弱ければ相手から何もかも奪えばいい。 作:旋盤
ゆっくり見ていってください。
俺の年齢の追求は、朝日が昇ると共に終わり。
「木の上から見る、朝日は綺麗なのかな?」
というレオナの疑問を解決すべく、朝日が見えやすいような背の高い木を手短に見つけ、レオナを抱えて飛ぼうとしたら、
「私も一緒に連れていってほしいな。今まで旅をした中じゃないか。」
と、ミコトに言われたので仕方なく二人を抱えて〈跳躍〉を使い、難なく木の頂点にたどり着く。
そこで見えた景色は、
「綺麗。」
「山の上ならわかるけど、木の上からこんな朝日が見えるものなんだな。」
綺麗だった。
「俺も驚きだよ。日常の一風景のようなものなのに、見え方が変わるだけで変わるのだな。」
遥か地平線の彼方に見える太陽。眼下には、広大な森。奥には草原、そして、目的地である街の城壁の様なものが見えていた。
元の世界では田舎で育ち、周りは森に囲まれていた。だから、森を見るのには慣れていたのだがな。
やはり、一人でいるよりも複数人いた方が楽しいな。一人旅をしようとする気が失せてしまうじゃないか。
本当にミコトと一緒にチームとやらを組んでみるか。もちろん、実力は隠すがな。
しばらくの間、木の上にいたが朝日が昇っていき、景色を記憶にとどめて俺たちは木の上を降りて、朝食を食べた。
そして出発する。今日中につけるらしいから、三人での旅も今日で終わりだろう。
だが、俺たちは総じて睡眠時間が短かった。俺は慣れていて、多分ミコトも慣れているはずだ。残るはレオナだが、どうみても昨日の疲れが取れていない様だった。
進行速度が落ちているので、もしかしたら明日までかかるかもしれない。
「大丈夫か?」
心配になったので、声をかけると
「ハァ、ハァ……大丈夫です。」
果たして、息を切らしながら歩いている少女を、大丈夫と言えるのだろうか。
体感時間にして五分くらいだろうか。川が近くに見えた。
「ここいらで、休憩をするか。あそこに川もある事だし。」
「私は大丈夫だと……」
レオナがまだ歩けると声にしようとしたところで、
「おー、良いね。喉が渇いたところなんだ。」
ミコトが本気なのか、レオナを休ませる為なのかそんな事を言った。
そして俺たちは川辺で休む事になった。
辺りは木に囲まれていて、川の流れる音が聞こえる。キャンプに来るならこんな場所が良いな。と思える場所だった。
ミコトは川の水を飲んでいる。一体何杯飲むんだ。と思えるくらいに飲んでいる。後で気持ち悪くなっても知らんぞ。
レオナは手短な石に腰をかけて休んでいる。
俺は、そんな様子を木を背にしながら、眺めていた。
「家に帰るのが嫌ですね。」
レオナが独り言を呟いた。それは運悪く、俺にも、ミコトにも聞こえていた。
「ミコト、こいつが家に帰らなかったら、一大事か?」
「一大事だな。今は街の領主だが、国王の血筋だからな。」
マジか。貴族と思っていたが、国王の血筋って将来の女王候補の一人ってことか?予想を上回る事実が発覚したぞ。
いや、今はそんな事はどうでもいい。
「という事は、レオナが戻らなければ、俺と、ミコトのクビが飛ぶって事か?」
「え?」
レオナが驚いた様に声をあげた。
「多分、いや絶対そうなるな。だから、私達の為にも家に返さなければならない。」
「やっぱり、そうだよな。」
正直に言おう、もしも国から狙われる様な事があっても、大丈夫だと思う。
逆に俺を殺せる奴を見てみたい。
その時は、俺も全力で相手をしてどちらが勝者か敗者かを決したい。
また、話が逸れた。
だが、その道を通れば戻る事が出来なくなる。さらに、レオナとミコトの人生を血みどろの道に変えてしまう。
俺もだが、敵対すれば殺すのが普通になった俺は関係ないだろう。問題点は、俺が二人を守りきれるかどうかだろう。
次から次えと出て来る敵を前に守りきれるかは、わからない。乱戦になれば、一瞬で殺されてしまうかもしれない。
それが、理由で俺はレオナを家の返した方がいいと思った。レオナには悪いかもしれないが、血みどろの人生を歩ませる訳にはいかない。
「わかりました。ちゃんと家に帰ります。」
レオナがしっかりと覚悟を決めた様に言った。
「ですが、また今度会いましょう。」
レオナが願う様な口調と願う様な顔で言ってきた。
まぁ、断る理由も何もない。さらに、そんな口調と顔で言われては、断れないではないか。
「あぁ、また会おう。そしたらこいつの肉をみんなで食べよう。」
ミコトも同じ気持ちらしい。
「そうだな。また会おう。そして、また三人で朝日を見よう。」
「ありがとうございます。」
レオナが今にも泣きそうな顔をしながら、笑っていた。
ハァ、そんな顔をしないでほしい。なんて言えばいいかわからくなる。
その後、三人でしきりに話し合った。そして、また歩き出した。
「にしても、貴族っていろんなしがらみがあるんだな。」
「そうですよ。出来る事なら一般人で会いたかったですよ。」
貴族には貴族の苦しみがあるらしい。幼い女の子が姫様とやらに憧れるのは、姫様が負う責任や苦労を知らないからで、現実は憧れる様な存在ではないかも知れない。
「一般人でも色々と不便な事があるよ。」
ミコトが苦笑しながら言ってきた。
「なら、一般人で生まれても、貴族に生まれても不便な事があるって事だな。種類とその質は違うと思うがな。」
「そうですね。」
「確かにな。」
そんな会話を交わしながら、森を歩き続けた。
途中で、
〈種族〉 ゴブリン 〈Lv〉 1
定番だな。RPGや様々なゲームに絶対と言っていいほど出て来る敵だ。
見た目は、緑色の体に醜悪な顔、手にはボロボロの石でできた剣を持っていた。
「どうする?」
と俺が聞いた。
「どうする?って倒す以外の道があるの?
正論だけど、俺が聞いたのはそういう意味じゃない。
「そういう意味じゃなくて、誰が倒すか。という事だ。」
「私達以外の誰が倒すんだ?レオナにでも倒させる気か?子供にそんな事させる奴だと思わなかったよ。」
「何故、自分を含めていないんだよ。」
「今更、レベル1の奴を倒してもな。」
という事は俺が倒さなければならないらしい。
どうやって倒そうか?いや、瞬殺できるんだけど、人型だし、子供の前だし、できるだけショッキングな場面にならない様にするにはどうしたらいい?
あっ。あの方法があった。
ゴブリンに向かって心の中で、こう思う。
(サッカーやろうぜ!お前ボールな。)
四散させない様に注意しながら、蹴り飛ばす。
ゴブリンはどこかに消えてしまいました。
何だろう。今思ったけど、四散させない様に注意しながら蹴り飛ばすのって、俺だけじゃね。いや、レベルが上がればこれが普通になるのかな。
まぁ、どうでもいいか。
「その魔物を蹴飛ばすのって、癖なの?」
癖なわけがあるか。
「違う。子供でも目を背けられずに見られる倒し方をしたまでだ。」
「なら、クマを何で剣で倒したんだよ。」
「クマなら大丈夫だろう。」
「基準がわかんないんだけど。」
呆れた様に言われた。
移動していると、度々魔物と出会ったがどれも、サッカーをして倒した。
夕焼け色に染まる空を見ながら、森を歩き続ける。結局森を抜けられなかった。まぁ、仕方ないか。
「もう直ぐで夜になるから、焚き火の準備をしようか。」
「そうだな。」
「そうですね。」
二人も同じ意見だった。
明かりがある時に火を起こせそうな枝や枯れ草を探す。
空には満点の星空と満月が浮かんでいた。さらに所々に雲が浮かび、それが、さらに幻想的な景色にしていた。
「朝に負けず劣らずに綺麗な景色だな。」
「確かに。朝と違って、暗いからこそ綺麗だな。」
レオナはこの景色に言葉を失っていた。
そっとしておくことにした。
肉を焼くのに専念する事にした。この肉だけを食べる生活も、明日で終わりだ。やっと、肉だけではなくなる。結構前から栄養の偏りを気にしていたので、野菜を食べたい。
そして、俺たちは夜食を食べ終えて、どの順番で起きておくかを決めた。
そして、順番で言えば俺が寝ている時間に俺は起きていた。理由は、
「どういう事だ。」
数にすれば馬鹿にならない程の気配がしていた。それが、ここを囲もうとしている様に動いていた。
「どうした?」
ミコトは俺の次の番だったので、俺が起こした。こいつは今いる気配に気づいていない様だ。
「囲まれかけている。」
それで、ミコトも近ずいている危険に気づいた様だ。
続いて俺は
「レオナを頼めるか?」
ミコトはこの言葉に驚いていたが、
「わかったよ。だが、約束はちゃんと守れよ。」
「俺があんな奴らにに負けるとでも?馬鹿を言うな。友人に危害を加える奴らに俺は容赦はしない。」
そして、俺は近くにいる気配に向かって、駆け出した。その途中で〈暗雲の来訪者〉の能力を使った。自分の周りに黒い霧が出てきた。それは、視界を妨げる様な事は無く、だが、見る事はできる。不思議だ。
短剣を二本構える。敵は、人だった。だとすると、盗賊だろう。
囲もうと動いている二人の盗賊の一人の首を切る。すかさずに、後ろにいた盗賊の心臓を貫き、肺を切り裂いた。
盗賊は、その場に崩れ落ちた。敵の気配は前方に弧を描く様に広がっていた。
それを感じて、自分の心から感情が失せていく。ただ、自分の正義のために動く機械の様になった。
大地を蹴りかける。前方には数えるのも馬鹿らしく思える程の敵がいる。だが、そんなの関係ないほど、そいつらと俺の間に実力差がある。
塵が積もれば山となる。だが、塵である事に変わりはない。一つの強風が吹けば、簡単に吹き飛ぶ。
今、この現状の様に。辺りには、物言わぬ骸が無数に転がっていた。この
全ての敵を短剣を使い、急所を狙い一撃を確実に当てていった。敵の動く速さは亀よりも遅く見える。敵から見れば、俺は速すぎて捉えられない位だろう。
しかも、運がいい事に敵は即死か、〈状態異常〉で声も出せずに絶命していく。近くにいるであろうレオナを起こさずにすむ。
一直線上に敵が複数いる。〈神閃〉を使い、一瞬で複数の骸を作り上げる。今気づいた事だが、〈神閃〉は一刀だけで無く、複数回、刀を振れる事がわかった。
そんな事はどうでもいい。次の敵を一瞬で見つけて、そこに向かって駆けていく。
敵の半数は殺し尽くした。まだ、五分いや三分も経っていないだろう。後、大体、三十か四十位だろう。
今、敵が鈍間な足でミコトとレオナがいるところに奇襲を仕掛けていった。
冷静さを少し取り戻し、敵がいる空間の時間の流れを〈獄界属性魔力魔法〉を使い、時間の流れを遅くする。さらに、その空間を〈獄氷属性魔力魔法〉を使い、氷漬けにした。辺りが暗いので氷は見えなかった。だが、気配はミコトとレオナの気配しかしなくなった。
殲滅したのだ。しかも、五分と経たずに無数にいた盗賊を一人も残さずに殺し尽くしたのだ。
直ぐに向こうに戻ればいいのだが、やっておきたい事があった。だが、周囲には死体が転がり、あらゆる所に血溜まりができていた。まずは、掃除をしようか。
〈獄炎属性魔力魔法〉を使い、周囲の死体と血だけを、焼き尽くした。そして、〈防具生成〉を使う。
目の前に魔法陣が現れる。その中央に〈玉鋼〉を置く。そして、一応、〈氷神の魔石〉を一緒に置く。そして、出来たものがこちらです。
〈友情の証・氷〉 EX装備
登録した〈友情の証〉を持つもの同士で、離れていても魔力で会話ができる。氷属性の魔法全般の威力を五倍にする。
これって防具なのだろうか?まぁ、名前はこれをあげようと思っていたからいいんだが、能力が付いてしまった。まぁ、仕方がない。
よし。これと同じものを自分の分を含めて、後二つ。
こちらが、完成品になります。
〈友情の証・火〉 EX装備
登録した〈友情の証〉を持つもの同士で、離れていても魔力で会話ができる。火属性の魔法全般の威力を五倍にする。
〈友情の証・全〉 EX装備
登録した〈友情の証〉を持つもの同士で、離れていても魔力で会話ができる。全属性の魔法の威力を三倍にする。
よし。あとは渡すタイミングだな。いつ渡そうかを考えながら、あいつらの所に戻るのであった。
面白かったですか?面白ければ幸いです。ノープランで書き続けていると、設定があやふやになったりする。キャラの名前や口調をどうしようかで悩んだりする。
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