東方紅月録   作:黒薔薇ノ夢@吸血鬼好き

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三ヵ月ぶりにどうもです。

いつも短い割に時間かかってすいません。

反省してます。


嘘は積み重なって今に至る。

 ~瑠璃視点~

 

 学校の校門の手前のロータリーで降ろしてもらうと、紫音と青空が並んで立っていた。気温は6度、こんなにも寒いというのにコートを脱いで制服の上着まで脱いでいる。

 

 二人とも青くなっている。

 

 

「「あ、おはよう、瑠璃、璃々。」」

 

 璃々はそんな二人の行動を疑問に思ったようだ。

 

「おはよ、何やってるの?」

 

「よくぞ聞いてくれた!今なぁ……」

 

 青空が待ってましたとばかりに話し出す。

 

 それを遮るように、紫音が話し出した。

 

「今な!この寒い中で、どこまで耐えれるかっていうのをやってるんだ!」

 

「自分のとあるものを譲るという内容なんだ!邪魔するなよ!」

 

 どうやら二人とも寒さで頭をやられたらしい。

 

「瑠璃、この二人、どうする?」

 

 璃々と二人で悩んでいると…

 

 

「これは……皆様お揃いで」

 

 鏡夜くんが車から降りてこちらに向かってくる。

 

「やぁ、鏡夜、おはよう」

 

 鏡夜くんは二人を見ただけで何をやっているかを理解したらしい。

 

「ふぅん。じゃあまたあとで」

 

 そう言い残して校舎へと歩いていく。

 

 

「瑠璃、ほんとにこの二人どうしよう。」

 

 二人は唇を真っ青にしながらにらみ合っている、が。

 

 瑠璃が頭を抱えだしたのでそろそろ止めよう。

 

 

 えっと確か、二人は効くんだっけ……?

 そっと近づいて、脇をくすぐる。

 

「うおっ、なにするんだ璃々!」

 

「やっ、やめっ、くすぐるのはな、なしだ、ろっ!」

 

 

 どうやらこれは紫音の方が効くようだ、今度やってさしあげよう……と決めたところで、もう一人現れた。

 

 

「あのーもしもし、青空通れないんだけどー?」

 

 璃々が手をあげて、その人物にハイタッチする。

 

「おはよう、璃々、瑠璃。それと紫音も」

 

「え、俺は無し?」

 

 そう、青空に意地悪したがるのは祐奈である。

 

「で、これは何を」

 

「えっと、簡潔に説明すると」

 

 瑠璃が口を開く。

 が、私が遮る。

 

「これはこの二人がこんなに寒いのに度胸比べをしているところです、

 どうかだれかあの二人を何とかして……っていう状況。」

 

「ほぅ、それはそれは……」

 

「むぅ……」

 

 まぁ言いたいことはわかる。

 あの二人はバカだ。

 

 瑠璃には後で謝っておこう。

 

 祐奈が次の声を発する前に、事は起こった。

 

 

「ちょ、ちょい、パ、ス……」

 

「っしゃぁ、紫音、俺の勝ちだな!」

 

 紫音はふらりとバランスを崩し……

 

「紫音っ!」

 

 何を思ったか、私は地面を思いっきり蹴る。

 

「届けッ!」

 

 頭が地面に付くよりもっと早く、私は紫音を受け止める。

 あ、もちろん抱きしめるみたいなアレじゃなくて、

 後ろにまわって、かたを支えただけだけど。

 

「ふ、ふぅ。間に合った」

 

「ね、ねぇ璃々、あなた今何をしたの?」

 

「何って、人助け?」

 

「違う、そうじゃない、今ものすごい勢いで……」

 

 祐奈が続きを言おうとすると、ちょうどチャイムが鳴った。

 

 

「あ、みんな、そろそろ行かないと、遅刻になるよ?」

 

 いい感じに瑠璃が話をそらしてくれた。

 

「ほんとだ、璃々、紫音をよろしく」

 

 青空がそう言うと、祐奈が青空を睨みながら、

 

「あんたも悪いんだから、一緒に運ばなきゃ」

 

 と言うと、青空も素直に謝る

 

「あ、はい、すみませんでした」

 

 

 でも、その会話が全くと言っていいほど頭に入ってこなかった。

 

 

 

 

 

 今私は何をした?

 

 何をしていたんだ?

 

 まさか……

 

 いや、そんなことがあるはずない。

 

 だって、だって、『あの力』は封印されてるはず

 

 なのにどうしてあんなに早く動けた?

 

 なんで、どうして、どうして、どうして……

 

 

 まさか。

 

 だれかがその封印を解いてしまったというのか?

 

 

「……り、り…り、璃々!」

 

 瑠璃の声で意識が戻る。

 

「璃々大丈夫?今朝のことと関係あること?」

 

「ううん、だいじょうぶ、ちょっと……ちょっとだけ考え事をしてただけ、だから」

 

「ほぅ、関係あるんだね」

 

 瑠璃にはわかってしまうものなのか……

 

 

「そこの人達!チャイムなりますよ!どうしたんですか」

 

 外の見回りにでも行っていたんだろう先生がやってきた。

 

「はい、紫音……華月紫音さんが倒れそうになったので介抱してたんです」

 

 意外にも青空が答えた。

 

「あぁ、そう。同じクラスの人は?」

 

 今度は祐奈が答える。

 

「璃々です。支えてる方の人」

 

 先生は少し悩むようなそぶりを見せた後、こう続けた。

 

「璃々さん、紫音君、は私に任せて。あなたは担任の先生に連絡してください」

 

 いきなり先生に声をかけられて、正直びっくりした。

 

「あ、はいわかりました」

 

「璃々さんは先に行っていいわよ、最初からのいきさつを知っている

 人は残って頂戴。とりあえず校舎内に入りましょう。」

 

 私は名指しでとっとと行けと言われたのでしたがっておこう。

 

 

 紫音大丈夫かな。

 

 

 

 教室に入ると、いつものざわついた雰囲気だったが、

 一部の女子がピリピリとした感じのオーラをまとわせていた。

 

 たぶん二学期最後の朝に紫音が来ないことに苛立ちを感じているんだろう。

 たぶん、というかぜったいそうだ。

 

「おはよう、璃々ちゃん。今日は紫音くんと一緒じゃないの?」

 

 ましゅはどうやら私と紫音が一つのセットみたいに思っているんだろう。

 まぁ、毎朝大体一緒に時間に来るし、それもあながち間違っていないだろうけど。

 

「ましゅおはよ。紫音ならさっき倒れたから保健室かな」

 

「「「「「えっ!」」」」」

 

 女子軍団が一斉にこっちを向いた。

 

「ねぇ、紫音君倒れたってホント?」

 

 まためんどくさいのがからんできたなぁ……と思いながら、

 適当に返しておく。

 

「そうだけど、何か?」

 

「はぁ?」

 

 なんかキレられた。

 

「璃々ちゃん!わざわざなんで煽るの~っ」

 

 うしろで縮こまったましゅがそう嘆く。

 煽ったつもりはない。

 

「私は、紫音君が来てない理由を知りたいんだけど」

 

「それなら後で、紫音が来てから聞けばいいじゃない」

 

 ここはあえてお嬢様っぽい口調で攻めてみよう。

 どうせ口論なら少し立場を上に見せた方が強い。と思う

 

「うっ……で、でも、心配なの!なんで来てないのよ!」

 

 

 ヒソヒソ

「あっ、やばいよこれ。」

「喧嘩かぁ?」

 

「もう無理~璃々ちゃん止められないよ~」

 

 二度目のましゅの嘆き。

 すまん、あとで購買でましゅのすきなキャラのペン買うから許しておくれ!と心の中で叫びつつ、追い打ちをかけるように話し始める。

 

 

「だから、後で聞けばいいじゃないの。私はまだ用意が出来てないし」

 

「さっきからあなたなんなのよ!紫音君のなんなのよ!」

 

 そっちこそなに、と言い返そうとした瞬間。

 

 

 後ろのドアが開いて、紫音が入ってきた。

 

「あ、紫音君!おはよう!」

 

 口論なんてまるでなかったかのように笑顔になる女子軍団。

 

 紫音は自分の机に鞄を置いたが、席には着かずにこっちに向かってくる

 

「どうしてこんなに遅かったの?」

「今日の髪型もかっこいいね!」

 

 周りには人の輪ができる。(女子の。)

 

「どうして遅かったか?」

 

 紫音がめんどくさそうに言葉を投げかける。

 

「心配したんだよ!」

 

 さっき言い合いしてたのがなかったかのようにその女子は言葉を連ねる

 

「なんで……って?話さなきゃダメなことなのか?」

 

「うん、気になるから教えてよ!」

 

 紫音は少しめんどくさそうにため息をつく。

 

「えぇ……なら言うけど」

 

 私の目はその女子が机の陰で小さくガッツポーズしたのを見逃さなかった。

 

「俺は、校門近くで倒れただけだけど」

 

「大丈夫?」

「怪我してないのかなぁ?」

「保健室行ってたから遅かったんだよ、きっと」

 

 

 様々な言葉が飛び交う中、もう一度紫音が口を開く

 

「あと、もう一つ、璃々が俺の何かっていうやつ」

 

「え……聞いてたの?」

 

「廊下から丸聞こえだったぜ」

 

「えぇ……」

 

 なんか私の声も響いてたと思うとぞっとする。

 もしかして他のクラスまで……なわけないか。

 

「璃々はなぁ、俺の……」

 

 

「「「「「紫音の……(ゴクッ)」」」」」

 

 

 

「婚約者だよ!」

 

「「「「「「「えーーーーーーっ!!!」」」」」」」

 

 クラス全員の大合唱。

 

 え?なにそれ?

 いきなり告白?

 

 

 どうしようなんというか頭が痛い。

 

「普通に考えたら、嘘っぽくない?」

 

 ついそんな言葉が出てしまった。

 

 だって今紫音が首の後ろに手を置いてるじゃん!

 

 だが逆に考えると、これはチャンスだ。

 だって、嘘と捉えてもらえるんだから!

 

 

 と思っていたのが間違いだった。

 どうやら逆に信ぴょう性が増してしまったようだった。

 

「婚約者……ですって……?!」

 

 

 ああああああああああああ!

 私は何をしてるんだぁぁぁぁぁぁ!

 

 

 

 

 

 この出来事のせいで、私は終業式中に意識を失い、

 気が付いたら、保健室のベットの上だった。

 

 

「璃々、大丈夫?」

 

 瑠璃が心配そうな顔で、ベットわきの椅子に座っている。

 

「ん……大丈夫、生きてる」

 

「璃々、驚かせてごめんな」

 

 紫音もいたようだ。

 

 保健室の先生がカーテンをめくって顔をのぞかせる。

 

「よかった、目が覚めたわね、あと三人くらい様子を覗きに来てたけど、

 授業があるでしょって帰したわ。あとでちゃんと報告してちょうだいね」

 

「瑠璃、紫音、心配かけてごめん、驚きというかなんというか……」

 

「うん、あれはほんとに俺が悪いと思う」

 

「ねぇ、二人とも何の話?」

 

「璃々と俺が「なんでもないわ、私のストレスよ」

 

 

 そういうと紫音が少し寂しげな表情をする。

 

 でも知っている、あの顔はわざとである。

 

 

「もう、璃々は昔から無理しすぎだよ、ほんとに」

 

「ごめん、今朝もこんな話、したよね」

 

「朝からいろいろありすぎだろ今日」

 

「青空と紫音のバカ騒ぎに私のクラスにまで聞こえてきた口喧嘩、璃々は倒れるし、もうめちゃくちゃ。」

 

 

 そういえば。

 

「今朝のあれ、何かを譲るとかはなんだったの?」

 

「あぁ、あれ。あれは、まぁ、うん。」

 

「超言葉濁すじゃん」

 

「簡単に言いますと、冬休みに……に遊びに行くのはどっちか、っていうのを」

 

 なんだ、それだけか。気にすることでもない……こともないか。

 でも、なんでそんなに恥ずかしそうにしてるのかがわからない。

 

 

 瑠璃の頭の上にクエスチョンマークが浮かぶ。

 

「どこ?」

 

「だから、……だってば」

 

「聞こえないよー」

 

「ああもう!その、二人の家だよ!」

 

 

「え、そんなことかけてたの?」

 

 よし瑠璃、もっと言ってやれ!

 

「なんで?二人で仲良くこればいいじゃん」

 

 ダメだった、期待が外れた。

 

「瑠璃、忘れてない?」

 

「完全に忘れてるね」

 

「え、何を?」

 

 そう、あの二人は……

 

「同時に二人の家に行けないんだよ。前、花瓶割ったから」

 

「あ……そんなのあったねぇ…」

 

 

 そんな昔話とか、いろんな武勇伝を話していると、二時間目終了のチャイムが鳴った。

 

 

「あのさ、瑠璃、璃々を少し借りてもいい?」

 

 紫音がそう言うと、瑠璃は笑顔で、

 

「いいよー」

 

 と答える。私は物か。

 

 

 ベットに固定されてて動けないから(抜け出そうとすると先生につかまります)

 私を置いて、瑠璃は保健室から出て行った。

 

「なぁ、さっき、なんでストレスとか言ったんだ?」

 

 一転して、紫音は真剣なまなざしになった。

 

 

「だって、変なこと言って誤解されたくないじゃない、嘘なのにさ」

 

「あ、嘘ってばれてた?」

 

「もちろん、だって、紫音は嘘ついた後、手を首の後ろに置くでしょ」

 

「え、マジで?」

 

 彼の幼い時からの癖で、トランプでダウトとかやっててもすぐにわかる。

 

 

「で、なんで婚約者、なんて嘘ついたの?」

 

「あー、なんか場の収集が付かなくなりそうだったから?」

 

「余計につかなくなったのは誰のせいでしたっけ」

 

「ごめんなさい俺です」

 

「まぁ、倒れたのは私が悪いし。」

 

「それはお互い様だろ。だって、俺も倒れてたし」

 

「まぁ、それもそうか」

 

 

 

 しばらくの無言が続く。

 時計の針の音だけが響く。

 

 

「なぁ、璃々」

 

「ん?」

 

「お前、どこか遠くに行く気なのか?」

 

「なんのこと?」

 

 

 瑠璃がどうやら喋ってしまったようだ。

 意識を失ってたのはほんの数分なのに良く話せたな、と感心する。

 

「遠くに行く気なんだろ、瑠璃に聞いた。」

 

「瑠璃……許さない。で、遠くに行くのに問題でも?」

 

「いや、行くんだったら冬休みに遊びに行く賭けする必要なかったな、と思って。」

 

 

 悩みが小さかった、なんか紫音がいつもと違う気がする。

 

「紫音、なに考えてんの」

 

「え、あ、あの、なにも」

 

 そうはいっているものの、手が首の後ろに置かれている。

 

「嘘つき。」

 

「……毎年毎年、遊んでたのに遊べなくなるのはさみしいな~と」

 

 これも嘘。

 

 

 私が無言でいると、紫音が口を開いた。

 

「ごめん、嘘ついた。寂しいというか、もっと遊びたい、そう思った、それだけ」

 

「いくらでも遊べるでしょ」

 

 ……でも。

 

 私も嘘をついている。

 だって、あの計画がもし成功したら、もう二度と戻ってこれないと思うから。

 

「そうだな、はは、俺、なに変なこと言ってるんだろ」

 

「いつもの超絶クールな紫音様はどこ行ったのよ」

 

 いつも、横からさりげなく助けてくれる、でもそれを表には見せない紫音。

 誰にもわからない、彼の本心。

 

「え、俺そんな風に見えてる?」

 

「うん、無愛想なのになんであんなに女子があつまるんだろうなーって」

 

「ほめてくれたのか、けなしたのか、どっちかわからないな」

 

「どっちもです」

 

 すこし紫音は考えるようなそぶりを見せ、こう続けた。

 

「怒り50だけど、嬉しさ60だから許す」

 

 正直に言おう、こういう素直な紫音は、すこしずるいと思う。

 

「それって100にならないじゃん」

 

「残念、引き算ですー」

 

 そして、予鈴のチャイムが鳴った。

 

 

 クラスに戻ると、雑談していたらしい人たちがみんな見てきた。

 

 ましゅが駆け寄ってきた、目には涙を浮かべている。

 

「もう!心配かけて!」

 

「ごめん、ましゅ。でも、そんなに心配しなくてもいいのに」

 

「友達の心配しない人間なんていないでしょ!」

 

「まぁまぁ、今日の帰りに購買によって行けばいい?」

 

「うん、許す。」

 

 

 私は酷いやつだな。

 ましゅにも、紫音にも。

 

 私は嘘をついている。

 

 

 でも、きっと。

 

 

 私は言うことはできないんだろう

 

 怖いから。

 

 きっと。

 

 

 

 

 

 「リリエラ、ルリア、待っててね」

 

 遠いところの紅の館では、魔法使いとヴァンパイア二人が、とある戦いに挑んでいたとは知らず。




次回、幻想郷へ!

ハプニング盛りだくさんの予定ですので、
お楽しみに!

9月30日までには完成させますんでお許しください。

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