傷だらけの憧れ   作:時雨日和

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第4話 暴露と未確認

シャルルがIS学園に来てから2日が経った。

最初の頃に比べるとシャルルに対する女子達の反応が軽くなった。IS訓練の時は特殊なIS過ぎて実践的な参考にはならないが、基礎的なものは教えているし、とてもわかりやすいと評判だ。

 

「なあ、シャルル」

 

「どうかした?一夏」

 

夜、シャワーや諸々を済ませ寝る前のゆったりとしている時間、一夏はシャルルに話しかけた。

 

「俺さ、シャルの時もそうだったけどよ。お前の話を聞いた時かなりムカついた」

 

「うん、知ってるよ」

 

「シャルの時と同じだ。自分の子供を研究とか改造なんてよ…」

 

「そのお陰で僕は強くなれたし、ここにも来れるようになってる。見ようによっては悪い事だらけじゃないんだよ一夏」

 

「でもよ!」

 

一夏が声を荒らげる。正義感の強い彼なら当然だろう。むしろここで落ち着いているシャルルの方が異常とも取れる。普通なら絶望し、取り乱す事だって有り得ただろう。それが良い方に捉える見方をするとは普通は思わない。

 

「確かに最初は絶望もしたし取り乱しもした。ICチップを埋め込まれた時なんかしばらくの間うまく体を動かせなくて何日も飲まず食わずになった時だってあったよ」

 

「なら…」

 

「でも、僕はある時知ったんだ。姉さんの存在を」

 

「シャルの?」

 

「そう、もしかしたら僕がいなかったら姉さんがこんな事をされたんじゃないかって思ったんだ。姉さんは女の子だ、体に傷なんて付いて欲しくない。そう思ったらさあ、これだけでも僕の存在価値があったと思えてね…僕が父に反発したのだって、姉さんが白式についてのことで失敗した事で『あいつは使えない』だの言ってたのを聞いたからなんだよね。あ、この話は姉さんには内緒ね」

 

諦めたようでいて、ただ達観したかのようで、純粋なシャルロットの為というような感情が、シャルルから感じ取れた一夏は少しだけ胸が苦しくなった。

 

「お、おう…お前本当にシャル思いなんだな」

 

「唯一の姉で、唯一の血の繋がりだからね。大切にしない方がおかしいでしょ」

 

と苦笑気味に笑った。

 

「そうだよな。わかるぜその気持ち」

 

「同じく姉を持つ者同士だしね」

 

(そろそろ、頃合かな)

 

話が終わり寝ることにした。

 

次の日、朝のSHRが始まるまでシャルルの姿は無かった。

 

「ねえ、一夏。シャルルは?一緒じゃないの?」

 

「いや最初は一緒だったんだけど途中で職員室のほうに行くって言って別れたんだ」

 

「でも、流石に遅すぎませんか?」

 

「そうだな。もしかしたら途中で具合が悪くなったのかもな」

 

と話していると先生達が来た。

 

「今日は転校生を紹介します…と言っても皆さんはもうほとんど知って…何か前にも同じような事をしたような」

 

と段々とやる気がなくなった山田先生の言葉を聞きある生徒が教室に入ってくる。

 

「改めて、僕は『シャルル・デュノア』です。こっちが本当の名前だよ。皆、騙してて本当にごめんね」

 

その自己紹介に一瞬何人かを除く全員の空気が固まった。

 

「え?デュノアって…え?」

 

「もしかしてシャルロットさんの…」

 

「姉さんとは腹違いの弟なんだ」

 

「どおりで…」

 

「似てると思ったよ…」

 

「でも本当に男だったんだね。ちょっと疑ってたんだよね。シャルロットさんの事があったから」

 

「あはは…あんまりその事は言わないでほしいなぁ…」

 

少しの喧騒のあと、織斑先生に鎮められ授業に入った。

いつも通り時間は進んでいき昼休み。

 

いつもの面々で屋上で昼食をとっていた。

 

「シャルルさんとシャルロットさんって今まで面識ありましたの?」

 

「いや、無かったよ。お互い別の所に住んでいた訳だし、僕に至ってはシャルルの存在自体知らなかった訳だしね」

 

「へぇ、ならなんでシャルルはシャルロットの事知ってたのよ」

 

「僕は会社の施設に住んでいたんだけど、偶偶姉さんを見かけたことがあってその時は誰かも分からなかったから聞いてみたら姉さんだったというわけ。あ、もちろんその時に全部教えて貰ったわけじゃないけどね、自分で調べたんだけどね」

 

「…一夏も一夏だが」

 

「こっちも相当ね…」

 

「ふむ、愛されているなシャルロット」

 

「あ、あはは…まあ、嬉しくないわけじゃないけど」

 

「ねえ一夏」

 

「ん?どうした?シャルル」

 

「凄い素朴な疑問なんだけど、今まで一夏は皆と連携して戦ってたみたいだけど、誰とが1番一夏的に相性が良かった?」

 

その質問を聞いた他の女子達の目の色が変わったような気がする。今までとは違い無言で一夏の答えを待っている。そして、一夏はうーんと唸りながら考える。

 

「そうだな…正直皆俺に合わせてくれたりしてくれるからな。なんなら他のみんなで連携組んだ方が相性はいいと思うぜ?」

 

その言葉を聞いてその場にいた一夏を除く全員がため息を漏らす。

 

「あ、あはは…皆が大変な理由が改めてわかったよ」

 

一夏が1人だけ腑に落ちない顔をしている時、学園内にけたたましい警告音が鳴り響く。

 

「IS反応!?」

 

『そうだ、未確認のISがこちらに向かってきている。至急専用機持ちは迎撃に迎え』

 

織斑先生の通信に全員が返事をし、ISを起動させる。

 

『デュノア弟、お前はダントツにスピードがある。まずはお前1人で行き足止めをしろ。いや、むしろ出来るのならお前1人で片付けてしまっても構わん』

 

「了解です!!」

 

返事をし、ISを起動させると同時に屋上から飛び降り、すぐさま迎撃に向かった。

 

「あいつ、大人しそうな顔してやる事はワイルドよね」

 

「そうだな。だが、とても頼もしく感じる」

 

高速で目標の元へと向かうシャルル。相変わらずイグニッションブーストでも使っているのではと疑うほどのスピードを維持しながらだ。

そして、ついにハイパーセンサー無しでも目標を捉える位置まで来た。シャルルに見えているということは相手にも見えているというわけで当然とでも言わんばかりに光弾で攻撃してくる。

 

「この程度じゃ避けるまでもないよ」

 

向かってくる光弾を全て持っているナイフで斬り、無効化していく。

 

「知らないだろ?僕のナイフは特別なんだ。光弾だろうが、実弾だろうが、ビームだって斬ることが出来るだよ。強度が耐えられればの話だけどね」

 

話している間にも発射される光弾を斬り伏せる。徐々に詰めていく間合い。どんなにシャルルが話していても一言も相手は言葉を発さない。

 

「…そうか、君は無人機かい?なら話しても意味ないか。…ならせめて」

 

一度ナイフをしまい、翼についている羽根部分のナイフを両手の指と指の間、計6本を挟め、右手を相手に突き出す。

 

「本気を出させるように頑張ってね」




やっぱり、シャルルをめちゃくちゃ強い設定にしたくなりました。
…ショウガナイヨネシュジンコウダモン…反省はしています。

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