弱ければ相手から何もかも奪えばいい。 作:旋盤
最後までゆっくり見ていって下さい。
何かやらかしたか?
俺は、そんな事を考えていた。
普通に考えて、ギルマスが呼ばれる事は普通に有り得ない。これは、俺がやらかした可能性が高い。
だが、何も思いつかない。俺は討伐の依頼を手っ取り早く済ませただけで、何もしていないのだから。
早かったのがいけなかったのか?
依頼を早く済ませちゃいけないって、どういう事だよ。
「お待たせしました。」
どうやら、ギルマスを連れてきたようだ。
「やあ。君が問題の人だね。」
そう言ったのは、桃色の髪をした少女だった。
ん?少女??
桃色の髪をした身長130か140㎝くらいの少女だった。
マジかよ。四十代くらいの男かと思ってたよ。
まぁ、ギルマスである時点で、ソコソコの実力者だろう。
「率直に言おう。まず、冒険者ギルドでは、高位の冒険者が減っていて、C級以上の魔物がすこしずつ増えている。」
魔物もランク分けされていたんだ。まぁ、当然か。自分の実力を考える上でも。
「なので、少しでも早く高位の冒険者を増やそうという事で、各冒険者ギルドで、実力のある新人を各冒険者ギルドのギルドマスターが実力を見て、それに見合ったランクをつける。という事がこの前決まった。」
「そういう事か。」
早く上のランクになりたい俺には、ちょうどいい時期にここに来れたようだ。
ただ、あの程度の魔物を倒しただけで実力があるって、少しおかしいぞ。
「今、あの程度の魔物で実力って。とか思ったよね。」
こいつも俺の心の声を読んだ、だと。まぁ、簡単か。少し考えれば、予想できる事だな。
「実は、同時に三つの依頼を受けて達成した速度が、最速なんだ。だから、君の実力を私が計らせてもらうよ。」
「面白い。お前の実力も俺に見せてみろ。」
俺たちは、街を出て近くの草原にきていた。
城門をくぐる時、門番の全身鎧から、
「気おつけろよ。」
と、小声で言われた。
どうやら、この少女のようなギルマスは相当の実力を持っていそうだ。
まぁ、関係ないか。俺と同等ならばいい勝負ができそうだ。
互いの距離が十メートルくらいになり、
「準備はいいかい?」
「別にいいが、お前は素手でいいのか?」
見た目、小学生だから心配になる。
「敵の心配とは余裕だね。」
「強者の余裕。とでも言っておこうか。」
敵が右足を引き、構えをとる。
「その余裕、打ち砕いてみせるよ。」
「そうか。では、いざ尋常に」
「「勝負!!」」
俺は後の先の戦い方を得意とするので、こちらからは動かず相手の動きに合わせて戦おう。
敵が距離を詰めてくる。こちらとしてはありがたい。尚、今は武器を装備していないので、素手である。
相手もなかなかに早いがまだ遅い。
左ジャブで迎撃する。
しかし、相手はそれを避ける。それどころか、俺の後ろに回っていた。
どうやら、腕の長さを考えて素手の攻撃の射程を見切り、射程に入ったところで回避した。といったところだろうか。
冷静に分析している場合じゃなかった。
すぐに振り向き、敵の位置は、〈索敵〉によって、大体把握しているので、そちらを向くも、移動していた。
どうやら、機動力で敵を翻弄して攻撃を加えるタイプだろう。
こうゆう敵の対処法を俺は知らない。
動いた方が不利なのか、止まった方が不利なのかさえわからない。
なので、俺は止まった。〈索敵〉で敵の位置を探り、攻撃にカウンターを加えていく作戦でいこう。
下手に動いて敵のペースに乗せられたら面倒だ。
敵を追うのは、目だけでいいだろう。下手に動いて、後ろに回っての攻撃が面倒だ。
敵が動いた。こちらに向かってきている。これは、攻撃かさっきみたいな翻弄が目的か。
今度も左ジャブで牽制する。しかし、今回も避けられる。前回と違うのは向こうが後ろに回った瞬間に攻撃を加えて、またどこかに行ったところだろうか。
それを、振り向きざまにガードしたが威力も高い感じだ。ここら辺の魔物に比べたら。
さて、ヒットアンドアウェイの戦法の打開策は、相手のリズムを崩す事だな。
それならば、いい方法がある。
また、こちらの方に向かってくる。
相手はこちらの射程を考えているようだが、射程は腕の長さだけで決まるものではない。
俺は、敵をできるだけ近くに引き寄せる。左ジャブが届く距離になる。だが、ここではない。
そして、敵は、こちらが何もしていないのに屈み、横に少しずつ移動している。
このタイミングで、一歩踏み出し右ストレートを素早く、しかし威力を抑えて、放つ。
それを相手は地面を強く蹴り回避する。回避されたが、敵のリズムを崩した。敵はその場に止まっていた。
「さっきまでの速度はどうした?」
俺は挑発の意味を込めてそんな事を言った。
「どうなってんの。この速度にまで対応するって、バケモノかよ。」
自分でもバケモノだと思っています。
「ここまでの戦闘でランクはどれくらい上がりそうだ?」
これは疑問だ。ギルドマスターでは俺は倒せない。言ってしまえば無駄でしかない。
勝てない敵に戦いを挑むのは馬鹿のする事だ。しかも、別に戦う必要のない相手にだ。
なので、C級以上になっていれば、別に終わってもいい。
「私では、君は倒せない、か。」
どうやらギルマスも気づいているみたいだ。当然か。
「この戦闘で高位のランクにできるが。これは、私の願いだよ。最後まで戦わせて欲しい。」
意味がわからない。
ギルドマスターはある程度忙しいはずだ。こんな事に時間を割いても、無駄でしかない。
「なぜだ?なぜそこまで戦う。これ以上戦っても、無意味に等しい。なのに何故戦う。全力を出し、俺に打ち勝っても、なんの得にもならないだろう。」
それを聞いて、ギルドマスターは不敵に笑い。
「君に勝てば、君みたいな実力者が街に攻撃を仕掛けに来ても、街の人たちや、君たちを守れる。今、君と戦っていれば、君みたいな実力者が来ても、私は戦える。」
それを聞いて俺は自分を疎かに思った。
俺は自分より強い敵が挑んで来ても戦えるのだろうか。答えは否だ。
ここに来た頃、自分より強い猿がいた。その猿に殺された人を見た。
俺はその時、その人を見捨てたのだ。助けに行く素ぶりすらせず。
この事から、俺は自分より強い敵が現れた時、俺は逃げるかもしれない。
こんなんで、自分が救える人は救うなど、馬鹿げている。
救いたい人がいるのならば、守りたい人がいるのならば、自分の命を賭しても守るべきだ。たとえどんな強敵が現れても、どんなに疎かだと思われようとも。
それを目の前のギルドマスターは鍛えている。
どうやら俺は甘かったようだ。
どうやら俺は口先だけだったようだ。
どうやら俺は疎かだったようだ。
今からでも変われるのならば、今から変わろう。
「俺はお前を馬鹿にしていたようだな。まずは、詫びよう。すまない。」
さっきまでの実力から、引き上げる。
「これからは、手加減は無しだ。覚悟はいいか?」
敵は、俺の方をみて驚いた表情をする。
「まだ強くなるって。本物のバケモノかよ。」
そう言って、両手に短剣を持つ。
どうやら、あちらも全力では無かったらしい。
こちらも、全力を隠しているし〈獄属性魔法〉を使用する気は無い。全力で戦えば、ギルドマスターも一秒も待たず死ぬだろう。
まぁ、今の実力でも十分殺すには十分過ぎるくらいだ。
「一つ忠告しておこう。」
一応、忠告はしておこう。
「今からお前が戦うのは、勝てない相手だ。それも、お前を殺す気でいる、な。」
それを聞いて、敵はまた、不敵に笑った。
「一瞬でも気を抜くな。お前が一瞬でも隙を見せようものなら、一瞬でも気を抜こうものなら、俺はお前を殺す。」
俺は、拳を固く握る。
そして、さっきとは違い、構えをとる。魔境の魔物との戦闘で考えて作った、自分が一番戦いやすい構えだ。
「じゃあ、第二回戦開始でいいかな。」
「ああ。構わない。」
そして、敵も二つの短剣を構える。互いの距離は近くもなく、遠くもない。
「さぁ、かかって来い。お前に死を教えてやろう。」
「では、いざ尋常に、勝負!」
敵は最初から全力で駆けて来た。対峙する俺は、
「フッ……」
鼻で笑い、カウンターをさっきとは比べられない程の威力と速度で繰り出した。
それを相手は、回避していた。だが、地面に着地できずに、転んでいた。
自分の意思ではなく、本能が回避した。という事だろうか。
なんにせよ。倒すべき敵は生きている。
まだ俺は勝っていない。
敵は起き上がり、こちらを見てくる。
呼吸は荒く。目を見ても、体が震えている事を見ても、俺に恐怖を抱いているだろう
そして、敵の本能はこう言ってているだろう。
逃げろ。
と。だが、敵は震える体で、恐怖している目をしながらも、武器を構える。
どうやら、さっき言っていた事に偽りは無かったらしい。
その強さは賞賛に値するだろう。
だがその程度の決意と実力で超えられる程、俺は弱くは無い。
「さぁ、かかって来い。お前の守りたいものは、俺を倒さねば、守れんぞ。」
そう言った刹那、敵はこちらに駆けて来た。
本当に此奴は、強いな。
俺は彼女の決意に応えるように、対峙するのだった。
ここ最近、リアルが一段と忙しくなった気がする。小説の字数が少なくなったのはこれと、もう一つの理由。ネタ切れ。ノープランだと、この小説の未来が見えない。
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