運転免許取得のためにめちゃくちゃ勉強していてそれどころではありませんでした。
無事取得出来ましたのでこれから今までよりも遅くなるかも知れませんが、また書いていきます
落下していったシャルルは海に着水する直前で一夏によって受け止められた。
「おい!シャルル!しっかりしろ!」
どんなに呼びかけてもシャルルからは返事が帰ってこない。体に傷が無いところを見るに相手の攻撃を受けた訳ではないだろう。と、一夏は考えていたがある事を思い出した。
『僕はISと接続している』
『使い過ぎるとICチップを通して機能を停止させる』
「機能って体の機能ってことかよ…」
『織斑、デュノア弟は無事か?』
「ち…織斑先生、シャルルは無事です。ただ…」
『わかっている。すぐに全員捕まえたISと操縦者を連れて戻れ』
という指示を受け学校へと戻っていく。もちろんその間にもシャルルは動くことは無かった。
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何事もなくシャルルと拘束していたIS操縦者もシャルルの拘束が外れることなく運ぶ事が出来た。それからはシャルルは治療室へ、IS操縦者はISから離し別の場所へと移動させられた。
6人はシャルルの入っている治療室の前にいた。先に疑問を投げかけたのはセシリアだった。
「どういう事ですの?どうしてシャルルさんは突然気を失いました?」
それに賛同するように鈴が言葉を繋げた。
「そうよ、別に相手が攻撃したりしたわけじゃないのにISまで解除されて」
箒は何も言わないがおそらく2人と同じ意見だろう。事情を知っている3人としては言っていいことなのかはっきりしない。事が事なだけにまた起こるかもしれない事態なのだから言う必要があるとは思うが、シャルルの過去をそして、事情を勝手に話してもよいものかと黙っている。
「教えてあげましょうか?」
「え?」
その声に反応し、6人とも声の方へと目をやった。
そこには背中の真ん中あたりまで伸びた赤髪に眼鏡をかけ、スーツの上に白衣を着た、見覚えのない女性がいた。
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「どういう事だ?」
アスピラションは困惑したようで疑問を投げかけた。
「言葉通りの意味だよ。どちらかを僕が選ぶことは無いよ。姉さんには一夏がいる。まあ、これは一夏が姉さんを選ばないと始まらないけどね。そしてクロエには束さんがいる。あの子の束さんへの忠誠心は凄まじいからね。どれだけ僕が好意を寄せても振り向いてはくれないかもだからね。」
シャルルはいつもの微笑みをする。達観したようでいて、諦めであるような微笑みを。
「本当にそう思っているのか?」
「…本当は少しだけ寂しいって思いはあるよ。でも、ふたりが幸せになるのならそれだけで僕は十分だよ」
「では、あなたはどうする?」
「…君がいるじゃないか。例えみんなが僕の前から消えても君は消えないでいくれるって僕は思っているよ。今の質問だって僕を気遣ってくれているんでしょ?」
「………」
「君は優しいよ。仮初である僕に君は付いてきてくれるんだから。ほんと、よくついてきてくれた。僕の乱暴で横暴で自分勝手な動きしかしない事にも文句も無くついてきてくれて、こんな時にでも君は出てきてくれた。君こそ本当の『憧れ』だ」
少しだけ悲しいというより泣きそうな表情をしながらアスピラションを見つめている。
それを聞き次はアスピラションが話し始める。
「色々と訂正させておきたいことはあるが、これだけは訂正させて貰う。私は嫌々あなたについていっている訳ではない。私の意思であなたについていっている。本当に嫌であれば私は意地でも起動しないからだ」
「……」
「私は感謝しているぞ。試作品として作られてからずっと眠っていた。それもそのはずだろう、並の人間では私は扱えない。その時に現れたのがあなただ。あなたは確かに意図的にISを動かせる体にされているし、肉体も強化されている。しかし、不謹慎かも知れないがそのお陰で私は陽の目を見れた。あなたこそが私の『憧れ』だ」
マスクで顔め表情も見れないが、声色だけでの判断ならとても柔らかい表情をしているのだろうとシャルルは感じ取った。
「そっか、君はそんなふうに思っていてくれてたのか…とても嬉しいよ。これからも君には負担をかけるかもしれない、もしかしたら君を壊してしまうかもしれない、それでもついてきてくれるかな?」
「私はあなたの刃であり、盾であり、銃弾だ。存分に私を使ってくれて構わない。私の主よ」
「うん。頼りにしているよ」
そう言ってシャルルが微笑んだ後今度はシャルルの体が立体映像のように消える。
「またね。アスピラション」
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シャルルが目を覚ました時、そこはシャルルにとって見慣れない場所だった。ただ、そこが校内であり保健室のような場所だろうという事は察した。
「ぁ…やっと起きれた…」
起きたが、シャルルの体はまだ満足に動かせない。腕は指先から肘あたりまでしか動かせない、足もつま先から膝あたりまで、首も少しだけ動かせる程度だった。
「随分長い間眠っていたわね。まあ、正確に言えば止まっていただけど」
シャルルにとって聞き慣れているが、ここに来てからは久しぶりの存在でここにいるはずのない人物の声。
「どうして…いるんですか?…千早さん」
「…まだ機能は戻りきっていないのね。
予想できたからよ。君が無理をして機能停止するのがね。せっかくクロエに伝言までしてもらっていたのに」
千早は呆れたようにため息をつきながら言った。
「すみません…でした…」
少しだけ目を伏せながらシャルルは謝った。それを呆れた表情のまま千早は続けた。
「まあ、いいわ。大事には至らなかったし、何より束が喜んでいたからね」
「束さん…が?」
「ええ、『流石シー君はわかってるねぇ』って感じで」
「……」
「でも勘違いはしないで、私は束とは違うわ。無理をしないこと、君に力があるのは十分わかっているけど、制約があるのも事実、それを越すとどうなるのか君ならわかるわよね?これは科学者であり医者である私の言葉」
「はい…」
「そして…」
「…?」
さっきまでベッドの横に立っていたのをしゃがみ、シャルルと目線を合わせてからシャルルの頭を優しく撫でた。
「千早…さん…?」
「君を拾って、母親代わりとして育てた私個人の言葉よ。君は傷つくのは自分だけでいいって思っているかもしれないけど、命は1度無くなったら完全には戻せない。それは、私だろうと束だろうと不可能よ。それはもちろん改造された君だろうとISのような機械でも一緒よ。必ず直しても綻びが生じる。この世に100%なんて存在しない、わかっていると思うけど忘れない事、君が傷ついて悲しむ人たちもいるのよ?君は気づいてないの?」
「…いいえ…」
「いい友達を持ったわね」
「…はい」
千早はシャルルの頭から手を離し、また立ち上がる。
「それで、止まっている間に何を見たの?」
「…僕の…憧れに…会いました」
「そう…」
機能停止していて上手く表情を出せないシャルル、それでもとても楽しそうに話している事が千早には伝わり優しく微笑んだ。
その光景はまるで親子の団欒を見ているかのように思えた。
まあ…無理矢理でしたかね?