キンジは薬を飲むとまたすぐに眠りについた。
午後の4時頃。今度は剣護が目を覚ました。ズキズキと痛む体に顔をしかめつつ起き上がり居間へと出てくる。出てくるついでに冷蔵庫からスポーツドリンクを取り出しソファーに座る。
ぐでーんとしながら昨晩の出来事を思い返す。
剣護「……しめ縄付けたままアレ使ったけど…封印緩んでんのかなぁ…」
剣護はスポーツドリンクを飲み干すと再び寝室に戻り眠りについた。
夕方、再びキンジが起きてくるとちょうど白雪と怜二が帰ってきた。
白雪「あっキンちゃん。カゼ、大丈夫?」
キンジ「ああ。熱も下がったし頭痛も取れたよ」
怜二「剣ちゃ……剣護はどうなの?」
キンジ「生きてるぞ」
怜二「そうじゃなくて」
キンジ「冗談だ。剣護ならまだ寝てるぞ」
白雪「あ、剣ちゃんの包帯取り替えなきゃ」
怜二「じゃ、僕が行きますね〜」
そう言って怜二は包帯とその他道具を持って寝室に入っていった。数分後に寝室からコマンドーめいたセリフが聞こえてくる。
『来いよ剣ちゃん。怖いのか?」
『誰がてめぇなんか……てめぇなんか怖かねえ!』
『じゃあ包帯取るねー』
『ちょっもうちょい優しく……ってギャアァァァアァァ!!?』
聞こえてくる絶叫にキンジと白雪は苦笑いを浮かべ、合掌する。
キンジ「……まあそりゃああなるか……」
白雪「あ、あはは……それよりよかった。キンちゃん元気になって」
キンジ「お前がくれた『特濃葛根湯』のおかげだ。飲んで寝たら、一発で治った」
白雪「えっ?私……キンちゃんお薬キライだから、薬膳作ろうと思ってたんだけど……」
キンジ「ん?あれ、お前がくれたんだろ?悪かったな。あの薬、アメ横の妙に入り組んだ角のキタナイ漢方薬の店でないと売ってないからさ。女の子が1人で入るの、ちょっと怖かったろ。ありがとうな」
白雪「え……あっ……う、うん」
白雪は何か考えるような顔をしながらちょっと目を逸らしつつ、そう言った。
まどろみの中をうつらうつらしているとキンジと白雪の声が聞こえてくる。
白雪『じゃあ、これからはキンちゃんが1人でボディーガードをしてくれるの?』
キンジ『ああ、アドシアード終了まで、俺がお前をボディーガードするよ。教務科とアリアがムリヤリ始めちまった事だけど……まあ、約束だからな』
白雪『キンちゃんが、私を守ってくれる、約束……』
一方は女の子の声でどこか嬉しそうな感じをしており、もう一方の男の声は少し暗めの感じだった。
白雪『じゃあ、ゴールデンウィークもジャマも……じゃない、アリア抜きだね』
キンジ『ああ……そうだな。どっか行きたいのか?』
白雪『う、ううん。私はおうちでのんびりお勉強でもするよ』
キンジ『……それだと引きこもりじゃねーか。はぁ……ちょっと待ってろ』
白雪『え?』
キンジはため息をつくと何かを始めたらしい。白雪は謝罪の言葉をキンジにかけているらしい。
白雪『キンちゃん。急にどうしたの?』
キンジ『その紙を読んでみな』
白雪『……5月5日、東京ウォルトランド・花火大会……一足お先に浴衣でスター・イリュージョンを見に行こう……?』
キンジ『行け』
白雪『えっ!だ、だめだよ、こんなに人が沢山いるところ……私……』
キンジ『心配するな。ウォルトランドには入らなくていい。少し遠くなるが、葛西臨海公園から見ればいいだろ』
白雪『で、でも……私……』
キンジ『俺もついてってやるから。剣護は……無理か』
白雪『キ……キンちゃんも一緒に……?』
キンジ『ああ。一応それアドシアード前だしな』
白雪『キンちゃんと一緒に…………えへへぇ……』
白雪の心底嬉しそうな声を最後に剣護の意識は深い、深い眠りの奥底へと落ちていった。
剣護「うー……ん……よく寝た……」
しばらくして、剣護はまだ痛む身体でのそのそと起き始めた。同居人の3人は出かけているのか部屋の中には誰もいなかった。
剣護「んー……今日からゴールデンウィークだっけ。何すっかな〜ってもう昼じゃん」
ベッドから起き上がりながら携帯を見ると既に午後1時を過ぎていた。他にメールを確認するとおびただしい数のメールが来ていた。
剣護「うわっめっちゃメール来てんじゃん。全部見んのメンドくさー……新しいのだけ確認するか」
1番新しいメールはアリアからだった。どうやら2時間前に送られたらしい。メールにはこう書かれていた。
アリア『ちょっと!今日アドシアードなのよ?なんで学校に来てないのよ!早く来なさい!』
剣護「……………………え?」
ダラダラと冷や汗をかきながら他のメールも確認していく。
あかり『剣護先輩。まだ学校に来てないんですか?まだ無理なら仕方ないですけど……』
ライカ『先輩、今日アドシアードっすよ?あ、もしかしてまだちょっと動くのキツかったりします?』
不知火『やあ月島くん。体の方は大丈夫かい?無理をせずにアドシアードの方は僕らに任せてくれ』
武藤『おい剣護、お前まだ寝てんのかよ。蘭豹がキレてたぞ』
怜二『剣ちゃんへ。このメールを見ているということはやっぱり寝坊したんだね。まあ仕方ないっちゃ仕方ないけど、大丈夫そうなら早めに来るんだよ?朝ご飯は僕が簡単なものを作り置きしておいたから』
白雪『け、剣ちゃん?まだ寝てるの?ていうかゴールデンウィークが始まる前からずっと寝てたけど……早く来ないと先生に怒られちゃうよ?』
キンジ『お前まだ寝てんのか。まあほっといた俺も悪いが……動けるようならなるべく早く来いよ』
剣護「…………………………」
剣護はおそるおそる携帯の日付を見る。そこには5月6日と表示されていた。5月6日、すなわちアドシアード当日である。
剣護「……やらかしたァァァアァァアアァァ!!?」
要するに剣護はゴールデンウィーク丸々寝てた上に、めちゃくちゃガッツリと大遅刻をしていたのだった。