弱ければ相手から何もかも奪えばいい。   作:旋盤

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初めて、ルビを使った。変な感じじゃなければいいな。それに、初めて八千文字いったぞ。長かった。どうか、暇なときでも、最後まで見ていって下さい。では、ゆっくりしていって下さい。


闇騎士ゼギアノス

ガンッ!!

 

金属同士がぶつかり合う音がする。光が無い洞窟の中を火花で明るく照らす。それは絶える事無く続く。

 

ガンッ!!

 

その音はまた響く。その音は一つなぎに聞こえるが、耳を凝らせば数回響いているのがわかる。そして、火花もまた、同じ箇所で起こらず一瞬で数カ所に起こる。

それは、人とは思えない者同士が常人には決して届かない高みで戦っているのだった。

 

「はぁ!!」

 

「フン!!」

 

刀と細剣がぶつかり合う。それだけで多大な火花が飛び散る。二人は剣をぶつけ合う。どちらかが敗北するまで。どちらかが死ぬまで。

二人は幾度となく剣をぶつけた。二人は同じ位置にいることは無い。何度も動いて、相手の背後をとって、相手の虚を突いて、二人は殺しあっていた。

 

「ウオらぁぁ!!」

 

「グッ!!」

 

刀が振り下ろされそれを細剣で受け止める。それだけで地面が割れ砂埃が舞い上がる。細剣が動き刀が空を切る。細剣を持つ騎士がその隙を逃さず、刀を持つ少年の心臓にむかって細剣を突き刺す。それを少年は体を捻って回避し捻った反動を利用し一回転して相手の鎧の隙間を狙い、刀を横薙ぎに一閃する。だが、騎士は体を動かして鎧に刀が当たる様にした。

 

キィィィン

 

金属が鋭い物で切り裂かれるような音がなる。いや、刀が鎧を切ったのだ。

 

「グッ!?」

 

騎士が後ろに引く。それを少年は追撃する。幾たびもの火花と金属がぶつかり合う音がする。それは、暗いはずの洞窟を明るく照らし幻想的な光景にも見えた。

 

 

 

幾度剣を振るったかわからない。ただ、思うことは目の前の敵を殺す事だけだった。剣を振るうのは、野生の勘や直感に近い形だった。動きにしてもそうだった。

 

「はぁ!!」

 

気合いとともに剣を振るう。それを相手は剣で受け止める。そのタイミングで〈神速〉を使い、相手の背後を取る。

 

「何!?」

 

相手の声を無視して相手の首めがけて刀を振るう。

 

「もらった!」

 

だが敵は一瞬で屈み刀を回避した。まじか!と思っていると敵が振り返りその細剣を俺の首めがけて振るわれる。それを〈神速〉で回避して距離を取る

 

「いい手だった。だがその程度の事生きている内に今まで多くの者がしてきた。そんなものか?貴様の守りきる覚悟とやらは。」

 

「ハッ。言ってくれるぜ。」

 

やはり一筋縄ではいかないようだ。まず、戦ってきた年季が違いすぎる。あらゆる攻撃手段を見てきているからこそ、不足の事態における対応速度が違う。一撃を決めるには相手の反射速度を上回る必要があるし、相手が見たことの無い技を使う他ないだろう。勝算は低いだろう。だが、こいつに勝ってみせる。

〈神速〉を使い敵との距離を一気に詰める。刀を敵の肩口から反対の横腹までを切り裂くように振る。それだけでは終わらずそれを横一閃に切り裂こうとするも、敵は危なげも無く回避する。敵が細剣でこちらの肩を狙うがそれを回避する。〈神速〉を使い敵の背後を取り攻撃すると見せかけ、再び〈神速〉を使い敵の真横に移動する。そこから敵を串刺しにせんと突きを放つがそれは避けられる。だが、完璧に避けきれず鎧に傷を作る。虚はつけていた。だが、決定的なものには至らなかった。今度は敵が細剣で胴体めがけての突きを放つ。それを完璧には避けきれず胴体に多少深い傷を作る。多少の切り傷には慣れていても深い傷には慣れていなかった。それを見逃す元帝国騎士団長ではなかった。怒涛の連撃だった。突きから斬りはらい、止まることの無い連撃を凌ぐのに必死だった。防御に徹しても防ぎきれなかった攻撃が腕や足、胴体、顔に切り傷を作る。だが、相手が何度目かの突きを放つタイミングを見切り、それを回避して突きを放つ。それは胴体を完璧に捉え胴体に突き刺さる。

 

「グゥゥ」

 

相手が苦悶の声をあげる。だが相手も反撃してくる。刀を引き抜いた直前に蹴られ吹き飛ばされる。それを数メートル飛ばされたその時に相手がとてつもない速さで突進してきた。それを横飛びで回避しようとするも間に合わず、右手に細剣が突き刺さった。

 

「グッ」

 

今度はこちらが、苦悶の声をあげる。敵が剣を引き抜いたタイミングで敵を蹴り飛ばす。相手が倒れる事なく飛ばされていく。

 

「ハァ、ハァ…フゥ」

 

「ハァ、ハァ…ク、ハハハ」

 

二人とも疲労困憊、満身創痍だった。二人の体と鎧は傷だらけで、アンデッドは疲労することは無いと思っていたが、存外そうでは無かったらしい。そんな状況であるのに敵は笑い出した。

 

「いや、すまない。戦い慣れしていない様なのに貴様は、私に戦う意思を示した。それも、私を殺す意思をだ。だが、私との戦いで貴様は確実に腕を上げている。」

 

元帝国騎士団長に言われるとなんか、現実味があっていいね。だが、それは、自分でも感ずいてはいる。相手の技を見て回避するすべを感覚で覚え、相手の技を見てその技を吸収していた。だが、

 

「いずれ、私に追いつくだろうが、まず、その疲労と傷で貴様が先に死ぬだろう。」

 

その通りだ。このままいけば、俺は死ぬだろう。傷を回復する手段が無く、この疲労だ、敵の状況はわからないが、その予感がある。さっきの突進も気がかりだ。

 

「そこで、どうだろう、次の一撃で決着を付けるというのは。貴様はまだ切り札を隠しているのだろう。」

 

「ああ。その通りだ。だが、それを使えば…」

 

お前を殺せる、と言いかけ、止める。この様な相手に全力を出さなければ男として失礼だと思った。

 

「いいだろう。その申し出受けよう。」

 

一泊ほど間を置いて、

 

「全力で葬ってやる!」

 

それは覚悟に近いかもしれない。利き腕はあまり動かせそうに無いだろう。それだけでも不利だ。さらに、そこに経験の差があるときた。不利としか言いようがないだろう。だが、それを補うしかない。

 

「フッ、そう来なくては。」

 

二人の距離が開く。あくまで、こちらが不利だが、思いついた手ならある。あとはタイミングだろう。その前に、

 

「〈能力超向上〉」

 

奥の手を使う。この戦いを楽しもうとして使わなかった技だ。

 

「〈能力大向上〉」

 

敵が似た様な技を使った。技名からして〈能力超向上〉の下位互換だろう。

 

「ほう。〈能力大向上〉の上が存在していたのだな。この戦いに勝ったらそれを習得するのもいいな。」

 

「ハッ。ここら辺にいた猿が普通に持っていたぜ。」

 

「そうか、貴様の強いステータスの割に技が未熟だったのはそういう事か。」

 

俺が強くなった理由を知られたか。まぁ、いいだろう。ここで死ぬ奴に知られたところで、意味は無いだろう。

二人が武器を構える。

 

「私のスキル〈突進〉は高速で移動し、相手のどこかを貫くスキルだ。」

 

敵に自分の技を知らせるとは自信の表れかそれとも、死を望んでいるのか。それとも、こちらの不利の差を技を教える事で補わせようとしているのか。これなら、俺を舐めているとしか言いようがない。

あちらが技を明かすのならこちらも明かすまでだ。

 

「俺の技はスキル〈神速〉を使う神速の太刀だ。カウンターでいかせてもらう。」

 

「フッ」

 

相手が薄く笑う。

 

「貴様の名はマグナと言ったな。」

 

「そうだ。」

 

「その名、しかとこの胸に刻んだぞ。」

 

敵は腰を落とし、細剣を後ろに引きいかにも強力な突きを放つつもりだ。対する俺は剣を左手に持ち、後ろに構える。利き手じゃない分、違和感があるが、多分、問題ないだろう。俺が放つ技は〈神速〉を用いた神速の太刀、日本では居合斬りと呼ばれていた様な技を使う。もちろん、初めて使う技なのでこちらから、踏み込みはせず敵の動きに合わせ、カウンターで仕留める。

 

「では、いくぞ。」

 

敵がものすごい、速度で突進してくる。あと数歩踏み込めば、細剣と刀の間合いだ。

まだだ。

あと五歩。

あと一歩。ここだ。

俺は〈神速〉を使い、一歩踏み出し刀を横一閃に振るう。それは鎧の中心部を深々と切り裂き、切れた鎧の隙間から、心臓の様な赤色の何かが切れているのが少し見えた。

敵の細剣は俺が一歩踏み出した事によりタイミングがズレたが、スキルではあるので、左肩を貫かれる。

 

『スキル〈一閃〉を習得しました。』

 

無機質な声が響く。だが、そんな事より、

 

「俺の勝ちだ。」

 

「ああ、私の負けだな。」

 

そのまま騎士は倒れこむ。それから、壁に寄りかかり、光に包まれ消えようとしていた。

 

「貴殿の覚悟、見事であった。その不利な状況でも抗う強さがあれば、守りたい者も守り抜けるだろう。」

 

「ああ、そうかよ。だが、お前は俺に勝ちを譲っただけではないのか?」

 

単純な疑問をぶつける。

 

「そんな訳ないだろ。騎士は敵が全力を出して戦っているのに手を抜く訳ないだろ。」

 

「そうかよ。」

 

しばらく、沈黙が訪れる。

 

「貴殿の最後の技、見事であった。」

 

「そうか。その賞賛ありがたく受け取る。それと、その技の名前は〈一閃〉という名前になった。」

 

「そうか。初めて使う技だったのだな。それにしても自ら挑んだ勝負に負けるとは。久しぶりに、いい勝負をした。あれが、今生の最後の戦いとなるのならば、我が人生の最後に素晴らしい事が起こったものだ。」

 

ゼギアノスは守りたい者を帝国という自分が属したものによって殺された。それは、ゼギアノスを守っての事だったので、帝国の目的はゼギアノスを殺す事だったのだろう。愛する者を失い、属した軍には、裏切られる。壮絶なものだっただろう。

 

「貴殿に私に勝った祝いの品を渡すとしよう。」

 

「テメェも、モンスターならドロップアイテムがあるだろ。」

 

「私の最後の戦いを、楽しませてくれた勝利者に、これから役立つもの位、贈ってもいいだろう。」

 

「それならば、ありがたく受け取ろう。」

 

断ったのだが、騎士はこの戦いの報酬と礼を含めて渡そうとしていたので、貰うことにした。貰わぬば、失礼にあたると思ったからな。

 

「まずは、その傷を治す為と、これから必要になる治癒のポーションをやろう。」

 

ゼギアノスは何も無い空間から中に赤い色の液体が入った、小瓶を取り出した。それが十本あった。それを地面に置く。その内の一本を取り、蓋を開けて、中の液体を飲み干す。味は、苦くは無い。だが、美味しくも無い。微妙な味だ。すると、傷だらけだった全身が一瞬で治る。細剣によって穴が空いた、右手と左肩も治り、動かしても、問題なかった。それの残り九本をアイテムポーチに入れる。

 

「次に、その服装では舐められるだろう。これを持っていけ。」

 

ゼギアノスが何も無い空間から、赤黒い服の上下と紺色のロングコートを取り出す。

 

「これを持っていけ。」

 

その服を受け取り、その場で着替える。元から怪しい顔なので怪しさが増大しているだろう。

 

「次に、その強さを隠す、スキルを与えよう。」

 

「スキルを与える事が出来るのか?」

 

この世界に来て、日は浅いが、スキルは与える事が出来ない。という固定観念があった。

 

「エリアボスの特権だ。普通はできん。」

 

エリアボス?新しい単語だ。それより、スキルを与える事は普通はできない。そこは俺の読み通りでいいんだな。

 

『スキル〈完全偽装〉を与えられました。』

 

完全偽装。これは、俺が〈測定〉を使用した時に強さの割にレベルが低かった理由か。

 

「〈完全偽装〉は己のステータスを偽る事が出来る。さらに、自分の強さと雰囲気をステータスと同じ位に出来る。」

 

それで、完全偽装か。ステータスだけにとどまらず、強さや雰囲気までも。ん?まてよ、

 

「お前、これを使ってステータスを弱くしていた。と言う事はしていないだろうな。」

 

「そんな事をしていたら、私の負けは揺るがなかっただろう。」

 

本気を出し尽くした。と言う事だろうか。それなら、良いのだが。

 

「それとは、別のスキルだが、役立つスキルである事に変わりは無いからこのスキルも持っていけ。」

 

『スキル〈看破〉を与えられました。』

 

「それは、相手の嘘や言葉の裏に隠された思惑を読み取る事ができる。さらに、幻術などにかからなくなる。」

 

確かに使えるスキルだ。

 

「次に、簡単な質問だ。お前はどんな事をしても守りたい者を守れるか?」

 

「その質問の答えは、さっきの戦いの最中に言ったぞ。守りたい者を守るためなら、俺はどんな事でもするだろう。だが、その過程で救える命があるならば、その命も救う。」

 

それは、子供の頃に持った夢を捨てきれず、時が経ち現実を知り、不可能だと思い知り、それでも捨て切れなかった夢の残骸だった。救える命は救う。人は全ての人を守れない。この現実は覆しようが無い。

 

「そうだったな。」

 

この想いからもう変えようとは思わない。たとえ、この身が滅びるとしても。たとえ、幾万の犠牲が出ようとも。たとえ、その守りたい者から、全ての者から嫌われようとも。俺は守ってみせる。

 

『職業が〈闇騎士〉になりました。』

 

ッ!!いきなりなんだ!職業?

 

「これは、職種を極めるとできるようなものでな。普通は特殊な条件をクリアしないといけないが、お前には不必要なものだろう。」

 

こいつ、俺の職業が〈無職〉の事まで知り得たのか。

 

「すまないな。何から何まで。」

 

こんなに貰ってしまって、良いのだろうか?些か、貰いすぎている様な気がする。

 

「何、良いのだ。今から死んでしまうのだから、持っていても仕方が無い。なら、使うものの手に渡した方が良いだろう。」

 

その通りだ。持っていても意味がないなら誰かに渡した方が良いだろう。自分に勝った報酬として。

 

「話は変わるが、貴殿よ。」

 

「どうした?急に。」

 

「貴殿がよければ、ゼギアノスの名前を名乗らぬか?」

 

「どう言う事だ?」

 

「そのままの意味だ。私の家名を名乗る気はないか。と言う意味だ。」

 

家名だったのか。てっきりお前の名前と思ってた。

それは、置いといて。さて、こいつの家名を名乗るか。か。それならば、

 

「良いぞ。その家名名乗ってやる。」

 

カッコイイじゃないか。守りたい者の為に命を張った男はカッコイイじゃないか。そんな男の家名を名乗れる事に何の躊躇いも躊躇も無い。

 

『名前が「マグナ・ゼギアノス」に変更変更されました。』

 

名前って、簡単に変わるよな。思ったら、思った通りに変わっていくな。元の楠木龍一という名前は嫌いでは無いし、愛着も少しはあった。だが、異世界という事で名前も変えていきたかった。

 

「これで、俺はお前の義理の息子みたいなものになったのか?」

 

少し、思った事をいう。元の世界の親に不満も何も無い。どちらというと、感謝している。だから、親に不満があった訳では無い。ふと、思った疑問を聞いただけだ。

 

「それは、貴殿の自由だ。しかし、息子か。私達に子供はいなかったが、貴様は私そっくりではないか。顔などでは無く、思想などが、な。」

 

「そうかよ。」

 

親は誰かと聞かれたら、「ゼギアノスの子供だ。」とでも言っておくか。

 

「それにしても、お前、消えるの遅くないか?」

 

今まで、話していても、体が、薄くなっている程度って今までと違い、遅いぞ。

 

「強いモンスターほど消えるのには時間がかかるのだよ。」

 

そういう事にしておこう。そして、この世界の知識として、頭の中に留めておこう。

 

「今から、消えるには、少々時間がある様だ。何か、聞きたい事があれば、できる限り答えよう。」

 

「お前が生きていた時の魔族の待遇や状況を聞かせてほしい。」

 

ちょっと、聞いておきたかった、全種族から、敵視されているって実際どの程度のものなのか、知りたかった。

 

「そうか、お前も魔族だったな。私が生きていた時は、魔族は見かけたら、騎士団へ報告してあたりを捜索して見つかったら、殺されていた。まぁ、中には自分で見つけて、殺していく奴もいたがな。」

 

え。そんなに?そんなに、酷い扱いなのか。何というか。人種差別反対。そんな標語を掲げたくなる気分だ。

 

「貴族などになると、邪魔な存在を魔族扱いして、帝国が殺す。という事もあったな。」

 

うわぁ。クズだな。人としてクズだな。そして、いつの世も、どんな世界も、人の世には、そんな人間もいるのだな。いつの世も人が権力や力を持つと、ろくな事がない。まぁ、俺も人だがな。

 

「まぁ、王国の有力な貴族は魔族と結婚したそうだがな。その時、王国は反対したと思うが、その貴族がいなくなると、まずい事になると思ったのか、それとも、その貴族が裏で、王が納得のいく金額を掴ませたのか、それとも両方か。私は分からぬが、その様な事があったと聞く。」

 

おぉ。その貴族と一緒に話しでもしたいな。多分、死んでるけど。

次は何を聞こうか?そうだ。これがいい。

 

「お前が守りたかった者の話しでも聞かせてくれるか?」

 

「あぁ、もちろんいいとも。」

 

早。即答か。

 

「マリーは私のいた、屋敷で働く、メイドだった。私に献身的に尽くしてくれている内に私は彼女に惹かれていった。まぁ、私の片思いだったと思うから、彼女幸せになれる様に、」

 

「出て行きたい時に出ていっていい。」

 

「と、言っておいたのだが、それを言った時に彼女から、悲しい顔をされたので、その時は、」

 

「お前が出て行きたくなければここにいろ。」

 

「と、言ったが。その時に嬉しそうな顔になったので、その顔に私は釘ずけになり、ずっと見ていたかったが、そういう訳にもいかず、その時は去ったが。何故、あの言葉を言って、悲しい顔をされたのか、よく分からない。」

 

うわ。結構長々と喋り出した。それに、こいつ、鈍感過ぎだろ。彼女、お前のこと、多分、好きだったぞ。多分だけど。

 

「それに、彼女は………」

 

まだ続くのかよ。長い。今までの会話からして、そんな長くない会話と思っていた自分がいたぞ。奴、延々と喋り続けているぞ。長いな。

 

それからしばらくして……

 

「そして、私は帝国に呼ばれたのだが、それは、帝国の罠だった。強すぎた私を嫌ったのだろう。私はその時、彼女を連れてこいと、言われたので、彼女に関係がある事と思って行ったのだが、」

 

長かった話も終盤だ。もう少しで終わるだろう。

 

「城に着いて、中に入ったらいきなり、何人もの兵士が私を殺そうと、マリーを殺そうとしてきた。マリーを守りながら逃げようとしていたが、数が多すぎた。」

 

確かに、それでは、守りながらの戦いは不利だろう。

 

「そして、とうとう、私に剣が突き刺さる、刹那、私を庇いマリーが私が受けるはずだった、剣をその身に受け止めていた。その時ほど、自分の弱さに腹が立った事はない。その時ほど、自分の強さに自惚れていたと実感させられた事はない。」

 

その言葉を、自分に言い聞かせる様に、怒鳴る様に言った。

 

「それから、目の前が真っ白になり、近ずく敵を全て斬り伏せた。そして、彼女を連れて脱出した。」

 

おぉ、そして、それから、墓を建てたと。そういう事か。

 

「それから、私は、死者復活が闇属性魔力魔法でできるという噂を耳にして、闇属性魔力魔法を極めようとした。」

 

まだ、続くか。いい加減飽きてきたぞ。それに、もう、あいつの体、今にも消えそうなくらい、薄いぞ。

 

「知っての通り、魔力魔法は魔力の最大値を消費して、極める。当時の私に極める程の魔力は無かった。だから、モンスターを倒して、レベルを上げ、極めた時には、遅すぎた。魔法は効かなかった。」

 

それは、悲しいな。愛した者を復活させる希望を持てたのに、それからも、裏切られたのだから。

 

「そして、いつの間にか倒していた、ここのエリアボスになり代わりここのエリアボスになっていた。」

 

え?エリアボスになり代わる?ちょっと、今、聞き捨てならない言葉があったぞ。

 

「そろそろ、時間の様だな。貴殿との時間、楽しかったぞ。」

 

うわ。聞こうと思ったのに聞きにくい雰囲気になった。

 

「それでは、さらばだ。義理の息子(ムスコ)よ。私の様には、なるなよ。」

 

「ッ!!お前の様にはなるかよ。俺は何がきても、守り通してやる。」

 

「いい返事だ。」

 

消えゆく騎士、いや、

 

「じゃあな、義理の親父(オヤジ)。」

 

「ッ!!」

 

そして、騎士は消えていった。最後に驚いていた様だが、無視しよう。

 

「いやぁ、見事な戦いでしたね〜。」

 

いきなり、後ろから第三者の声がした。今まで〈索敵〉に反応がなく、突然、そこに現れた様な感じだ。

そして、その姿を見て、固まる。だって、こいつ、

 

「なんで、お前がここにいる。俺をここに送り込んだ。神様みたいな奴。」

 

そう、そこにいたのは、俺をここに送り込んだ。張本人だった。




どうでしたか?面白ければ幸いです。
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