もしもスケーターが異世界に行ったならば。   作:猫屋敷の召使い

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 投稿が遅くなって申し訳ありません………。学校の方でのテストとかレポートとかで、なかなか執筆できませんでした………。



 サブタイの『スケボー』は『ヌケボー』と読んでください。




番外編3 翔の『スケボー実験記録 最新版』

~~~番外編5 翔のギフトを用いたスケボー(ヌケボー)実験記録~~~

 

 

 箱庭に来てまともに記録を取りながら実験するのは、何気にこれが初めてかもしれない。

 手元に以前から書き綴っていた実験記録が無いので、一先ずは最新版と銘打っておく。まあ、すぐに次の記録を書くから最新版と言うのもどうかと思うが。いずれ横線で消して改名の必要が出てくるだろう。その時は『箱庭版』とでもしておこうか。

 それよりも今回はギフト〝物理演算(デバッグ)〟の運用法についての実験だ。

 これを使えばよりスケボーの高みに昇れるかもしれない。ならば試すしかない。そう。それしかない。

 

 

 実験1 パラソル浮遊

 

 

 〝風浪の鉱山〟でもやっていたが、どうにかして飛行制御ができないかと努力している最中だ。前やって気付いたが、そのままやってもやはりバランスが悪いのか、制御する間もなく落下してしまう。

 そこで俺は考えた。

 

 そう。同じく飛行能力のあるベニヤ板先輩と組み合わせれば飛べるのでは?と。

 

 だからパラソル付きテーブルのポールにベニヤ板先輩を翼としてつけてみた。今からコレで飛んでみる。

 

 

 

 

 

 結果:失敗。

 

 失敗した。結果は変わらず制御する間もなく落下した。ただ風を受ける面積が増えたからか、その分、落下までの時間は遅くなっていた。誤差と言っても過言ではない時間だが。

 だがまあ、今回の失敗は必然だった。

 

 俺としたことが大事な物を忘れていたのだ。

 

 そう。()()だ!

 俺はパラソル付きテーブルに翼を付けるということだけで、()()しか付けなかった!

 しかし、それでは駄目だったんだ。しっかり、それこそ飛行機のように尾翼も付けなければ!

 

 というわけで、改良したパラソル付きテーブルがこちら。

 しっかり主翼にベニヤ板先輩、尾翼としてどうにかこうにか加工したベニヤ板先輩を取り付けた。

 

 今からコレで再チャレンジしてくる。

 

 

 

 

 

 結果:無理だった。

 

 何がいけなかったのだろうか?主翼と尾翼もしっかり付けたというのに。やはりエンジンが必要なのだろうか?

 

 そこで俺はパラソル付きテーブルに()()()()を付けてみた。

 スケボーエンジンという、見た目はまんまスケボー、いや普通にただのスケボーだ。地面に叩きつけることで反射時のエネルギーを増幅して、とてつもないパワーをパラソルに与えようと思う。

 それでは今一度実験して来る。

 

 

 

 

 結果:十回死んだ。十一回目は進展した。

 

 いや、うん。叩き付ける位置が悪かったな。それでも十一回中十回が俺の頭を貫通するとは思わなんだ。まあでも十一回目で成功したからいいんだが。そっちの結果だが、飛行時間と距離は格段に伸びた。しかし、未だに制御には至らず。更なる工夫が必要なのかもしれない。

 そう考えた俺は、パラソル付きテーブルの足下に目を付けた。そして気付いた。

 

 

 ()()()が無いのだと。

 

 

 俺は今の今までそのことに気づけなかった。何と言う浅はかな考えをしていたのだろうか!

 

 というわけで、発射台のゲッダン装置がこちら。

 

 コレの上に主翼・尾翼付きパラソル付きテーブルを乗せて、スケボーエンジンで射出する。これで完璧だろう。

 

 

 

 

 

 結果:まず乗れなかった。

 

 どうしても乗る前に俺がゲッダンしてしまう。一千回試して、すべてゲッダンするとは。

 

 だが、もう少しだけ頑張ってみようと思う。先ほどテーブルまでの橋を架けたから次こそいけるだろう。

 

 

 

 

 

 結果:今まで以上の飛行時間と距離、そして僅かながら制御の成功。

 

 試行回数は五千回を超えてからは数えるのが面倒になった。何故か橋を貫通して、必死に俺をゲッダンさせようと食らいついてくるあの三脚どもは、一体何なんだ?

 だが、一応は成功した。成果は結果に書いてある通りだ。

 そしてさらに気付いたのだが、この〝物理演算〟というギフト。動いているものを適用させようとすると、物凄く発動と制御が難しい。これも課題の一つだろう。

 これにて一度パラソル浮遊の実験を終わりとしよう。無論まだどうすれば上りやすいかなど、課題は山積みだが一度は成功したのだ。次回からは簡単だろう。

 

 

 

 

 

 実験2 白柵

 

 

 〝物理演算〟を使えばもっと派手なことが出来るのではないか、もしくはより過激なことが出来るのではないかという思考の下、この実験を試行する。

 

 まずは普通に軽くボード掛けの状態、つまり基本の状態でギフトを使ったらどうなるのか?それを実験する。

 

 

 

 

 

 結果:若干速度が上がっていたが、普通の結果。

 

 変化なし。少し拍子抜けだった。もう少し派手なことになるかもと期待していたのだが。しかし、一つだけではこんなものだろう。

 次は白柵をいくつかの使用した状態でギフトを使用してみようと思う。

 

 

 

 

 

 結果:呑み込まれた挙句、串刺しになった。

 

 少しギフトを使っただけで、面白いぐらい荒ぶった。柵を十個一纏めにしておいたのだが、少しギフトで力を加えただけで、全部俺に反旗を翻して襲ってきた。その結果が串刺しだ。さながら吸血鬼になって殺された気分だった。

 だが、これを十全に利用できれば、白柵お化けのオブジェクトンボをよりリアルに動かせるかもしれない。これからその実験をやってみる。

 

 

 

 

 

 結果:そこそこリアルだった。それとこっち来んな。

 

 中々に利用価値がありそうな動きだった。俺に向かって飛んでくる以外は。改良の余地あり。その方法についてはギフトを使うか、物理的な手法を使うかに分かれる。

 しかしギフトを使うにしても、今の俺の力量では無理だろう。よって消去法で物理的(無理矢理)にやるしかない。まずは手始めに行動パターンの観察に入るとする。それから実験を行う。

 

 

 

 

 

 結果:一万回試行して行動パターンを書き留めた。それは別紙として保存しておくので、そちらを参照すること。

 

 かなりパターン性があるのが見て取れた。オブジェクトンボは基本的には円運動をしようとする。しかし、それはその場で作った場合だ。

 なのでオブジェクトンボ用の物理演算砲(発射台)を作ってみた。これから発射実験を行ってくる。

 

 

 

 

 

 結果:かなり指向性は安定してきたが、稀に空中分解する。

 

 これで兵器としてまだ使えるだろう。しかしまだまだ改良の余地はありそうだ。いずれこの研究を復活させて再開するとしよう。今回は此処で区切ることとする。

 

 

 

 

 

 

 

 実験3 斥力の壁を使ったアルマゲドンこと反射加速

 

 

 次の実験はギフトで生み出した斥力の壁を使った反射加速(アルマゲドン)だ。この実験が成功、ないし完成すれば俺も更なる高みへと昇れることだろう。今から気持ちが高ぶって浮足立ってしまっている。

 これで元の世界に戻ったときに他のスケーターたちの度肝を抜くことが―――アンのクソブラック企業が!!もしも帰ったら覚えて―――(感情を表に出して書きなぐったのか、解読不可能)―――

 

 

 

 ………失礼。少しブラック企業への怨嗟を思いのままに吐き出してしまった。それよりも実験に戻ることにする。

 まあ、内容としては斥力の壁に反射加速を行うだけだ。これから行ってくる。

 

 

 

 

 

 結果:馬鹿なの?死ぬの?………いや、死んだんだけどね?

 

 いきなり力場強度を一千億に設定するというポカをやらかした。馬鹿なの?死ぬの?むしろ死んだよ?リスポーンしたよ?体が空中分解しちゃったよ?さっきのオブジェクトンボのように。

 はい。馬鹿ですね。最初は普通もう少しどころか、もっと小さい数字でやるところなのに、なんつう馬鹿をしているのでしょう。演算処理しきれなくて頭が破裂しながら空中分解したのは驚いたけど。

 ということで最初の数字を設定してから実験を行う。

 始めの力場強度は『2』。次は『4』。次は『6』と2ずつ増やしていくことにする。

 

 

 

 

 

 結果:誰が掛け算しろと言った?

 

 やはり俺は馬鹿なのだろうか?『2』()()増やすと言ったのに、『2』()していってどうする。俺はどこぞのおっぱいドラゴンじゃないぞ。

 しかし収穫もあった。どのあたりまでが耐久出来るかは分かった。

 俺が耐えきれる力場強度は大体64~128の間だ。………いや、実験としては32768、2の15乗ぐらいまでは調べたんだが………。まあ、それは置いといて。

 64から2ずつ、今度こそ2ずつ増やしていく。いいか?2ずつだぞ!?2ずつだからな!!いいな、俺!?

 

 

 

 

 

 結果:MAX64でした………。

 

 66どころか65ですらアウトでした、はい。

 ということで結論。力場強度のMAXは64。速度も64倍。顔がぶるぶるするのが欠点かな。あと速すぎて丁度いいところに着弾できないし、うまく着地しても身体中が悲鳴を上げている。普段使うなら強度は10~20くらいまでが丁度いいのだろう。いずれMAXの数値を上げていく実験も実施したいものだ。

 と、考えたのだが、よくよく考えれば空気抵抗をなくせばもっと速く飛べるのではないかと、書きながら思いついてしまった。これから試してみようと思う。

 

 

 

 

 

 結果:ゲッダン

 

 力が強すぎるのか、それとも速すぎるのか、どうしてもゲッダンしてしまう。空気抵抗を完全になくした分、速くなったが、最大力場強度が30ほどにまで下がってしまった。空気抵抗を少しずつ変更して試してみたが、通常の3分の2ほどまでにしか減らせず、最大強度も65までしか上げられなかった。

 だが、速度もあるしゲッダンするならば、攻撃手段として使えるだろう。速いゆえに衝突の際の衝撃は大きいだろうし、ゲッダンして手足が伸びて攻撃範囲もかなり広い。さらに不規則な動きのため相手を混乱させられるだろう。いずれ実戦で使ってみたいものだ。だが、今回の実験ではここまでにしておく。これ以上やると次の実験とも被ってしまうしな。

 

 

 

 

 実験4 人間迫撃砲

 

 

 人間迫撃砲の威力強化実験。文字通りギフトを用いた速度と威力の強化だ。ギフトによる初速の上昇。斥力や風、乱気流を纏うことによる威力の強化。これらの実験を行う。

 初速は斥力の力場強度を5に設定。最初は乱気流や風とかは無しで行う。

 

 

 

 

 結果:狙いが定まりづらいが、当たればなかなか痛そうだ。

 

 初速は申し分ないだろう。これ以上強くすると、また空中分解するだろう。これにさらに斥力や風、乱気流を追加する。

 

 

 

 

 結果:風が一番無難な結果だった。

 

 まずは斥力なのだが、発射の力場と相まって初速が上昇。しかし空中分解。

 次に乱気流なのだが、こちらは複雑な動きのため敵に当てることが困難だ。

 最後に風を試したが、これは初速も指向性もしっかりして、空中分解しても一塊で飛んでいくため、攻撃手段としてはこれが無難であろう。敵や物を飛ばす分には加減しなくてもいいのだろうが、自分を飛ばすとなると問題しかない。これから少しずつ調整して―――(何故か血痕らしき赤い痕が所々に付着している)

 

 

 

 

 

 ―――失礼。少しゴミ箱先輩に襲われて必死に迎撃(ワンサイドゲーム)していた(されていた)

 まあ、まだまだ試してみたいことがあるから、何とかゴミ箱先輩には退場(土下座して)してもらった(許してもらった)

 それで次の実験なのだが、ベニヤ板スライドや木製パレットを用いたすのこ加速なども試してみたい………が、元々物理とは数字で、というよりは数学でこの世の法則を表そうとしたことが始まりだと、つい最近調べていて初めて知った。つまりこのギフトを用いれば数学的事象も操れるかもしれない。なので、しばらくは耀が知っている物理と数学を学ぼうと思―――

 

 

 

 

 

 

 

 パタン、とそこまで読んだ耀は翔の部屋にあったノートを閉じて一言。

 

「…………なにこれ?」

 

 そう呟いた。

 耀は翔の部屋に勝手に入って、様々なものを物色していた。今読んでいた表紙に『スケボー(ヌケボー)実験記録 最新版』と書かれたノートもその一環であった。

 しかし、彼女も翔の部屋に無断で居るのにはちゃんとした理由がある。

 

「むぅ………翔は一体何処に行ったんだろう?」

 

 そうなのだ。翔は現在行方を晦ましている。

 彼は二週間ほど前に〝サウザンドアイズ〟へと仕事の手伝いをしに向かった。だが、その日のうちか翌日には帰って来るはずだった彼だが、その日も翌日にも帰ってくることはなかった。耀も手伝っている仕事の量が多いのだろうと考えて、深くは考えなかった。しかし、彼はその次の日も帰って来なかった。

 少し不安になり始めた彼女は〝サウザンドアイズ〟の支店へと出向き、女性店長へと尋ねた。でも、彼女から告げられた言葉は、耀が求めていた答えとは異なっていた。

 

『翔様ですか?仕事を手伝っていただいたその日のうちに、お帰りになられたはずですが?………ああ。でも、これからクイーン・ハロウィンのところに行かないといけない、とは言っていました』

 

 女性店長からそう告げられた。

 それを聞いた耀は、慌てることはなかった。なぜなら以前にもこのようなことはあったからだ。最長で五日間。彼は行方を晦ましたことがあったのだ。だから二、三日では彼女も慌てることはなかった。しかし二週間も行方が分からないとなると、流石の彼女も不安になってくる。

 だが、そんな翔にも大切な用事があるというのは、耀も重々承知だ。確かに、彼が行方を晦ます前に女王、〝クイーン・ハロウィン〟から招待状という名の出頭命令状が届いていた。それならば、あと数日で帰ってくるかもしれない。そう考えた。

 だが、彼はその後も音沙汰も無く二週間が過ぎた。

 流石に長すぎる。そう感じた耀は、翔の部屋に手掛かりや痕跡が無いかと思い、彼の部屋へと入ったのだ。

 しかし、結果は先ほどの意味の分からないノートと、それに類する続きと思われるノートが数冊だけ………だと思ったが耀はふと、明らかに厚さと表装の違う冊子に目がいった。表紙には先ほどのノートと違い、何も書かれてはいない。耀は気になって、パラパラとページを捲る。

 すると、そこには多くの写真が入れられていた。

 

 ガルドとのギフトゲーム。

 

 〝ペルセウス〟とのギフトゲームと、その後に開いた四人の歓迎会。

 

 〝火龍誕生祭〟での初めての魔王とのゲーム。

 

 〝アンダーウッド〟の風景や、耀や飛鳥、黒ウサギ、十六夜の姿。

 

 それ以外にも日常の光景や、皆が楽しそうに笑っている写真が収められていた。しかし、それらの写真のどれにも、翔の姿は映っていなかった。たったの一枚もだ。だが、当然だろう。そのアルバムに収めてある写真を撮影したのは、紛れもないこの部屋の主である翔なのだから。

 そのことに気づいた耀は、ほんの少し悲しそうな表情を浮かべる。

 

「………誰かに頼んで、撮ってもらえば良いのに………」

 

 翔一人だけ映っていない写真たちを見て、そう呟いてアルバムを閉じる耀。

 

「それにしても、本当に何処に行ったんだろう………?」

 

 こうまで書置きも痕跡も何もないと、何か不慮の事故に巻き込まれたとしか考えられない。先ほどまで感じていた不安が途端に大きくなり始める耀。

 ほんの二週間いないだけで、十六夜や飛鳥が出ていくときよりも大きな不安と喪失感に襲われる。でも、二人のときは事前にいなくなるとわかっていたから、そこまでの喪失感を感じなかったのだろうとも考えたが、明らかに違う。心の一部が翔と一緒に消えるような感覚。今回はそれがあった。それほどまでに彼女の中では、翔は大切な存在になっていたようだ。彼女自身、今の今まで自覚はなかったが。

 

「………捜しに、行った方がいいのかな………」

 

 力なく呟く耀。

 捜しに行くと言っても、当ては一切ない。それにコミュニティを放っておくわけにもいかない。

 だが、彼女自身は捜しに行きたい気持ちが圧倒的に上回っている。

 

「………ううん。駄目だよね………当てもないのに捜しても。それにコミュニティを放っておいたら、翔に怒られちゃうだろうし」

 

 表情を引き締めて、ノートとアルバムを元の位置へと片付ける耀。そうして、翔の部屋を後にする。

 

「ッ!?」

「アダッ………!?」

 

 しかし、出た瞬間に耀は何かに頭をぶつける。その何か、目の前の人物は顎を押さえて、彼女のことを睨んでいた。

 

「………なんで耀は俺の部屋から出て来てんの?」

 

 そのぶつかった人物というのは、翔であった。顎に思いの外衝撃が来たのか、顎を押さえながら若干涙目の翔。

 頭をぶつけた耀も負けじと、翔のことを睨む。

 

「………翔こそ、今まで何処に行ってたの?」

 

 その言葉に翔は、うっ、と声を詰まらせて耀から顔ごと目を逸らす。

 

「それは………まあ………色々と………やむを得ない事情があったんですよ、はい………その事情もなんとかしてやっと帰って来れたんです………」

「なら私もやむを得ない事情があって、翔の部屋に入った」

「むむむ………屁理屈を………まあ、いいや。特に何かあるわけでもないし」

「ならいいでしょ?それよりも、何処に行ってたのか説明して」

 

 グイッ!と翔の顔を両手で挟んで強引に正面を向かせる耀。そんな彼女の行動に少したじろぐ翔。

 

「………明日でいっすか?なんかもう疲れてさ………寝たいんだ………」

「………わかった。でも………」

 

 両頬を挟んでいた手を腰に回して翔の身体を抱き寄せる。

 翔は不思議そうに首を傾げるが、すぐに冷や汗を掻く。

 

「あ、あの、耀さん?何で腰を砕けそうな勢いで力を込めているんですかね?」

 

 メキメキメキ、と音を立て始めている翔の腰を余所に、耀は問い詰める。

 

「………この机にあったビデオカメラの中身について、どういうことか教えて?」

「え?あれ!?出しっぱなしだったっけ!?……………………あッ!?そうだったぁ………!!中身のデータを整理しようとして出しといたっけかぁ!!?」

「………それで、なんで撮影してあったの?この、〝風浪の鉱山〟の恥ずかしい宣言を」

 

 そう。翔の部屋には彼の居場所を指し示すものは一切なかった。それ以外の物があっただけで。それがビデオカメラとそのメモリーカードも、その一つである。

 

「事故!!それ事故だから!!十六夜があの場に居たら完璧に決まってた最高の場面だから!!撮影しないわけにはいかないでしょ!!?十六夜がその場にいなかったが故の撮影事故だから!!だから悲鳴を上げてる腰にさらに力を込めないでええええぇぇぇぇぇぇ!!!!!文字通り腰砕けになるからあああぁぁぁぁ!!!」

「面白くなかったから駄目」

「うん!!今のは自分でもどうかと思った!!内心『うわ、つまんな………』って思いながらも勢いで言ったから!!!だからその手を離してえええええぇぇぇぇぇぇ!!!!!………あっ………」

 

 バキッ!!と何かが砕けるような音を立てて、その場に力なく崩れる翔。そして死んだまま腰を砕いた張本人に問いかける。

 

「………ナンデコロシタシ」

「なんとなく。それより写真撮ろう」

 

 唐突にそんな提案をしてくる耀。それをリスポーンしながら聞き流す翔。

 

「はいはい。また今度ね。今は休ませてー」

「………………………………」

 

 部屋の中に入ろうとする翔の後頭部から、ガンッ!という音が響く。それと共に翔は意識を無くした()()()床に倒れる。耀に後ろから殴られたようだ。それにしては、あまり鈍くない音だったが。まあ、翔自身は意識はあるのだが、「ああ、これは逆らったらダメな奴だ」と瞬時に理解して、為すがままにされることにした。

 翔が動かなくなったことを確認した耀は翔の首根っこを摑んで、引き摺って行く。そして、狐娘のリリの下まで行くと、

 

「リリ。これで写真撮って」

「………は、はい!わかりました!」

 

 彼女に翔のカメラを手渡す。リリも彼女の異様な雰囲気を感じ取ったのか、素直にカメラを受け取ると、二人の写真を撮る。

 

 

 

 この日、翔のアルバムに初めて翔本人が映り込んだ写真が一枚、収められることとなった。

 ………ただ絵面としては最悪の写真だったが。

 意識の無い(ふりをしている)翔の首根っこを摑みながら、カメラにVサインを向ける耀。

 そんな、決して仲睦まじくは見えない写真であった。

 

 その後、満足気な耀と不満気な翔という対照的な二人の姿が、本拠で見られたそうな。

 

 

 

 

 

 

 

「それで、どこに行ってたの?」

「マジで明日にしてください………色々なことが起きすぎて疲れたんだ………」

 

 納得がいかない様子の耀を宥めて、自分の部屋で休む翔。後日、しっかりと耀による尋問が行われた。

 

 

 

 




翔「主人公の板乗翔だ」
猫「作者の猫屋敷の召使いです」
翔「それじゃあ、早速だが」
猫「はいはい」
翔&猫『感想返しのコーナー!!イエエエェェェェイ!!!』
翔「それにしてもついに返信するのか」
猫「最初のころはちまちま返信してたんだけど、次第に作品の方に忙しくなっちゃって、全然返せてなかったからね」
翔「まあいいか。それじゃあまずは………これだな」

『シモ○ル?』
『とある辛口あたりめの人』
『とある辛口あたりめ好きのマカロニさんか』
『バグの申し子』
『あたりめ マカロニ』
『まさか、シモエr(以下のコメントは削除されました)』
『シモ○ル…いや、なんでもない』
『完全にシモ○ルです』

猫「ずっと言われてたから、ここではっきりさせておきます。………そうです。そのお方、シ○エルさんを参考にさせていただきました!」
翔「ずっと言われてたもんな、これ」
猫「うん。というわけで、正解者の方々の家には、いつかゴミ箱先輩が直接お礼の品をお届けしますので、楽しみにしておいて下さい!」
翔「これを読んだら今すぐに家の鍵と窓を閉めて部屋の中央にいるんだ!!間違っても部屋の隅には行くな!!壁をすり抜けて食われるぞ!!俺も出来る限りの手を尽くして、ゴミ箱先輩を説得するが、失敗したらすまないッ!!」
猫「はい次行きまーす!」

『おいちょっと待て。てことはあのラビットイーターもどき、殿下を制圧して【自主規制】出来るぐらい強いってことになるのか?・・・ラビットイーターもどき、恐るべし』

猫「これについてはラビットイーターもどきのステータスを書いておきますねー」

ラビットイーターもどき
 能力
・ギャグ補正
 最強の能力。シリアスを壊すためならどんな敵も無力になる不思議な力。
・超再生増殖
 一本の触手が斬り飛ばされたりすると、瞬時に再生しながら五~十本ほどに触手が増える能力。
・性質吸収
 他の植物の特性や能力を取り込める。耀のギフトの植物版。現在は『バグの木』、『ベニヤ板先輩』、トレント爺の『不老不死と無限の知識の禁断の果実』を取り込んでいるため、事実上の最強。

猫「こんな感じですねー。うーん、強い」
翔「…………いや、強すぎだろ。もうコイツが主人公でいいんじゃないか?」
猫「あ、お帰り。随分とボロボロだね?なにかあった?それとこの作品のタイトルからして、主人公は翔君しかありえないねー。で、なにしてたの?」
翔「お前に代わって、ゴミ箱先輩を説得してたに決まってんじゃねえか!?お前頭沸いてんじゃねえの!?」
猫「よく言われる。それで話を戻すけど―――」
翔「戻さないで!?お前の代わりにゴミ箱先輩に許しを乞いてた俺を労えよ!!ちょっとは労われよ!!」
猫「はいお疲れー翔君。つーぎ行きまっしょーう!」
翔「流してんじゃねえよッ!!」


『これヌケーターの人本人読んでるんかな?』


猫「………………………」
翔「………………………」
猫「うん。次行こう。これは詳しくコメントすると危ない気がする」
翔「おう。次行こう」


『翔君ってヤったら子供って出来るんですか?』


翔「………おい。これってセーフか?」
猫「具体的な描写はないし、セーフ、かな?まあ、これに関する答えは………はい、できます。しかし、翔の世界では基本的には、人は虚空や壁や地面から生まれるものなので、そういう思考に至ることがほとんどありません。以上!次!」


『名前は忘れたけどタイヤのないスケボー(浮いてるやつ)って翔君持ってるんですか?』


猫「………チートコードのホバーボードのことかな?」
翔「そうじゃないか?まあ、チートコードは使えるから、持ってはいないけどいつでも出せるな」
猫「とりあえず、今回はこんなところかな。また気になる感想があったら、随時取り上げていこうと思っています。質問も随時『活動報告』の方で受け付けております!」
翔「色々な感想、感謝します!」
猫「次回はサブタイトルは未定だけど、今回の話で出ていた、翔君が二週間ほどの間に何をしていたのかを書きます。それと多分、次回で番外編は終了して、その次からラストエンブリオの内容に移っていこうと思います!」
翔「それじゃあまた次回!」
猫「でも、次も投稿遅れるかもしれません!本当に申し訳ありません!………あ、そうだ」
翔「………?どうかしたのか?」
猫「警告タグに新しいものが追加されたのは知ってる?」
翔「………?ああ。勿論。それがどうかしたのか?」
猫「その中に『クロスオーバー』があるんだけどさ………この作品って一応『skate3』の設定と能力?っぽいものをお借りしてるじゃん?これってタグ付けるべきなのかどうなのか凄い悩んでるんだけど」
翔「…………保険で付けとけば?」
猫「………………そうしようか」
翔「おう。そうしとけ」
猫「それでは今度こそ、また次回!」
翔「また次回!」

 というわけで、警告タグに『クロスオーバー』を追加しました。

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