傷だらけの憧れ   作:時雨日和

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今回は息抜き回という名の恋愛回です。
さあ、誰と誰の話でしょう。
キャラ崩壊に気をつけてくださいね。本当に私の恋愛脳と独自設定で考えたので。


第7話 伝言

ある日の夜。校舎の屋上に白いセーラーブラウスにサスペンダー付きの青いスカートを着た、銀髪の少女がいた。

 

「…………」

 

その少女は一言も発さない。目を閉じたまま夜空を見上げているだけだった。

そこに1人、近づいてくる足音が聞こえる。

 

「星空が綺麗ですね。お嬢さん」

 

シャルルだった。少女はゆっくりと目を閉じたままシャルルの方へと顔を向ける。

 

「遅かったのねシャルル」

 

とても無機質な声だ。限りなく機械に近い声。

 

「久しぶりなのに手厳しいねクロエ。これでも反応があってから急いで来たんだけど」

 

彼女はクロエ・クロニクル。束に絶対の忠誠を誓っている少女だ。

 

「それでも、女性を待たせるのは感心しないわ」

 

「クロエも冗談を言うようになったね。ランダムで現れるような相手を待たせることなく待ってろなんて」

 

「私は冗談のつもりではないわ」

 

「ほんと食えない性格だね」

 

と、苦笑いをしながら言葉をつなげる。

 

「それで、何か用だった?」

 

「束様と風切 千早(かざぎり ちはや)からの伝言よ」

 

篠ノ之束については説明の必要ないだろう。

しかし風切 千早については説明が必要だろう。風切 千早とはシャルルがまだフランスにいた頃、路頭に迷っていたシャルルを保護した科学者兼医者の人物だ。束の指示を受けシャルルの最後の改造を施した。束が任せるほどの実力と信頼を持っていて、束同様に存在を眩ませている。

 

「そっか、2人は何て?」

 

「まず、風切 千早の方だけど。『あまり無理はしない事、そして何よりあまり公には出ない事。あなたの存在を…あなたの力を世間に見せることはとても危険な事をしっかりと心に刻んでおくこと』」

 

「心配性だね。千早さんは…それで、束さんは?」

 

「束様は『私はシーくんが面白くて興味が湧いてるからシーくんのために助けた事を忘れないでね』」

 

「…クロエなんかよりもよっぽど手厳しいよ」

 

束がシャルルに興味を無くすと言うことは、シャルルに対してなんのアクションも起こさないということ。つまり、シャルルの体内やISに何が問題が生じた場合何の手助けもしないということだ。それは千早も同様だ。束の考えと指示がなくてはシャルルの体を治すことが不可能、それほどシャルルの体内は複雑である事を示している。

 

「『なんか』とは失礼ねシャルル」

 

「おや?怒ったかい?クロエ。そんなつもりは無かったんだ、ごめんね」

 

「…別に、怒ってなどいないわ」

 

そう言ってクロエは顔を逸らす。それを見てシャルルはクロエの正面まで行って頭を撫でる。

 

「ごめんって。言葉の綾ってやつだよ。クロエの事をそんな蔑んだ見方をするわけがないじゃないか」

 

「どうしてシャルルはいつも私の頭を撫でるの?」

 

「ダメかな?機嫌をとるときは頭を撫でるのがいいって昔聞いたんだ」

 

けど、と言葉をつなげる。

 

「僕がクロエを純粋に撫でたいからってのはダメ?」

 

「…私は束様に撫でられる方が好きだわ」

 

「君の束さんに対する忠誠心と僕の君への好意を比べらるのはちょっと酷いな」

 

と言って頭から手を離した。

 

「それじゃあさあ、抱きしめてもいいかな?」

 

「…どうして?」

 

「少しの間でも会えなくて寂しかったんだ。僕は君の事が好きだからね、好きな子を抱きしめたいと思うのは普通じゃない?」

 

「…好きにしたらいいわ。抱きしめた時に私が何をするかわからないけど」

 

「ありがとう」

 

そう言ってクロエを抱きしめるシャルル。クロエは何もせずただされるがままの状態。

 

「何だかんだ言ってクロエは何もして来ないよね」

 

「今からでもあなたのお腹に風穴を開けられるわよ」

 

「してもいいよ。クロエがする事を僕は甘んじて受け入れるよ。それほどに僕はクロエを愛しているからね」

 

「…今は気分が乗らないわ」

 

「素直じゃないねクロエ」

 

「食えない性格ね」

 

「お互い様だよ」

 

消灯の時間まであと10分というところ。

 

「キス…してもいいかな?」

 

「…ダメよ。私達はそんな関係では無いもの」

 

「抱き合っているのに?」

 

「抱き合ってないわ。あなたが一方的に私を抱きしめているだけよ」

 

「じゃあ、なんで僕の服を掴んでいるの?」

 

「この方が楽だからよ」

 

「…そっか、なら仕方ないね。いつか、ちゃんと恋人同士になった時までとっておくよ」

 

「そうしなさい。幾ら経ってもその時が来ることはないけれど」

 

「そうかもしれないね…それがクロエの選択なら受けるしかない」

 

「…そうね」

 

「それじゃあ、そろそろ時間だし僕は部屋に戻るよ。お使いありがとう。2人には『承知しました。見限られないように努力します』って伝えておいて」

 

そう言ってクロエから離れて柵から屋上を去ろうとした時

 

「待って」

 

「ん?どうかした?クロエが呼び止めるなんて珍しい」

 

「私からも言っておくことがあるわ」

 

「なに?クロエからの言葉なんて」

 

「『キスは』ダメよ」

 

その言葉を聞いてまた、シャルルはクロエの正面に立ってクロエの前髪を上げ額にキスをした。

 

「キスはダメって言わなかったかしら?」

 

「唇へのキスって意味じゃなかったの?」

 

「…まあ、いいわ」

 

「うん、またねクロエ」

 

「ええ、せいぜい死なないように」

 

それを聞いてからシャルルは屋上を飛び降りた。

 

(死なないさ。姉さんを…そして君をおいて僕は死なない)

 

そして、屋上にまだいたクロエ。

 

(まったく、ほんと顔に似合わず無茶をするんだから…本当に死んでも知らないわよ)

 

クロエは静かに屋上を去った。その頬はほんの少しだけ赤らんでいたように見える。

 

(…そんな事は無いわ)




ヒロインはクロエでした。
原作とかアニメよりもかなり柔らかい雰囲気にしてちょっとツンデレっぽい感じも出してみました。クロエの雰囲気を柔らかくしたらこんな感じかなと思い書いてみました。
クロエをヒロインにした理由としては、正直メインヒロイン達以外だとクロエが1番接点を付けるのに楽だったからです。




…すいませんただの建前です。本当は普通にクロエが可愛いと思ったからです。

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