機動戦士ガンダム0079 Universal Stories 泥に沈む薬莢   作:Aurelia7000

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第六章

  第六章

  『敵戦闘機は四機。恐らくは爆装したドップだと思われます。先日より度々我が軍を断続的に爆撃し、損失は無視できないものとなってきています。クローバー隊は長距離空対空ミサイルによって、これらを駆逐して下さい。基地からの通信は不可ですが、地上の友軍が情報支援を行ってくれる手筈になっています。ミノフスキー粒子が散布されてはそれも使用不能ですが、幸い敵は勢力圏に近い事や、先日の我が軍の損失に油断しているようでそのような大規模な動きはありません。しかし敵勢力圏に近い事は事実なので素早く敵を駆逐し、無事に帰還して下さい』

「了解。長引かせるなよ、トゥー」

  エンジンの唸る音の内側で、オペレーターから作戦の説明を受けた。

  二対四では分が悪い気もするが、その為の長距離空対空ミサイルだろう。要は敵が対応する間もなくミサイルを発射し、一撃離脱の戦法を取れということだ。レーダーの索敵範囲では彼我にあまり差はないから、捕捉されるのを遅めるステルス技術と高速飛行が必要となる。あるいは、味方の地上軍からデータリンクによって支援してもらうのも手だろう。

  キャノピーの外側で流れていく雲は厚い。が空は青く晴れている。後方確認用モニターで後方を確認すると、クローバーのエンブレムが描かれた主翼と二枚の垂直尾翼が覗ける。当然ながら隣には僚機、クローバー・トゥーが飛行していた。僚機であるセイバーフィッシュのキャノピーでは、トゥーというコールサインの中尉がこちらを見てサムアップで応えている。同じくサムアップでトゥーに返し、前を向きなおる。

  『こちらは第十一物資集積基地! 現在敵の爆撃を受けており、至急援護を求む!』

  壮大な雑音と共に無線通信を受けた。細かな位置修正をし、無線を返す。

「こちらは増援の航空隊だ。レーダーは生きているか?」

『来てくれたぞ! ただいまそちらを補足した。二機か……思ったより少ないんだな? 対空砲のレーダーをリンクして、敵機の情報を送る! ……それ来たぞ! 迎撃始め!』

  モニターの端に表示されるレーダーサイトに、情報が追加される。敵は四機だ。そして全ての機体にロックオンのアイコンが追加される。

「ミサイル、発射する」

  サイドスティックのミサイル発射スイッチを押し込み、ミサイルを解き放つ。空対空ミサイルに搭載されたブースターに点火し、飛行。地上軍から送られるデータを基に敵機を探した。やがてドップの吹き荒らされるバーナーを補足する。

  メルヴィンは高度を下げながらモニターを睨んだ。モニターの中ではミサイルを示すアイコンが敵機のアイコンに迫っていく様子が光で示されている。

  鳴り止まない地上からのレーザー照射に、舌打ちを打つ。爆撃仕様を護衛するドップの奇形のコックピットに収まる男、モビアである。そして、相変わらず騒ぎ続ける対空機関砲に機関砲弾を突き立ててから気付いた。

「ミサイルだ!」

  フレアを撒き散らし回避行動を取る。僚機の三機も同様だ。ビープ音がけたたましく主張する間、操縦桿を捻り、フレアを放出しながら叫んだ。

  無茶な機動でミサイルをかわすと、僚機の状況を確認する。どうやら彼らもかわしたらしい。

『畜生が! どこのどいつだ!』

『敵戦闘機です! この賭けは我々の負けだ!』

「地べたの連中がデータリンクしてんだろうよ! 爆撃装備は退避しろ! カッパ・スリー! 連中をやるぞ!」

  エンジンを吹かし、ミサイル発射のあった方向へ進む。しかし、すぐに再びのビープ音。進路を諦めて旋回し、ミサイルをかわす。ロックオンアラートは鳴り止まないが、ひとまずミサイルはかわし―

  ―爆散。

  メルヴィンは撃破したドップのすぐ側を斜めに突っ切り、アフターバーナーで急上昇をかける。トゥーが空対空ミサイルを発射する間にメルヴィンが低高度より急速に接近し、無理矢理ドッグファイトに持ち込む。それがクローバー隊二機の作戦だった。三つ葉のクローバーはそのまま緑色のドップに肉薄する。

  メルヴィンは機体を傾け、旋回した。セイバーフィッシュのエンジン出力を生かして大きな円を描き、背後を取った。すかさず引き金を引き、鉛の機関砲弾をドップの機体に突き刺す。弾の集団はコックピットの周辺を抉り、パイロットの脱出も許さなかった。炎を上げて墜落していく元敵機、現在進行形のスクラップには脇目も振らず、もう二機のドップへと機首を向けた。

  ビープ音。ロックオンアラートだ。次いでミサイルアラートが鳴り響く。メルヴィンが前方を睨むと、炎を吹いて接近するミサイルが見えたので、引きつけて回避運動に入った。回避したメルヴィン機のすぐ横をミサイルが通り過ぎた。早めに気付くことができてよかった。

  敵機をロックオンし、ミサイルを放つ。空中に放り出されたミサイルが敵機に向かっていく。爆撃装備だったドップは既に対地ミサイルをすべて撃ち尽くし、護身用対空ミサイルで戦闘態勢に入った。身軽になったドップはフレアを放出しながら旋回した。機体の小ささを利用し細やかな機動による小回り旋回だ。

  今度はそのドップが反撃に出る。セイバーフィッシュの背後を狙った。ドップが秀でる、高機動性だ。

  メルヴィンはエンジンの出力を上げた。確かにドップは機動力においてセイバーフィッシュを凌ぐが、エンジンの出力では及ばぬ面がある。増速でドップを引き剥がし、ドップの二連装機関砲は空を切った。大きな旋回でもう一度ドップの背後に迫るメルヴィン。

  もうミサイルは残っていない。

  機関砲弾を叩きつけ、隣を抜き去った。キャノピーの支柱に貼り付けられたミラーで撃墜を確認した。レーダーに映る最後の一機はもう逃走を開始したようだ。敗走する一機は無視し、その空を旋回する。

『ありがとう、助かった! 我々はじきに補充を受けられるそうだ。にしても、凄い腕だな! 我々が君達の名前をプロパガンダで聞くことになるのは、そう遠くない日なのかも知れんな!』

「ありがとう、了解した。我々も撤収する」

  ゆっくりと地上軍を見下ろしながら旋回する。所々で炎が黒煙を吐き出している。車列を作って行軍する彼らから目を離し、メルヴィンは操縦桿を握りなおす。

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  • 人間ストーリー
  • 戦闘シーン
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