東方紅月録   作:黒薔薇ノ夢@吸血鬼好き

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しばらくリリエラ視点です。




そしてその日はやってくる。 Memories 2

 

 

 ~リリエラ視点~

 

 

 

 あれから同じような日々が十ヵ月と四日過ぎた。

 

 私は、お姉さまと一緒に大図書館に行ったり、

 夜のお庭をお散歩したり。

 

 

 そして、

 今日は、≪呪いの解ける日≫。

 私の、いや、私たちの誕生日。

 

 私からは、『話す能力を奪う』呪いが。

 ルリアからは『動く能力を奪う』呪いが。

 

 嘘のように解かれるという。

 

 

 話すことと動くことって、能力だっけ?

 

 

 

「リリエラができることは、『物事・形を操る』事、

 ルリアができるのは、『光と闇・色を操る』事。」

 

 この前、お父様がそう言っているのを聞いた。

 

 兎に角、明日は儀式。

 早く寝よう。

 

 

 

 

 コンコン

 

 ドアがノックされる音で目が覚めた。

 メイドが入ってくる。

 

「リリエラお嬢様、おはようございます、

 今日は儀式でございますよ、準備をいたしましょう。」

 

 外を見ると、もう真っ暗だった。

 だが、月は見えない。

 雨が降っているのである。

 

 …なんか怖い。

 

 

 儀式の為に、専用のローブを着て、家族に連れられ、

 館の奥の間へと向かう。

 

 ちなみに私はお父様の書斎で館全体の地図をお借りしてきた。

 ルリアにも見せてあるので彼女も知っているだろう。

 

 外は大雨になっていた。

 こんな季節に降るのは珍しいといえるだろう。

 

 

 しばらく進むと、とても頑丈そうな扉があった。

 

 鍵や術式をひとつずつ解いていく。

 

 

 この儀式が終われば、呪いは解けて、喋れるようになり、

 吸血鬼として血をのむことが許されるという。

 …血はいらない。

 

 

「ここから先は私、リリエラ、ルリアだけで行く」

 そうお父様が告げる。

 

 

「「私も行くわ!」」

 

「いいえ、レミリア、フランドール、あなたたちはここにいなさい。」

 お母様がそう止めた。

 

「なんで!?」

 と、フランお姉さま。

 

「…フラン、だめよ。」

 とレミリアお姉さま。あきらめたのだろうか。

 

「なんでなの!?」

「フランお姉さま、まってて、ね?」

 ルリアのまだあどけなさの残る言葉。

 

 

 納得したのか、フランお姉さまがこう言う。

「…かならず、かえってきてね。」

 

「いってらっしゃい、リリエラ、ルリア。お父様も。」

 

「あぁ。…さぁ、ふたりともいくぞ」

 お父様の後ろについて歩く。

 ルリアは動くことができないからお姫様抱っこされている。

 

 埃を被った絨毯の道をしばらく歩くと。

 薄暗い部屋にたどり着いた。

 

 

 お父様が戸を開ける。

 

 一つの机がある。

 その机の上には手の形の窪みが付いている。

 

 お父様が小さな小瓶の入った木箱を持ってきた。

 

 ふいに暗くなる。ランタンの明かりを消したのだろう。

 

 …目が慣れてくる。

 床には紅い放射線状の筋が残っている。

 

 

 今から、儀式が始まるようだ。

「リリエラ、真ん中の台が見えるかい?」

 

 みえる。

 

「見えたらそこに行ってみろ」

 

 恐る恐る近づく。

 置いてある椅子に座る。

 

 

「おとうさま、るりあは~?」

「少し待っていなさい、ルリア。」

「はぁい。」

 

 お父様がこっちに歩いてくる。

 

「とう…あ…」

「リリエラ、怖くない。さぁ、台に手を置いて。」

 

 窪みにはめる。すると、上に布がかぶせられる。

 その布は緋色に染まってしまっている。

 

 もとは純白のシルクでできた布だろうか。

 

「怖いのなら目をつむりなさい。」

 怖い。でも、目を閉じると余計に怖い。

 一度つぶった目を開く。

 

 それを見たお父様はこう言う。

「度胸のあるやつだ。それなら、手を動かすなよ。」

 

「3・2・1・ほい。」

 

 いや、ほいってなんなんだ…

 

「あっ…」

 途端に五本の指に激痛がはしる。

 針か何かが刺さっている。

 

 何かがしずくの滴るような音を立てる。

 

 机の下を見ると、紅い筋を通って壁へと流れていく。

 一分くらいたっただろうか。

 痛みがふっと消えた。

 

 

「終わったよ。部屋の外で座っているルリアを連れてきてくれ。」

 そういってお父様がほほ笑む。

 

 扉を開けると、壁にもたれるように座っているルリアがいた。

 無言でおんぶする。

 

 

 そして、さっき自分が座っていた椅子に、ゆっくりと座らせる。

 

「外で待っていなさい。」

 

 …三分くらいたった時。

 ふいに扉が開いた。

 

 ルリアは、今度はおんぶされている。

 

 

「さぁ、かえるぞ。」

 

 またしばらく歩く。無言で。

 

 行きよりも体が軽い。気がする。

 動きやすい。

 

 だんだんと明るくなる。

 

 

 出口の扉が見えた。

 

 

 あのおもい扉を開けると。

 

 

「おかえり!リリエラ!」

 フランお姉さまが突進してきた。

「ん~!」

 

 首絞まってるんですが!?

 

「おつかれさま、ルリア!」

 

「ただいま、みんな。」

 

 

 みんながいた。

 

 

「大広間へ。それと二人は今日から正式にスカーレット家の娘だ。」

 

「二人とも、ローブを脱いで。」

 お母様にローブを渡す。

「よかったね、お姉さま!」

 フランお姉さまとレミリアお姉さまだ。

 

「えぇ、ほんとによかった。」

 

「リリエラ、まだ喋らないで。ルリアも動いたら駄目よ。」

 

 

 

 そうだ、儀式が終わったから喋れるのか!

 忘れてた!

 

 

 大広間にはごちそうが準備してあった。

 とっても豪華だな…

 




話は異常なくらい大雑把に進みますので、ご了承ください。

次回、1月30日、0時投稿予定です。

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