怜二「あ、改めまして……柳生怜二です……」
その日の昼休み、キンジたちはカフェテリアでテーブルを囲んでいた。もちろん怜二もいるのだがその顔はタンコブだらけになっていた。
不知火「だ、大丈夫かい?柳生君」
怜二「ま、まあ……慣れてるし」
キンジ「1時間目の休み時間から追っかけ回されてたもんな」
剣護「背中が痛いでござる……」
アリア「自業自得よ」
それもそのはず。剣護は1時間目が終わってからずっと休み時間に怜二に襲いかかり、最終的にアリアが背中にガバメントを撃ち、ドロップキックをかまして沈黙させた。
キンジ「それより、柳生は剣護の幼馴染なんだってな」
怜二「怜二で良いよ。まあ先祖絡みの関係だけどね。あとキンジのことは剣護から聞いてるよ」
キンジ「そうなのか……どんな風に?」
怜二「流れるように女子にフラグ立てていく女たらし」
キンジ「剣護ぉ!!」
剣護「危ねえ!」
キンジ「高っ!?」
キンジは剣護になんのためらいも無く拳を繰り出し、剣護は思い切り大ジャンプして避けた。キンジは驚きつつも追撃を加え、剣護も応戦し、次第に殴り合いになる。
怜二「相変わらずだなぁ……」
アリア「あたしが出会う前もあんな感じなの?」
怜二「まあ……昔より激しくなってるけどね」
白雪「あー……確かに……昔より激しくなってるね」
アリア「白雪も知ってるの?」
白雪「私とキンちゃんも幼馴染みたいなものだからね」
武藤「なにっ!?」
怜二「剣護の実家は二つ……というか本来の月島道場は青森の津軽にあるんだよ」
アリア「じゃあ本来の実家は青森なのね?」
怜二「うーん……いや、生まれも育ちも東京だけど……先祖がー……的な?」
剣護「まあ青森と東京を行ったり来たりしてたからな」
アリア「あれ?キンジはどうしたのよ?」
剣護「あそこ」
アリアたちは剣護の指差した方向を見ると、キンジがプスプスと煙を上げながらぶっ倒れていた。
白雪「キンちゃあああああん!?」
アリ・武・怜『何があった!?』
白雪は女子とは思えない速度で駆け寄り、アリア、武藤、怜二は表ではツッコみ、内心では「ヤムチャしやがって……」と呟いていた。
白雪「キンちゃん!しっかり!何があったの!」
キンジ「うぅ……あ、青白い玉が……ば、爆発……して……グフッ」
白雪「キンちゃあああああん!!」
アリア「何これ昼ドラ?」
怜二「わけがわからないよ」
武藤「キンジ……まあ、いいやつだったよ」
剣護「ところで怜二よ」
怜二「あ、スルーしちゃうのね……で、何?」
剣護「お前、部屋はどーすんの?ここからお前の家まで遠いし、寮だろ?」
怜二「あ、うん。剣護と同じ部屋だって先生が」
剣・金『え?マジで?』
怜二「あ、生きてた」
怜二の言葉にキンジと剣護は声を揃えた。そして2人して肩を組み涙した。
剣護「怜二と同じ部屋……これで勝つる……!」
キンジ「あぁ!これで幾分マシに過ごせる……!」
怜二「ふ、2人とも?」
剣護「歓迎するぞ怜二!」
キンジ「男の同居人なんてこれほど嬉しいことはないぜ!」
怜二「え……あ……ハイ……」
アリア「そう。怜二も同じ部屋ならちょうどいいわ」
アリアは怜二の前に立ちビシッと指を差すと宣言する。初めてキンジと剣護に出会ったあの時のように。
アリア「怜二。あんたもあたしのドレイになりなさい!」
怜二「…………あぁ……そういう趣味なのか」
剣護「もしもし警察ですか?」
アリア「ちょっ……そういう意味じゃないわよ!?勘違いしないで!あと剣護は通報しないで!」
怜二「いや良いんだよ神崎さん。趣味は人それぞれだから」
アリア「だから違うってば!風穴開けるわよ!」
剣護「まあそういうとこも尊重するのも大事だよな」
アリア「話聞いてもらってもいいかしら!?」
怜二「まあ冗談はこのくらいにして……」
アリア「もう剣護のボケでお腹一杯よ……」
剣護「あはは……悪い悪い。それで……どういうことだってばよ?」
アリア「はぁ……あたしたちとパーティ組んで、白雪の護衛をするってことよ」
怜二「なるほどね。なら僕は……サポートかな?通信科だし」
アリア「あんた通信科なんだ……ならその方が良いわね」
金・武・白(俺たち(私たち)の入る隙がねぇ……)
3人の会話の様子を見ながらキンジ、武藤、白雪の3人は心の中でそう呟くのだった。
剣護「はぁー……」
キンジ「なんか……落ち着くな……」
怜二「そ、そんなに大変だったの?」
その日の夜、剣護はソファーでぐでーんとしており、キンジはシャワーから出たのか上半身だけ裸だった。怜二はコーヒーを出しながら、そんな2人を見て苦笑いを浮かべた。
剣・金『そりゃあもう』
怜二「あ、あははは……」
その時、タタタッとこちらに向かって走ってくる音が聞こえた。3人は音のする方を向くと、白雪が勢いよくドアを開けてきた。
白雪「キンちゃん!?どうしたの!?」
剣・怜『は?』
キンジ「な、なんだよ急にっ!?」
白雪「えっ、だ、だって、キンちゃんが……で、電話」
キンジ「電話?」
白雪「すぐ来いって言って、急に、切っちゃったからっ」
キンジ「電話なんかかけてねーよ!」
白雪「確かにキンちゃんだったよっ、非通知だったけど、『バスルームにいる!』って!」
剣護「……む?」
怜二「け、剣護?どうしたの?」
剣護「ちょっと出てくるわーほいっと!」
白雪「え?あ、ひゃあ!?」
キンジ「ちょっ!?おい!剣護!」
剣護は何かの気配を感じ取ったのか、手前の白雪を掴みキンジの方へと投げて、適当な刀を掴みちょっと慌てた様子でドアを開けて出て行った。
場所は変わりここは男子寮から割と離れた道路。そこには黒いローブのようなものを纏った人物が携帯を片手に立っていた。
???「やれやれ……容易いものだな……こんなに簡単に引っかかるとは」
剣護「そうだなー。暴走してばっかでこっちが大変なんだよな」
???「っ!?」
ローブを纏った人物は横からの声に飛び退いた。そして声の方を見るとそこにはパーカーとジャージといったもはや部屋着の格好をした剣護が立っていた。
???「き、貴様!いつの間に!」
剣護「いやね?電話と聞いた瞬間に妙にひんやりとした流れを感じてな、それを追ってみればお前がいたってわけだ」
???「…………」
剣護「……お前が魔剣……デュランダルだな?」
???「…………いかにも、私がデュランダルだ。だが、その名で呼ばれるのは好かない」
剣護「じゃあデュランダルって呼ぶわ」
???「嫌がらせか!」
剣護「そーだよ……文句あっか!」
???「文句しかないわ!」
剣護「ならデュランダルで呼ばれるのが嫌なら名前言うんだな」
ジャンヌ「ジャンヌ・ダルク30世だ」
剣護「アッサリ名乗りやがった……ん?ジャンヌ・ダルク……?」
ジャンヌ・ダルクと聞くなり剣護はジャンヌをジーッと見つめる。剣護の行動にジャンヌは首をかしげる。
ジャンヌ「な、なんだ?」
剣護「ジャンヌ・ダルクってもう少し大きくなかったっけ……どこがとは言わんが」
ジャンヌ「胸のことかぁぁぁ!!ってそれはFGOのジャンヌだろう!?」
剣護「あ、そうか。まあいいや。とりあえず……デュランダル、逮捕だ!」
ジャンヌ「フッ……やれるものならな!」
そう言った瞬間にお互いに接近して、ジャンヌの聖剣と剣護の刀がぶつかり合う。
剣護「ドラァ!」
ジャンヌ「ふん!」
剣護「おぉぉ!」
ジャンヌ「シッ!」
剣護「だぁらあああ!」
ジャンヌ「ぐっ……!」
剣護は連続攻撃で攻め立てていき、ジャンヌも聖剣を振るい応戦する。
剣護「ふんぐぐぐぐぐ……!」
ジャンヌ「っ……ぐぅ……!」
鍔迫り合いになり、2人はお互い譲らず押し込んでいく。するとジャンヌが話しかけてくる。
ジャンヌ「ふふふ……なかなかやるではないか」
剣護「そいつぁどーも……愛刀じゃねえけど舐めんなよ!」
ジャンヌ「ふん……私の聖剣デュランダルを相手にそんな刀とは…愚かだな」
剣護「へっ、これでも充分やれらぁ…!」
ジャンヌ「舐められたものだ……なっ!」
聖剣を振るいジャンヌは剣護を弾き飛ばす。ピキッと刀身が欠けて剣護はタラリと冷や汗を流す。
剣護「あっぶね……」
ジャンヌ「言っただろう?デュランダルに斬れないものは無いと!」
剣護「うおっ!?」
聖剣の振り下ろしをギリギリでいなす剣護。
ジャンヌ「甘い!」
剣護「ぐおっ!」
ジャンヌは聖剣を素早く斬り返し剣護の胸を切りつける。痛みに顔をしかめながら剣護はなんとか距離を取ろうとするが勢いに乗ったジャンヌはすぐに間合いを詰めてくる。
剣護「チィッ!」
ジャンヌ「逃げてばかりでは何も変わらんぞ!」
剣護「んなもんわかってらぁ!」
ジャンヌ「うわぁ!?」
怒鳴ると同時に剣護はジャンヌの剣を避けると思い切り膝を蹴り飛ばした。ジャンヌは簡単に体勢を崩し膝をつく。剣護はさらに回し蹴りで蹴り飛ばす。
ジャンヌ「ぐっ……くっ!」
剣護「いつつ……今度はこっちの番だ」
ジャンヌ「っ……やってみろ。貴様ではこのデュランダルを折ることなどできん!」
剣護「やってやるよ……!」
剣護は体勢を少し低くし脇構えの構えを取る。
剣護「行くぞ!月島流!」
ジャンヌ「来い……!」
弾丸の如く剣護は飛び出しジャンヌの懐へと接近する。
ジャンヌ「速っ……!?」
剣護「富嶽水流連舞!」
ジャンヌ「がっ!」
流水のような斬撃の連撃を舞うように浴びせていく。
剣護「シャア!」
ジャンヌ「ふっ!」
剣護「っ!」
繰り出された振り下ろしを防ぎ、そのまま聖剣を薙ぎ払い刀身をへし折りながら胸を切り裂く。
剣護「ぬぐぉぉ……」
ジャンヌ「ふん、さっきまでの威勢はどうした?」
剣護「こんのっ……!」
ジャンヌ「無駄だ」
剣護は折れたまま刀を突き出すがジャンヌは避けて刀を持つ腕を掴む。するとパキパキと音を立てて剣護の右手が凍りつく。
剣護「うおっ!?冷たっ!」
ジャンヌ「私は魔剣とは別に『銀氷の魔女』と呼ばれている」
剣護「なるほど……超能力者か……!」
ジャンヌ「そんなに悠長に話してる場合か?」
剣護「あ?……げぇっ!?氷が侵食してるぅ!?」
ふと剣護が右手を見ると既に肘あたりまで氷が侵食していた。
剣護「くっそ!」
剣護は左ミドルキックを放つがジャンヌは左足に触れ凍りつかせる。
ジャンヌ「このまま氷像にしてやろう……」
剣護「っ……!」
ジャンヌ「まあこちらの要件を飲むのなら助けてやらんこともない」
剣護「……どうせイ・ウーの勧誘だろ?」
ジャンヌ「よく分かってるじゃないか。フォロミー月島。お前は選ばれ「だが断る」た……って、え?」
剣護「だーれが好き好んでそんな奴らの集まりに入るか。バーカ」
ジャンヌ「……そうか。なら仕方ない……ここで始末する」
そう言ってジャンヌはデュランダルを構えた。剣護は右手と左足が凍ったまま身構える。
ジャンヌ「無駄だ。折れた刀とその右手と左足はもう使い物にならない」
剣護「まだ左手と右足があるだろ」
ジャンヌ「それでも……だ。凍った所を見るがいい」
剣護「ん?……んな!?」
右手と左足を見ると氷が侵食しており、右手は上腕まで凍りつき左足に関しては地面にまで氷が張っていた。
剣護「やっべ……」
ジャンヌ「私に斬り捨てられるか、氷像になるか……だな。イ・ウーに来るのであれば助けてやらんこともないぞ?」
剣護「言っただろ。断るって……な!」
剣護は地面を思い切り踏み込み震脚で無理矢理左足を引き剥がす。
ジャンヌ「なっ!?そんなことしたら余計使い物にならなくなるぞ!?」
剣護「動けりゃ問題ねえ!」
ジャンヌ「っ……だが、素早くは動けまい」
剣護「まあな。それならこうするまでだ!」
突如剣護の髪が白くなりパキパキと音を立てながら動きジャンヌの身体に巻きつくと剣護の方に引き寄せる。
ジャンヌ「な、なんだこれは!?」
剣護「月島流拳技、限定技!」
ジャンヌ「くっ!」
剣護「氷砕鉄槌拳!!」
凍りついた右拳を放ち、ジャンヌは聖剣を盾に防ぐ。その衝撃で右手の氷と持っていた刀が砕け散る。
剣護「おぉぉぉらぁ!!」
ジャンヌ「ガハッ!」
そのままの勢いで殴り飛ばし、ジャンヌはガードレールに叩きつけられ咳き込んで血を吐く。
ジャンヌ「ゲホッ!……な、何だったんだ今の…」
剣護「ふー…ふー……!」
ジャンヌ「……流石にここは退かせてもらう…だが次は無いぞ…!」
ジャンヌは缶のようなものを転がすと缶から煙が噴き出し、辺り一面を煙幕が包み込み、すぐに煙が晴れたがジャンヌの姿はなかった。
剣護「チッ……逃げたか…………っておよよ?」
緊張が解けたのか一気に疲労感が押し寄せ、さらに凍傷や大量に失血してるせいで意識も朦朧として剣護はその場に倒れてしまった。