弱ければ相手から何もかも奪えばいい。   作:旋盤

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今度は間に合った。だが、今日はエイプリルフールだ。ギリギリに終わったていうのは嘘じゃ無いからね。本当だからね。
まぁ、ゆっくり見ていって下さい。


旅立ち

「職業レベルって簡単に上がるんだな」

 

つい、そんな言葉が出てしまった。

いや、俺が異常なだけで普通はもっと、困難なはずだ。

職業レベルを上げようと思ったのは昨日の昼で、今は夜で、食べ飽きた肉をヤケクソ気味に食べ終わった後だ。野菜か白米、もしくは、パンが欲しい。いくら美味しくても肉はもう見たくない。だが、食べねばならない。人だから。

話が逸れた。今の〈職業〉の新しいものはこれだ。〈夜叉〉、〈拳聖〉、〈槍聖〉、〈短剣使い〉、〈短剣師〉、〈短剣聖〉、〈魔法使い〉、〈魔術師〉、〈殲滅魔術師〉といった感じだ。これらが、一日で手に入ってしまった。

しかも、〈夜叉〉、〈拳聖〉、〈槍聖〉、〈短剣聖〉、〈殲滅魔術師〉は前までの職業とは違い、スキルを覚える事が出来た。まぁ、素の強さがあれだから、どうだろう。という感じだ。そして、一つ不思議に思う事が出来た。

なんでだ。何故職業レベルがこんなに上がるんだ。〈闇騎士〉や〈ネクロマンサー〉のレベルは一つも上がらないのに、なんで、後から出てきた職業に先を越されるんだ。レベルの上げ方が違うのか。

 

『〈闇騎士〉が次のレベルになるには、かけがえない者を守るために、数多の者を殺して下さい。

〈ネクロマンサー〉が次のレベルになるには、数人の死体を捧げて下さい。』

 

物騒極まりない!!

レベルの上げ方が違ったけど、根本的に違った。

やはり、〈職業〉が特殊だからレベルの上げ方も特殊だ。〈闇騎士〉のレベルを上げる算段は思いつかないが、〈ネクロマンサー〉ならば、山賊や盗賊などに襲われた時に返り討ちにして、出来た死体を捧げればいいか。

今の俺は、数多のモンスターの戦闘で殺らねば、殺られる。と、刻み込まれているので、襲ってくる敵は容赦なく殺すだろう。ましてや、山賊や盗賊なんて生かしていたら、善良な人々が理不尽に殺されるだろう。そう考えたら、どんな理由があるにしろ、殺した方が世の為なのだ。

人を守るために人を殺す。矛盾だ。人を守ろうとすると、敵はモンスターや野獣の他に人がいる。しかも、状況次第では、人の方が厄介ときている。

前の世界では、人が自然界最強だと言っていたが、その通りだと思う。だが、天敵は数多に存在して、『最強』の天敵がいた。

人は銃や戦闘機を開発した。それはなんの為に。人を殺す為だ。人は人を敵と認識した。最近ではなく、銃が出来る最昔から、そうだっただろう。

そう、人は人という天敵がいた。昔から変わらずに天敵は『最強』だった。

醜いと初めは思った。だが、それでも、誰かを守るという決断をすると、どうしても、人という存在が敵になっていた。戦争が起こると何が敵になる。人だ。守るには、敵に回すしかなかった。

だから、モンスター(せいぶつ)を殺す事に抵抗は初めから無かった。

俺は本当は守る側の人間では無く、殺す側の人間では無いかと思った。それは、人の視点によって違った。守った者からは守る側と捉えられ、敵になった者からは殺す側の者と捉えられた。

それは、決して目を離していい問題では無かった。守る為には殺さねばならず、殺さなければ守れないかもしれない。

答えが無かった。見つかる筈が無かった。誰かを殺さなければ守れない。誰かを守る者は、数多の死体の上に立つしか無い。

よって、誰かを守る決断をした者は、残酷に生きなければならない。そうしないと、誰も守れない。

誰かを守る決断をした者は、全ての人を幸福にする事は出来ない。だから、戦争が無くならないのかと思った。絶望した。だが、そんなものは一瞬だった。もう、自分はいつでも、殺す側の人間になれるのだから。覚悟は決まっていた。

話が180度逸れたな。まぁ、山賊や盗賊がきたら、返り討ちにしてやる。そして、おれが強くなる為の踏み台となってもらう。

悪役みたいな感じだな。元から、〈スキル〉が強い悪役が持っていそうなものだからな。後に作者が弱体化イベントかそれ以上に強い奴の登場シーンで瞬殺される感じの敵役だろう。

まぁ、インフレのぶっ飛んだ感じで、作者が扱いきれなくなった感じだろう。簡単に言うならば、手に負えなくなった化け物という事だろう。

自分で思ってて、ちょっと落ち込む。俺は、〈魔族〉だが、人種族のはずだ。決して化け物では無いはずだ。多分。恐らくは。もしかしたら。

 

「完全に否定出来ねぇーーーー。」

 

自分の力が普通なのか。そんな訳ない。全力で殴ったら、前方が吹き飛ぶ力が普通だなんて思いたく無い。

前の世界の人とこの世界の人の力を同じ位に考えよう。そして、自分と比較してみよう。普通の人が何も使わず自分の力だけで、前方を吹き飛ばせますか?出来る訳ない。そんな事が出来るのは………

 

「化け物じゃねぇかーーーー!!!!!」

 

あぁ、やっぱり俺は化け物なのか。まて、まず、化け物の定義は何か。力が尋常じゃない事と見た目が人とは違う事のはずだ。俺の見た目は人だ。前に川で反射して見えた自分の顔は人のものだった。

よかったー。まだ、人だ。右ストレートで前方を吹き飛ばすのが人と言えるのかは疑問だが、人のはずだ。

ふぅ、そろそろ、本格的に〈略奪〉するか。そして、人里に降りようか。前に十万レベルを超えたら、人里に降りると決めたから、それを変える気は無い。

男が決めた事はよっぽどの事がない限りは、変えない。そうやって生きている方がカッコいいから、そう生きたい。

だが、もう寝よう。さすがに起きとくにはきつい。周りに気配は無いし、寝ても大丈夫だろう。

 

普通に起きる。朝というには、真っ暗だ。〈夜視〉があるから、明るく見えるが、空は暗かった。辺りの気配を探る。気配があった。

自分の環境適応能力は意外に高かった様だ。気配で起きられる様になった。まだ、一回だけだから、信頼できないが。

気配のする方を見てみると、標的を俺に定めた、キュウキがいた。

深夜に森を歩く紅い魔獣。うん。なかなか、幻想的な感じだが、敵になったからには、殺すまでだ。

短剣を取り出す。左手の指の間に三本構える。右手に刀を構える。そして、大地を蹴る。

途中で短剣を投げて、先制攻撃を加える。三本の短剣は深々と刺さっていた。こうなれば後は簡単だ。〈神閃〉を使い、顔を切る。だが、絶命せず、耐えていた。〈一閃〉を使い、トドメを刺した。なれたものだ。フッ。

あっ。しまった。最近の癖で倒したけど、〈略奪〉し忘れてた。まぁ、次からでいっか。

ナイフを回収する。血を近くにあった草などで拭く。そして納める。

まだ、朝には早いが探索するか。

 

太陽が夕陽に見えるくらいの時、レベルは、後一回〈略奪〉すれば十万レベルを超える。人里に後少しで降りれる。

この世界の人と会ったのは、結構前に女の子一人だからな。元気にしているかな。元気だといいな。

ん?その前にあの女の子はどうやって、あの場所まで来たんだ?正直あそこは、レベル1の女の子が一人でこれる様な場所じゃ無い。可能性としては、馬車かなんかの移動中に飛び降りて走って来たとか。そんな感じだろうか。

当時でも、レベル88位だったはずだ。単純に考えても、勝ち筋も何も無い。不思議だ。少し怖くなったぞ。

この話題は、今は深く追求しない様にしよう。

っと、何かが近い。目視でカーバンクルか。〈空間魔力魔法〉の〈獄属性〉版、〈獄界魔力魔法〉を発動し、カーバンクルの内部空間の時間の流れを遅くする。

動きが遅ければ、捕まえるのも楽だ。カーバンクルを掴み、〈略奪〉を開始する。その間に魔法は便利なものだと痛感する。

アニメで見た最強に似た能力の原理を自分なりに解釈し、それを当てはまる魔法で発動すると出来るのだから。最強だ。化け物だ。

〈略奪〉が終了し、カーバンクルを殺して、森を出ようとして、ある事に気ずく。

 

「森から出る方角ってどれだ。」

 

あっ。詰んだ。これはどうしようもないね。あっちえフラフラ、こっちえフラフラしていたから、あのボス部屋がどっちの方角にあるかすらわからない。

落ちていた木の枝を立てて、離す。コロンと倒れて、右斜め上を向いて倒れたのでその方角に向けて、歩を進める。

 

太陽が落ちて、完全に夜になった時に火を焚いて、夕食を作る。今日の夕食は、キュウキの肉である。美味しいかわからない奇妙な肉だ。これをこんがり焼けば食べられる。

上手に焼けましたー。

どこかのゲームで言っていた様な言葉を頭の中で流しながら、肉を持ち上げる。見た目は普通だ。匂いも普通だ。〈凍狼の肉〉より、百倍マシな匂いだ。ただ、肉という事でもう拒絶反応が出て来ている。

ええい!勢いだ。勢いで食べれば、どうにかなるはずだ。

ガブリ。

味はレバーか?いや、カルビ?やっぱりレバー。いやカルビの様な感じがしないでもない。美味しくはないが、不味くもない。そして、普通でも無い。形容しがたい味だ。

そして、寝る。寝る直前まで、魔法で使えそうな事を考えながら。

 

朝にしては早く、深夜にしては遅い時刻。微妙な時間に起きた。気配は、後ろにあった。スキル〈魔法合成〉で〈獄界魔力魔法〉と〈獄氷魔力魔法〉を合わせる。

敵を空間に閉じ込め、そこを、氷で固める。そして黒い氷はモンスターと一緒に砕け散った。これも寝る前に思いついた魔法だ。

そして、歩き出す。最近肩こりが酷くなっている気がする。腰痛も出て来ているし、やっぱり外で寝ているせいかな。後、体を洗わないと人と会うには、結構汚い感じだ。川か何かあると良いんだが。

 

歩いて行くと敵と出会う事が多い。その敵も雑魚と呼べる様な感じがするが、強い部類だろう。普通の人がレベル999はいかないと思うんだよね。

もしも、それ以上に強かったら、あっ。俺まだ人だ。と、安心できるし、この世界の住人は化け物に近い。と言える。元の世界なら、人間兵器だよ。化け物だ。俺が言えた義理じゃ無いけどな。

 

それから、数日後、いつか見た草原があった。木の棒を道標にするのって意外に当たるのかな。尚、道中何回もそれをして、ジグザグに移動していたのである。川を発見し、体と服を洗ったりもした。これで人と会っても大丈夫だろう。

そういえば、この雑草を食べていたな。これを〈測定〉してみる。

 

〈特薬草〉 素で食べても効果があるが、苦い。ポーションにすると効果も味も上がる。

 

まじかよ。嘘だろ。雑草だろ。その辺にいっぱい生えてるの全部それか。まぁ、詰めるだけアイテムポーチに入れよう。

思わぬ収穫があり、ポーションの制作方法を知りたいところだが、まずは、人里に降りねばならない。

〈完全偽装〉で〈種族〉を〈人間〉へと変えて、人がいるところで、あまり目立たずに旅をしながら、生きて行くのが、当分の目的だ。

歩いて行くと、また、森が広がっていた。また森かよ。ていうか、草原のところ、モンスターが出なかったな。運が良かったのか、そういう仕様なのかわからないところだ。

目の前に全長二メートルを超えるクマがいた。

 

〈種族〉 ブラッドベアー 〈Lv〉 5

 

弱っ!!!

急激に弱くなった。とりあえず、向かって来ているから、構えるか。

クマが毛だらけの手を振り上げる。肉球がプニプニしていそうで、触りたかったが、こちらも一歩踏み込み、左ボディブローをかます。

すると、殴った箇所が貫通して、後ろの木の枝が穴が空いた直線上に沿って無くなっていた。

ハァ、俺が化け物なのはよくわかった。人里にいるときは、ステータスを弱くしなければ。

そして、正面を見据える。そして、驚いた。

そこには、ブロンドの長い髪をしたいつか見た少女がいた。

 

「マグナさん?」

 

あの少女で間違いないだろう。だって、俺がこの世界であった事がある人物はこの子しかいないからね。

 

「久しぶりだな。確か……レオナ。」

 

名前を一瞬だけ忘れていた。だって、あったのが結構前に思えるんだから、仕方がないよね。

 

「さっき、名前を思い出した様ですが、お久しぶりです。」

 

思わぬところで、再開したのだった。




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これから先の展開が悩む。ある程度考えたが、複数あり、取捨選択しなければならない。はぁ、面倒だ。
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