ガンダムSEED×00~異世界にイノベイターは何を思う?~<完結>   作:MS-Type-GUNDAM_Frame

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なんとかこのクソ忙しさに一段落付き、スプラトゥーンを延々とプレイできるくらいには時間が出来ました。
よかったー。
今週からまた週一で頑張りたく存じ上げます!


28話:紅海へ

アークエンジェルは地表から僅かに浮いてレセップスの方へ航行していた。

 

「戦況はどうだ?」

「凄まじい戦果ですよ・・・」

 

現在、味方のMSから送られる情報によれば、既に敵バクゥが一機とデュエルが戦闘不能。敵は撤退を開始し、殿の隊長機と思しい機体と曹長が一騎打ちを繰り広げていた。

 

「戦術で相手の戦略を押し切るとはな・・・」

 

送られてきた情報からマップを使い再現してみると、相手は一点突破を警戒して鶴翼の陣を組み、数で劣るこちらのMSを包んで殲滅しようと考えていたのだろう。だが、曹長の戦力は敵の想定を超えていたようだ。まだ撤退ラインである全戦力の20%すら失っていないのに撤退を始めているということは、このままでは全滅すると指揮官が判断した証左でもある。

 

「あいつ、こんなに強かったのか」

 

そんな戦況を眺めて呟かれたカガリの言葉は、いったいどちらに向けられたものだったのか。

 

「ストライク、帰投してきます」

「エネルギー切れか?」

「そのようです」

 

先にストライクが帰ってきたことを訝しんだ艦長は、収容されたストライクへつながせた。

 

「少尉、なぜこんなに早く帰ってきた?」

「あの隊長機にライフルで牽制してたんですけど、全く当たらなくて・・・」

 

頭をぐっしょりと濡らす汗が、キラの疲労を物語っている。これは曹長一人では万が一があるかもしれない、と、次の指示を出す。

 

「少尉、次はランチャーパックで艦上から援護射撃を加えろあと五分ほどで射程に入るはずだ」

「りょ、了解です」

 

ふらふらとはしながらも、敬礼で返事を返したキラに頷いて、整備班にも同様に指示を出す。

艦長には、「勝てる」という確信がうっすらとあった。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「射撃と操縦が別か」

 

相手から向けられる感情は、砲身を操るものと機体を操るもので分かれているように感じられた。こちらの攻撃を間一髪で躱しても、砲撃は絶え間なく刹那のジンを狙ってくる。

流石にジンの装甲では一撃すらも耐えることが出来ないため、必然的に回避がいつもより大きくなっている。相手は二人で行っているとは信じられないほど密に絡み合った連携で、刹那に肉薄しようと機体を振り回している。

足元に打ち込まれた二発のビームを事前に後ろへ急加速することで躱し、新たに装備されたレールガンの弾を打ち込もうとするが、砂煙を咥えたような形状のビームサーベルで切り裂きながら迫ってくる。仕方なしにレールガンのチャージを中断して上体を下げビームサーベルの斬撃を躱し、左ひじでMSの頭部をかちあげた。

そのままひっくり返ってしまえば勝負は決まるのだが、背部のスラスターで姿勢を取りながらフォローにビームを打ち込み、姿勢を立て直した。

 

「!・・・これは」

 

背後からの感覚に、刹那は勝負を決めにかかった。

 

地面をバクゥから移植したクローラーが踏みしめ、寿命を完全に無視したオーバースピードでジンを加速させる。

左手に重斬刀を装備させ、背部のスラスターまで全開にして姿勢を立て直したばかりの四足のMSに迫る。相手の回避方向に重斬刀を斬り上げ、迎撃しようとした相手のビームサーベルの発振部を正確にとらえた。

ここまでなら先ほど同様に正確なビーム射撃がフォローを入れるのだが、今度は先にジンの遥か後方から飛来したビームが連装ビーム砲を破壊した。

その衝撃で背部のスラスターも故障し、一瞬敵MSは宙に浮いた。

そして、ジンの右腕の装置、G-Eaterが、先ほど同様にMSをとらえた。

 

「これで!」

 

装置のトリガーを、親指で押し込む。画面の右下に電力ゲージが表示され、アラートが鳴った。電磁加速された鋼材が、MSの装甲を割り砕いて内部を破壊する。

MSの首の付け根から、斜めに入射したパイルバンカーの弾は、コクピットの横を掠めて

砕いた。

 

MSの頭部から光が消えたことを確認した刹那は、ゆっくりと息を吐いた。

どうやら、この二人は時間を稼ぐ事に成功したようだ。見渡す限りでは敵部隊らしきものは見えないし、脳量子波からもかなり遠く離れていることが分かる。

同時に、目の前の残骸の内部で、まだ二人が生きていることも分かった。驚くと同時に、コクピットにノイズが入った。

 

『・・・あの、ときの、話が分かる方かな』

「・・・ああ」

 

バルトフェルドの声に、おそらくは自分だろうと刹那は返事をした。

 

『君は・・・コーディネーターをどう思う』

「どうも何もない・・・人間だ」

 

少なくとも、トールやその友人たち、整備班の人間はそう思っているだろう。その返答に、弱々しい笑い声が聞こえてくる。

 

『みんなそうなら、戦争なんて・・・っく、起こらないんだろうけど、ねぇ』

 

まだ何か言いたいことがあるのだと察した刹那は、口をつぐんで続きを待つ。

 

『まさか、二人とも生きていられるとは思わなかったが・・・僕らは、君たちの捕虜と言うわけだ。だが、どうか、アイシャだけは・・・』

「ああ、了解した」

 

返事をした直後に脳量子波は弱まり、気絶したことが伺えた。後方から、アークエンジェルが接近してきたため、刹那は回収させるための通信を入れた。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「じゃあ、カガリを頼んだぜ?」

「もちろんです」

 

カガリの背後関係を一人だけ聞いた艦長が、びしっと敬礼をして返事をする。

アークエンジェルのクルーたちは、砂漠に出て明けの砂漠のメンバーからお礼と別れの言葉をかけられていた。

特に、刹那は若い女性に囲まれて困惑している。

キラは、目から血の涙を流している男から頭を下げられて慌てていた。

 

それも30分ほどで終わり、アークエンジェルは紅海を目指して航行を開始した。

 

整備班は、ジンからクローラーを外し、新たな装備をどうするのかミーティングを始めていた。

ソフトウェア担当としてキラも招かれている。

 

「スクリューじゃあ推進力がなぁ」

「大体ジンじゃ耐圧に問題があるぞ」

「曹長のスピードも反映できないしなぁ」

「じゃあ狙撃なんてどうですか?」

 

キラは、刹那の射撃が正確であることから水上からの狙撃用にカスタムすることを提案する。

 

「水上で動けた方が良いよな?」

「ホバーだろ」

「動力はクローラーに使ってたやつを転用すればいけるな」

「スラスターを水で冷却しながら使ってもいいんじゃないか?」

 

少ないながらも様々なものを開発してきた整備班だからか、とてもたくさんの意見が出る。そして、これらをまとめるのがマリューとマードックの仕事である。

 

「まとめると、ホバーで水上を移動しながら魚雷なんかで攻撃する、で良いかしら」

「「異議なし」」

 

そうと決まれば、と、人が小分けに集められ始める。

 

「資材加工系の連中、集合。ホバー用の外装先に作っちまうぞ」

「武装班、艦載の魚雷とランチャーの互換性確認急ぐぞー」

「残りはスラスターの加工と熱フロー計算と強度計算、モデル作成はキラ君にお願いするわ」

「はい」

 

アークエンジェルが一種の実験部隊であるのは確かなのだが、こんな一つの軍事工廠と化すとはだれが予想しただろうか。

この部隊をZAFTが潰そうとして失敗すればするほど、アークエンジェルがアラスカ本部に辿り着いて発生するリスクが加速度的に上昇していく上に、艦には実験武装を十全に使いこなす最強のパイロットとその弟子がいるのだから、ZAFTからすれば悪辣極まりない。

そして、極めつけに、艦長は軍事の名門、バジルール家の才女である。

 

アークエンジェルが、「不沈艦」として、そして「最強の実験部隊」として名を馳せる日はそう遠くない未来だろう。




実はDestinyのブラストインパルス水上戦がとても好きで、ホバー機構付けちゃいましたww
この刹那さんこそワンマンアーミーではなかろうか

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