オタク剣士が武偵校で剣技を舞う!   作:ALEX改

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第10話 佐々木志乃の策

 

剣護「んー……今日の夕飯何にしようかなー……」

 

ライカと戦姉妹契約した翌日の放課後、剣護は夕飯の買い出しに出ていた。夕飯を何にするか悩みながら歩いているとドンッと誰かにぶつかった。

 

???「きゃっ……!」

剣護「うおっと」

 

ぶつかった女の子は倒れそうになるが、間一髪剣護が腕を掴み事なきを得た。

 

???「あっ……ご、ごめんなさい!」

剣護「いや、こっちこそ悪かった。大丈夫か?」

???「は、はい。えっと……武偵高の方ですか……?」

剣護「ん?そうだけど……お兄さんかお姉さんでもいるの?」

???「は、はい。お姉ちゃんが……」

剣護「ふぅん……ちなみに名前は?」

ののか「あ、私、間宮ののかと言います」

剣護「間宮……あぁ、あかりの妹さんね」

ののか「お姉ちゃんを知ってるんですか?」

剣護「まあな。その子の友達と戦姉妹組んでるし」

ののか「はぁ〜……なるほど。ところでえっと……」

剣護「おっと、まだ名乗ってなかったな。月島剣護だ」

ののか「あ、どうも。月島さんは何用でここに?」

剣護「呼びやすい方で良いぞ。まあ、夕飯の買い出しにな」

ののか「そうなんですか……」

剣護「あぁ。そろそろ、行かないと」

ののか「あ、はい。またいつか」

剣護「おう。それじゃ」

 

剣護はそう言って駆けていくのをののかは見送ったが少し進んでから、振り返りののかの元へ戻ってきた。剣護は戻ってきてポケットから一枚のカードを取り出してののかに渡した。

 

剣護「そうだそうだ。君にこれを」

ののか「なんですかこれ?」

剣護「俺の連絡先。もしもの時は連絡してきな」

ののか「あ、ありがとうございます」

剣護「過去に何かあったようだが……まあ頑張ってな」

ののか「!?」

 

剣護のことにののかはビクッとしてなんでわかったのか聞こうとしたが既に剣護は人混みの中へ入っていた。

 

 

 

 

 

次の日の昼休み、剣護はライカに呼ばれて屋上に来ていた。

 

剣護「志乃の様子がちょっと変?」

ライカ「はい、なんというか……雰囲気がものっそいあかりに対して何かを抱いてるというか……」

剣護「……もしかしてヤンデレとか?」

ライカ「そこもよくわかんなくて……」

剣護「ふむ……ちょっと様子見してみるか……風魔!」

 

剣護が叫ぶと風に揺れる木の葉と共に何処からともなく1人のくノ一が現れた。風魔陽菜。キンジの戦姉妹で諜報科(レザド)の生徒である。

 

陽菜「お呼びでござるか。月島殿」

剣護「志乃の様子を探ってくれ」

陽菜「御意」

剣護「報酬は……そうだな。今度夕飯食いに来い」

陽菜「御意。それでは早速行ってくるでござる」

 

そう言うと風魔は木の葉と共に消えていった。

 

剣護「実は俺も妙に重苦しい雰囲気を感じてたんだ」

ライカ「重苦しい?」

剣護「あぁ。うっすらとお前らのクラスからな」

ライカ「……なんかすいません」

剣護「お前が気にすることじゃないさね。そういやお前『三日以内解消規則』は大丈夫か?」

ライカ「はい!大丈夫です。あたし1年の中では結構強いんで」

剣護「ん、そうかい。でもあまり慢心するなよ。それが命取りになることもあるんだ」

ライカ「……はい」

剣護「さて、そろそろ戻るか。次の授業始まるぞ」

ライカ「え?あ、も、もうこんな時間!?」

 

ライカが慌てて走っていくのを見て、剣護も自分もヤバいと気付くと猛ダッシュで走り教室に滑り込むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その日の放課後。剣護は廊下で風魔と会い、一緒に歩いていた。風魔の報告によると特に怪しい感じは無く普通な感じだったそうだ。

 

剣護「うーん……やっぱ人の中まではわからんか……」

陽菜「流石に無理かと。ところで一体どこに向かってるのでござるか?」

剣護「装備科の平賀文のところさ。取りに行くもんがあるんだ」

 

そしてしばらく歩くと文の部屋に着き、剣護はドアをノックすると文が出てきた。

 

平賀「いらっしゃいなのだ」

剣護「おっす。平賀さん。例のやつ取りに来たよ」

平賀「わかったのだ。まあとりあえず中にどーぞなのだ」

陽菜「月島殿、某はここで失礼するでござる」

剣護「おう、またなんかあったら頼む」

陽菜「御意」

 

そう言って風魔と別れると剣護は文のいる教室へと入った。中では文が袖に青い線の入った白い羽織を出してきた。

 

平賀「はいこれ、頼まれてた防刃防弾の特注羽織なのだ」

剣護「ん、サンキュー」

 

剣護は文から羽織を受け取るとまじまじと見てからバッと羽織る。サイズもピッタリで着心地も良く、剣護は何度も頷く。

 

剣護「うん、いい感じだ」

平賀「それはよかったのだ。他には?」

剣護「うーん……今はいいや」

平賀「わかったのだ。それでは、またのお越しをなのだ!」

 

剣護は教室を出るとテクテクと廊下を歩いていく。

 

剣護「さて……どーすっかな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

一方の志乃はあかりを自分の家に招いていた。

 

あかり「わぁ、スゴイね……!志乃ちゃんの家……」

志乃「あかりさん。家の中ではジャマでしょうから……銃をお預かりします」

あかり「あ、うん。わかった」

 

あかりはなんの躊躇もなくホルスターから銃を外し志乃に渡す。志乃はそんなあかりの太ももをうっすらを笑みを浮かべながら盗み見していた。どっからどう見ても変態である。

 

その後は金銀の装飾品に囲まれた食堂で会話をしながら夕食を楽しみ、そして今はイングリッシュ・ガーデンを歩いていた。

 

志乃「すみませんあかりさん。食後に少し散歩をしたかったから……」

あかり「散歩できるぐらいの庭があるのがスゴイよね!」

 

ここに誘い出した理由について作り話をしても、あかりは不審に思わずむしろ喜んでいる。

現在、7時45分。そろそろ頃合いだと思った志乃に呼応するかのように冷たい風が庭に吹き込む。

 

あかり「ちょっと寒くなってきたね。戻ろっか」

 

そう言ってあかりは庭の門のドアノブを握るが、ドアは開かない。それもそのはず、先ほど志乃自身が鍵を掛けたからである。

 

あかり「あれ?ここ鍵掛かってる……志乃ちゃん?」

志乃「ねえ、あかりさん。『三日以内解消規則』ってご存知ですか?」

 

志乃の問いにあかりは首を傾げる。志乃はレモンバームの葉を咥えつつ話を続ける。

 

志乃「戦姉妹契約には、契約から72時間以内に戦妹が私闘で負けたら、契約解消になる規則があるんです。戦姉が戦妹を守れなかったわけですからね。再契約も許されません」

あかり「へぇ……そんなのあったんだ。えっと、契約が教務科に承認されたのが3日前の夜8時で、今が7時45分だから……あと15分かぁ……あれ?」

 

そこまで言ったあたりで「ん?」とあかりは首を傾げる。

 

あかり(そういえば……このこと誰かから聞いたような……?)

 

頭の中で何かがぐるぐると渦巻き、あかりは少しフラッとするもなんとか立つ。そんなあかりに志乃も流石に違和感を感じたのか声をかける。

 

志乃「あかりさん……?」

あかり「うん、大丈夫……契約解消させたがるとしたら、アリア先輩と戦姉妹になりたい子だよね?そういう子はもう20人も断られたし、再申請はできない校則だから……アリア先輩狙いの人に襲われる心配はないよね」

志乃「みんながみんなアリア狙いじゃないのよ」

 

あかりは志乃に笑顔を向けるが、志乃はその顔に背を向けボソッと呟く。そして今度ははっきりと聞こえる声で尋ねる。

 

志乃「あかりちゃん。防刃制服、ゆるんでないよね?」

 

そう言って志乃がバラ園の垣根から隠していたものを取り出した。

それは外装は洋刀だが刀身は関の刀鍛冶に打たせた日本固有の軍刀である。

 

あかり「志乃……ちゃん?」

志乃「あかりちゃん。アリアと別れて」

あかり「……!?」

 

志乃の言葉に驚くあかりに、志乃はスラリとサーベルを抜き、薔薇と月を背景に黒髪をなびかせその剣先をあかりに向けた。

 

 

 


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