ガンダムSEED×00~異世界にイノベイターは何を思う?~<完結>   作:MS-Type-GUNDAM_Frame

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再筆版の方が捗り過ぎて困るなぁと。


再筆版 二話:転換点

とりあえず、電話でゲート通過の予約をしておく事にした。

ヘリオポリス・カレッジは本国オーブの軍需企業、モルゲンレーテと提携している。

自分とトールは在籍している学生なので全く問題ないが、今車を運転しているソランは違う。

予約をしておかないと区画を区切るゲートで呼び止められてしまうだろう。

 

「すみません、トールを送る以外に用事ってありますか?」

 

多分、用事か何かあった方が予約の申請がすんなり通るだろう。

最近は何故かゲートの検閲が厳しいらしいが、国外の人間に限った事のようなので、今回は問題にはならない。

 

「学内の図書館を利用する」

「分かりました」

 

欲しい情報は聞けたので電話を掛ける。

ありきたりな理由だが、なんとなく前々から考えていたんだろうなとは思った。

多分答えるまで考えるような素振りが無かったからだろう。

 

もしもし?と携帯電話にお決まりのセリフを吹き込むと、女性が応対してくれた。

ゲート通過の予約がしたいと言うと、証明書は有るかと聞かれたので、有りますと答えておいた。

運転しているのだから持っていなければいろいろと不味い。

15番ゲートに来てくれと言われたので、ありがとうございますとお礼を述べてからソランさんに道の指示を出す。

トールは間に合わないかもしれないと情けない声を出しているけれど、自業自得とは考えられないのだろうか?

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

驚いたことに、守衛の人とソランさんは顔見知りだった。

曰く車の修理をしてもらい、仕事ぶりが素晴らしかったとか。

 

図書館と研究棟の丁度中間にある駐車場に車を止め、ソランさんと別れてゼミの研究室へ向かう。

トールには置いて行かれたがまあ目的地は同じなんだから問題はない。

 

多分トールから1分遅れ位でゼミの自動ドアを通り抜ける。

室内では、タッチの差だったのか本当に間に合わなかったのかトールの頭が地面とくっついていた。

まだ時間は来てないはずなんだけど・・・

トールばかり眺めていても仕方がないので、研究室の中を探してみた。

サイにカズィ、トールを慰めてるミリアリアと・・・誰だろう?

コートとお揃いの色のキャスケットをかぶった人がいた。

僕が見たのと同時にその人も僕の方を見た。

 

目が合った・・・

 

俯いていたさっきよりも顔がよく見えて・・・

第一印象は中性的で整った顔だな、ということだ。

兎に角美形だと思う。

ソランさんは女性にもてそうだけど、こっちは男女問わず好かれそうな気がする。

 

少しの間目は合っていたけれど、すぐに視線を外されてしまった。

なんだかきまりが悪くて僕も眼を逸らす。

 

「キラ」

 

呼ばれたので振り返ると、サイが手招きしていた。

 

「どうしたの?」

 

多分あの人の事なんだろう。

 

「教授のお客さんなんだけど、失礼が無いようにってさ」

 

えらい人なんだろうか。

あまり年は変わらない気がするが、まあそういう事もあるだろう。

顔じろじろと見たのは不味かっただろうか。

後から留年は嫌だと泣き声が聞こえてくるので、どうせデータなんだからメールで送れば時間の証明ができると言ったら、飛び起きてPCでメールを打ち込み始めた。

わが友人ながら現金だ。

 

さて何をしようか、としたところで再びサイが袖をつかんだ。

 

「離してくれよ」

 

足早にその場から離れようとしたが、一歩遅かったようだ。

 

「察したか・・・まあ、想像通り教授からの」

「嫌だ!」

 

なぜ課題が終わったばかりで僕ばかりがこんな目に合うのか。

 

「・・・新しい課題さ。明日までだって」

 

光栄だろ?と言ってくるが、正直逃げたい。

逃走は許されなかったけど。

教授は自分で仕事をして欲しい。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

仕事は大体一時間で終わった。

まあ僕はコーディネーターの中でもそこそこのスペックでコーディネートされているらしいし、多分それは誇れることでもない。

すごいのは僕をコーディネートした技術者だ。

 

そういえば、ソランさんはどうしてるんだろう。

普通、図書館に用事がある人は一時間やそこらでは帰らないだろう。

 

あの人は本物の才能が有ったな、と思う。

勉強して、経験を積んでああまでなったんだろう。

ああいう人こそ本当に称賛されるべきだ。

 

「そこ、座っていいか?」

 

お客さんが隣の来客用のソファを指さしていた。

はい、どうぞと答えてから、トールにお茶を出さなきゃと伝える。

ゼミのメンバーの中ではぶっちぎりに家事が上手いし、トールがいれるお茶はなかなかおいしい。

トールは、しかたねぇな、と僕の肩を叩いてお湯を沸かしに行った。

今のうちに教授のデスクから良さそうなお茶菓子を(勝手に)出しておく。

仕事代と思えば罪悪感も無い。

 

丁度、トールが戻ってきてお茶を入れたので、湯飲みに入れてコースターを敷き、お茶菓子を木細工の籠に盛ってどうぞ、と差し出した。

 

お客さんはありがとう、と言って辛口の柿の種をつまみながらお茶を一口飲んだ。

お菓子の趣味は僕と一致するらしい。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

オーブ港の外側に、つい半年前に新造された最新鋭の高速艦、ナスカ級ヴェサリウスが停泊している。

潜水艦が構想の根本にあるために艦内はあまり広くないが、機能性は十分だ。

今、艦橋では作戦会議が行われていた。

 

「諸君は、これよりヘリオポリス内で連合が開発している新型MSの奪取作戦を行ってもらう」

 

マスクで顔を覆ったこの男は隊長、ラウ・ル・クルーゼは、昨年の「世界樹」攻防戦で多大な戦績を上げ、実力で隊長まで上り詰めた男である。

 

「中立を隠れ蓑にしているような連中だ。あまり罪悪感を感じることもないだろう?」

 

作戦説明を聞いていたメンバーから嘲笑が上がる。

ユニウスセブンで家族を失った者もいるこの隊には、中立国を隠れ蓑くらいにしか思っていない風潮がある。

 

「さて、今回の主役は君たちだ」

 

仮面が赤い服を着た四人の方を向く。

この赤い服は、コーディネーターの国、プラントの士官学校を優秀な成績で卒業した者に送られる、通称「ZAFTレッド」で、エリートの証である。

 

「アスラン、イザーク、ディアッカ、ニコル、ラスティ。君たち五人は、五機あるという連合の新型の奪取を、一人一台担当してもらう」

 

続いて、五人の通常の宇宙服を着たメンバーを見る。

 

「君たちだが、ジンで彼らがMSに取り付くための援護をしてもらう。ミゲル、ロックパイは先行、残りは後詰めだ」

 

ZAFTの制式量産機、ジンは宇宙で航空機以上の機動性と戦車以上の装甲、人間並みの汎用性を発揮し、連合の主力であるMA、メビウスに大きく水をあけている。

 

「アスランたちは、ブースターを装着後、新型艦が泊められている宇宙港を爆破。そののち、作戦行動へ移れ」

 

では、戦果を期待する。そう締めくくったクルーゼに、全員がハイ!と大きな声で返事をし、キビキビと行動に移る。

クルーゼは、ある程度の成功を確信していた。

 

「アスラン」

 

ラスティが、宇宙服のヘルメットを被る前にアスランに話しかけてきた。

 

「なんだ?」

 

ラスティは、苦笑いしながら懐から写真を取り出す。

 

「俺が失敗したら、弟にこの遺書を届けて欲しいんだ」

 

そう言って、ロッカーから今時珍しい紙の手紙を取り出す。

宛先には、弟へと短く書かれていた。

 

「今回の作戦は失敗すると悲惨だからな。お前ならきっと成功するだろうが・・・」

 

赤服ではあるが、ラスティはアスランたち5人の中で最も成績が下だった。

 

「何弱気になってるんだ!」

 

だが、アスランはそんなラスティが許せなかった。

 

「弟が心配してるなら生きて帰らなきゃダメだろ!」

 

死ぬ気で参加するようでは帰れるものも帰れなくなる。

母を亡くしたアスランは、家族を蔑ろにしないで欲しかった。

 

「そっか」

 

さすがに思うところがあったのか、ラスティは手紙をロッカーに戻した。

 

「悪かったな、変なこと言っちまって」

「いや、こっちもムキになって悪かったよ・・・」

 

さ、急ごうと笑いながら言うラスティを、アスランは複雑な表情で見ていた。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「こんなところで会うとは、これも運命と言う奴かな」

 

ラウ・ル・クルーゼの眼前には一隻の地球軍船があった。

この頭のどこかが鳴るような感覚は間違いようがない。

恐らく、あの男もこちらに気が付いただろう。

だが・・・

 

「一歩遅かったな、ムウ・ラ・フラガ」

 

ヴェサリウスから、クルーゼが乗ったシグーと、その他三機のジンが出撃している。

連合艦からはムウ・ラ・フラガのメビウス・ゼロのみが出撃した。

 

後続がないのを見て取ったクルーゼが、口の端を釣り上げてほくそ笑む。

 

「フランシス!艦橋を狙え!」

 

スクランブルと言って勝手に出撃したフラガ大尉ほどの動きは、一つの艦にさせるには厳しかっただろうか。

碌に回避行動もとれない連合艦は、数発は外れたもののすぐに艦橋を打ち抜かれ停止してしまった。

後は・・・

 

『隊長、予定通り作戦が開始されました』

「ご苦労。我々は目の前の敵を叩くぞ。エンデュミオンの鷹を倒したとなれば、本国の覚えもいいだろう」

 

画面に映る部下たちの顔が凶暴に歪んだのを確認し、シグーがアサルトライフルで牽制射撃をかける。

ちらりと見たコロニーの入り口からは、煙が漏れ出している。

コロニーの構造図を頭に収めているクルーゼは、作戦が上手くいっていると知りにやりと笑った。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「そっちじゃない!」

 

頭が混乱しているけど、これだけは確かだ。

そっちに行ったら危ない。

 

目の前の人物はまず冷静ではない。

何しろ、大きな揺れが走り避難が開始されるなり、猛然と避難経路と逆の方向に走り始めたのだ。

しかし、冷静さと言う点では僕もどっこいだ。

みんなに先に行ってて!と言ってお客様を追いかけているのだから。

だが、とてもではないが目の前の人物に追いつけない。

でも、言わなくては。

 

「天井が!」

 

走って向こう側に押してやりたいが、ああ、景色がゆっくり流れる。

このままでは僕もあの人も押しつぶされてしまう。

感覚が外へ発散していくような気持ち悪さを覚えながら、どうにか足に力を込めてみる。

もう一歩足りない。

 

そう思った瞬間、背中が押された。

否、背中を腕で掴まれて押されている。

そのまま前に加速させられて、前を走っていたお客さんとまとめられる。

さっきまで同様にゆっくりと時間が流れるが、後へ流れていく瓦礫を見て助かるであろうことは確信できた。

 

崩落する瓦礫は、ゆっくりに見えてもなお恐ろしい。

ようやく不自然なほどゆっくりだった時間が正常に流れ始め、瓦礫は数メートル後ろで大きな音を立てて積み立てられていく。

 

押された勢いがなくなってきて、その速度を維持できない僕は足をもつれさせて、前のお客さんを巻き込んで転んだ。

流石に潰すのは不味いと思って、とっさに手を突っ張る。

なんとか体で押しつぶさずには済んだけど・・・

 

「お、女の子・・・?」

 

キャスケットが脱げた()()は、確かに中性的ではあるけど女性にしか見えなかった。

ということは

 

「ご、ごめんなさい!」

 

周りに知り合いはいないが変態扱いは困る。

お客さんはほんのり羞恥からか頬を染めて、なんで疑問形なんだ!なんて呟きながら立ち上がった。

まあ疑問形であったことに怒りは感じているようなので女の子で合っていたんだろう。

 

「大丈夫そうだな」

 

そういえば後ろから押されたんだった。

そしてこの声は・・・

 

「ソランさんですか?」

「ああ。天井の崩落に巻き込まれそうなのを偶然後ろで見た」

 

他にありえないけど、やっぱりこの人に助けられたらしい。

しかし安心したのも束の間だ。

 

「ちょっと君!」

 

お客さんはまた走り出してしまった。

追いかけようとソランさんを見ると、足に包帯を巻いている。

出口はあちらにしかないわけで・・・

 

「先に行きます!」

 

お客さんを追いかける。

先ほど同様、追いつくことはできないが差がつくほど長い距離ではなかった。

 

・・・真っ白にしか見えなかった外は、赤に染まっていた。

銃声と爆発音が鳴り響く非日常の風景。

 

すぐ足元には、人型の灰色の機械があった。

これって・・・

 

「モビルスーツ!?」

 

僕は驚きから思わず声を上げてしまったが、お客さんはもっと反応が激しかった。

膝から崩れ落ちて、震えている。

 

「お父様の・・・お父様の裏切りもの!」

 

・・・?お父様って誰の事だろう。

でもそんなことより、今の叫びで下の一人に気が付かれてしまった。

不味い、拳銃を構えている。

さめざめと泣いているお客さんの腕をつかんで、全速力でその場から離れる。

早くシェルターに向かわないと!

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「X-105と303を起動して!とにかく工区から出すわ!」

「了解しました!」

 

戦況は混迷を極めるが、敵の狙いはただ一つ。

新兵器の奪取だ。

この五機がすべて奪われれば、連合は終わる。

計画の立案者である彼女の上司同様、彼女もまたそう信じていた。

指示を出しながらも、敵が次に隠れそうな地点へ手榴弾を投擲する。

 

先ほど突然上に現れた二人組の少年は何だったのだろうか。

こんな状況では全てが疑わしい。拳銃を向けただけで逃げたのだから、敵ではなかったのかもしれない。

でも、今は過ぎたことより早くGをアークエンジェルに運んで離脱しなくては!

 

目の前に現れた赤服の敵に、拳銃の弾を叩きこむ。

逆に不意打ちを決められた敵は、その場に倒れこんだ。

本来なら近くに寄って無力化するべきなのだが、敵方から叫び声が上がって、アサルトライフルで弾幕を張りながら別の赤服が突っ込んできた。

舌打ちをして、横張の金属コンテナに身を隠す。

 

丁度装弾数も心許なかったので、マガジンを交換する。

入れ終わって、アサルトライフルの敵をどう対処するか考えたところで上から叫び声が聞こえた。

 

「危ない!後!」

 

考えるよりも先に後ろの高台を見た。

今まさに、スナイパーライフルで狙いをつけようとする敵がいた。

ウィーバースタンスへすぐに構えなおし、体のどこかに当てるつもりで数発発射する。

運よく頭に当たったようで、がくりと崩れ落ちた。

こちらも生死の確認は困難だ。

一応射線から身を隠し、声がした方を見ると、黒い服を着た少年が手すりから身を乗り出さんばかりに立っていた。

 

「さっきの子供!?」

 

今日は良いことにしろ悪いことにしろ、驚きばかりだ。




再筆版でもフラグは立っててほしい(願望)

ちなみに教授はモルゲンレーテの技術者と話が合って早退、キラはお客さんに話しかけようと心を決めた時点で襲撃がありました。
トールもキラも間が悪い・・・

これから先と話の連続性が無いですが、いずれ全部再筆版にしますのでご容赦ください。

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