無自覚な吸血鬼の王   作:トイレの紙が無い時の絶望を司る神

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少し時間が吹っ飛びます。


暴れ巫女と方向性を間違えた吸血鬼(前)

途中で邪魔しに来た人食い妖怪や氷精、更には門番をくぐり抜け、現在私はメイドを倒した所だ。

 

「そろそろ少し疲れてきたわね......。なんであのメイドはあそこまで必死だったのかしら?」

 

メイドの必死さと言ったら、とんでもない物だった。

 

 

『あ、貴女?も、もう無理しなくても良いんじゃないかしら.....』

 

『ガフッ、グヴォアァ......ゼェ......ゼェ......ア、アアアア........。とお、して.......なるものかぁ........。

お、お嬢さま.......そして、あの方に.......あの方と、出会わせるわけにはぁ...........』

 

 

それを最後に、メイドは自分の血だまりに倒れて行った。

息はある。流石こんな人外魔境で生きているだけあって、タフだ。

メイドの目は充血しており、血涙でも流れんばかりだった。

何があのメイドをあそこまで駆り立てたのか.......。

それに、『あの方』とはなんのことだろうか......。

 

「気になるけれど、それよりも異変が先よね」

 

巫女は歩を進める。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

地下室から出ると、パチェが本を読んでいた。

 

「久しぶりだねぇ?パチェ」

 

「ッ!?ふ、フラン!?」

 

驚いた拍子にそのまま後ろに椅子ごと倒れたパチェ。

本当は本名があると思うんだけど、アイツがパチェを紹介しに来た時、『友達のパチェよ』としか言わないし、パチェも本名を言わなかったりで、それしか呼び方を知らないの。それ以降地下には来てないし.....。

でも、そんなに驚くことかなぁ......。

まぁそんなのはどうでもいいか。

 

「ねぇねぇパチェ、ロミオは?どこにいるか知ってる?」

 

「ろ、ロミオなら多分部屋で.....って、どうやって出てきたの!?」

 

「普通に壊して。そんなのより早く、ロミオの部屋は?」

 

「上の階だけれど......悪いわね、今は取り込み中なのよ。出るのはもう少し待ってもらえる?」

 

「ん?取り込み中ってなに?」

 

「お祭りの様な物よ。貴方が出てくるのは企画外だから、出て行くのならまだ後にしてくれないかしら?」

 

「.....出ていったらロミオは困るの?」

 

「......困るんじゃないかしら?」

 

そうか。ロミオが困るんだ。

ならやることは一つだね。

 

「解った。待つ」

 

そう言って、フランは近くにあった本棚から本を適当に取って読み始めた。

まぁ......そのちょっと後に普通の魔法使いが飛び込んでくるのだが.......。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

「さ、咲夜......大丈夫なのかしら.......」

 

咲夜が血まみれになる未来を見たレミリアは、不安と心配で頭が一杯だった。

もはや博麗の巫女とか忘れかけていたが、咲夜と戦っている者の服を見て思い出した様だ。

自室の椅子に座り威風堂々として迎えようと思っていたのだが、今は家具屋さんに来た子供が「わー!!校長先生みたーい!!」とはしゃいで椅子に座った感じに見えるくらいにはカリスマが薄れている。

要するに子供である。

 

「うぅ.......ロミオはいないし、パチェは相変わらず読書だし、使い魔は前の戦争でほっとんど死んじゃってたし......。美鈴は寝てるかやられてるだろうし.......」

 

咲夜を迎えに行こうにも誰にも頼めない現状。

ここを離れて自分から咲夜を迎えに行ってる間に例の博麗の巫女が来て「誰もいないじゃん.....」となってる時に咲夜を背負ったまま部屋に戻ってきて鉢合わせたら......。

格好がつかないなんてものじゃない。

 

「どうすればいいのよぉ.....咲夜ぁ.......」

 

博麗の巫女が着いた頃には、少し目が腫れていたらしい。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

「ふふふ......ようやくキャラが決まったぞ......!!」

 

ロミオはガッツポーズを取った。

自分のキャラを決めるのに苦節2時間。

一刻程鏡の前に立ちっぱなしだった。途中から鏡を見る度「こいつ誰だ?」と自身の姿にゲシュタルト崩壊を起こしていた。

 

......おっと、そこの君。

『なんで吸血鬼が鏡に映ってんだ』ツッコミを入れている様だから、説明しておこう。

知っての通り元々吸血鬼は大きくわけて二種類居て、「純血」と呼ばれる生まれながらの純粋な吸血鬼と、その純血に眷属にされて後天的に吸血鬼になった者の二パターンがある。

で、有名になってる吸血鬼の大半が純血なのだ。

そのせいで、人間には純粋な吸血鬼としての特徴だけが広まった。

 

その特徴とは、まぁ有名なのだと『銀が苦手』や『流水(雨も入る)が苦手』。あとは『鏡に映らない』。『日光が苦手』『十字架が苦手』などもある。少しマイナーだと『許可が無ければ他人の家に入れない』などが挙げられる。

この多くの弱点や特徴の中で、眷属と純血とで違うものが幾つかある。

『鏡に映らない』と、『許可が無ければ他人の家に入れない』だ。

理由はわからない。だが、私は現に鏡に映っているし不法侵入もお手の物だ。

私は生まれながらの吸血鬼なのだが.......。力が弱いせいか?

眷属にされて後天的に吸血鬼にされた場合は幾つかの弱点は減るが、能力や力は格段に下がるのだ。

 

 

そんなことがありながらもようやく確立させたキャラ。

これがスベル様ならもう二度と部屋から出ねぇ。

心に強く決意しながら、最後の仕上げにかかる。

 

少しして、ようやく自身のキャラに自信が持ててきた。

 

「行ける.....私なら行ける.....!!」

 

緊張しながらも、ドアノブに手をかけ部屋を出た。

同時にキャラを演じる。

彼が選んだキャラとは......。

 

「人間......人間はどこだぁ!!!!」

 

当初の予定とは全く違い、狂戦士風であった。




遅れてすんませんでしたァ!!

PS,鏡に映っている理由書きました。無理矢理ですけど。

更にPS,少し設定の調整のため加筆修正をしました。
「真祖」を「純血」にしました。史実には真祖とか居なかった様なので。

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