もしもスケーターが異世界に行ったならば。   作:猫屋敷の召使い

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今回で原作一巻終了です!


第七話 ゲーム盤にはバグが満載

 …………………………どうして、こんなことになってしまったのでしょう?

 

 黒ウサギは心の中で、そんな風に思っていた。

 

 なぜ?それは目の前の光景を見ている全員が思っていることで、答えを教えてほしい事だろう。

 

 困った原因?誰もが予測できない行動をする人物が一人いるだろう?

 

 そう。―――

 

 

「おい!どういうことだ!?ド腐れ外道坊っちゃん!?」

「ぼ、僕が知るかッ!?君の要望通りのことをしただけだ!!というかド腐れ外道坊っちゃん!?」

「それがどうしてこうなるんだよ!?能無しチャラ男!?」

「だから、それは知らないって!?って能無しチャラ男!?」

「クソッ!どうして、どうして………!?」

 

 

 

「「どうして、俺が二人になっちまうんだよ!?」」

 

 

 

 ———翔だ。ただし、今は二人いる、という状況だが。

 まあ、彼が二人いる理由は少し時間を遡って説明しよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ほんの数十分前。

 〝サウザンドアイズ〟の門前に着いた六人を迎えたのは、例の不愛想な女性店員だった。

 

「お待ちしておりました。中でオーナーとルイオス様がお待ちです」

「場所は何処だ?」

「離れの家屋です」

「ん、分かった」

 

 率先して翔が女性店員と話して、面倒事にならないようにする。女性店員は翔の引き摺っている。そのまま六人は店内に入り、中庭を抜けて離れの家屋に向かう。

 中で迎えたルイオスは黒ウサギを見て盛大に歓声を上げた。

 

「うわお、ウサギじゃん!うわー実物初めて見た!噂には聞いたいたけど、本当に東側にウサギがいるなんて思わなかった!つーか、ミニスカにガーターソックスって随分エロいな!ねー君、うちのコミュニティに来いよ。三食首輪付きで毎晩可愛がるぜ?」

 

 ルイオスは地の性格を隠す素振りも無く、黒ウサギの全身を舐めまわすように視姦してはしゃぐ。黒ウサギは嫌悪感でさっと脚を両手で隠すと、飛鳥と耀も壁になるように前に出た。

 

「これはまた………分かりやすい外道ね。先に断っておくけど、この美脚は私達のものよ」

「うん。だから誰にも渡さない」

「そうですそうです!黒ウサギの脚は、って違いますよ飛鳥さんに耀さん!!」

 

 突然の所有宣言に慌ててツッコミを入れる黒ウサギ。

 そんな二人を見ながら、十六夜は呆れながらもため息をつく。

 

「そうだぜ二人とも。この美脚は既に俺のものだ」

「そうですそうですこの脚はもう黙らっしゃいッ!!!」

「よかろう、ならば黒ウサギの脚を言い値で」

「売・り・ま・せ・ん!あーもう、真面目なお話をしに来たんですからいい加減にしてください!黒ウサギも本気で怒りますよ!!」

「馬鹿だな。怒らせてんだよ」

 

 スパァーン!とハリセン一閃。今日の黒ウサギは短気だった。

 

「皆さん………」

「ジン。これがあの三人の平常運転だ。お前がコイツらをまとめるんだ」

「すみません。僕では無理です」

「君ならそういってくれると信じていた。これから頑張ってくれたまえ」

「いま僕、無理って言いましたよね!?」

 

 そんな五人のやり取りを見ているジンと翔もどこかズレたやり取りをしていた。

 七人のやり取りを唖然と見つめていたルイオスは、唐突に笑いだした。

 

「あっはははははははは!え、何?〝ノーネーム〟っていう芸人コミュニティなの君ら。もしそうならまとめて〝ペルセウス〟に来いってマジで。道楽には好きなだけ金をかける性分だからね。生涯面倒見るよ?勿論、その美脚は僕のベッドで毎夜毎晩好きなだけ開かせてもらうけど」

「お断りでございます。黒ウサギは礼節も知らぬ殿方に肌を見せるつもりはありません」

 

 嫌悪感を吐き捨てるように言うと、隣で十六夜がからかう。

 

「へえ?俺はてっきり見せる為に着てるのかと思ったが?」

「ち、違いますよ!これは白夜叉様が開催するゲームの審判をさせてもらう時、この格好を常備すれば賃金を三割増しすると言われて嫌々………」

「ふぅん。………おい白夜叉」

「なんだ小僧」

 

 キッと白夜叉を睨む十六夜。両者は凄んで睨み合うと、同時に右手を掲げ、

 

「超グッジョブ」

「うむ」

 

 ビシッ!と親指を立てて意思疎通する二人。そこにいつの間にか姿を消していた翔が声をかける。

 

「おーい。店員さんから許可をもらって、店内の客間を貸してもらえることになったから、今からそっちに………なんかあったのか?黒ウサギが項垂れてるけど」

「い、いえ。なんでもないです」

 

 一度仕切り直す事になった一同は、〝サウザンドアイズ〟の客室に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 座敷に招かれた六人は、〝サウザンドアイズ〟の幹部二人と向かい合う形で座る。長机の対岸に座るルイオスは舐めまわすような視線で黒ウサギを見続けていた。

 黒ウサギは悪寒を感じるも、ルイオスを無視して白夜叉に事情を説明する。

 

「———〝ペルセウス〟が私たちに対する無礼を振るったのは以上の内容です。ご理解いただけたでしょうか?」

「う、うむ。〝ペルセウス〟の所有物・ヴァンパイアが身勝手に〝ノーネーム〟の敷地に踏み込んで荒らしたこと。それらを捕獲する際における暴挙。確かに受け取った。謝罪を望むのであれば後日」

「結構ですあれだけの暴挙、我々の怒りはそれだけでは済みません。〝ペルセウス〟に受けた屈辱は両コミュニティの決闘を持って決着をつけるべきかと」

 

 両コミュニティの直接対決。それが黒ウサギの狙いだった。

 レティシアが敷地内で暴れまわったというのは勿論ねつ造だ。しかし彼女を取り戻すためにはなりふり構っていられる状況にはない。使える手段は全て使う必要があった。

 

「〝サウザンドアイズ〟にはその仲介をお願いしたくて参りました。もし〝ペルセウス〟が拒むようであれば〝主催者権限〟の名の下に」

「いやだ」

 

 唐突にルイオスは言った。

 

「………はい?」

「いやだ。決闘なんて冗談じゃない。それにあの吸血鬼が暴れまわったって証拠があるの?」

「それなら彼女の石化を解いてもらえば」

「駄目だね。アイツは一度逃げ出したんだ出荷するまで石化は解けない。それに口裏を合わせないとも限らないじゃないか。そうだろ?元お仲間さん?」

 

 嫌味ったらしく笑うルイオス。筋が通っているだけに言い返せない。

 

「そもそも、あの吸血k「あっ、その嫌味、長くなるようなら、先に俺の石化を解いてもらってもいい?」

 

 ルイオスの言葉を遮って、翔が割り込む。

 

「………は?別にお前は石になってないじゃん」

「いや、そこはほら、ギフトの関係上で。ていうか、お前らのせいで石になってんだから、そんぐらいしてくれよ」

「………チッ。まあいいよ。その石像は何処にあるわけ?」

「お、アザっす。じゃ、持ってくる」

 

 客室を出て、ゲッダン状態の自身の石像を持ってくる。

 

「これだ」

「………生きてんの、これ?」

「さあ?解いたら分かんじゃね?」

 

 ケラケラ笑いながら、ルイオスに話しかける翔。

 不審に思いながらも渋々翔の石化を解く。

 

 

「………」

「………」

「「「「「「「…………………」」」」」」」

「「………なんで!?」」

「おいオマエ!お前誰だよ!?」

「俺は翔だろう!そういうお前こそ誰だ!?」

「俺だって翔だ!」

 

「「………おい!ルイオス!!これはどういうことだ!?」」

 

 

 

 そして、冒頭の話へと戻る。

 

 

 

「クソッたれ!?なんで、あんなにゲッダンして生きてんだよ!?」

「知るか!?俺が聞きてえよ!!マジでどうして生きてんの!!?」

 

 石だった方も石ではなかった方も騒がしく、ギャーギャーとルイオスに詰め寄りながら、動き回っている。

 と、その時。

 ゴトリ、と音を立てて石ではなかった翔の懐から何かが落ちる。

 それを飛鳥が拾い、翔に手渡す。

 

「翔君。これ落ちたわよ?」

「ん?………あっ、悪い。ありが―――」

「ちょっと待て」

 

 しかし、翔の手に渡る直前で十六夜によって横取りされる。

 

「おい!?何しやが―――」

「これを使ったのはいつだ?」

 

 手に持ったものを見せながら、持ち主である翔に尋ねる。

 

「え?あー、今日………というよりは、ついさっきだな。大抵、練習のときに使ってるから」

「そうだよな。それ以外では滅多に使わねえし」

「「………」」

 

 その道具の名称・用途を知っている十六夜と耀は黙っている。

 そして、

 

「ちょっとそこの馬鹿二人。動くな」

「じっとしてて」

 

 二人は拳を握り締めながら立ち上がり、翔に近寄る。

 それを見た翔達は冷や汗や脂汗をかきながら、尋ねる。

 

「………あ、あの?俺ら何かしました?」

「………き、記憶には何もないんだけど?」

「今回は何もしてないのが原因だから、そうだろうな」

「うん。どうして、黙ってたの?―――この、ビデオカメラのこと」

 

 そう。翔が落としたのはスケボーの練習の際によく使っている、ビデオカメラだ。

 そのビデオカメラには勿論、先ほどの練習風景も撮影しているし、失敗したら本拠に飛んでいくという事も分かってからは、その方向も映るようにもう一台新たに設置していた。

 つまり、彼の、いや、彼らのカメラには〝ペルセウス〟が〝ノーネーム〟に対してやったことが全て映っているのだ。………無論、翔が〝ペルセウス〟の人たちにやったことも映っているのだが。

 

「いや、必要ないかなぁ………なんて………」

「大したものなんて………その、映ってないと思って………」

 

 二人の翔が交互に、忘れていた、とは正直に告げずに言い訳を口にする。しかし、それが彼らの受難の始まりであった。

 

 

 

 

 

 

 ドゴッメキャッバキッゴンッガンッドンッギンッゴキッドパァンッ!!!

 ※言い訳だとバレバレな二人が、容赦のない制裁を与えられています。そのままでしばらくお待ちください。

 

 

 

 

 

 

「「ふぅ………」」

「「ふぉうふぃわふぇ(申し訳)あふぃふぁふぇんれふぃふぁ(ありませんでした)………」」

 

 

 二人の容赦のない攻撃によって、顔面をパンパンに腫らし、包帯だらけの二人の翔が、回らない口で謝罪を口にする。

 

「さっき使ってたのは、これで全部か?」

「「ふぁい(はい)ふぉうれふ(そうです)………」」

 

 正座で座らされている二人は十六夜の問いに頷く。そのことに満足した十六夜と耀は改めてルイオスに向き直る。

 

「さて、この馬鹿は放っておいて………この中に証拠がある」

「吸血鬼がコミュニティを襲った証拠も、〝ペルセウス〟が〝ノーネーム〟の敷地内で暴れた証拠も」

 

 十六夜の持つカメラには、レティシアが十六夜に向かってランスを投擲した瞬間が映し出されている。

 対して耀の持つカメラには、翔がゴーゴンの威光によって石になる瞬間が映し出されている。

 二人はルイオスを見つめながら笑い、

 

「「さあ、どうする?/どうするの?」」

 

 嫌味ったらしい声で問うた。

 先ほどの嫌味ったらしい顔はどこへやら、悔しそうな顔をしている。

 

「………チッ。………わかった。決闘を受ける」

 

 この状況では不利だと気づいたルイオスは渋々といった感じで決闘を了承する。

 

「開催は一週間後。ゲームの内容はこっちで決めさせてもらう。場所は〝ペルセウス〟の本拠だ。それでいいな?」

「ああ。構わないぜ」

「………どうやら、話はまとまったようじゃな。では、これにて解散としよう」

 

 そうして、〝サウザンドアイズ〟の幹部二人を交えた話し合いは、幕を下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、翔の受難は終わっていなかった。

 なぜか行きより増えた七人で本拠に戻り、屋敷の談話室に一度集まると、飛鳥、耀、黒ウサギによって包囲された、二人のボロボロの翔。

 

「「………」」

「「「…………」」」

「「なんでせうか?」」

「とりあえず、正座しなさい」

「「なんで!?」」

「いいから黙って正座してくださいやがれデス。翔さん方」

「「黒ウサギ、なんか口調おかしくない!?」」

「………黙って、正座」

「「………………はい」」

 

 翔達は女性たちのもの言わせぬ圧力に屈した。

 どうやら先ほどの制裁では足りなかったようだ。

 そこからは、女性三人によるがみがみと説教タイムであった。

 なぜ、ビデオのことを忘れていたのか、から始まり、なぜ思い出せなかったのか、どうして説明しなかったのか、次からは気を付けてください、などのことを延々と言われていた。

 その度に、申し訳ございません、反省しています、はい次からは気を付けます、と定型文のようなことを言い続ける翔達。

 その途中で、

 

「俺よ………俺は、もう限界だ。あとは、任せた………ガクッ」

「ちょっ!?こんな状況で俺を一人にしないでくれよ!?」

「あら、反省が足りないみたいね?」

「どうやらそのようでございますね」

「………徹底的にやる」

 

 このように唐突に石化していた方の翔が消えていったが。女性陣三人はそんなことは露程も気にせずに説教を淡々とする。

 その女性たち三人と翔の様子を十六夜とジンは遠くから見守っていた。

 

「………さすがに、今回は翔さんが悪いですね」

「ああ。そうだな」

 

 ヤハハ、と笑いながら本拠の屋敷にある自室へと帰っていった。

 ジンも女性陣に囲まれる翔を一瞥すると、談話室を後にした。

 

 

 そんな翔は女性陣が睡魔に襲われるまで、解放されることはなかったそうだ。

 

 〝ペルセウス〟とのゲームまであと一週間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一週間という時間があっという間に過ぎ、〝ペルセウス〟とのゲーム当日。

 

『ギフトゲーム名〝FAIRYTALE in PERSEUS〟

 

・プレイヤー一覧 逆廻十六夜

         久遠飛鳥

         春日部耀

         板乗翔

 

・〝ノーネーム〟ゲームマスター ジン=ラッセル

・〝ペルセウス〟ゲームマスター ルイオス=ペルセウス

 

・クリア条件 ホスト側のゲームマスターを打倒

・敗北条件  プレイヤー側ゲームマスターによる降伏。

       プレイヤー側のゲームマスターの失格。

       プレイヤー側が上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 

・舞台詳細・ルール

  *ホスト側ゲームマスターは本拠・白亜の宮殿の最奥から出てはならない。

  *ホスト側の参加者は最奥に入ってはならない。

  *プレイヤー達はホスト側の(ゲームマスターを除く)人間に姿を見られてはいけない。

  *姿を見られたプレイヤー達は失格となり、ゲームマスターへの挑戦資格を失う。

  *失格となったプレイヤーは挑戦資格を失うだけでゲームを続行できる。

  

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、〝ノーネーム〟はギフトゲームに参加します。

                              〝ペルセウス〟印』

 

 〝契約書類〟に承諾した直後、六人の視界は間を置かずに光へと吞まれた。

 次元の歪みは五人を門前へと追いやり、ギフトゲームへの入り口へと誘う。

 門前に立った十六夜達が不意に振り返る。白亜の宮殿の周辺は箱庭から切り離され、未知の空域を浮かぶ宮殿に変貌していた。

 

「姿を見られたらダメって………ギフトゲームって、こんな面倒なものばっかなのか?」

「つまりペルセウスを暗殺しろってことか?」

 

 白亜の宮殿を見上げて、胸を躍らせるような声音の十六夜とは対照的に、しかめっ面を浮かべ怠そうな声音の翔。

 

「それならルイオスも伝説に倣って睡眠中という事になりますが、それはないでしょう」

「YES。そのルイオスは最奥で待ち構えているはずデス。それにまずは宮殿の攻略が先でございます。伝説のペルセウスと違い、黒ウサギ達はハデスの兜を持っておりません。不可視のギフトを持たない黒ウサギ達には綿密な作戦が必要です」

 

 〝契約書類〟に書かれたルールを確認しながら飛鳥が難しい顔で復唱する。

 

「見つかった者はゲームマスターへの挑戦資格を失ってしまう。同じく私達のゲームマスター―――ジン君が最奥に辿り着けずに失格の場合、プレイヤー側の敗北。なら大きく分けて三つの役割分担が必要になるわ」

 

 飛鳥の隣で耀が頷く。

 

「うん。まず、ジン君と一緒にゲームマスターを倒す役割。次に索敵、見えない敵を感知して撃退する役割。最後に、失格覚悟で囮と露払いをする役割」

「それなら、索敵は耀が適任だな」

「ああ。春日部は鼻が利く。耳も眼もいい。不可視の敵は任せるぜ」

 

 翔と十六夜の提案に黒ウサギが続く。

 

「黒ウサギは審判としてしかゲームに参加することができません。ですから、ゲームマスターを倒す役割は、十六夜さんにお願いします」

「あら、じゃあ私は囮と露払い役なのかしら?」

 

 む、っと少し不満そうな声を漏らす飛鳥。だが、十六夜は首を振って否定する。

 

「お嬢様がそれでいいなら別にいいが、今回はお嬢様より適役がいる」

 

 十六夜がそう言って、翔の方を向く。それに釣られて他の四人も翔へ顔を向ける。

 

「………だよな。知ってた」

 

 なぜか敵の注意を引き付け続ける翔が囮としては適任なのだ。

 三人との付き合いは短い翔だが、もうすでに諦めることの重要性が身に染みている彼が、ため息交じりで答える。

 

「だが、そうしたら飛鳥はどうするんだ?さすがに、ルイオス戦に連れて行くのはどうかと思うが………」

「ああ。お嬢様には耀か翔の、どっちかについてもらう」

「なら、耀の方に行ってほしい。俺は周りに味方がいない方がやりやすい。最悪、巻き込む可能性があるからな」

 

 そういわれ、五人の脳内に同じ光景が思い出された。勿論、彼がゲッダンしている光景だ。あんな気味の悪い動きを見ていたいとも思えないし、巻き込まれたいとも思わないだろう。

 

「そう、わかったわ」

 

 飛鳥は納得し、大人しく耀についていくことに決めたらしい。

 

「ところでこれって、もうスタートしているんだよな?」

「え?え、ええ。ここに来た時から始まっていると思いますけど………」

「なら、俺は先に行ってもいいか?中で色々罠を仕掛けたい。お前らが入る際は、分かりやすく音を立ててくれると嬉しい。それと、見知らぬ代物には不用意に触らないようにしてくれ」

「別に構わねえが、正門から入るつもりか?それなら、俺らと一緒に行ってもらった方がありがたいんだが」

 

 翔は首を振って否定する。

 

そっち(正門)はお前らが使え。俺は―――」

 

 そういって、後ろに下がりスケボーに乗る。

 

「―――壁から入る」

 

 加速し、ボードを置き去りにして壁へとドロップキックをする。

 すると、

 

「「「「「………」」」」」

 

 スルリ、といった感じで壁を抜けていった。置き去りにされたボードも、次の瞬間には消えていた。

 

「………まあ、アイツのあれはいつものことだ」

「そ、そうですね。皆さんも気を付けてください。ルイオスさんが所持しているギフトには―――」

「隷属させた元・魔王様」

「そう、元・魔王の………え?」

 

 十六夜の捕捉に黒ウサギは一瞬、言葉を失った。

 しかし素知らぬ顔で十六夜は構わず続ける。

 

「もしペルセウスの神話どおりなら、ゴーゴンの生首がこの世界にあるはずがない。あれは戦神に献上されているはずだからな。それにもかかわらず、奴らは石化のギフトを使っている。―――星座として招かれたのが、箱庭の〝ペルセウス〟。ならさしずめ、奴の首にぶら下がっているのは、アルゴルの悪魔ってところか?」

「………アルゴルの悪魔?」

 

 十六夜の話が分からない飛鳥達は顔を見合わせ、小首を傾げる。

 しかし黒ウサギだけは驚愕したままで固まっていた。

 

「十六夜さん………まさか、箱庭の星々の秘密に………?」

 

 黒ウサギは信じられないものを見る目で首を振りながら問いかける。

 

「まあな。このまえ星を見上げた時に推測して、ルイオスを見た時にほぼ確信した。あとは手が空いた時にアルゴルの星を観測して、答えを固めたってところだ。まあ、機材は白夜叉が貸してくれたし、難なく調べることが出来たぜ」

 

 フフンと自慢げに笑う。黒ウサギは含み笑いを滲ませて、十六夜に顔を覗き込んだ。

 

「もしかして十六夜さんってば、意外に知能派でございます?」

「何を今さら。俺は生粋の知能派だぞ。ドアノブを使わず扉を開けられもする」

「…………………………………………。参考までに、方法をお聞きしても?」

 

 やや冷ややかな目で黒ウサギが見つめる。

 十六夜はそれに応えるかのようにヤハハと笑って門の前に立ち、

 

「そんなもん――――こうやって開けるに決まってんだろッ!」

 

 轟音と共に、白亜の宮殿の門を蹴り破るのだった。

 

 

 

 その音でゲーム開始を悟った〝ペルセウス〟の騎士達は、一斉に行動に移る。

 

「東西の階段を封鎖しろ!」

「正面の階段を監視できる位置につけ!」

「相手は五人、捨て駒の数は限られている!冷静に対処すれば抜かれることはない!」

「我らの旗印がかかった戦いだ!絶対に負けられんぞ!」

 

 号令と共に一糸乱れぬ動きを見せる〝ペルセウス〟の騎士達。

 本拠を舞台にしたゲームは伊達ではない。地の利は圧倒的に彼らにあるのだ。

 

 ………そう。彼らは完全にそう思っていた。まさか、一体誰が思うであろうか。たった十分かそこらで、地の利が敵の手によって、完全に奪われ、逆転しているとは………。

 

 

 

 正面から入っていった十六夜達は、戸惑っていた。

 

「………敵が寄ってこない?」

「………ああ。あれだけの大きな音に反応しないとは考えられない」

「………確かに変ね。誰一人正面に来ないとは思えないし………」

「………そうですね。いくらなんでもこの状況はおかしいです………」

 

 その時、正面階段から、カン、カン、カン、と何かの音がし始めた。その音に警戒して、十六夜はジンと共に物陰に隠れ、耀と飛鳥は警戒を強めた。しかし、その警戒は無意味に終わった。

 

「………兜?」

「………のようね。ご丁寧に人数分あるわね」

 

 落ちてきたのは不可視のギフト、ハデスの兜であった。

 それを手に取る四人。

 

「………罠でしょうか?」

「いくらなんでも、それはないんじゃないかしら?」

「………うん。敵の有利になるようなことは、しないと思う」

「なら、可能性は一つだ。これをやったのは、俺たちの味方ってことだ」

 

 そういって、一人の存在を思い出す三人。

 十六夜は不敵に笑って、

 

「ハッ。アイツは一体、何をやってんだ?」

 

 正面階段の奥を見つめた。

 

 

 

 

 

 

 

 翔は轟音を合図に、動き始めようとしている騎士達の目の前に飛び出す。その場にはまだすべての騎士が待機していた。そして、その中の何人かをボードで殴りつける。

 もちろん、不可視のギフトを用い、見えていない騎士もいるだろう。だが、その者たちも含め、全員が翔へ意識が行く。

 

「おーい!俺はここに居るぞー!こんなガキ一人を目の前に逃げ出すような情けない奴が、この場にいるとは思えないんだが、一応言っておこう!………すぅ………腰抜け!間抜け!意気地なし!実力も能も無いザコ共!………あれ?どうしたんだい?体をプルプル震わせて?小便の我慢は体に悪いぞ?さっさとトイレに行くことをおすすめするぜ?」

『『『『『こ………このガキッ!!ブッ殺してやらァッ!!』』』』』

「や~ん、怒らせちゃった~?そんな怖い顔してると、女性や彼女や奥さんに逃げられちゃうよ?あっ、ごめんね?彼女や奥さんもできないような不細工さんばっかだった!」

『『『『『テンメエッ!!?そこを動くんじゃねえぞッ!!!』』』』』

「きゃあ~!騎士さん達、コワ~い!………でも、そこ。足下注意だぜ?」

『『『『『なっ!?』』』』』

 

 そういって、女性口調をやめた翔が指さしたのは、床にある木の板、所謂ベニヤ板先輩であった。

 騎士達が板を踏むと、板は複数にバラけて上へと吹っ飛ぶ。運悪く板に乗っていた騎士はともに吹き飛び、地面に勢いよく叩きつけられる。数として全体の約一割ほどが巻き込まれた。

 

「ほらほら!こんなガキにいい様に誘導されて、どんな気持ち?ねえねえ、どんな気持ち?よかったら、俺に教えてよ?」

『『『『『………クソが!!意地でも捕まえてやる!!!?』』』』』

「お、マジで?鬼ごっこかい?じゃ、おーにさんこーちらッ、手ーの鳴るほぅーへッ!」

 

 パンパンと手を叩き、馬鹿にするような翔の口車にまんまと乗せられた騎士達は、鬼の形相で翔を追いかける。

 こうして、騎士と翔による命の掛けた鬼ごっこがスタートした。

 

 

 

 第二の罠、サッカーボール爆弾で約一割脱落。

 

『『『『『な、なぜボールがッ!?うわあああぁぁぁぁ!!!!』』』』』

 

 運よく、兜が正面階段の方へと転がっていく。残り約八割。

 

 

 

 第三の罠、十の鉄球によって約三割脱落。

 

「ゴべフッ!」

「ま、前から鉄球が!」

「た、退避ッ!退避いいいぃぃぃぃ!!」

「お、おい!?押すなよ!!?」

「そういうお前らこそ早く進めよ!!?」

「空を飛べるものは空を飛べ!」

「なっ!?この鉄球、飛ぶぞ!?」

『『『『『ぎゃ、ぎゃあああぁぁぁぁ!!!!』』』』』

 

 空中にいた者にも荒ぶる鉄球が命中。ただし、翔も巻き込まれ死亡し、リスポーン。残り約五割。

 

 

 

 第四の罠、ビーチボール爆弾で約一割脱落。

 

『『『『『なっ!?またか!?うわあああぁぁぁぁ!!!!』』』』』

 

 空中・地上関係なく命中。残り約四割。

 

 

 

 第五の罠、ポール密集地帯で約二割脱落。

 

「くっ!前の奴ら早く行け!?」

「うおっ!?押すんじゃねえよ!?ただでさえ足場が悪いってのにッ!!?」

「なっ!?このポール、動くぞ!!?」

『『『『『ぎゃあああぁぁぁぁ!!!!』』』』』

「あ、やべッ。俺も死ぬ!」

 

 荒ぶるポールによって、こちらも空中・地上関係なく命中。翔もポールに足を取られ死亡。残り約二割。

 

 

 

 そして、最後の罠、

 

「お願いしますよ、()()()()()

 

 ゴミ箱先輩ロード。通路の両脇や床にゴミ箱先輩を大量に設置しただけの罠だ。

 だが、これほど恐ろしい罠もないだろう。

 

「もう逃げないのか?」

「ここが最後の罠なんだ。これ以上逃げて、何の意味がある?」

「………ふん。ここまで来て、このようなもの。正直、拍子抜けだな」

「………それは、どうかな?」

 

 翔が不敵な笑みを浮かべながら言う。そして、次の瞬間、騎士達は混乱の渦に吞みこまれる。

 

「うわあああぁぁぁぁ!!?」

「なっ!?どうした!?」

「ひ、一人が、騎士の一人が、ゴミ箱に吞みこまれました!!」

「なにっ!?」

 

 騎士の一人が指さす方向には、確かにゴミ箱に上半身を食われている騎士の姿があった。

 それを切っ掛けに、騎士達は周囲のゴミ箱を警戒する。しかし、

 

『『『『『ぎゃ、ぎゃあああぁぁぁぁ!!!!!?』』』』』

 

 ゴミ箱先輩の前では、すべてが無意味だ。

 ハデスの兜も。武器も。抵抗も。すべてが意味をなさずに、吞まれるだけ。

 そして、一瞬のうちに騎士達がゴミ箱に吞まれ、倒れ伏していく。

 

「ゴミ箱先輩はさすがだな。これだけの騎士を一網打尽だなんて。………って、ちょっ?先輩?俺は食わなくていいんだぜ?………なっ?今までや今回も、俺達って結構、ほら、仲良くやれてきたよな?俺を食うなんて、そんなこと―――ぎゃあああぁぁぁぁ!!!!」

 

 ………そして、翔も無意味だ。彼はもれなく全身を吞みこまれる。

 そんな彼を近くで見ている人物がいた。それは、

 

「(………こんな男に、〝ペルセウス〟の騎士、総勢数百名が全滅させられたのか?こんな、馬鹿げた男に?)」

 

 ルイオスの側近の騎士であった。彼はオリジナルのハデスの兜を用いているため、ここまで近寄ることが出来た。―――逆を言えば、近づいてしまったのだ。………ゴミ箱先輩の近くに。

 そんな彼は翔という存在に慄いていたために、後ろにあるゴミ箱先輩に気づくことが出来なかった。

 

「なっ、うわあああぁぁぁぁ!!?」

 

 ………やはり、オリジナルのハデスの兜でも、ゴミ箱先輩を欺くのは不可能だったようだ。

 

 

 最終結果。

 ・死者一名。

 ―――翔(三回)。

 ・〝ペルセウス〟の騎士は全員戦闘不能。

 

 ………勝者、ゴミ箱先輩。

 

 

 

 

 ―――ぎゃあああぁぁぁぁ!!!!―――

 

「………いま、翔の悲鳴が聞こえた」

「どうせあいつは囮だ。無視して最奥まで行くぞ。運よく全員が、翔の対処に向かったみたいだしな」

「そうね。彼は死んでも生き返るもの」

「………みなさん、翔さんを少しくらいは心配してあげましょうよ………」

 

 ジンしか、翔の身を案じる者はいなかった。

 

 その後、何事もなく白亜の宮殿の最奥へと辿り着いた四人の手により、ルイオス及びアルゴールが打倒され、無事にゲームに勝利した。

 

 

 

 

 

 

 

 〝ペルセウス〟とのゲームに勝利し、レティシアの所有権が〝ノーネーム〟に移った。そして、見事勝利を収めた六人はレティシアを大広間に運び、石化を解いた途端、問題児四人は口を揃えて、

 

「「「「じゃあこれからよろしく、メイドさん」」」」

「「「え?」」」

「え?じゃないわよ。だって今回のゲームで活躍したのって私達だけじゃない?」

「うん。私もたくさん活躍したとは言えないけど、二人はくっついてきただけだし」

「俺は騎士全員を相手取って、勝利を収めたうえに、四人に不可視の兜を渡したしな。それに三回死んだし」

「俺はアルゴールをぶっ倒したしな。所有権は2:2:3:3でもう話はついた!」

「何を言っちゃってんでございますかこの人達!?」

 

 もはやツッコミが追いつかないなんてものじゃない。黒ウサギは完全に混乱していた。

 ついでに言えばジンも混乱していた。

 唯一、当事者であるレティシアだけが冷静だった。

 

「んっ………ふ、む。そうだな。今回の件で、私は皆に恩義を感じている。コミュニティに帰れた事に、この上なく感動している。だが親しき仲にも礼儀あり、コミュニティの同士にもそれを忘れてはならない。君達が家政婦をしろというのなら、喜んでやろうじゃないか」

「レ、レティシア様!?」

 

 黒ウサギの声は今までにないくらい焦っていた。そんな中、飛鳥が嬉々として服を用意し始めた。

 

「私、ずっと金髪の使用人に憧れていたのよ。私の家の使用人ったらみんな華も無い可愛げもない人達だったんだもの。これからよろしく、レティシア」

「よろしく………いや、『よろしくお願いします』の方がいいかな?」

「使い勝手がいいのを使えばいいよ」

「そ、そうか。………いや、そうですか?んん、そうでございますか?」

「黒ウサギの真似はやめとけ」

「もういっそのこと、口調は変えなくてもいんじゃねえか?」

 

 ヤハハと笑う十六夜、ケラケラと笑う翔。意外と和やかな五人を見て、黒ウサギは力なく肩を落とすのだった。

 

 

 

 そして、〝ペルセウス〟との決闘から三日後の夜。

 子供たちを含めた〝ノーネーム〟一同は水樹の貯水池付近に集まっていた。

 

「えーそれでは!新たな同士を迎えた〝ノーネーム〟の歓迎会を始めます!」

 

 ワッと子供達+翔の歓声が上がる。周囲には運んできた長机の上にささやかながら料理が並んでいる。本当に子供だらけの歓迎会だったが、それでも悪い気はしていなかった。

 

「だけどどうして屋外なのかしら?」

「うん。私も思った」

「黒ウサギなりのサプライズってところじゃねえか?」

「………それにしても、翔君は随分と馴染んでいるわね」

「子供好きなのかな?」

「精神年齢が近いんじゃね?」

 

 三人は子供達のなかに溶け込んでいる翔を見て口々に言う。

 それに、実を言えば、〝ノーネーム〟の財政は想像以上に悪い。あと数日で金蔵が底をつくほどには。

 こうして敷地内で騒ぎながらお腹いっぱい飲み食いする、というのもちょっとした贅沢だ。そういった惨状を知っている飛鳥は、苦笑しながらため息を吐いた。

 

「無理しなくていいって言ったのに………馬鹿な子ね」

「そうだね」

 

 耀も苦笑で返す。二人がそんな風に話していると、黒ウサギが大きな声を上げて注目を促す。

 

「それでは本日の大イベントが始まります!みなさん、箱庭の天幕に注目してください!」

 

 十六夜達を含めたコミュニティの全員が、箱庭の天幕に注目する。

 その夜も満天の星空だった。空に輝く星々は今日も燦然と輝きを放っている。

 そんな星空に異変が起きたのは、注目を促してから数秒後の事だった。

 

「………あっ」

 

 星を見上げているコミュニティの誰かが、声を上げた。

 それから、一つ二つと連続して星が流れていく。すぐに流星群だと気が付き、歓声を上げる。

 

「この流星群を起こしたのは他でもありません。新たな同士、異世界からの四人がこの流星群のきっかけを作ったのです」

「え?」

 

 子供達の歓声が響く中、十六夜達が驚きの声を上げる。黒ウサギは話を続ける。

 

「箱庭の世界は天動説のように、全てのルールが箱庭の都市を中心に回っております。先日、同士が倒した〝ペルセウス〟のコミュニティは、敗北のために〝サウザンドアイズ〟を追放されました。そして彼らは、あの空からも旗を降ろすことになりました」

 

 十六夜達四人は驚愕し、翔以外は絶句した。翔は絶句する暇もないほどに、子供達の相手で忙しいようだ。

 

「———……なっ……まさか、あの星空から星座を無くすというの………!?」

 

 ついさっきまで空に存在していたはずの星座が、流星群と共に消滅していく。

 ここ数日で様々な奇跡を目の当たりにした彼らだが、今度の奇跡は規模が違う。

 言葉を失った三人とは裏腹に、黒ウサギは話を続ける。

 

「今夜の流星群は〝サウザンドアイズ〟から〝ノーネーム〟への、コミュニティ再出発に対する祝福も兼ねております。なので、今日は一杯騒ぎましょう♪」

 

 嬉々として杯を掲げる黒ウサギと子供達と翔。だが三人はそれどころではない。

 

「星座の存在さえ思うがままなんて………あの星々、その全てが、箱庭を盛り上げる為の舞台装置という事なの?」

「そういうこと………かな?」

 

 絶大ともいえる力を見上げ、二人は茫然としている。

 

「………アルゴルの星が食変光星じゃないのは分かってたんだがな………まさかこの星空までもが箱庭の為だけに作られているとはな………」

「ふっふーん。驚きました?」

 

 流星群を見ながら感慨深くため息を吐いていると、そこに元気な声がかけられた。

 その声に、十六夜は両手を広げて頷いた。

 

「やられた、とは思ってる。世界の果て、水平に廻る太陽………色々と馬鹿げたものを見たつもりだったが、まだこれだけのショーが残っていたなんてな」

 

 いい個人的な目標もできた、と最後に呟くように言った。

 その声を黒ウサギは聞き逃さずに尋ねる。

 

「それは、なんでございます?」

 

 その問いに、十六夜は消えたペルセウス座を指さし、

 

「あそこに、俺たちの旗を飾る。………どうだ?面白そうだろ?」

 

 今度は黒ウサギが絶句する。しかし途端に弾けるような笑い声を上げた。

 

「それは………とてもロマンが御座います」

 

 そんな二人の様子を、子供たちの輪の中で横目で見ながら、優しく笑っている者がいた。

 

 

 

 

 

―――余談―――

 

 

「でも、本当にこんな歓迎会してもよかったのか?」

「そうよ。財政が厳しいのに」

「うん。無理しないで」

「あっ、いえ、その………今回は翔さんがお金を出してくれまして………そのお金ですべて賄えたのデス………」

「「「え?」」」

「アイツが?いつ稼いできたんだよ?」

「わ、分かりません。でも、意図せずして手に入ってしまったからと言って、渡してきたのデス」

「「「………」」」

 

 三人は子供達の中で騒いでいる翔をじっと見つめた。

 

「今度、問いただすか?」

「そうね。もし、何か危ないことに手を染めていたら、コミュニティに迷惑がかかるかもしれないものね」

「でも、今日は許してあげよう?」

「「じゃあ、明日だな/明日ね」」

 

 翌日、身に覚えのない罪で三人に拘束される翔が、見かけられたとかなんとか。

 

 

 




【ゲッダン】死なないことがある稀によくある。

【ビデオカメラ】スケーターが持っているカメラ。どうやって撮っているのかが分からないアングルの映像がある。複数台所持。ぶっちゃけると、リプレイのこと。

【ルイオスとの交渉】強引だったかもだけど、証拠が少ないかもだけど、許してください!でも実際、よそのコミュニティの人を、事故とはいえ傷つけたらどうなるんだろう?

【増えた翔】死んだら消える。リスポーンは出来ない。

【壁抜け】扉がない?ならば壁から入ればよかろうなのだ!

【スケートボード】最強の武器。敵は吹っ飛ぶ。

【怒った騎士達】翔が怒らせたために、無駄にしつこく追い続ける。

【ベニヤ板先輩】複数枚重ね、それを踏んだら空へと舞いあがる。

【サッカーボール爆弾】触れたら爆発する。よく知られているアレ。

【荒ぶる鉄球】ゲーム盤ゆえにバグが多発。よって荒ぶった。予測不可能。

【ビーチボール爆弾】ボールが違うだけで、サッカーボール爆弾と同じ。

【ポール密集地帯】スケーターは転ぶと死ぬ。死んだNPCに触れても死ぬ時がある。たまに荒ぶる。

【ゴミ箱先輩】みんな大好きゴミ箱先輩。この方の前ではすべてが無意味。最強の存在。

【翔のお金】「街の空地でスケボーしてたら、投げ銭をたくさんもらった。扱いに困ってたから黒ウサギに渡した。………本当なんです。真面目にスケボーしてたらお金をもらっただけなんです。三人とも、信じてください………」(本人談)


 今回はバグ無双。それと上記の通り、翔君は悪い事してお金を稼いだわけではありません。
 それと次話なんですが、原作二巻のプロットを作るので、少し遅くなると思います。ご了承ください。
 あと今回の没ネタの【翔vs海魔】があるんですけど、読みたい方っていらっしゃいますかね?
 もし、読みたい!って方は活動報告の『なんでも掲示板』で教えてください。

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