あかりの乗ったDN-01は砂山を登っていく。しかしだんだんと登っていくにつれてどんどん減速していく。
あかり(……こうなったら……!)
あかりが走行中のDN-01の上に立とうとした時だった。カチッとハンドル部分にある何かを押す感触がした瞬間、ガコンッと車体後方から音が聞こえさらにキィィィ……と高音が響いてくる。
あかりが振り向くとマフラーの噴射口から炎がチラついていた。
\BOOST ON!/
あかり「あ……これやば……」
\READY……FIRE!/
あかり「ちょっ、キャアァァァァ!?」
麗「危なっ!?」
ドォウッ!と噴射口から炎が勢いよく噴き出し加速してあかりを乗せたバイクは砂山を登っていく。高千穂は突然の噴射炎に驚き飛び退く。そんな中でもあかりは蜂のフラッグを取り出し横に構えた。
そして
パァンッ!
横向きに握った蜂のフラッグは高千穂班の目のフラッグを天高く弾き飛ばした。そしてあかりの乗ったDNは砂山を駆け抜けるとガリガリと地面を削りながら止まった。
目のフラッグは高千穂の頭に落ちて、高千穂はガクッと膝をついた。
麗「そ、そんな馬鹿な……」
こうして間宮班対高千穂班のカルテットは間宮班の勝利で幕を閉じた。
アリア「では、間宮班の勝利にカンパーイ!」
理子「おめでとー!」
その日あかりたちはロキシーで祝勝会を開いていた。メンバーの中にはアリアや理子に剣護、ののかもいて4人の勝利を祝った。
剣護「いやーにしても……地味に居心地悪いなおい」
あかり「えー、なんでですか?せっかく呼んだのに」
剣護「だって…………この中で男、俺だけよ?」
ライカ「まあでも剣護先輩、あたしの戦兄なんですから」
理子「そうそう!ツッキーはにぃにだもんね!」
剣護「やめんかロリクソビッチ」
理子「酷くね?理子に対して酷くね?」
剣護「大丈夫だ、お前のゴールはアウターヘブンだ」
理子「何?理子の居場所はマザーベースなの?」
あかり「ま、まあまあ……」
ののか「それにしても……」
剣護を宥めるあかりにののかは額に巻かれている包帯を見て言う。
ののか「お姉ちゃん。聞いたら、実戦だったら死んでたみたいな勝ち方じゃない」
アリア「死んでもいい実戦なんかないんだからね。まだまだよ、あかり」
あかり「うっ……はい……」
剣護「ま、よくやったと思うよ」
アリア「そうね。勝ちは勝ち。よくやったわね」
あかり「……はい!」
アリア(あたしは独唱曲だけど。この子たちの四重唱も、悪くないわね)
アリアはソーダをストローで飲みながらあかりたちを眺める。
剣護(あかりたちも頑張ってんなら……俺も先輩として頑張らねえとな)
あかり「あれっ、どこ行くの?」
ののか「ちょっと、お手洗いだよ」
ふと振り向くとののかが目元を押さえるようにして席を立っていったところだった。
剣護「ふぃー……俺もトイレ行ってこよっと」
剣護はののかが居なくなるとスッと立ち上がりそそくさとトイレへと向かった。
ののか(ど、どうしたんだろ……最近、よく……見えない……)
ののかは洗面台の前に立つと鏡に映った自分の目を見た。ボンヤリと曇る視界に困惑しつつもののかは自分が病に冒されていることを自覚する。
その時、コンコンと誰かがドアを叩く音が聞こえた。ののかは恐る恐るドアを開けるとそこには剣護がいた。
ののか「け、剣護さん……」
剣護「見えないのか?」
ののか「い、いえ……別になんでも……」
剣護「ちょっと失礼するぞ」
ののか「っ……!」
剣護「…………」
剣護はののかの目を開かせると顔を近づけてジッと見つめる。ののかは少し震えていたが剣護が左手を肩に置くと止まった。
そして手と顔をののかの顔から離すと険しい顔をした。
剣護「こいつは……厄介だな」
ののか「な、なんだったんですか……?」
剣護「………………毒だ」
ののか「っ!?」
剣護「それもかなり強力な……どんな毒かは分からんが……」
ののか「そ、そんな…………」
剣護「まいったな……あの人ならなんとかできるかもしれんが……遠いしなぁ」
ののか「あの人……?」
剣護「いや、こっちの話だ。それよりこの事をあいつらにどう説明すべきか……」
ののか「あ、あの!」
剣護「ん?どした」
ののか「この事は……お姉ちゃんたちには黙っててください」
剣護「……でも……」
ののか「お姉ちゃんには心配かけたくないんです……お願いします!」
剣護「…………わかった。でも症状が悪化し始めたら言うんだぞ」
ののか「…………はい」
ののかはそう言っていつも通りの表情であかりたちの元へ戻って行った。しばらく剣護は腕組みをして苦い表情を浮かべながらその様子を見つめるのだった。