事件から数日後の週末、あかりは男子寮に来ていた。目的はもちろん剣護に会うためである。
あかりはずっと剣護にお礼を言おうと思っていたのだがこの数日間、全く学校に来なかったのである。
アリアに聞いてみると、どうやら滅茶苦茶ボロボロになったらしく寮で大人しく療養してるとのことだった。それであかりはこうして週末に訪ねて来たのだ。扉の前であかりは深呼吸してそれからインターホンを押した。
ピンポーン
キンジ「はーい」
少しして出てきたのは、剣護のルームメイトのキンジだった。
あかり「あ、こんにちは。遠山先輩」
キンジ「間宮か。なんか用か?」
あかり「はい、月島先輩に……」
キンジ「剣護か。ちょっと待っててくれ。呼んでくるから」
あかり「わかりました」
そう言ってキンジは部屋の奥に引っ込み、しばらくして剣護が出てきた。
剣護「へいへい。お待たせ」
あかり「なんか久しぶりな感じですね……月島先輩」
剣護「まあそうだな。今週全部休んでたし」
あかり「仕方ないですよ。そんな状態じゃあ……」
剣護「お前も右腕ボロボロじゃんか」
あかり「あはは……お互い様ですね」
そう言う2人の姿は今回の事件がどれだけ大変だったのかを物語っていた。あかりは右腕にギプスを巻いており、剣護は頭、胸、腹、腕、脚、首など体中のあちこちに包帯を巻いてたり、ガーゼを貼ってたりしていた。
剣護「ここじゃあれだし、ちょっと出ようか」
あかり「そうですね」
そう言うと2人は寮の屋上へと上がった。ここには剣護が鍛錬するための道具を置いていた。
あかり「……なんですか、あの岩3つを突き刺した棒は」
剣護「気にしない気にしない」
あかり「……まあ良いですけど」
剣護「そんで、ののかちゃんはどうよ?」
あかり「おかげさまで無事に治りました」
剣護「そっか……良かったな」
あかり「はい……」
2人『…………』
しばらく沈黙が続きあかりは何か話さないとと焦る中、剣護が話しかけてきた。
剣護「あかり」
あかり「ふぇ……?あ、はい!」
剣護「…………よく頑張ったな」
あかり「ッ!」
ポンッと昔のように頭を撫でられながらかけられた労いの言葉にあかりは顔を赤くしながらポロポロと涙を流す。剣護はそんなあかりをまるで自分の本当の妹のように撫でていた。
あかり「あ、あの!剣護先輩!」
剣護「うん?」
あかりは顔を真っ赤にして伝えようとする。自身の剣護に対する想いを。
あかり「あ、ああ、あたしッ……け、けけけ……剣護先輩のことがす……すすす……」
剣護「す?」
あかり「剣護先輩のことが……すっ……「見つけたぞ剣護ぉ!」へ?」
剣護「あ?武藤?」
志乃「あかりちゃん!」
あかり「し、志乃ちゃん!?」
次の瞬間、あかりの言葉を遮ったのは武藤やキンジたちに志乃やライカに麒麟も混ざっていた。
武藤「ふはははは!お前だけにいい思いはさせねえぜ!」
剣護「お前は何を言ってるんだ」
武藤「女の子と2人きりなど……うらやまけしからん!」
志乃「あかりちゃん!すぐに離れて!私は……認めない!」
あかり「し、ししし志乃ちゃん!?何を言ってるの!?」
ライカ「あかり!先輩は渡さな……ゲフンゲフン」
あかり「ライカ?ちょっとO☆HA☆NA☆SIしようか?」
麒麟「むー…いいところでしたのにー……」
剣護「おい、武藤剛気。これはどういうこった」
武藤「いやさっきお前らのとこ遊びに行ったらキンジから聞いてよ。てかなんでフルネームなんだよ」
キンジ「すまん剣護。こうなるとは……」
剣護「いたのか遠山キンジ……KILL YOU」
キンジ「怖えよ!あとなんでフルネームなんだよ!?」
剣護が男子たちとギャンギャン喚く中で、あかりは志乃たちと喚いていた。
志乃「あかりちゃん、大丈夫ですか?何もされてない?」
ライカ「いやー……可哀想な、ちょっと安心したような……複雑だな」
麒麟「ビデオカメラ持ってくれば良かったですわ」
あかり「………………」
ライカ「あ、あれ?あかり?」
志乃「あかりちゃん?」
麒麟「間宮様?」
あかり「…………な」
ライ・志乃・麒麟『え?』
あかり「…………風穴」
ライ・志乃・麒麟『……え?』
ジャキンッ
3人が頭に?マークを浮かべる中、あかりは光を失った目でマイクロUZIを引き抜いた。こいつ病んでね?と言いたくなるような表情で。
志乃「あ、あかりちゃん!?」
ライカ「お、おおお落ち着け!まだ慌てるような時間じゃアババババ」
麒麟「お姉様がめっちゃ慌ててますわ!」
あかり「みんな……みんな……風穴ぁぁぁぁぁ!!」
バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ!!
そう叫ぶとあかりはマイクロUZI(ロングマガジン)を一斉掃射する。男子3人もギョッとして一斉に逃げ始めた。
剣護「マジかぁぁぁぁぁ!!」
武藤「ちょっ!?あの1年ヤバくね!?」
キンジ「ますますアリアに似てきやがったなぁ……」
武藤「おい!剣護はどこ行きやがった!」
キンジ「真っ先に飛び降りたぞ。ここから」
武藤「え、いつの間に!?」
あかり「はぁ……はぁ……」
全員がいなくなり、全弾撃ち尽くしたところであかりはぺたんとその場に座り込んだ。周りには薬莢が転がり、床や壁に穴が開いていた。
あかりはせっかくのチャンスを失ったという表情で項垂れていた。
あかり「……うぅ…………」
アリア「はぁ……あんた私に似てきたわねぇ……」
あかり「!」
声が聞こえその方向に振り向くと、戦姉のアリアが立っていた。アリアはあかりの隣に座ると頭を撫でた。
あかり「アリア先輩……」
アリア「恋なんてそう上手くいくもんじゃないわよ。それに焦る必要もないわ」
あかり「……はい」
アリア「そのうちまたチャンスが来るわよ。元気出しなさい」
あかり「……はいっ。あ、あの」
アリア「何かしら?」
あかり「アリア先輩には……好きな人っているんですか?」
アリア「ソンナワケナイジャナイ」
あかり「なんで目を逸らすんですか」
アリア「逸らしてないわ」
あかり「いやでも……」
アリア「あたしは好きな人なんていない。いいわね?」
あかり「アッハイ」
一方その頃、男子寮のキンジと剣護の部屋では。
剣護「キンジ……武藤……HA☆NA☆SIをしよう」
金・武藤『マジですいませんでした』
剣護「駄目☆」
キンジ「いやあの……マジで勘弁してくだせぇ……」
武藤「俺たちが悪かったからさ……お助けください!」
剣護「オレァクサムラヲムッコロス!!」
キンジ「いやその両手に持ってるもんぶち込まれたら俺らネギトロか爆発四散しちまうよ!?」
案の定、キンジと武藤は真っ先に剣護に捕まり、両手に持ったダネルMGLとM3スーパー90を向けられ脅されていた。