弱ければ相手から何もかも奪えばいい。   作:旋盤

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強敵

あれから、数日が経った。今、俺の目の前には、数日前どころか、ここ最近頻繁に会っているモンスターと対峙している。だが、数日前とは決定的に違う所がある。それは、レベルだ。

 

〈種族〉 怨嗟の甲冑 〈レベル〉 794

 

ものすごく高い。その敵に俺は、刀を持って対峙していた。実戦経験を積んでいない事に昨日気付き、今経験を積んでいる。

さっきも、同じことをして一撃で殺しているので、回避重視で戦っている。

甲冑が刀を振り下ろす。その速度は欠伸が出るほど遅いので危なげなく回避する。

スキル〈見切り〉が発動しているせいで、遅く見えるのだろう。

次は、真横に切り裂いてきた。それを、刀で受け、弾く。相手は構えを直し連撃を繰り出してくる。右から左からくる攻撃を回避したり、刀で受ける。

そして、隙を見せたところで左手で甲冑を掴む。その際、刀で攻撃してきたが、刀を右手ごと切りとばす。

安定してるな。この辺りの敵では相手にならないのが一目瞭然だ。

昔、平和な日本にいて、たまに喧嘩をしたくなった時があるが(その時は抑えました。)その時は戦うというのはワクワクしていた。

野蛮であり喧嘩を舐めてんのか。と言われるかもしれないが、本気でそう思った時があった。

だが、今はそんな気持ちなんて無く、ただ、敵となったものを殺していくという機械の様になっている。

強くなるというのは、誰かを守れる強さと引き換えに戦いにおいてのなんというのかな。高揚感?の様なものを奪っていっている。

レベルはカンストし、ステータスにおいてはこの辺りで勝てるものはいない。

近くの町にいるモンスターを倒す人たちのレベルが俺よりも高ければ、もしも、対人戦がおきた時に高揚感を感じるんだろうか。

そんな思いを抱きながら見てきた中で一番レベルが高かった怨嗟の甲冑を殺した。

いや、アンデッドに見えるから、浄化というのかな?まぁ、そんな事はどうでもいい。奥に行くたびにレベルが高い敵が増えて行く。

そして、さっきの甲冑が多く肉が少なくなってきていた。主に猿の肉が。

狼の肉?生臭いと見たあたりから、手をつけていない。ただ、たまに狼が出てくるので、狼の肉は徐々に数を増やしていっていた。

晩御飯だ。狼の肉、初挑戦の日だ。

どれぐらい生臭いんだろう。気絶するレベルとかじゃないよね。

さすがに肉を食べて気絶する奴はいないと思うが、覚悟をする必要があるだろうか。そんな事を思っている内に肉が焼けた。肉を顔に近ずける。

 

「クッサ!!!」

 

思はず声が出ていた。生臭いと聞いていたが、ここまでとは。正直にいうと、人間が食べて大丈夫な品物か?と言える一品だった。

正直臭いを嗅いだだけで、この肉は食べたく無くなったが、それは、俺が殺した狼に失礼にあたるので、我慢して食べる。

恐る恐るかじってみる。するとどうでしょう。噛めば肉汁が溢れ出し程よく柔らかく、物凄く美味しい肉に思えた。

 

臭くなければな!!

 

吐きかけるのを我慢する。あまりの臭さに口から胃から出ようとするを我慢する。

ただ、美味しい。それは変わらない。臭くなければ本当に最上級の肉なのに。勿体無い。

そんな事を思いながら、もう一口食べる。臭い。とてつもなく、臭い。だが、美味しい。味覚と嗅覚がおかしくなりそうな肉だ。

肉を食べ終えて、臭さに悶え終えて、落ち着いたあたりで、ステータスを確認しようか。

 

〈名前〉 マグナ 〈性別〉 男 〈職業〉 無職 〈種族〉 魔族 〈Lv〉 999

〈ステータス〉 物理攻撃力 746923 物理防御力 764972魔力 705268魔法攻撃力 684782 魔法防御力 693825 運 58.6 魅力

〈固有スキル〉 強欲Lv1

〈スキル〉測定 略奪 神速 能力超向上 完全耐性 アクロバット 連爪斬 威嚇 索敵 見切り 夜視

〈魔法〉 氷属性魔力魔法 極

 

見よ!この強さ。ここらのモンスターも強いが、相手が強ければ強い程俺の〈略奪〉の能力がよく発揮される。

相手の強さを奪い、自分の強さにする、スキル〈略奪〉。ただ、一つ失念していた事があった。

あくまで、奪った力であり、俺が一から築いた力では無いのでその力の表面の部分しか使いこなせない。

その力の効率的な使い方を習得するには、実戦で使う事だが、力を振るえば一撃、相手からの攻撃は鈍足であり、そもそもで戦いにすらならなかった。

この力は強者から力を奪い、自分を強者にするがそれは、ステータスやスキル、魔法の事でしかなく技術的な面は弱者としか言いようがない。

さらに、それを伸ばそうにも対等かそれに近い形の敵に出会う事が無いので、技術が向上するには時間がかかるだろう。

という事で技術が向上するまでステータスに頼り切ったゴリ押し戦をするしかない。

まぁ、ほぼ七十万に近いステータスなので、負ける事がまず、ありえないだろう。

だが、それに驕る事なく、日々の研鑽をこれからする予定だから、技術面でも強者を目指す予定だ。だが、今日はもう遅いので寝るとしよう。

 

いつも通り森の奥を目指して歩いて行く。道中でモンスターと遭遇すると回避重視の戦法を取り、隙を突いて〈略奪〉を発動させる。

まだ、最小限の動きとはいかないが、素人とはあまり思えないだろう(素人目に見てだが)。

当たった攻撃は無いし、回避重視の戦法が功を奏しているのか。スキルが強いだけなのか。多分、後者だが、その内使いこなしてみせる。

俺が持っている武器は強力だが、それを使いこなせているか。と、問われれば。そうで無い。としか言いようがないだろう。

寝る前に武器の取り扱いの練習でもするか。ざっと考えただけでも今の自分がスキルに振り回されている事が誰の目から見ても明らかだった。

一度、〈略奪〉を使用しないで全力で目の前に出る敵を片っ端から切り倒して行こうか?

何故だろう、それが面白そうに思えるのだ。そして、少しとせずにそれをしようと心の中で決める。

それを決めると行動は速かった。全力で駆けて目につく敵と〈索敵〉によって発見した敵を片っ端から殺していった。

ドロップアイテムの事など頭の中から消えていた。相手を確実に殺していき、次の敵を探して駆けて行く。

その姿は血に飢えた魔獣のようだった。その表情は殺戮を楽しむ、悪魔のようであった。彼が魔族となったのは表面的なものではなく、その奥の彼の心の中にあるものだったのかもしれないが、彼はそれを知らないだろう。

今も彼は気の赴くままに彼の心が命じるままに殺戮を楽しむ。

 

モンスターを殺し終わるのには数時間かかった。だが、息一つ切らしていない。ステータスってすごいね。

モンスターを倒して行くのってスッキリするね。ドロップアイテムをどうしようかと考える。近くにある怨嗟の甲冑のドロップアイテムを確認するが、玉鋼と金の宝箱があるだけだった。

〈怨嗟の刀〉はレアドロップらしい。まぁ、当たり前か。あんなのが一体倒しただけで手に入るのならあの性能はありえないでしょう。

ふと、近くに洞窟があるのを発見した。

うん。入りたくなるね。

洞窟にいるモンスターってなんだろう。

そして、〈夜視〉は洞窟の中でも発揮されるのか試してみよう。そんなこんなで洞窟の中に入る。

 

〈夜視〉は問題なく発揮される。

洞窟の中に光は無いはずなのに昼間のように明るい。だが、モンスターがいない。

洞窟にいるモンスターに少し興味があったのだがな。

ただ、少し歩いたところに重そうで、いかにもボスモンスターがいそうな雰囲気の扉があった。

ん?何故だろう。まじで、ボスモンスターいそうなんだけど。

さらにここら辺にいたモンスターのレベルを考えると、ヤバイと思う。

ゲームにおけるボスモンスターは多対一で勝てるものだ。一人で挑んで勝てるものでは無い。

そこらへんにいたモンスターとは格が違う。ここは人里に降りて仲間を募るべきだろう。

ん?仲間?あれ、俺に仲間っているのか?相手はボスモンスターの様だが、怯える事はないのでは無いか?

俺の強さは普通を超えすぎていると思う。うん。なんか、自分が化け物になってる自覚がある。

 

ギィィ

 

と、音を立てて重そうな扉が開いた。中に入った感想があるとすれば、行き止まりだ。洞窟のまんまだ。それと、中に鎧がある。

怨嗟の甲冑に近いが、あれは、甲冑というより、騎士がつけていそうな鎧だ。

 

「誰だ。」

 

うは、喋った。モンスターが喋ったのって初めてだろう。そんなことを思っていると

 

バタン

 

と扉が閉まった。退路が塞がれたか。ていうか、開くときは音が鳴ったのになんで、閉まる時はなんで音が鳴らないんだ。

今、考えるべきでない事を考えていると

 

「まずは、先に名乗るのが礼儀だったかな。私は、ゼギアノス。元帝国騎士団長だ。」

 

礼儀正しいな。名乗られたら名乗るしか無いじゃないか。

 

「俺の名前はマグナだ。」

 

すると、騎士がゆっくり動き出す。

 

「さぁ、決闘を始めよう。」

 

嘘だろ。礼儀正しいと思っていたのにいきなり決闘しろとか言いいだしたぞ。しかも、武器を構えたぞ。武器は黒い細剣の様なものだ。

 

「さぁ、そちらも武器を構えよ。」

 

これは、闘うしかない様だな。武器の構え?知らねぇよ。適当に武器を相手にぶつけやすい様な構えを取る。

 

「では、いざ尋常に。」

 

敵が踏み込んでくる。その速度は、〈見切り〉をもってしても早いというしかない。

慌てて回避する。するとそれを読んでいた様に連撃を打ち込んでくる。切り傷が多くなる。

相手の連撃の隙を突いて反撃をするも、相手から受け流される。

だが、受け流されたとしてもこれを好機と思い、仕返しとばかりに連撃を繰り出す。しかし、どれも受け流される。

 

「力や速さはすごいが、技がなっていない。」

 

「ご指摘ありがとうございますよっと。」

 

敵の指摘に皮肉で返す。だが、その通りだろう。一度相手から距離を取る。ていうか、俺に切り傷を与えるってすごい攻撃力だぞ。一体どんなレベルだ?

 

〈種族〉 闇騎士ゼギアノス 〈Lv〉 100

 

その情報に驚くが、ある可能性に思い至る。なんらかの偽装スキルがあるのだろう。小説やアニメでは、よくあるパターンだ。

 

「その強さ、どこで手に入れた。」

 

「ある者を守りたく、私を守ったが為に死んでしまった。その者を生き返らそうと奔走している内に強くなっていた。だが、生き返りの方法を見つけた時には遅すぎた。そして、私は、アンデッドになっていた。帝国に復讐するという負の感情が強すぎた為にな。アンデッドになってからもさらに強くなった。これが、私が強さを手に入れた方法だ。」

 

なんというか、重いな。ゼギアノスの話からすると誰かを守ろうと強さを手に入れたが、死んでしまった。

そいつを生き返らせようと奔走している内に強くなって、死んでからもアンデッドになってまた強くなった。

というわけか。というか、話の内容からするとゼギアノスの守りたかった者を殺したのは帝国だぞ。

 

「すまない。話が長くなったな。さぁ、決闘を再開しよう。」

 

相手が武器を再度構える。それにつられる様に構える。相手が踏み込んでくる。

やっぱり早いが、俺の特技で一度見た技なら対処できる。これは、ゲームをしている内に身についた。

前の時より、防御しながら、隙を突いて、魔法を放つ。一メートル位の氷でできた剣を相手に向けて放つ。

 

「!!」

 

初めて向こうの方から距離を取る。それを好機と思い、氷剣を次々に放つ。

 

「〈マジックホール〉」

 

だが、その魔術は敵の手に現れた紫色の渦の中に吸い込まれて消えた。

 

「フッ、実に良いタイミングだったぞ。だが、私の〈マジックホール〉はあらゆる魔術を吸収する。貴様の魔術はもうきかん。」

 

はぁ、魔術も防がれるか。これは、どうしたものか。

 

「貴様は、何の為にその力を手に入れた。」

 

予想外にも、ゼギアノスの方から質問をしてきた。

何の為に力を手に入れた。か。

 

「それは、多分、俺が守りたいと思う者を守る為だと思う。」

 

それ以外に多分ないだろう。

 

「それは、守るべき者の為ならどんな犠牲もいとわないと?」

 

「それは違うな。俺は救える命があるなら救うし、それを、一つも落とそうとは思はない。だが、守りたい者とその他大勢の命と引き換えなら俺は迷い無く守りたい者を取るだろう。それこそ、どんな犠牲を払ってでも。」

 

「そうか。貴様も私と同じなのだな。だが、その様な考えを持つ者にとって、無力は罪だ。私は自分の力が及ばなかったから失ったのだ。貴様がその考えを持つに相応しいか、私が試してやる。」

 

何だろう。初めて、敵と戦って高揚感がある。その考えを持つに相応しいか試す、か。

いいだろう。面白い。今度はこちらから行ってやる。こんな気持ちも初めてかもしれない。相手を全力を尽くして殺す。

そして、その先の勝利を勝ち取る。面白い。面白いぞ。さぁ、

 

「勝負はここからだ。」




読んで下さり有難うございます。
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次回もお楽しみに。

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