弱ければ相手から何もかも奪えばいい。 作:旋盤
病院に行っていたので遅れました。前日に終わらせる前に寝落ちしてしまったので、遅れました。本当にすみません。
最後までゆっくり見ていって下さい。
「いや、言っている意味がわからん」
俺は目の前にいる、半透明の女にそう言った。
「また誰かに話しかけているぞ。大丈夫なのか?」
そう言ったのは、髪が腰まで届く程長く、見た目だけで明るい性格だと感じさせ、こちらまで明るくなりそうな何かを感じさせる少女だ。
「多分、多分だけど、何かがいるんじゃないかな。ほら、ここで死んだ人の霊とか」
そう言ったのは、桃色の髪をした落ち着いている少女だ。見た目は確かに幼いが、侮る事無かれ。
落ち着いた物腰から、かなりの長さを生きている事がわかる。実年齢は不明。聞かぬが吉だと思っている。
「今かなり失礼な事を考えなかった?」
なぜバレるのだ。
この様に、彼女の基準で失礼に当たる事は何故かすぐバレる。
「お前の事に関しては何も考えていない」
「どうだか」
不満気に言う彼女。見た目が子供なので可愛らしい。
おっと。睨みつけられている。怖い怖い。
「配下と言うのは、言葉通りの意味ですが、特別な称号、特別な種族を持っている方に対してのみできる事です」
今目の前にいるのが、種族〈ドライアド〉の半透明の女性だ。容姿は、綺麗に整った顔立ち、凛とした表情をしている。一言で言うならば、美人である。
それ以外は不明。
話を戻して。
成る程。俺の持っている〈エリアボス〉がそれに当たるのかな。
ん?待てよ。こいつはなんで俺がここの〈エリアボス〉だと言う事を知っている。
一言も言ってないはずだ。ここに来てからも、ここまで来るまでも。
「待て。その称号や種族を俺は持っていないぞ」
半分正しくて半分は嘘だと思う。
正しいのは、俺の持っている〈エリアボス〉もしくは〈獄魔族〉がそれに該当しない可能性があるためだ。
嘘なのは、自分自身、十中八九それだと確信している為だ。
「御冗談を。貴女様はこの森の〈エリアボス〉であられますね」
俺は〈ドライアド〉との距離を縮めて内緒話をする様に聞いた。
聞かれていい内容では無いと自分で判断して決めた事だ。これで、変人扱いされようと文句は言わない。
「何故知っている」
〈威圧〉を少し発動して脅す様に聞いてみた。
すると、今まで落ち着いていた〈ドライアド〉だったが、目を少し見開き、冷や汗を流している様に見える。
「ここにいる魔物達が口を揃えて仰っていたので」
「魔物は喋っていたのか?」
魔物って喋れたのか?いや、確かに獣の鳴き声に聞こえたが、あれは喋っていたのか。
「はい。喋れますよ。皆さん口を揃えて貴女様と遊びたがっていましたよ」
「マジで?」
「マジでございます」
て事は魔物は俺目掛けて襲って、いや、戯れようとしていたのか?
それを俺は全力で殺していたのか。
クッ。罪悪感が半端ねぇ。
「気に病むことはありません。別に死んではいませんので」
「どういう事だ?」
「魔物とは一種の精神生命体ですので」
精神生命体ですね。ハイ。そうか……
「全くわからん」
それを聞いて、〈ドライアド〉は、
「精神生命体とは、実体が無く普通は見えませんが、存在としては、確かに存在する生命体の事です」
「生きてはいるが見えない存在。という事か?」
「はい。その解釈で間違いありません」
まだピンとこないが大体理解できた。
「さっきの話と、死んではいない。と言う発言はどう関係しているんだ?」
そこが問題だった。魔物は実体があるので精神生命体とは言えない。なのに関係している。どういう事だ?
「魔物を殺しても完全には死にません。精神生命体となって彷徨い、勝手に実体が生成されます。一種の不死性です」
殺しても殺しても出てくる仕組みはこれだったのか。しかし、魔物とは不思議な存在だな。
「話が脱線していましたね。それでは配下に加えてもらえるでしょうか?」
背筋をピンと伸ばし、丁寧に綺麗に頭を下げられた。
ハァ。さっきの事を教えてもらった恩もあるし、美人だし、断る理由は無い。ただ、配下と言う響きが気にくわない。
「別に良いが、配下では無く友人の様な感じでいてほしい」
「友人とは恐れ多いです。配下が気にくわないのであれば、部下でも秘書でも構いません」
〈ドライアド〉が目に見える形で狼狽えた。
それを、可愛らしい。と思いながら眺めていた。
部下か。まぁ、それぐらいなら大丈夫だ。前の世界でも上司と部下の関係があったからか、忌避感はあまり無い。
「じゃあ、それで良いだろう。それで、何かする事かしなければならない事はないのか?」
もう冷静さを取り戻した〈ドライアド〉がこう告げた。
「では、私の手を握ってください」
そう言って、手を差し出してきた。
半透明なので、握れるかが心配だ。そう思いながらも、手を握る。いや、手が差し出された位置に添える。
「これで握れている……!!」
これで握れているのか?と聞こうとしたところで、何かがこちらに向かって来ていた。それも数体。
俺は、二人を守るべく二人に駆け寄った。そして、迎撃しようとした次の瞬間。
「邪魔するな」
〈ドライアド〉がそう言ったのと同時に何本もの木が地面から生え、こちらに向かって来ていた魔物を全て殺した。
「え。今のは君の魔法かい?」
シルヴィアがそう聞いてきた。その表情は驚いている感じだ。
「いや、今のは俺ではない。あるとすれば」
俺はそう言って〈ドライアド〉を見た。
そこには微笑を湛えてこちらを見る彼女の姿があった。
「期せずしない形でしたが、私の実力を認めて下さいますか?」
「ああ。ここまで強いのは予想外だったよ」
そう言うと、彼女は嬉しそうに笑った。
「ウフフ。さて、先ほどの続きをしましょうか」
今度は彼女の方からこちらに来て、また手を差し出してきた。
俺はその手に自分の手を添えた。
「そうです。そうして貴女様の魔力を流してください」
魔力を流すと言われても、やり方がわからん。まぁ、魔法を使うような感じで良いだろう。多分。
すると、俺の手が淡く光り、手の甲に何かしらの紋章が現れた。
「フゥ、成功ですね。これで私は貴女様の部下です。これからよろしくお願いします」
そう言って〈ドライアド〉は丁寧に綺麗に頭を下げた。その様子を見ていた俺含めた三人は。
「え……え?」
「何が……起こったの………」
「どういう…事だ?」
三者三様のリアクションを取りながら、目の前で起きた出来事に驚きを隠せずにいた。
「貴女様どうしたのですか?」
「自分の体を一回自分で確認してみろ」
「はい。…………え?」
〈ドライアド〉は自分の体を確認して目を見開いた。
何せ、今まで半透明だったのに、今では肌の色、新緑を思わせる綺麗な緑の髪、着ている服の色さえ確認できるのだ。
推測するに、精神生命体から実体を持った。という事だろうか。
「えっと…精神生命体が実体を持つ事はあるのか?」
恐る恐る聞いてみた。
「あ、はい。あります。ただ、上位種族にならない限りできません。それも、実体を持っている間は魔力を使い続けるのですが……」
「魔力を使っていないと。そういう事かい?」
シルヴィアは驚きから立ち直ってそう言った。
「はい。そのようです」
どうやら〈ドライアド〉も状況を飲み込んだようだ。
「あのさ。さっきまでマグナが話していたのってお前か?」
ミコトが疑問を口にした。
「はい。その通りです」
〈ドライアド〉が事務的な口調で答えた。
「上位種族……か。上位種族より上の種族を聞いたか、知っていたりしないのか?」
「そのような種族は、すみませんが聞いた事ありません」
「お前でも知らないか……。今の種族を確認する事はできるか?」
俺はステータス確認ができるが、〈ドライアド〉もできるのだろうか?
というか、今思ったのだが〈ドライアド」は魔物の一種なのか?それとも魔族に属するのだろうか?
「確認できますが…」
目線を一瞬だけミコト達に向けた。
成る程、そういう事か。あまり他の奴には教えたく無いのだろう。
「教えたく無いなら教えないでいい。気が向いたらでいい」
「では、二人きりの時にでもお告げします」
それを聞いて一瞬ドキッとしたが、仕方がない事だと思う。
何せ、恋愛経験ゼロ。男子の多い工業高校。友達男子ばっかり。連絡を取り合っていたのは男子しかいないのだから。
なんか自分で思っていて悲しくなってきた。
そんな状況だったから、女子との会話の仕方はわからない。
あれ?なら部下にしない方が良かったんじゃね?
もう決めた事だ。なんとかするしかない。
「ヒューヒュー。二人きりでとは積極的だねー」
ミコトがそんな野次を飛ばしてきた。
「いや、そんな意味で言ったわけではないと思うぞ」
その言葉を予想していたのか、素早くこう言ってきた。
「そんな意味とは、どんな意味のことですかな?」
ニヤニヤしながら聞いてくる。
こいつは絶対確信犯だ!いや、大体こんな事を言う奴は基本的に全て確信犯だ!
「それは私も聞いておきたいね。さて、どんな意味なんだい?マグナ君」
シルヴィアまで参加しやがった!
こんな時の対処法は……正直に話すか。
いや、そんな事をすればさらにイジられる可能性がある。というか、その未来しか想像できない。
だが、他の対処法を思い浮かべることができない。どうすればいいんだ。
「私は主人様と自分の種族を教えるためにそう言っただけですが?」
〈ドライアド〉が事務的な口調でそう言った。
ナイス!〈ドライアド〉さん。ミコト達もこれで切り返すことが難しくなったはず。
「うん。貴女の事を意味はわかっていたよ。だけど、この人が二人気で、という言葉を聞いてどう思ったかを知りたくてね」
すぐに返してきやがった!
これは俺が思った事を素直に話すか。
どんな言葉が来ようとも、ドンと構えて凌ぎ切ってみせよう。
「はいはい。わかりましたよ。話せばいいんでしょ。話せば」
それを聞いて二人ともニヤニヤしている。少しイラっとしたが、気にしない。
「告白でもするつもりか?と思いましたよ。まぁでも、そんなつもりがない事は十分承知でしたよ!」
それを聞いて二人のニヤニヤ顔が深みが増した気がした。
「ふむ。では貴方はこの人とそういう関係になりたいと?」
ハァ。面倒なことになるんだろうなー。
だが、耐えてみせよう。
「そういう意味では無い。ただ、そう思っただけだ」
そう言うと、〈ドライアド〉がこう言った。
「そうですよ。私が主人様と恋人関係になるなんて、恐れ多いです」
「恐れ多いなんて、貴女かなり美人ですよ」
「それは俺も同感だ」
俺も同調する。
決して、矛先を〈ドライアド〉に向けようとしたわけでは無い。ただ、思った事を口にしたまでだ。
「主まで言うのであれば、私は美人なのですね」
この人、強い。事務的な口調で告げたから、次の言葉をどうしようか悩んでいるぞ。
「それより主人様。何か私がするべき事はありませんか?」
急に話が変わったな。照れ隠しだろうか?照れている様子など微塵も見えないが。
しかし、すべき事か。思いつかないな。こういう時は一人で考えずに聞いてみるのが一番だろう。
「お前は何か成すべき事を思いつくか?」
「はい」
即答ですか。スペックが高い。優秀な人材ですね。俺よりか確実に優秀だ。
「では、それはなんだ?ここで言って差し支えなければ、教えて欲しい」
「では僭越ながら具申させていただきます。ここの魔物の統制を行うのがよろしいかと思います」
「え?魔物の統制とかできるの?」
「はい。できます」
その言葉を聞いて、背後の二人を見やる。
二人も驚いている感じだ。
「〈テイム〉すれば言う事は聞くんだけど、複数の魔物が同時にいると喧嘩も起こるから、統制とは聞いた事が無いね」
どうやら、普通では無いらしい。
しかし、統制か。それならば此奴らが危惧している事を解消できるかもしれない。
「統制すれば、ここの魔物が街を襲う事は無くなるか?」
「主人様が襲えと命令しなければ」
それを聞いて二人を見る。
「君は街を襲う気はあるのかい?」
至極真剣な表情で聞いてきた。
「襲う気は微塵も無い」
そう言うと、いつもの表情に戻り、
「なら安心だ」
納得した様だ。
俺は〈ドライアド〉に向き直り、
「その統制は、俺がいた方が早く終わるか?」
「はい。この中では主人様が一番お強いので」
「そうか。ミコト。悪いが」
俺が次の言葉を言い終わるまでに
「はいはい。わかってますよ。ただ、早く終わらせろよ。私もすぐにCランクに上がるからな」
「ああ。わかった。こっちもすぐに終わらせるから、待っていてくれ」
「あいよ」
今度は、シルヴィアに
「この森の情報は十分か?」
と聞いてみた。
「ああ。もう十分だよ。それにここに長居すると本当に死んでしまいそうだから、早く出てしまいたい」
その言葉に苦笑しながら
「わかった。じゃあ、すぐに出るか」
そう言って、また向き直る。
「まずは、此奴らを街まで送り届ける。夜には戻ってくる」
「おっと、夜に戻って来るとは、どう言う事ですか?」
「そのまんまの意味だ」
今度は何も考えずに普通に返した。
いつもの俺なら考えて行動するか、発言していただろう。
だが、今は成すべき事が目の前に見えているので周囲が見えていなかったのだ。
「普通に返されたな。んじゃあ、さっさと帰ろうぜ」
「そうだね。マグナ、もう行こう。早く帰って早くここに戻って行け」
「行ってあげて下さい。私は主人様が戻って来るまで待っています」
〈ドライアド〉の言葉に、
「ああ。待っていてくれ。すぐ戻って来る。んじゃあ、行って来る」
「行ってらっしゃいませ」
今思ったけど、メイドみたいだな。まぁ、いいだろう。
なんにせよ、やる事があるってのはいいもんだ。
終わり方が中途半端になっている気がする。気にするべき所か。なんとか改善します。
それと、注意や指摘してくださった方本当にありがとうございます。これからもよろしくお願いします。
ご意見、ご感想、ご指摘よろしくお願いします。