弱ければ相手から何もかも奪えばいい。   作:旋盤

11 / 43
はぁ、明日朝早くから出なければいけないのに、もう三時近いよ。ヤベェ、まぁいっか。どうにかなるでしょ。多分。
今回もゆっくり見ていってください。


再開

今、俺はこの世界に来て初めて人と一緒に行動している。

隣を歩くのは、この世界に来て初めて会った、女の子だ。

ただ、前の世界で女の子と一緒にいる経験など無く、さらに、この世界に来て数週間、森を彷徨い続けた事でこの世界の話題など思いつくはずも無く、無言の空間が出来上がってしまった。

ここは、俺が思っている疑問、ここまでどうやって来たかを聞くべきか?というか、それしか思いつかない。

 

「レオナはどうやってここまで来たんだ?」

 

無言空間の中で言いづらい雰囲気ではあったが、無言でいるよりかは、良いはずだ。ただ、無言空間の中で言葉を発せられるのは、空気読めない奴が多かったと思う。俺、空気読めない奴の仲間入りしたく無いな。

 

「屋敷から、一週間分の食料を持ってここまで来ました。」

 

屋敷?屋敷って言ったこの子。もう本物の貴族じゃないですか。前に会った時に貴族だと思ってたけど、確証が得られたよ。この子が将来、悪事を働く子に育たない事を祈ろう。

というか、行動力が凄くあるな。見た目、十代前半の子が、ここまで来るとは、すごい事だな。

まぁ、それは置いといて。一週間分の食料という事は、往復の分を含めていると考えて良いだろう。という事は、片道3日位だろうか。

 

「ここから、君の家まで片道3日なのか?」

 

「大体、その位です。」

 

「そうか。」

 

あ、会話が終わった。どうしようか。このまま無言で歩き続けようか。それはしんどい気がする。

はぁ、会話のネタが思いつくまで無言で歩き続けようか。

そういえばこの子、どうしてここまで来たんだろうか。よし、会話のネタが見つかった。

 

「レオナはどうしてここまで来たんだ?」

 

しばらく、黙り、そして言いづらそうな顔をしている。

あれ、聞いてはいけない事だったのかな。なんか、また言葉を発しづらい空気になってしまったよ。どうしよう。

そんな事を考えていると、意を決したのか言葉を発した。

 

「前あった時に次にあっても同じ様に接してくれると言ってくれたので、また会いたくなったので、会いにきました」

 

それを恥ずかしがりながら言ってくるから、こっちまで恥ずかしくなってくる。

だが、恥ずかしい感情より、とある言葉が反射的に出てしまった。

 

「それは嬉しいが、ここまで来るのに、モンスターだって出るんだ。それに、あそこの草原にはあの森から出てくる事があるから、危険だ。これからは、危険なマネはしないでくれ。」

 

「すみません。それと、モンスターはまものの事ですか?」

 

「あ、モンスターって魔物って言うんだ。それと、わかったなら別にいい。」

 

恥ずい。結構恥ずかしい。最後の言葉が言えただけでも俺に拍手してくれ。

モンスターでは無くて、魔物って言うんだ。新しい知識ができて、恥ずかしい記憶が新しくできてしまったー。

普通に歩いてるけど、隣にいるのが、少女じゃ無くて友達だったら、うずくまってるよ。

はぁ、また無言タイムに突入してしまった。どうしよう。

ん?右に何かがいるな。

あ、クマだ。どうしよう。即死させたら、怖がるかな。子供に怖がられるのって結構精神的にダメージをくらうからな。

あ、こっちに気づいた。気づくなよ。無視できれば、それに越した事無いのに。

ん?前方の木の上からも気配を感じる。魔物かわからんが、敵対するのかな。

 

「はっ。右からブラッドベアーが来ています。あの、大丈夫ですか?」

 

「大丈夫だ問題ない。」

 

どっかの死亡フラグを言って、右と前方に注意を向ける。

ブラッドベアーが突っ込んで来るので、少女をお姫様抱っこして、右に避ける。少女を地面に降ろす。

そして、クマを木の上にいる奴に向かって蹴り飛ばす。

 

「うわぁ!?」

 

木の上から女の声がして、何かが落ちて来た。尚、クマはどこかへ消えました。

落ちて来たのは、大剣を背負った、かなり長い黒い髪の十代後半位、もしくは、二十代位の女だった。どれ位髪が長いかというと、腰に届きそうな位に長い。

 

「お前、何者だ。」

 

「そっちこそ、ブラッドベアーを蹴り飛ばすって、非常識だし、どんな物理攻撃力なんだよ!!」

 

そんな事を女が言って来たので、

 

「常識なんぞすぐに塗り替わる。それと、物理攻撃力はブラッドベアーを軽々と蹴られる程だ。」

 

「親切にどーも。それと私はミコトだ。」

 

向こうもこちらの質問に答えてくれた。後、〈看破〉を使用していたので嘘はついていなかった。

名乗られたら名乗り返す、それが礼儀だと思っている。

 

「俺の名前はマグナだ。それと、何が目的だ。」

 

「お?以外に礼儀正しいな。」

 

「お前は失礼だな。それで?もう一度言うが、目的は何だ」

 

「私は、依頼でそこにいる少女を連れ戻して来いって言われて、探していたんだよ。」

 

敵意は無いのかな。まぁ、気を抜いてはダメなのだがな。

依頼かぁ。異世界だし、冒険者的なものかな。俺もなろうかな。面白そうだし。

っと。話が逸れた。これは、レオナにどうしたいかを聞いた方がいいな。

 

「そういう事だが、レオナ、お前はどうしたい。」

 

レオナの方に目を向けると、驚いている表情をしていた。

怖がらせたか?にしては、表情は怖れとは違う気がする。ヤベェ、他人からこんな表情されたのは初めてだから、戸惑ってしまう。

 

「はっ。私は、目的は達成しましたから、戻っても構いません。」

 

「目的?」

 

まぁ、ミコトの疑問はもっともかもしれないが、触れないでいてくれた方が俺としては嬉しいな。

だって、この子貴族だし。タメ口で話してたし。それが、異世界でどういう事になるかは知らないけど、面倒な事になるのが、目に見えている。

 

「それじゃ、今からミコトと家にでも戻るといい。」

 

「え?貴方は一緒に来ないんですか?」

 

「ん?別にいいだろ。そいつもそれなりに強いはずだ。問題は無いと思うぞ。」

 

「初めて会うので、信用ができません。」

 

「俺は会って2回目で初対面と大して変わらないと思うのだが?」

 

「いえ、信頼出来ます。」

 

どうやったら、二回あっただけで信頼できるんだ?

 

「だって、貴方は私の命を助けてくれましたから。」

 

そういう事か。命を助けられた経験が無いからわからんが。それと、命を助けられただけで、信頼するのは早計だと思う。

相手が打算で助けている可能性を考慮すべきだ。例えば、助けたのは連れ去って、この子の親に身代金を要求する為だとか、考えるべきだ。

まぁ、信頼していると言われた手前この事を言いずらいんだけど。

 

「あれ?私ってそんな信頼出来ない見た目かな?少なくとも、そいつよりかは信頼できると思うんだけど。」

 

「いきなり現れて、親の元に連れ戻しに来たと言われて、信じられますか?」

 

「そういう事か。」

 

あ。俺も納得したは。なら、少しの間、自由気ままな旅はお預けだな。

 

「わかった。俺も一緒に家まで送ってやる。」

 

「ありがとうございます。」

 

「じゃあ、私も同行していいか?」

 

俺としてはどちらでもいいので、判断はレオナに任せた。

 

「別にいいでしょう。」

 

「良かったー。報酬が貰えない所だった。」

 

あ、そういえばこいつ依頼で来ていたっけ。生活がかかっているから結構重要な事だったんだろうな。

そして、三人で行動する事になったのだった。

 

あれから、数時間後、ブラッドベアーが現れた。しかも二体。

 

「じゃあ、俺が片方を片付けるから、もう片方をお前が片付けるか?俺が二体片付けても構わんが。」

 

「いや、少なくても経験値が欲しいから、片方は私が片付ける。」

 

「了解。」

 

そういうと俺は刀を鞘に納めたまま構え、居合斬りの構えをとった。ミコトは、白い大剣を構える。

クマは突進してくるが、あの森にいた魔物とは比べ物にならない程、遅かった。突進を躱し、すれ違いざまに首を落とした。

ミコトはクマの攻撃を避けて、大剣を横に振り、クマの腹をザックリ切った。

瞬殺だった。戦闘して十秒も経ってなかった。

 

「へぇ、あんた中々やるじゃん。」

 

「あそこにいた魔物と比べると相当弱いからな。」

 

「は?まだ、ここらの魔物のレベルは同じくらいだぞ。」

 

「ミコトさん、草原の奥の魔境の事です。」

 

ミコトが固まった。

 

「へ?嘘だろ。」

 

「本当の話です。」

 

また、固まった。すると表情が徐々に驚きへと変わり、

 

「ええぇぇぇぇぇぇ!!!???」

 

叫び声が森に響き渡った。

 

「え。えぇぇぇ!?あの魔境に入って無事に帰って来たのか。化け物だな。」

 

「化け物では無い。まだ人のはずだ。」

 

「いや、十分化け物だよ。なぁ。」

 

「まぁ、私達の常識からして、絶対に入ってはならない。入ったら死ぬ。と言われて、実際、入った人の生還話なんて聞かないですからね。」

 

あぁ、やっぱり、俺は強さの面でいえば、化け物何だ。はぁ、わかってはいたよ。そうじゃ無いかとは思っていたよ。改めて突きつけられると。はぁぁぁ。

 

「歩きながらでいいからさ、魔境の話を聞かせてくれよ。」

 

「あぁ、別に構わんぞ。」

 

そして、俺たちは、魔境の話をしながら、歩き続けるのだった。

 

 

そして、夜になると、焚き火を焚いて、俺は肉を焼いていた。二人は携帯食料なのかな?そんなものを食べていた。

 

「それは、なんの肉何だ?」

 

興味があるのかそんな事を聞いてきた。

 

「さぁ、〈アルミラージの肉〉だったかな?」

 

二人が固まった。

 

「今、焼いているのは、〈アルミラージの肉〉なんですか?」

 

「多分、そうだと思うけど。」

 

「これが、最高級食材なのか。それを惜しげも無く焼いているこいつはなんなんだ。」

 

「はぁ、肉は正直見飽きた。」

 

「それを、今言うか。」

 

さて、そろそろいいだろう。焼き加減がわかって、一番いい状態に焼けても、食べ飽きたら、そこまで美味しくなくなる。

 

「なぁ、私の分の肉も焼いてくれないか?」

 

「できれば、私の分もお願いします。」

 

腐るほど持っているし、断る理由も無いので、

 

「あぁ。別に良いぞ。」

 

すると、ミコトは

 

「よっしゃー!」

 

と、ガッツポーズしていた。レオナは

 

「ありがとうございます。」

 

と頭を下げられた。

俺としては、一人で食べるより多人数で食べた方が美味しく感じられるかもしれないから別にいくら、焼こうとどうでもよかった。

そして、ちゃっかり自分の追加の分を焼いていた。

そして、焼きあがった。

 

「うわァ、生きていて良かった。生きている内にこんな物が食べられて良かった。」

 

「かなり美味しいですね。ただ、焼いただけのものでは無くて、調理されたものを食べてみたいですね。」

 

結構好評だった。そして、今日の肉の味はいつもより美味しく感じられた。

 

さて、深夜と言っても別にいい時間帯になってきた。レオナがウトウトし始めている。

 

「レオナ、寝たければ、寝ていいぞ。」

 

「そうはいきません。皆さんが起きているのに、私だけが寝るなんて出来ません。」

 

「明日に疲れを残して、体調を崩されたら、迷惑がかかるのは、俺たちなんだから、休む時にはしっかり休め。それに、ガキは寝る時間だろ。」

 

「私は、そんな子供ではありません。ですが、そうですね。わかりました。それでは、おやすみさい。」

 

「おやすみ。」

 

レオナは案外あっさり寝た。やっぱり疲れがあったのだろう。

 

「寝たのか?」

 

「あぁ、多分な。」

 

ミコトはまだ起きている。それと俺と一対一で話したい事があるはずだ。

 

「聞きたい事があるんだけどいいか?」

 

やっぱりな。俺の感って今まであんまり信じて無かったけど、大活躍しているな。

 

「今までどんな場所に居たんだ。」

 

「ここから、観測できないような遠い場所だ。」

 

「は?どう言う意味だ。まぁ、いいか。」

 

あまり、深く追求しないタイプか。ありがたい。

 

「今までどんな冒険をしていた。」

 

「あの魔境をただひたすらに彷徨い続けた。」

 

「その前は」

 

「冒険と呼べるものは、それまでだ。」

 

「じゃあ、どうやって、魔境に入って生還できるだけの力を手に入れたんだ。」

 

やっぱりこの質問が来たか。どうやって答えるかな。まぁ、予想ついていた時点で考えていた答えがあるのだがな。

 

「自分の命を賭けてあらゆる魔物と戦い続けた果てに手に入れた。」

 

「ふーん、そうか。」

 

まぁ、それっぽい事を言ってみたけど、俺の強さに追いつくにはそれだけでは足りないだろうな。

 

「よし。じゃあ、私とチームを組まないか?」

 

「へ?」

 

想定外。いや、冷静に考えれば、チームにかなり強い奴がいたら、それだけ安全だし、レベル上げも楽になる。理にかなった考えだ。

 

「それも、面白いかもしれないな。」

 

「じゃあ、決定だな。」

 

強引に決定された。まぁ、面白そうと思ったのも事実だし、別にいいと思っている。

少し、聞いておきたかった事を聞くか。

 

「なぁ、ゼギアノスってどう言うやつか知っているか?」

 

当時の俺を殺せた男だ。俺が知っている、ゼギアノスと大衆が知っているゼギアノスは違うかもしれない。

なぜなら、ゼギアノスを裏切ったのは国そのものだからだ。歴史に嘘の事が書かれている事があると思ったので、聞いておきたかった。

 

「裏切りのゼギアノスの話なんて聞いてどうするんだ?」

 

「いや、聞いておきたいだけだ。知っている範囲でいい、教えてくれ。」

 

「まぁ、別にいいけど。」

 

話を聞くと、やっぱり違った。ミコトの話に出てくるゼギアノスはかなり悪名高い感じだ。小説に一人は出て来そうな位の悪役だ。

そして、一通りの話が終わって、ミコトが次に発した言葉に俺は驚く事になる。

 

「まぁ、それらは全部嘘なんだけどな。」

 

「嘘とはどう言う事だ。」

 

「そのまんまの意味だよ。私の家に古い本があって、当時の帝国の事が書かれていて、それで、ゼギアノスは帝国に裏切られた事になっている。」

 

「そうか、俺が知っているのは、帝国に裏切られた方だから、こっちの方が正しいのかな。」

 

「へぇ、この事を知っている人が私以外にいたとは。もう、三百年前の事なのに。」

 

「まぁ、ちょっとした事があってな。」

 

それで、会話が終わってしまう。しばらくの無言の後後に

 

「じゃあ、私も寝るから、見張りよろしく。」

 

「あぁ、わかったよ。おやすみ。」

 

そして、ミコトも寝てしまった。

しばらく経ってから、ミコトがレオナを連れ戻す依頼を受けておきながら、寝た事に気付いたのだった。




結構早くに書き上げた部類ですが、どうでした?面白いですか?今回出て来た敵が雑魚でこれから先に出てくる敵もそこまで強くないので戦闘を楽しみにしている方は、暫くはそこまでいい戦闘がないでしょう。
ご意見、ご感想、ご指摘お待ちしております。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。