前後分かれてますが気にしないでください。
いや別に話数稼ぎたいとかそんなんじゃないです
誰でも救いを求めているならば 前編
~璃々視点~
静かにページをめくる。
人間の寿命より長く存在するある吸血鬼の少女の日記。
それは確かにそこに『リリエラ・スカーレット』が存在した証であり、
彼女が残していった記憶だった。
でも、忘れてはいけない。
まだ私は『暁璃々』であり、『リリエラ・スカーレット』ではない、ということ。
「ねぇ、璃々、それ、面白いの?」
「もう、邪魔しないでよ瑠璃。」
ここは紅魔館の中の大図書館。
記憶にある図書館よりもずっと広く、かなり本が増えていた。
でも、パチェが残しておいてくれたのか、私が一か所に集めておいたスカーレット家の歴史とかの本は昔のままだった。
そこにあった
それは今の私が術式に邪魔されてわからなくなった記憶がつづられている。
「だってさー読めないんだもんコレ。こんなん読めないって」
「なんで?読めるでしょ」
「無理!これ何処の言葉?逆になんで読めるの!」
そうだ、今までずっと日本語に囲まれてたからすっかり忘れてた。
私は基本どんな言語でも読めるんだった。
「そういう能力的な?まぁ、役に立つのはこういう時だけなんだけど」
手にした日記を瑠璃に見せる。
「うへぇ、なにこれ」
「これが、きょ。そんで次が、う。これは、は、だよ」
「もうそれ表にしておいてよ、じゃないと読めない」
まぁ、それも時間があったら。
「それより、おやつにしようよ!レミリアさんが呼んでるよ」
「レミリアさん、じゃなくてレミリア姉さま」
「あ、うん、それ、そのお姉さまが呼んでる」
日記にしおりを挟み、立ちあがり伸びをする。
「っはぁ、うん、いこう瑠璃」
そう、この子はまだ記憶が戻らない。
だから、早く術式を解く方法を探さないと。
「パチェ、この本ここに置いたまま行くけど、後で戻ってくる」
どこからか声が返ってくる。
「えぇ、分かった、いってらっしゃい」
きっとまた本の山に埋もれているんだろう。
まったく、不健康なのはいつまでたってもかわらないらしい。
もう、この館に帰ってきて一週間。
でも、まだ。
私は、なにができる?
なにをするために戻ってきた?
今はまだ、それすらも。
私には、分からないんだ。
~フランドール視点~
かわいい妹たちが帰ってきて早一週間が過ぎた。
でも、私はこの地下からは出ない。それは何故か。
「寂しくなくても、怖いもの。」
ただ一人の牢屋。
「もう、誰も。」
内側からしか開けられない鍵。
「私なんかが、私みたいなバケモノが。」
長い月日で心の扉は閉ざされていて。
「傷つけたく、ないもの。」
本当は、分かっている。
「あの子は、リリエラじゃない」
でも、言ってはいけない。
「だから、壊しても…いい、わけないよ」
まだ、心が痛い。
「リリエラ、帰ってきてよ。あんな風には笑わないはずだよ」
ナニカが、心を蝕んでいく。
『そうだよ、あんな風に笑う子じゃないよ』
またやってきてしまった。私の、悪魔。
「いらっしゃい、×××。」
『あの子は偽物。僕が本物につながる鍵を持ってる』
私が、見つけてしまった『吸血鬼の家系図に載せられない忌み子』は。
「いつになったら、その鍵をくれるの?」
今日もまた、私を嗤うように。
『君がその体をくれたら、鍵をあげるよ』
「それだと、多分無理ね」
『だろうね、でも僕は待つからね』
「そう」
体をソファーに預け、天井を見上げる。
天井は数百年の月日が経っても、かわらないまま、なのに。
「私は変わっていっちゃうんだもの」
仕方のない、こと、よ、ね。ねぇ、リリィ?
そして私は、うとうとと微睡んだ
~咲夜視点~
お嬢様はあの妹たちが帰ってきてからずっと上機嫌だ。
でも、私はその逆だった。
もう、嫌だった。
礼儀正しく、まっすぐ前を見ている。
素直で相手を思いやれる。
妹たちはお嬢様の妹にふさわしいと言える。
でも、私は違う。
今まで、お嬢様に拾われるまでは一人だった。
優しさなんて、生きるのに必要なかった。
素直でいたらこの世界で生きるのは不可能だった。
相手のことなんて考えているほど余裕なんてなかった。
だから、だから、私は。
あの子たちが許せない。
お嬢様、ごめんなさい。
こんな醜い私で。
「ねぇ、咲夜」
「なんでしょうか」
「もうすぐリリィとルリィが来るわ、おやつ、作ってくれてるでしょ?」
「ええ、もちろんです」
「出してきてちょうだい、私は」
「ええ、分かっております。紅茶ですよね」
「流石咲夜。よろしく頼むわ」
お嬢様はテラスに出て眩しい太陽を見上げている。
廊下の向こう側から楽しそうな笑い声が聞こえてくる気がする。
声の聞こえる方と逆に、私は歩き出した。
なんか闇を感じる回になってしまった…
また美鈴出てこないし…
次回こそ頑張ります
後編、3月30日、0:00投稿です
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