弱ければ相手から何もかも奪えばいい。   作:旋盤

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面白ければ幸いです。
ゆっくり見ていって下さい。


魔王城完成

とりあえず集める物は集めた。人材もいる。あとは、居住空間だけだな。

 

「城の外見はどうする?」

 

未だ決まっていなかった事を聞いてみる。

二人から、四人に増えているので、意見も多くなるだろう。俺はそれをうまく統合して納得するものにすればいい。

そう、思っていたのだが、

 

「主人様にお任せいたします」

 

「お前に任せる」

 

「神の御意志にお任せいたします」

 

俺に丸投げされてしまった。俺が魔王城の外見なんて思いつくはずが無いだろう。

ならば、イメージでも聞いて、それを再現すればいい。

 

「魔王城と聞いて思いつくイメージってある?」

 

「黒くて禍々しい。というイメージですかね」

 

「強そうなイメージだ」

 

「神々しくあり、禍々しくもある。神秘的で、妖しい雰囲気を漂わせているイメージです」

 

うーん。一人が言っているイメージが全くわからん。

しかし、イメージだけで建物の外見はわからんぞ。

これが、策士策に溺れる。という事か。

策と呼べるものでは無かったけど。細かい事はどうでもいいだろう。

 

「イメージとしては、黒くて禍々しくもあり神々しくて、強そうで、神秘的で妖しい雰囲気。という事だな」

 

自分で言っていてなんだが、想像が全くできない。

いや、深く考えるからダメなんだ。そうだ。なんて事はない。前の世界の歴史的建造物の中から、合いそうなものに似せればいいんだ。

 

「んで、どうやって城を作るんだ?」

 

どうせ、魔法でパパッと作るんだろうが、聞いてみる。

 

「魔法で作る方が早いですね」

 

だろうけどさ。

まぁ、俺もその方法で作る気だったけどさ。

 

「魔法の種類は、土属性でいいか?」

 

「はい。鉱物や石材の想像を含めれば、鉱物などで創る事が可能です」

 

魔法ってなんでもありだな。

今更だが、魔法ってどういう原理なんだろう。魔力を使った超常能力程度しか俺にはわからない。

力はあっても知識はどうにもならない。

今そんな事を考えても何にもならない。

今やるべき事は、城の外見を創る事だ。内装は、後付けで大丈夫だろう。何せ魔法だから。

一応聞いておくか。

 

「内装は外見が出来てから皆で話し合うぞ。それでいいか?」

 

「異論はありません」

 

「特に無い」

 

「それが神の御意志だと言うのなら」

 

一人の頭のネジが数本外れていそうで心配になる。

そんな事は置いといて、魔法を発動させる。

発動させるは、〈獄土属性魔力魔法〉。理由はこっちの方が良さそうだから。

想像するは、五つの塔。四方に四つ、中央に一つ。外壁に囲まれた堅牢な城塞。

すると、地面が隆起し黒い鉱物でできた何かが、地面から続々出現し、各々意思があるようにひとりでに動いてゆく。

それは、徐々に形を成し、想像通りの形を形どってゆく。

徐々に徐々に大きくなり、数分もする頃には、立派な城塞と呼べるようなものができていた。

教会の様にも見える塔が五つ。それを囲む城壁。立派な魔王城じゃないか。

 

「こんな感じの見た目で大丈夫か?」

 

「完璧でございます」

 

「見事だ」

 

「おお。この様な素晴らしき建造物は世界を見ても二つとして無いでしょう!」

 

納得いく様な作品だった様だ。中身は何も無いどころか、通る穴の一つも無いけど。

それより、こんな巨大建造物を創ったから思い出したけど、周囲から丸見えじゃん!

今は深夜だから誰も見ていないと思うけど、早急に用意した方がいいだろう。

 

「確か………〈インビジブル〉の魔法を発動させる装置は何時間でできる?」

 

そう言うと、〈ドライアド〉改め〈ニンフ〉の彼女が、魔石を取り出し

 

「こちらに」

 

その魔石を差し出してきた。その数五つ。

ただの魔石に見えるが、よく見ると、魔法陣の様なものが描かれていた。

それを受け取り、

 

「これを何処に付ければいい?」

 

「塔の頂上に埋め込めば宜しいかと」

 

それを聞いて、急いで塔の頂上に飛ぼうとしたが、制止の声がかかった。

 

「待ってください。まずはその魔法陣に私達の魔力を流し、私達には見える様にしましょう」

 

焦っていた様だ。少し考えれば、考えついただろうに。

まぁ、魔法について何も知らないというのが、あったかも知れないが、これは考えついたはずだ。

 

「すまない。焦っていた様だ」

 

それを聞いて少し困った様な顔をして、

 

「謝らないでください。貴方は私達の王なのですから」

 

「すまな……善処する」

 

一瞬言いかけたが、仕方ない事だと割り切ってほしい。

それから、俺たちは魔力を装置へ流し、五つの塔の頂上に埋め込んだのだった。

自分が見えている為か、見えなくなっている実感がない。

 

「まずは城門を創ろうか」

 

東西南北の四箇所に城門が設けられた。

意味があるのかわからないが、一応創っておく。

 

「次は内装だが、五つの塔のどれから手をつける?」

 

「質問を宜しいでしょうか?」

 

〈ニンフ〉の彼女がその言葉を言った時は、驚きと嬉しさが湧き上がった。

驚きは予想外だったから、嬉しさは、自分で考えて意見を述べてくれることにだ。

 

「許す」

 

俺がこんな言葉を言う時が来るとはな。

 

「では、なぜ塔を五つお創りになられたのですか?塔を一人一つ管理しても一つ余ってしまいます」

 

「………」

 

見栄え的に五つでいいかな。的な軽い気持ちで創っていました。

これは正直に話して、どうしようか考えよう。

 

「見栄えが五つだといいかなと思い、この様な感じになってしまった」

 

呆れられたかな。それは俺の心の中で割り切るしかない。

 

「確かに見た目は全員の要望を満たすものですので、なんとも言えませんが。そうなると、あともう一人必要になりますね」

 

また人材を増やす気ですか。正直、君達を指揮できる自信は俺には無いよ。

 

「俺がまた生み出す方針か?」

 

「お願いします」

 

もう一人増えたところでなんだ。俺はやれば多分できる奴だ。だから大丈夫だ。

などと、自己暗示をかけながら自分に自信を持たせ、〈魔物創造〉を発動させる。

目の前に魔法陣が出現し、生み出す魔物の想像を働かせる。

今欲しい人材は、魔物を束ねる事が出来るのは勿論の事、何か欲しい能力的なものは。

気配察知に長け、気配を消すのにも長けた人材か。

それならば、この城の警備は万全の様に感じる。

想像は決まったな。ならば、そういう人材を創造しよう。

魔法陣が輝きを増してゆく。

さらに輝きを増し、目が開けられなくなる程眩しくなる。

 

魔法陣の中心に、銀にも見える白髪、髪型のせいか犬の様な耳が生えている様に見える。綺麗に整った顔立ちをした女性が佇んでいた。

 

「貴方が私の主人か」

 

あの二人とは違う始めの言葉を聞いて、

 

(三者三様だな)

 

なんて事を思ったが、目の前の事に向き直る。

 

「俺がお前の主人であっている」

 

最後に「多分」と付けたかったが、多分、後ろの人が許さないだろう。

 

「では、私が貴方を陰ながらお守りしよう」

 

頼もしいが、なぜかこれから先、誰かに見張られそうな予感がするぞ。気のせいだな。気のせいだといいな……。

 

「歓迎させてもらうぞ。早速だが、この城には塔が五つある。中央の塔は俺として、他の塔を誰にするか決めてもらいたい」

 

ちゃっかり中央の塔を自分のものにして。とか思った所があるが、俺が何を言おうと中央の塔にさせられるに決まっている。

わかるんだよ。なんとなく分かるんだよ。

 

「東西南北。ですから、加わった順にしてみるのはどうでしょう?」

 

「そうだな。その方がわかりやすい。という事は、俺は西だな」

 

「神の時間を無駄にする訳にはいきません。その案にしましょう。私は南ですね」

 

「では、最後に加わった私は北ですね」

 

決まった様だな。では、内装をどうにかしようか。

 

 

まずは、中央の塔に扉を設け、そこから、王の空間。というものを〈ニンフ〉から教えられるがままに作っていった。

だが、しっかりと自分なりのアレンジは加えているつもりだ。

そうで無いと自分の空間では無いからな。

あれよあれよと言う間に、直ぐに完成してしまう。

それは、魔王がいそうな空間で、いかにもラストバトルが繰り広げられそうな空間だった。

それが最上階の感想で、これより下の階は、空間を歪ませて迷宮を作るとの事だ。

全長20階建ての塔。その内19階まで迷宮と言う名のダンジョン。

そして、待ち構えるは俺。ラスボスじゃねーか!!

 

その後、他の塔の内装を本人の希望通りに創っていった。

尚、東西南北の塔は15階建てほどだ。

 

〈ニンフ〉の場合。

樹木が生い茂り、部屋と言うより、森の中という感じがする空間に仕上がっている。

さらに、その樹木は〈ニンフ〉の命令に従い、自由に動く仕様になっている。

 

長い白髪、浅黒い肌をもつ男の場合。

正々堂々戦う場所。というのがしっくりくる。

相手も自分も小細工ができない、何も無い場所。あるのは、敵と己のみ。という感じだ。

 

燻んだ白髪、不敵な笑みを浮かべる女の場合。

予想通り、教会の様な作りだ。

何故かここだけ、他の部屋と違い明るく見えるが、それは、彼女の内装のセンスが良かったのだろう。

ここで祈りをしている姿は様になるが、その対象が俺なだけに、どうすればいいかわからない。

 

銀の様に見える白髪、犬の耳が生えている様に見える髪型、綺麗に整った顔立ちの女の場合。

こちらは、戦いの場。という感じだ。

前の奴と違うのは、所々に隠れる場所があり、高所があり、様々な戦略が組めそうな地形だった。

 

と、この様な具合だ。

三者三様の様な形で、それぞれの個性が表れていた様な感じだ。作っていて飽きない。

そして、作っていた最中に重大な事に気がついた。

 

「お前たちの名前ってある?」

 

その言葉に、全員が、

 

「ありません」

 

「無いな」

 

「神に仕える身として、名前が無いのは変でしょうか?」

 

「名前を付けるとしても、主人の身がもつか心配になるぞ」

 

全員に名前が無い。という事かな。

ならば、名前を付けたいが、一人、気になる事を言っていたな。

 

「名付けは何か危険な事があるのか?」

 

その質問にやはり〈ニンフ〉の女性が答える。

 

「名付けには、付ける魔物の力に見合った魔力を使用します。私達の力は、主人様のお陰で相当なものになっております。ので、今の状況での名付けは危険かと」

 

そういう事か。問題ないと思うな。

魔力総量を解放すれば大丈夫と思うが、明日まで待って魔力が全回復してから名付けを行おう。

 

「そうか。では、名付けは明日に行うとして、他にするべき事はあるか?」

 

各々がしばらく考えて、

 

「魔物を集めて、四部隊に分ける事が残っております」

 

その言葉を聞いて、俺含めて全員が、確かに。という顔をした。

 

「では、此処にこの森の全ての魔物を集めれば良いのだな」

 

「左様でございます」

 

その言葉を聞いて、魔力を周囲に放ち、

 

「この場に集え」

 

という事を訴えかける。

すると、大地が震える。その振動は、多くの魔物が一斉にこの場に向かって来ている証拠だ。

すると、三秒と経たずに圧倒的な数の魔物がこの場に集う。

 

「では、部隊分けはお前達に任せるが、それでいいか?」

 

「お任せ下さい」

 

「問題ない」

 

「神の頼みとあれば」

 

「承知した」

 

この数の魔物を分けるのは、骨がおれるだろうが、こいつらならば大丈夫だろう。

 

そして、魔物分けは終わった。

一人二十五体程を束ねる事になった様だ。

さらに、各々束ねやすい魔物を選んでいる様だが、魔物の性格なんぞわかるわけがない。

 

〈ニンフ〉の場合。

俺に対する忠義が高い魔物を選んでいると言っていた。

 

長い白髪、浅黒い肌をもつ男の場合。

血気盛んで、戦闘を好む魔物を選んだと言っていたな。

 

短い白髪、不敵な笑みを浮かべる女の場合。

俺に、信仰に近い何かを思っている魔物を選んでいると言っていた。そんな魔物いるのかよ。と思ったが、いるらしい。

 

銀の様に見える白髪、犬の耳が生えている様に見える髪型、綺麗に整った顔立ちの女の場合。

比較的冷静な魔物を選んでいるらしい。だが、冷静と言われてもピンとこない。

 

この様な感じで分けている様だが、俺には違いが全くわからない。何せ、三種類の同じ顔があるのだから。

 

「決まったな。では、今日はもう遅い。明日に備えて寝るか?」

 

その言葉に全員が首を横に振る。

代表して〈ニンフ〉の女性が言ってくれた。

 

「魔族は基本的に睡眠を必要としません。ですので、安心して御就寝なさって下さい」

 

睡眠が必要なのは俺だけか。

それだと何か悪いが、そういうものなんだろう。

 

「分かった。まぁ、頼んだぞ」

 

そして、俺は俺が管理する塔に戻ろうとして、城全体を見た時、とある事を閃いた。

 

「そうだ。明日、俺と戦うか?」

 

「「「「!」」」」

 

その言葉に全員が少なからず、驚いている様だ。

 

「嫌ならば別にいい。今し方思いついただけだからな」

 

その言葉に四人はそれぞれの反応を見せた。

 

「いえ、私の今の力を計るチャンスですし、主人様の力量の底を覗けるかもしれませんので」

 

などと、いつもと変わらぬ表情で事務的な口調で言われた。

 

「いいだろう。俺の力を見せつけてやる!」

 

自信満々の顔で、自分が負けるとは微塵も感じさせない表情と声色だ。

 

「なんたる幸運!私が神の力を間近で見て、感じる事ができるとは。なんという幸運でしょう!」

 

興奮した様子で、俺に祈りを捧げるポーズをしている。物凄く反応に困る。

 

「我が主人の力を見るチャンスであり、私の力を見てもらうチャンスでもあるわけですか。断る理由がありませんね」

 

楽しみだ。とでもいう様な声色だが、冷静さも同時に感じさせる声色でもある。

どうやら、全員やる気らしい。

 

「じゃあ、明日準備が出来次第戦おう。戦場は、この森を模した場所を俺が創る」

 

常人が聞いたら、頭がおかしい人と思われるだろうが、俺にはそれだけの力がある。

 

「んじゃあ、俺はあの塔で寝させてもらうわ。あー。そんな事は無いと思うが、策も無しで俺に勝てるなんざ思ってないだろうな?」

 

その言葉に全員息を飲む様な感じがした。

思いつきだが、中々に良かったと思う。特に、俺の力の半分でも出せれば、万々歳だろう。

と、その前にやらなければいけない事があった。

 

「武器は今から創るものの中から合う物を選んでくれ」

 

新しく加入した奴らがどういう武器を使うのか気になるな。

明日に思いを馳せながら、眠りにつくのだった。




最初と比べて、少しは腕が上がったと思います。
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