しばらく休みながら千早さんと話しているうちに僕の体は段々と慣れてきたように体の自由がきくようになった。
「千早さん」
「なに?」
「あの人は?」
「今は地下にいるわ。この学園はどうやら監禁部屋みたいなのがあるみたいだからそこにいるみたいよ。流石にそのまま逃がすことも殺すことも出来ないからね」
言葉足らずだと言ってから気づいたけど、千早さんは察してくれたようだ。
「それと、いくらやっても口を割らないみたいでね。手を焼いてるみたいよ」
「そうですか…では、千早さんは一夏達に会いましたよね?何か話しました?」
「そうね…何人かは既に知っていたけどあなたの身の上話はしておいたわ。知らなかった子達がとっても知りたがってたけど、知ってる子達があなたを気にして言えなかったみたいだし」
「そうですか…僕から早めに言えば良かったですね」
「気にする事はないのよ。言いづらい事だもの」
「…今日はやけに優しいですね千早さん」
「流石の私でも今のあなたの状態で厳しくなんて出来ないわよ」
「とにかくありがとうございます。代わりに言ってくれて、みんなは何か言ってました?」
「特に何も。強いて言うなら早く目を覚ませって言ってたわ」
「優しいですね。みんな」
「ええ、そうね」
「僕もう動いても大丈夫ですか?」
「…そうね。行くの?」
「はい、みんなには悪いですけど先に行かなきゃならない気がして」
「そうね時間はないと思うわ」
「では、行ってきます。心配しないで下さい。僕はもう同じ事は言われません。」
と言って千早さんの返事も聞かずに保健室を出ていく。その時声をかけられた。
「待て、デュノア弟」
「織斑先生」
「もう動いても大丈夫なのか?」
「問題ありません。迷惑と心配をかけてしまって申し訳ありません」
「全くだ。しかし、それで助かったのも事実だ。それと、あのIS乗りについてだがお前に処遇を一任する」
「僕にですか?」
「ああ、何をしても口を割らん。これ以上は殺してしまう可能性が出てくるからな、いっそお前に任せてみる事にする。本当は問題なのだが、仕方あるまい」
「…わかりました!」
「うむ、では行ってこい」
「はい!」
「それとだな」
「?」
向かおうとし、踵を返した時また織斑先生に声をかけられた。
「やつは『どうせ殺される。消される』と言っていた」
「…」
その言葉を聞いて僕は少しだけ口角を上げて答えた。
「予想通りです」
そして、僕は地下へと向かった。
その場所は普段の学園とは比べ物にならないほど澱んでいた。空気的なものもだが、雰囲気からそれが伝わった。
そして、その部屋に近づくにつれて憎悪と殺意、そして悲観の念が感じられた気がする。その扉を僕は開けた。
「気分はどうですか?」
開け放たれたその空間はとても暗く目の前を見ることすら困難だ。しかし、困難というだけで見えない訳ではない。それに、手持ちのライトをつけた。そこには壁に繋がれた手錠に両手をはめられた赤黒い髪をした女性がいた。体つきから見てあの人なのだろう。
「……」
その人も声と光に反応したのか顔を上げた。明らかに衰弱し、目は虚ろで顔色にも生気がないと感じさせるほどだ。僕の声に返事をしないのは抵抗なのだろう。
「声を聞けばわかると思いますが、僕はあなたを拘束したフルアーマー型のIS操縦者です」
「…お前か」
自己紹介をしたところ反応が返ってきた。きっとそれこそ憎悪とかなんだろう。
「そうですよ。そして、あなたの処遇を任されました」
「…」
「つまり、活かすも殺すも僕次第という事になりました」
「…どうせ、すぐに私は殺される」
「それは、あなたのいる組織にですか?」
「…」
「沈黙は肯定と捉えますね。では次あなたの名前は?」
「…R」
「コードネームか何にかですか?」
「どうだろうな」
「まあ、そういうことにしておきます。次、あなたの組織は?そして、目的は?」
「……」
流石にこれは答えないか…ちょっとだけ脅してみるかな。僕は持ち合わせているナイフを取り出した。
「脅しのつもり?」
やっぱり気づくよね。僕だって本当はやりたくはない。
「ええ、脅しになるかならないかはあなた次第ですよ」
そう言って僕はライトを消した。
「システム『アサシン・ザ・リッパー』」
気配を消し、呼吸音すらほとんどしない。もちろん足音も消している。最初に姿を見せなければ居ることすらわからないだろう。
しかし、Rは呼吸一つ乱すことなく平然としている。それは首筋にナイフを当てても、少しだけ切り傷をつけても変わらなかった。そういう訓練を積んでいたのか、それとももう諦めているのか。
「終わりか?」
「…ええ、感服しました。これは僕では手に負えませんね。待ちますか?あなたの組織が来るのを」
「……」
「無言は肯定…いえ、この場合は否定と受け取ります。あなたは死にたがってませんし」
「何を勝手な…それに、死にたがってようがなかろうが私は死ぬんだよ」
「いいえ、あなたは死にません」
「何を根拠に…」
「僕がここに来たのはあなたから話を聞きに来たわけでも、殺しに来たわけではありません…あなたを防衛しに来ました」
「な…」
そう言っていると外から何人もの人間が重装備しながら走ってくる音が聞こえる。本当に予想通りだ。織斑先生にも不穏な人たちが地下室に来るようなことがあってもそのままにしておいて欲しいと言っておいた。それに…
僕は『アサシン・ザ・リッパー』を解き、扉の前に立ち1度首だけを後ろに向けながら言った。
「…別に、あの人たちを殺してしまっても構わないのでしょう?」
殺しの許可は得ている。
お気づきの方もおられるでしょう。シャルルのシステムはFateのクラスをモチーフにしています。今後も出てくるのでどれがどれだかを考えながら見てみてください。
明日からFateGOに新章が追加されるので遅れることが予想されます
申し訳ありません