オタク剣士が武偵校で剣技を舞う!   作:ALEX改

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第18話 夾竹桃との接触

 

 

 

ある日、剣護が最近素手や刀だけで銃をほとんど使ってないなと昼休みに地下射撃レーンに向かっているところだった。扉に差し掛かったところで声が聞こえた。あかりとアリアである。

剣護は足を止めて扉の前で2人の話に聞き耳を立てる。

 

アリア「あかり、あんた……」

あかり「こうすれば満足ですか」

 

聞こえてくるあかりの声はどこか暗いものだった。

 

あかり「……こんなの、武偵の技じゃない……!」

 

呻くような声が聞こえたところで剣護は扉を開けようとした時だった。

 

あかり「アリア先輩、すみません。見なかった事にしてください」

 

その場から逃げ出すように走って出てきたあかりが剣護の腹にもろに激突したのである。

 

剣護「うぐふぉ!?」

あかり「きゃうっ!つ、月島先輩……っ!」

剣護「おらよぉ!」

 

あかりは剣護の顔を見るがすぐに走り去ってしまう。しかし剣護は髪をあかりの体に巻きつけて捕獲する。

 

あかり「うえぇ!?何これ!?」

 

急に髪の毛が巻き付いてきてあかりは混乱しながら叫んだ。

 

剣護「おーい捕まえたぞー」

アリア「えちょ何それ……」

 

巻きつかれたまま連行されてあかりは剣護とアリアと共に射撃レーンに戻る。アリアは剣護にターゲットを指しながらさっきの内容を説明した。

 

アリア「という訳なの」

剣護「ふむ……十弩(トウド)ねぇ……」

あかり「…………」

剣護「まあ癖はちょっとやそっとじゃ直らないわな」

あかり「…………」

剣護「でも直せない訳でもない」

あかり「っ!ど、どうすれば……」

剣護「正しい姿勢と撃ち方を新たに染み込ませる。まあすぐには無理だろうが……焦るこたあないゆっくりとやっていけばいい」

あかり「は、はぁ……」

剣護「それかオートマチック銃を使うか」

あかり「で、でもあたしそんなの買うお金なんて……」

剣護「お前ファイブセブン持ってるじゃん。俺があげたやつ」

あかり「え?…………あっ!」

剣護「……この子大丈夫?」

アリア「大丈夫よ、問題ないわ」

あかり「なんで目を逸らすんですかアリア先輩!」

アリア「ソラシテナイワ」

あかり「逸らしてますぅー!」

剣護「ハッハッハ。だいぶ調子が戻ったじゃねえか」

あかり「あっ…………」

 

剣護とアリアにツッコんでいるうちにさっきまでの暗さが無くなっていることにあかりは気づく。俯くあかりにアリアは話しかける。

 

アリア「剣護の言う通り直せない訳じゃないのよ。だから明るく前向きに、焦らずゆっくりと取り組んでいけばいいのよ」

剣護「つまづいたら俺たちを頼ったらいいのさ。みんな力になってくれる」

あかり「っ……グスッ…………はい!」

 

2人の言葉にあかりは泣きそうになるが堪えて涙を拭って力強く返事を返した。

 

剣護「ところで……時間は?」

アリ・あか『あっ』

 

この後、午後の授業に遅れて怒られたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

小雨の降るある日、授業と授業の合間の10分休み。あかりとライカが会話をしてる時、車輌科のヘリがヘリポートに止まるのを見てあかりはイヤな予感がしたのか教室を飛び出し、雨の降る外へ走っていく。

そして近くのバス停付近まで行くと武偵高の生徒が集まっていた。そこには救急車が止まっていた。

 

あかり「あ、アリア先輩!」

 

あかりが叫ぶとその後方から独特なクラクションが響き、振り返るとそこには赤いボディの車、トライドロンが止まっていた。

それを見たあかりは思考が一瞬止まった。

 

あかり「…………は?」

アリア「こっちよ。あかり」

あかり「え?アリア先輩……いやなんですかその車!?」

剣護「俺のトライドロンだよ」

あかり「月島先輩!?」

 

ギョッとした表情であかりは立ちつくす。無理もないだろう、本来存在しない車にアリアが乗っているのだから。

 

あかり「な、なんでそれに……」

アリア「剣護が呼び出したのよ。事件の時に」

あかり「は、はぁ……で、でも良かったです。アリア先輩が無事で」

アリア「まあね。でも念のためこれから病院で診て貰ってくるわ」

あかり「あ、はい」

 

そう言ってアリアは救急車に乗ると行ってしまった。あかりはアリアを見送ると授業のことを思い出しあたふたとし始める。そんなあかりに剣護は声をかけた。

 

剣護「しゃーなし、今回はサボるか。おい、あかり。乗れ」

あかり「え、あ、は、はい……」

 

あかりはおずおずと乗り込み、剣護は車を走らせる。そんな中、ふとあかりの方を見るとポロポロと涙を零しているのを見て剣護はギョッとする。

 

剣護「ど、どうしたよ……」

あかり「い、いえ……アリア先輩が無事だったのが分かって……つい」

剣護「なんだそのことか……」

あかり「月島先輩が……守ってくれたんですよね……」

剣護「……まあ……」

剣護「月島先輩って結構優しいですよね。志乃ちゃんの時やカルテットの時とか」

剣護「守ることが俺の信念だからな。それにアリアやキンジやあかり、みんなが大事なものだから」

あかり「そうですか……あの、ここで降ろしてもらっていいですか?少し歩きたくて……」

剣護「ん、わかった。気をつけなよ」

 

車を停め、他の車輌が迫ってないか確認してからあかりを降ろす。あかりはペコリと頭を下げてから歩いて行った。

その表情は少し赤みを帯びていたのを剣護は知ることもなかった。

 

 

 

 

 

あかり「ふぅ…………」

 

剣護と別れたあかりは雨の降る中を歩く。冷たい雨があかりを濡らすがその冷たさを感じないほどにあかりの顔は赤く火照っていた。

 

あかり(ど、どうしちゃったんだろ。あたし……顔が……胸が……熱い?)

 

あかりは胸を押さえる。トクントクンと脈打つに連れてどんどん熱くなってくる。

 

???「間宮あかり」

あかり「……?…………っ!!」

 

あかりが声のする方を向くと瞬間、相手の顔を見てさっきまで赤かったあかりの顔は真っ青に染まる。

そこには2年前にあかりたち間宮の一族を襲ったうちの1人夾竹桃がコウモリ傘をさして立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

剣護「………なんか嫌な予感すんなぁ」

 

そう言うと剣護は携帯を操作してしばらくしてから車を走らせた。

 

 

 

 

 

 

その頃、あかりは夾竹桃と共に三叉路にあるヴァルドシュートという大人びたムードの喫茶店にて対峙していた。

 

あかり「どうして、あたしの前に現れたの」

夾竹桃「間宮の口伝、秘毒・『鷹捲』。知ってるんでしょ?」

あかり「……仮に知ってたとしても、あたしは間宮の術を全部封じたの。教えない」

夾竹桃「なら……教えたくなるように、してあげましょうか」

 

そう言って夾竹桃は真っ白な足を組み直す。あかりはスカートの中に武器を隠してるようなバンドやホルスターがないのを確認するとマイクロUZIを抜き立ち上がった。

 

あかり「夾竹桃、大人しく……っ!」

 

銃を構え、テーブルを回り込もうとした時だった。首に微かな痛みが走り、あかりは足を止め目で周りを確認する。そこにはちょうど首の高さと同じ位置に極細のワイヤーが張られていた。

 

夾竹桃「TKNワイヤー。その防弾制服にも織り込まれてる、極細繊維よ」

 

あかりの首の後ろにワイヤーが回され徐々に食い込んでいく。

 

夾竹桃「戦っちゃダメ。あなた弱いんだから」

 

ジワリジワリと角度を変えて少しずつ力を込めてくる。

あかりは銃口を差し込み隙間を作ろうとするが、ワイヤーは首全体に巻き付いており差し込めない。

 

夾竹桃「……いっちゃおうか?ポトリって。交渉決裂気味だし」

あかり「うっ……ぐっ……」

 

 

プツンッ

 

 

不意にどこからか飛んできた鉄扇が二本のワイヤーを切断する。そしてその持ち主はどこともなく現れた。

 

麗「『弱い』ですって?聞き捨てならないわね」

 

それはかつてカルテットであかりと戦った高千穂麗だった。

 

麗「間宮あかりは私を倒した。それを『弱い』と侮辱したのは、私への侮辱でもあるわ」

あかり「高千穂さん……助かったよ」

麗「べ、別に、お前を助けたわけじゃないんだからねっ!」

あかり「で、でも何でここに…」

麗「……月島先輩が連絡してくれたのよ。お前ならあかりのところにすぐ行けるだろって」

あかり「月島先輩が……そっか」

 

麗はスカートの内側からスタームルガースーパーレッドホークを取り出し夾竹桃に銃口を負ける。あかりも同じくUZIを構える。

しかし、夾竹桃は2人を見て何故か赤面し始める。

 

夾竹桃「そう。そういう関係」

あか・麗『……?』

夾竹桃「……これで一冊描けるわ、夏に間に合うかしら……」

あか・麗『?』

 

急に立ち上がりブツブツと何かを呟くのを見てあかりと高千穂が困惑する中、バンッ!と喫茶店の扉が勢いよく開き現れたのは。

 

剣護「おう間に合ったか」

あかり「っ!月島先輩!」

夾竹桃「っ!?」

 

あかりの危機を感知し、すっ飛んできた剣護だった。

一応手には愛銃のM500が握られている。

 

剣護「なーんか嫌な予感がしたもんでな。高千穂に連絡して先行してもらった」

夾竹桃「流石に分が悪いわね…間宮あかり。あなたに1週間、時を与えるわ。何にせよ、種は2年前に植えた。そろそろ花咲く頃よ」

 

2年前。そのキーワードがあかりの心を鋭く抉る。傘を手にした夾竹桃は喫茶店から去ろうとする。

 

夾竹桃「あなたの全てが私のものになれば、誰も傷つかなくて済むわ……」

 

そう言うと夾竹桃は喫茶店から出ていった。その時、スカートから1枚の折りたたまれた紙を落として。

 

あかり「夾竹桃…………」

麗「…………」

剣護「……やれやれだ」

 

3人はただただ扉を睨むだけだった。しばらくして3人は武器を納め椅子に座る。

 

剣護「2人とも大丈夫か?」

あかり「はい、なんとか」

麗「特に問題はないわ」

剣護「とにかく、アリアの所へ行こう。あかりは妹に連絡しておけ」

あかり「はい」

麗「では、私はこのあたりで」

あかり「う、うん。高千穂さん、ありがとう」

麗「か、勘違いしないことね!今のはその……お前がコロっと斃されたら、私も学校で笑われるからよ!」

 

そう言うと高千穂はさっさとカフェを去っていった。途中、振り返って心配そうな表情をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方、あかりと剣護は武偵病院へと向かった。そこにはバスジャックに巻き込まれた武偵高の生徒が何人かいた。剣護は他の生徒と情報交換や今の現状を聞いたりとしてる間、あかりはベンチに座って先ほど呼び出した妹を待っている。

 

しばらくして、ののかがロビーに入ってくる。しかし、入口正面のベンチに座っているあかりに気づかずしばらくキョロキョロしている。

 

あかり「ののか。こっちだよ」

ののか「お姉ちゃん」

 

振り返るののかに違和感を感じるあかりだがそれよりも伝えなければいけないことがある。

 

あかり「ごめんね、急に呼び出して。あたし今日、ここを離れられないから。あと、これ」

 

あかりは現金1万円と車輌科のクラスメートに依頼して手に入れた特急券・乗車券を取り出す。

 

あかり「しばらく長野のおばさんの所にいて。ワケは後で話すよ」

ののか「う、うん……あ……」

あかり「ののか……?」

 

切符を取ろうとするが空を掴んでしまい、そのまま戸惑うあかりの方へふらっと倒れてしまう。それに気づいた剣護は2人に駆け寄る。

 

あかり「ののか?ののか!ののか!」

剣護「っ……おい!先生を呼べ!早く!」

 

剣護が周りに叫んで、病院のスタッフが呼ばれ、担架が持ってこられ、ののかは運ばれていった。その様子をあかりは愕然としながら見送るしかなかった。

 

それから数時間後、外はすっかり暗くなっていた。

病院の個室のベッドの上で、ののかは上体を起こして座っていた。両目には痛々しく包帯が巻かれていた。あかりは、ののかの毛布に顔を埋めて泣きながら心配していた。

 

あかり「……ののか……ぐすっ……えぐっ……」

ののか「大丈夫だよお姉ちゃん。きっとすぐ治るから」

あかり「でもお医者さんも、原因が分からないって……」

ののか「だらしないぞお姉ちゃん。目が見えなくても、耳は聞こえるし、喋れるんだから」

陽菜「否。視覚の次は聴覚、次いで味覚。8日もすれば、命を落とされる」

 

ののかが気丈な言葉をかけるがその言葉を否定する声が聞こえた。振り向くとそこには風魔がカルテのコピーを読んでいた。次いで志乃、ライカ、麒麟が病室に入ってきた。この時あかりはみんながあかりのことをどれだけ心配していたのかを悟らされた。

あかりは風魔の方を向くと風魔は続きを話し始める。

 

陽菜「ののか殿の症状の原因は打たれて2年の後に五感と命を奪う『符丁毒』。その分子構造は暗号状になっており、作った本人にしか解毒出来申さぬ」

あかり「どうして知ってるの、そんなこと」

陽菜「それは……元々、風魔の術に御座ったゆえ」

志乃「それがどうして、ののかさんに……?」

陽菜「……一党の不覚をお詫び致す。数年前、幼子に別の毒を打たれ解毒して欲しくばと、製法を強請り取られたので御座る」

 

風魔は眉を寄せながら一族の失態を語る。そしてあかりに尋ねた。

 

陽菜「毒を以て毒を奪う。この手口、夾竹桃に御座るな?」

あかり「……ッ……!」

ののか「お姉ちゃん……」

 

あかりとののかは夾竹桃の名に息を呑む。

あかりはスカートのポケットの中のメモを握りしめる。みんなを巻き込みたくない。自分が犠牲になればののかを助けられる。

あかりは下を向いたまま、みんなの間を縫うようにして病室から出て行こうとする。

 

志乃「あかりさん!」

ライカ「あかり!」

あかり「ついてこないで!」

 

志乃やライカの制止の声を、大きな声で遮りながらあかりは病室の扉を掴む。

 

あかり「あたしが犠牲になれば……いいの!」

 

涙声で言い捨てて扉を開いた先には。

 

アリア「自己犠牲が『美談』になるのは、お伽話の中だけよ」

剣護「周りを頼れっつったのに……バカかお前は」

 

戦姉と自身を今まで助けてくれた先輩がいた。

 

あかり「でも……でも……!」

剣護「あかり」

 

剣護の声にあかりは顔を上げ、剣護は真っ直ぐにあかりの目を見る。

 

剣護「言っただろ?つまづいたら俺たちを頼れって」

あかり「で、でも……みんなを巻き込むわけには……」

アリア「はぁ……たまに思うけどあかりって剣護と似てるとこあるわよね」

あかり「え……?」

アリア「こいつもバスジャックの時に自分のことなんかお構い無しに銃座の前に立ったんだからね?」

剣護「うぐっ……」

 

アリアの言葉にあかりはキョトンとして、剣護はバツが悪そうに目を逸らした。

 

アリア「あんたはあたしたちに隠してることがある。そうでしょ?」

あかり「……あ……」

アリア「あんたは本当の自分を隠して、力を抑えてきた。だから武偵ランクも低いまま。違う?」

剣護「てゆーか、一部漏れてたけどな。鳶穿とか」

あかり「うっ…………」

剣護「もう良いんじゃないか?話しても」

あかり「……はい……って月島先輩は知ってるんですか?」

剣護「知り合いから聞いて思い出した。俺が9歳の頃の記憶をな」

あかり「9歳の頃の……?」

剣護「お前の後で話すからはよせいや」

あかり「は、はい。それじゃあ……話します。間宮のことについて」

 

 

 


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