弱ければ相手から何もかも奪えばいい。 作:旋盤
ゆっくり見ていって下さい。
遠くに轟音が響くのを聴きながら、歩いて行く。
後二人の名前を決めなければならない。
なるべく変な名前にしないで、しっかりとし名前をつけてあげたい。
俺にそんな事が出来るかはわからないが、出来るだけやってみよう。
しばらく歩くと、
「見つけましたよ!」
その声は、前方から聞こえ、その言葉を聞いた瞬間逃げ出したくなったが、名付けがあるので逃げられない。
それがなければ本気で逃げていたところだろう。
燻んだ白髪の女性が、近づいてくる。
「私の話の途中で抜けださないで下さい。さあ、続きを話しますよ」
そして、長くなりそうな話が始まろうとしたところで、
「まあ待て。今はお前の名付けをするのが先だと思うのだが」
「名付けですか?」
彼女は首を傾げている。どうやらあまり名前に頓着しないようだ。
というか、魔物自体名前に頓着しないのではないか?
「神であられる御身自身が考えてくださるのですか?」
「ああ。その通りだ」
言葉の最初か最後に神ではないのだが、と付けたかったが話がややこしくなりそうなのでやめた。
「そうでしたら、是非お願い致します」
そして、俺の前に跪き祈るような姿勢になる。
「そうだな。お前の名前は、〈ブラム〉この名前でどうだ?」
〈ブラム〉これもなんとなくこんな感じがするといった感じだ。
宗教と聞くと、まずは信仰者が真っ先に思い浮かぶが、その次が、罪なのだ。
なので、最初はシンというのにしようとしたが、男っぽいので、〈ブラム〉にした。
どちらにしてもあまり良い意味ではないのだが。
「〈ブラム〉ですか。……」
少し考え込み、そして、不敵な笑みを浮かべる。
「良いですね。フフ。〈ブラム〉それが私の名前ですか」
「気に入ってくれて何よりだ」
どうやら、問題は無いようだ。
名付けで結構ドキドキする。気に入られなかったらどうしようか。なんて事を考えてしまう。
必死に考えてはいるが、何せ時間が少ない。そんな時間の中で出来た名前が良いか悪いかと考えると、どうしてもマイナスに考えてしまう。
「では、後一人残っているので俺は行くぞ」
そして、俺はその場を去ろうとした。
しかし、
「待って下さい。次に行く前に私の話の続き…いえ、初めから言わせていただきますね」
マズイ。今この時にこいつの話を聞き続けると、日が暮れてしまう。
どうする?早く逃げないとかなり長い話を聞くことになるぞ。
さて、どうやって逃げるか。
「大丈夫だ。俺の強さは神と同等かそれ以上の存在だ。そして、お前達を生み出した。お前達の今後の活躍に期待しているぞ」
それとなく話題を逸らして誤魔化せるか?
「フフフ。そんな事当たり前ですよ。名を受け賜わり、さらに強くなった私の力にご期待下さい」
おっ。意外に誤魔化せてそうだな。
「ああ。期待しているぞ。まあ、力を振るうのは当分先になりそうだがな」
「それでも構いません。私の力が必要な際はいつでもお呼びください」
後少し会話をすれば俺の作戦は成功するはずだ。
「そうか。その時が来れば頼らせてもらうぞ」
「ええ。その時は必ず完遂させていただきます」
良い感じだ。
「これからもよろしくな。それではな」
よし。このタイミングなら大丈夫なはずだ。
「待ってください。私の話は終わっていませんよ」
「!!」
なんだと!誤魔化すには一手足りなかったか。
クソ。こうなったら、最終手段。
そして、俺とリーフの姿が一瞬でどこかに消えた。
「ふう。これで一安心だな」
「そうですね。明日はどうなるか考えると一安心ですね」
「……」
明日の事は置いておこう。
さて、後一人だな。
「それと一つよろしいでしょうか?」
リーフが俺に聞いてきた。彼女の言葉で助かる事もあるので、聞いてみる。まあ、誰の言葉でも聞きますけど。
「なんだ?」
「では、私の力が必要な際はいつでもお申し出ください。以上です」
「おう……。そうか」
いきなりの事に驚き、先のような返事しかできなかった。
しかし、最後の一人は探すのが大変だ。気配がわからない。見つけるのも困難。どうすりゃいいんだ!
「呼ばれたと思い、参上しました」
まさかの俺の思考が読まれた。俺の思考は読まれやすいんだね。ここ最近で実感したよ。
だが、話は早い。
「俺は名付けを行いたいんだが、別にいいか?」
「ああ。私は貴方をずっと見てきたから事情は理解しているし、どうぞ、名前を付けておくれ」
何それ。俺をずっと見てきたって事?それに空間魔法を使って逃げたのにその場所までわかったのか?
こいつすごいな。俺なんかより強いんじゃないか?
だが、俺も負けてられない。いつか、ここにいる奴がたどり着けないほど強くなってやる。
それを俺の目標にしよう。
俺はそう決めた。それを達成するまで曲げずに生きようとも決めた。
面白ければ幸いです。