大広間にはたくさんの人が集まっていた。
私たちに目線が集まる。
「皆様、静粛に!」
お父様の声が響く。
「さぁ、お披露目いたしましょう!」
そう私たちに告げて、
お母様が一歩前に出る。
「わがスカーレット家に新たな家族が増えました!」
フランお姉さまがこう言う。
「リリエラ、喋ってみて!」
そうだった、忘れていた。
呪いは解かれたはずだから喋れる、はずだ。
フランお姉さまに、頷く。
一度も喋ったことはないのに、
何故か、喋り方を知っている。
そんな気がする。
もし呪いが解けてなかったら…?
と考えたが、その考えを捨て、
声を出してみる。
「あ…、ふらん、お姉さま?」
ぱっとお姉さまの顔が明るくなる。
「レミリアお姉さま、リリエラが喋ったわ!」
ルリアも同じようなことをしていたようだ。
「フラン、ルリアが動いたわよ!」
二人は手を合わせて喜ぶ。
「レミリア、フラン、皆さんに挨拶を。」
「「はーい!」」
「リリエラ、喋れるかしら?」
「うん。お母様」
「ルリア、立てるか?」
「うん!お父様!」
レミリアお姉さまが私とルリアを交互に見て、微笑みかけて前を向いた。
フランお姉さまもレミリアお姉さまの真似をして前を向く。
「さぁ、二人とも。挨拶をして頂戴。」
「スカーレット家の長女、レミリア・スカーレットです。」
「スカーレット家の次女、フランドール・スカーレットです。」
「次はリリエラの番よ。」
立ち上がり、前に一歩歩く。
いろんな人が一気に私に注目する。
物凄く緊張しますよ…
「こちらが…新たな家族。」
何か月も前に教えてもらったお辞儀をする。
「スカーレット家の…三女。リリエラ・スカーレット、です。」
あたりに拍手が響く。
「そしてもう一人。」
拍手が急にやんだ。そして、ルリアの方に視線が集まる。
「スカーレット家の、四女、ルリア・スカーレットです。」
ぎこちないお辞儀とともにそう伝える。
拍手が響き渡った。
「本日は、お集り頂き、ありがとうございます。」
「わずかですが、食事を用意いたしましたので、ごゆっくりしていってください」
メイドに案内された席に座る。
隣にはこっちを向くルリア。
「…リリエラ、お姉さま。」
何だろう、違う気がする。
同じ日に生まれ、同じ日に認められたんだ。
「ルリア、初めまして。私は、あなたのお姉さんではない。
見た目的にはそうかもしれないけど、私はお姉さまとは呼ばれたくないわ。
双子だもの。」
「ふた…ご?でも…」
「いいの。だから、“お姉さま”はいらないでしょ?」
少し何か考えたようだったが、顔をあげてにこっとした。
「うん、リリエラ。今日はパーティ、楽しみましょう?」
「うん。」
「ちょっと!二人とも仲いいのはいいけど、
私と、レミリアお姉さまにもかまってよね?!」
「ちょっ、フラン、なんで私も!?」
「だってそうでしょ?」
「う~。」
もちろん、せっかくのお姉さまだ。甘えないわけにはいかない。
「うん!フランお姉さま!」
「わー!リリエラ可愛い!あ、そうだ、これあげるね!」
そういって渡されたのは、
ローズタンドル色の生地に、黒いリボンのついた、ナイトキャップ。
リボンには白の線が二本入っている。
「ルリアにはこれ!」
サマーシャワー色の生地に、黒いリボン。
リボンには同じ白の線が二本。
「あ、ずるいわフラン!私が渡したかったのに!」
レミリアお姉さまがぷくっと頬を膨らませる。
「フランお姉さま、ありがとう!」
ルリアの純粋な笑顔、癒しだな…
「お姉さま、ルリア、私は先に部屋に戻るね。」
部屋に一人で戻る。出窓のカーテンを開けると。
広がる星空、緋色の月。雨は上がっていた。
パーティでお客様に頂いた[正直の手鏡]に自身を写してみると、
そこには…
満面の笑顔の、私がいた…。
なんてことない毎日。のはずだった。
パーティが終わると、お客様たちが帰っていった。
もうすぐ日の出だ。忌々しい太陽というものを見る前に、
寝てしまおう。
そうだ、ルリアをお姉さまの部屋から引っ張ってこよう。
お疲れなのに迷惑をかけるのは申し訳ない。
それと、お父様とお母様に挨拶してこなくちゃ。
先にルリアだ。
「お姉さま~、ルリアを連れて帰りたいのだけども…」
「え、もうそんな時間!?そっか、また明日ね!」
レミリアお姉さまとフランお姉さまが残念そうな顔をする。
「うん、レミリアお姉さま、フランお姉さま、おやすみなさい!」
「おやすみなさいー」
「「リリエラ、ルリア、おやすみ~」」
次はお父様とお母様のところ。
「リリエラ、お父様とお母様のところに行きましょう!」
「えぇ、今行く途中よ!」
「今日は楽しかった!初めて“声”でリリエラと喋れたもの!」
今まではずっとつまらなかったけれど、これからが楽しみだ。
「私も楽しかったわ!ルリアと手がつなげたもの!」
顔を合わせて、ふふっと笑う。
あぁ、こんな日がずっと続けばいいのに。
お父様の部屋のドアを開こうとすると…
中から話し声が聞こえてきた。
何の話だろう?
「やっぱり、あの二人の力は強すぎる。」
「でも、そこまでしないといけないかしら?」
「あの二人がレミリアを傷つけたら?フランドールを暴走させてしまったら?」
もう一人はお母様のようだ。
「リリエラ、どうしたのー?」
「お母様とお話ししているようだから、少し待ちましょ?」
「うん…。」
お父様の言う二人は、きっと私とルリアのこと。
「100年後の今日、その期限がくる。」
100年後…?
「えぇ。するしかないのかしら、ね。」
「しょうがないだろう。これが吸血鬼の掟だ。
…『双子はどちらかが死ぬ』
私たちには呪いの解き方がわからないからな。」
え…?し…ぬ?
「リリエラ、もうそろそろいいでしょ~?」
「え、うん、いいよ。入ろう、ノックしてね。」
コンコン
「どなたです?」
「リリエラです。」
「ルリアですー」
「お前たち、何しに来たんだ?」
「おやすみなさいしにきたの。」
「今日は今までで一番幸せな日!」
ルリアはそういった。
でも…あんなこときいちゃったら…
…いや、私だけの秘密にしよう。
せっかくの幸せを、壊したくはない。
「お父様ー、おやすみなさい」
「お母様、おやすみなさい、」
「「おやすみ、ふたりとも。」」
ルリアにおやすみと言い、
部屋に戻る。
もうすぐ月が沈もうとしていた。
月は何もないかのように平然と、いつものようにすましていた。
だが…私はあれが、あの月が。
〝偽物”のような気がしたのだった…
続きが気になる!
物凄く気になる!
あ、そうだ、私が書くんだった。
かりちゅま溢れるレミリアお姉さま&
みんな大好きフランお姉さまとおソロの
ZUN帽登場です。
ローズタンドル→紫みたいな色
サマーシャワー→薄い水色
次回、1月31日、0時投稿予定。