もしもスケーターが異世界に行ったならば。 作:猫屋敷の召使い
翔は琴線の音が聞くと、文句を言いながらも〝アンダーウッド〟外周部へ向かう。
無論ゴミ箱先輩はそこら中に設置してある。そして、
「ちょ、先輩!?今は、今は止めて!?緊急事態!!緊急事態だから!!?なに!?昨日使ったから!?その反動なん!?」
勿論翔も食われる。
外周部に到着したと同時に、ゴミ箱先輩に吞みこまれる翔。しかし、その周りでは巨龍から産み落とされた魔獣たちも、ゴミ箱先輩の餌食になっている。だがそれでも、殲滅する勢いではない。巨龍から魔獣が次々と産み落とされているため、数が減っているように感じないのだろう。
翔もそれに気づき、無謀なことを実践する。それは―――
「ゴミ箱先輩、大量発生いいいいぃぃぃッ!!!?」
―――ゴミ箱先輩を無差別に出し続け、地面を覆いつくすというものだ。
こうすれば魔獣を発生させられても、発生と同時にゴミ箱先輩がどうにかしてくれる、はずだ。
自身が食われながらもゴミ箱先輩を発生させる翔。
ゴミ箱先輩は〝アンダーウッド〟の外周部から外に向かって津波のように、巨人族や魔獣を飲み込んで押し流していく。
「って、当然のように俺も流されるよねええええぇぇぇッ!!?」
………翔も外周部から平野へと向けて流されていく。
だが、彼の犠牲のおかげで都市を襲っていた魔獣を殲滅することに成功する。
都市内部に入り込んだ魔獣は最初に設置したゴミ箱先輩が対処してくれるだろう。
「これ、何処まで流されんのおおおおおぉぉぉぉ!!!?!?」
そんなことを叫んでいると、目の前に巨人族の大群が見えてくる。いつの間にか東南の平野まで流されてきていたようだ。
まだ遠目でしか確認できていないが、巨人族と戦っている幻獣達と
「全員そこから逃げてええええええぇぇぇぇぇ!!!!!!?」
今の彼には避難を呼びかけることしかできない。
彼のギフト、〝
その声に気が付いた十六夜は翔の方へと顔を向ける。そして、迫りくるゴミ箱先輩の波に目が釘付けになる。
「………………………………は?」
十六夜の呆けた声が僅かに聞こえた。
つい先ほど、士気も回復し混乱も治まったばかりだというのに、新たな混乱の種が向こうから迫ってきているのだから、そのような声が出てもおかしくはないだろう。
「翔、お前ッ!なんてことしてんだよ!?」
「ちょっと数が多くて殲滅しようとしたら、先輩が暴走した!!だからそこら辺の幻獣に乗って逃げてええええええぇぇぇぇぇ!!!!!!」
珍しく焦る十六夜。その間にも迫りくるゴミ箱の波。幻獣達はゴミ箱先輩を二度の襲撃で知っているために即座に回避行動をとる。
十六夜は傍にいたグリーが乗せてくれたようで、寸前で離脱に成功する。
だが、巨人族はゴミ箱先輩が何かを知らない。そのため、正面から受けとめる、もしくは迎撃しようとする。
でも、無意味だ。
巨人族の稲妻も、怪力も、鎖も、何もかもが通用しない。
だって、無機物だもの。
抵抗虚しく、白い津波に吞み込まれる巨人族の大軍。
そしてすべてが吞み込まれ、ようやく解放される翔。
「ゼエ………ハア………ハア………ふぅ………恐ろしい体験だった………。もう、こんな無謀なことはやらないようにしよう………」
また一つ、ゴミ箱先輩の恐怖を心に植え付けられた翔であった。
その後は何事もなくリスポーンで外周部に生還することに成功した。
「ほ、本当に酷い目に遭った………。自業自得とはいえ、あれほどの恐怖体験をするなんて………」
地面に手をつき、体の震えを止めようとする。が、直後。
「〝審判権限〟の発動が受理されました!只今から〝SUN SYNCHRONOUS ORBIT in VAMPIRE KING〟は一時休戦し、審議決議を執り行います!プレイヤー側、ホスト側は共に交戦を中止し、速やかに交渉テーブルの準備に移行してください!繰り返し―――」
「―――――GYEEEEEEEEEEYAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaEEEEEEEEEEYYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaa!!!」
「………はあ?」
そんな声が、
急降下してきた巨龍が、100m頭上を通過した際の暴風で巻き上げられたのだ。
〝アンダーウッド〟で戦っていた十六夜も、飛鳥も、ジンも、ペストも、巨人も、魔獣も、敵味方の区分なく、あらゆる者を空へと巻き込んで吹き飛ばす。
しかし翔はその中でも、より高く吹き飛ばされていた。それこそ、ともに吹き飛ばされた者全員を把握できるほどに。
だが、それは彼にとっては
「チッ………!〝アンダーウッド〟の同士と十六夜達………!巨人と魔獣は除外………!許可した者達を〝
そう宣言すると、彼が
それを確認した翔は安堵して、自身も〝
中へ入った翔は、何が起きたのか分かっていない〝アンダーウッド〟の同士達と十六夜達が視界に入る。
「………ここは、一体………」
「俺のパークの中だ。全員無事そうでよかった」
誰かが漏らした呟きに、翔が応える。
「とりあえず、これから地上に戻ってからお前らを解放する。解放後、負傷者には手を貸してやれ!俺への文句や質問は一切受け付けない!以上!というわけで暫くの間お待ちくださーい!」
口早にそういって、再び姿を消した翔。
「………アイツ、こんな器用なことも出来たんだな。巨人族と魔獣は一切入り込んでない」
「………なんだか、過小評価し過ぎていたのかしら?」
「………いや、どっちにしろ何かしらミスとか馬鹿とかやらかすし、妥当な評価じゃないか?そのせいで俺もさっき冷や汗かいたしな」
「………それもそうね」
本人のいないところで散々な言いようである。
その後地上に墜落し、リスポーンした翔は〝
「翔殿。貴方のおかげで多くの同士が助かった。感謝する」
「それでも何人も移動し損ねたから、そういう風に感謝されるのも複雑な気持ちになるんだが………」
地上へ生還後、メンバーの確認をしたところ、耀を含めた何名かの行方が分からなくなっていた。どうやら魔獣や巨人族の影に隠れて、翔が視認できていなかったのだろう。
今、十六夜と飛鳥が黒ウサギと合流するために治療所へと足を運んでいる。念のために耀がいるかどうかも確認してもらっている。
「組織の要人も行方不明となるとなぁ………。あっ、そういやジャックとかはどうした?」
「うん?………そういえば、見ていないな」
「………んー?なら行方不明者と一緒にラ○ュタ………もとい空の古城にいるのかね?」
「………確認に行けたりはするか?」
サラが翔に尋ねる。だが、彼女はすぐに首を振って自分でその質問を否定する。
「なんて、無理に決まっ―――」
「距離がなぁ。とりあえずやってみて、もし行けたら誰々がいるか確認してみるかぁ………いやでも、ジャックもいるかもしんないし、最悪な事態にはならんだろうからここで罠を張ってた方が有意義か………?」
「………できるのか?」
「成功率は低いけどなー」
状況的に笑えねー、といって地面に寝転がる翔。
「………やれるだけやってみてはくれないか?無茶な頼みだとは思うが………」
「ちょっと待って。色々考えて頭ン中こんがらがってる」
頭を抱えて、あーでもないこーでもない、と唸っている翔。
そしてしばらくして、よし!と意気込んで立ち上がる。
「とりあえず行ってみるわ。行けなかったら戻ってくるけど、そん時は許してくれ」
「………感謝する」
「それはゲームクリアしてから改めて受け取らせてくれ。とはいえ、俺はこういう防衛戦なら得意だったんだがな」
「そうなのか?」
「ギフト的にな。あんま先陣きっていくのに向いてないんだよ。待ち伏せとか罠なら得意だから、待ちの体勢を取るこういう状況が一番力を発揮できる。とはいえ俺も耀が心配だから行くんだが」
勿論
心の中でそんな言葉を付け足す翔。そうして〝アンダーウッド〟の外へと向かっていく翔。
そして彼は、
ちなみに、地上に散乱していたゴミ箱先輩は翔が責任をもってしっかり回収しました。
———〝アンダーウッド〟上空。吸血鬼の古城・城下街。
一夜明けて、城下街に連れ去られていた者達も一息つくことにした。上空ということでやや風が強く肌寒いが、強風を凌げる程度には廃屋も使える。
最初は水と食料に不安のある耀だったが、その問題は早々に解決した。
ガロロとジャックがギフトカードに水樹の幹と乾燥食材を常備していたからだ。
魔王とゲームの備えとして持久戦を考慮して常備しているそうだ。ガロロからそのことを教えられる耀。
ギフトカードの利便性を改めて理解し、ガロロが用意した羊の干し肉を焼いた料理や、ドライフルーツなどの保存食を口に運んで噛みしめる耀。………決して不味くはないが、美味しいとは言えない。安物のカップラーメンよりはマシ、という程度だ。耀は不意に、本拠の食事を思い出して切なくなった。
「………リリや翔の作るご飯が恋しい」
「ん?呼んだ?」
そんな声が耀の背後からかけられる。彼女は反射的に裏拳を繰り出した。
メキャ!
何かがへし折れる音がその場に響いた。その直後に誰かが地面へと倒れる音も響く。
理不尽な
「痛ってぇ!?なんで!?なんで声かけただけで膝を砕かれなきゃいかんの!?」
「あ、翔。翔もここに来てたの?」
「いやそれよりも先に膝!!膝についてなんか言う事ないの!?」
翔がありえない方向に向いた膝を指さしながら尋ねる。
それに小首を傾げながら、
「………?何もおかしくないよ?」
「え、えぇー………?」
さも当然とでもいうように普通に告げる耀。ありえないといったような表情を浮かべる翔。まあ、いつもは全身捻じれているから、膝だけだと特に変に感じないのだろう。
膝がおかしくなっている翔を心配してガロロが声をかける。
「お、おい。アンタ大丈夫なのか?」
「あー平気平気。リスポーンすれば全部治るし………」
そういって、その場にリスポーンする翔。
ガロロが目を見開いて驚きを顕にする。初めて間近で目にすれば大抵はこんな反応だろう。
「そんなことよりご飯頂戴」
「おいおい、そんないつも料理を持ち歩いてるわけ―――」
「ほら、耀の分」
ドンッ、と直径70㎝で深さ120㎝ほどの鍋が置かれる。
「―――あるのかよ」
「此処に登ってくる前に大量に作ってきたからな。他の参加者の分もあるが、どうする?勿論地上に避難させることも出来るが」
「………登ってきただと?」
「おう。耀や組織の要人もいるみたいだったし、俺なら何かあっても問題はないしな」
ガロロの方を見ながら説明する翔。
「それで?どうするんだ?」
「なら先に避難を頼みたい。だが、方法は安全なんだろうな?」
「120%安全だ。でも、最低でも耀とガロロとジャックはゲームクリアの為に此処に残ってもらいたいんだが………構わないか?いやむしろ、そうしてくれないと困るんだが………」
困ったような表情で提案する翔。それに苦笑しながらも答える一同。
「別にいいよ。ゲームをクリアする鍵があるかもしれないし」
「俺も構わないぜ」
「私も構いませんよ」
三人は快く承諾してくれた。ホッと胸を撫で下ろす翔。逆にアーシャは不満そうな顔をしている。
「………私はいらないってのかよ?」
「うん。いらない」
「アンタ、ブッ殺すぞ!?」
「お?やってみろよ、放火殺人犯のアーシャちゃん?今以上に罪状を増やすのかい?」
「それまだ引っ張るのかよ!?もういいだろ!?」
「いーや、引っ張るね!末代までにお前への嫌がらせを強要するぐらいに引っ張るね!」
「鬼か!?悪魔か!?」
「失敬な。俺はスケーターだ。むしろ悪魔はお前のコミュニティのリーダーだろ?」
「あぁー!!?そうだったー!!!」
頭を掻きむしって苛立ちを表にするアーシャ。そんな中、翔に声がかけられる。樹霊の少女、キリノだ。
「あ、あの!私たちも協力させてください!」
「ん?もちろんそのつもりだけど?」
え?と全員が首を傾げる。翔はここに居る参加者たちを見回す。
「非戦闘員の避難はゲーム再開後だ。それまではちゃんと此処に料理を運んでくる。他に必要な物があれば教えて欲しい。だが、今は〝審判権限〟が発動してるから、古城の中に居れば比較的安全だ。その間にこの辺りを探索して、ゲームのヒントなり何なりを見つけたいと考えている。こんだけいれば、そこそこ調べられるだろう」
「………うん。そうだね」
「今のうちに探す物の目途を付けといてくれ。謎解きはてんで駄目なんでな。その間に俺は、一旦下に戻って此処の状況を伝えてくる」
「うん。ありがとう」
「どういたしまして。そんじゃ、頑張ってな。あ、他の奴らにゴミ箱には触らないように伝えといてくれ」
「………また置いたの?」
「そこら中にな。ゲーム再開後でもよかったが、念のためにな。戦力的には申し分ないだろ?」
ケラケラ笑いながら答える翔。その返答に呆れた表情をする耀。
その後、スケボーに乗って空中の古城を後にする翔。
彼がいなくなった城下街で耀は、自身が用意した解答が正しいか検証するために、一同に質問し始めた。
———〝アンダーウッド〟収穫祭本陣営。連盟会議場。
そこには今、七名の人物がいた。
〝一本角〟の頭首にして〝龍角を持つ鷲獅子〟連盟の代表・サラ=ドルトレイク。
〝六本傷〟の頭首代行・キャロロ=ガンダック。
〝ウィル・オ・ウィスプ〟の参謀代行・フェイス・レス。
〝ノーネーム〟のリーダー・ジン=ラッセルと逆廻十六夜、久遠飛鳥。
そして進行役の黒ウサギだ。
其処へもう一人会議場へ入って来る人影が見えてくる。
「板乗翔、ただいま空中の古城より帰還しましたー」
「ちょうどよかった。攫われてしまった者達の安否を気にしていたところだ。話してくれ」
「………待て。翔、お前古城に行っていたのか?」
十六夜が質問を投げかける。それに首を傾げながらサラに尋ね返す翔。
「行っていたが、サラは伝えてなかったのか?」
「あ、ああ。てっきり翔殿が伝えていると………」
「………あちゃー?悪い。俺らの不手際だ。古城にいる連中の料理とか作ったりで忙しくて、伝えてなかったわ」
頭を掻きながら謝る翔。
「その代わり、攫われた人達の無事は確認してきたから許してくれ。耀もガロロとやらも無事だった。傍にはジャックもいたし、外縁部によらなければ、〝審判権限〟での休戦期間中は問題ないと思う」
「そうか………それはよかった」
「次にレティシアの居場所だが………残念ながらまだ、はっきりとは調べきれていない」
物凄く悔しそうな表情をしながら報告する翔。それを見て、飛鳥が不思議そうに尋ねる。
「あら?どうしてかしら?」
「………ローブ姿の奴の声と他に二人の声と、未確認だが人か獣か分からない声を出すのが一体の、計三人と一体の存在を認識できた」
『ッ!?』
「これから戻って、もう一度調べ直すが、少なくともローブの奴ともう一人、少女だと思われる奴がこちらに攻めてくるというのが話の内容から確認できている。残りの一人と一体は古城に残るというのも確認済み。それと耀の〝生命の目録〟も狙っていることも断片的に聞き取れた。敵のギフトは不明。〝バロールの死眼〟はローブが所持。おそらくこいつらが会話をしていた場所に、レティシアがいると予測する。それと、古城には自動防衛機能が存在していると思う。俺も何度か訳も分からずにリスポーンさせられた。休戦期間は関係ないようだからギフトだとは思う。近づく際には細心の注意を払ってくれ。十六夜も武器か何かが欲しいなら言ってくれ。店の代金でもらったギフトに何かあるかもしれない。あと………」
「………続けてくれ」
翔が言いづらそうに口をつぐむが、サラが続きを促す。
「ローブを含む三人と一体は主催者じゃないから、いつでも攻めてこられる。奴らの作戦のタイミングとしては敵の主力が分散される時、だそうだ。その時は巨人族を率いて襲撃に来る。勿論〝バロールの死眼〟も持ってな。その他の情報は微々たるもので今は気にする必要がないものばかりだ」
「………よく、そこまで調べられたな?」
そう十六夜が尋ねると、翔は不敵に笑う。
「壁に耳あり、障子に目あり、地中にスケーターあり。これぐらいの盗み聞きは容易いよ。ただ目が利かないから、そこら辺は勘弁な?でもまあ、バレなくてよかったぜ。もしも荒ぶったりしたら一巻の終わりだったぜ!まあこの話を聞いたのは本当に偶然なんだけどなッ!古城に衝突して地面の中だと思ったら、偶々この話が聞こえてきただけなんだよねッ!!それにしても不用心すぎるよなッ!!地中に誰かいるかもとか想定してないなんて、甘すぎるぜッ!!」
誰が想定するかよ。全員の心が一致した。
ゲラゲラと笑って報告を終える翔。なんとなく察しがついていた〝ノーネーム〟メンバーは溜息を吐く。
彼は【ロケット】で古城まで飛んでいくと真下から突き刺さった。しかし、勢いは止まらずに城の玉座の床に出る一歩手前で停止したのだ。そこで偶々、今の話を盗み聞きしたのだ。聞き終わった翔はその後、地中を落下するようにすり抜けて、城を出て耀達と合流したのだ。
「じゃあ、俺はこれからまた古城に戻って、耀のサポートをしてくるついでに情報を集めてみる。が、〝生命の目録〟が狙われているのを伝えるか?隠しといて動揺させずに済ませるか?」
「隠しとけ。いざとなれば翔、お前がどうにかしろ」
十六夜が応える。それに困ったような表情、かつ唖然とした表情で返答する翔。
「む、無茶言うなよー。俺にそこまでできる術がねえよ………匿うことや敵を閉じ込めることが出来ても、一時しのぎだぜ?」
「やれ。せめて俺が行くまではどうにかしろ」
十六夜が真剣な目で翔を見据える。その目に怖気づき、ため息を溢しながらも頷く翔。
「………わかった………期待はしないでくれ………。それと防衛機能についても、どの程度の強さなのかとかを調べてみる。明日中には映像付きで報告出来ると思う………」
そして、肩を落としながらその場から姿を消す翔。きっとリスポーンして古城に戻ったのだろう。
「………さて、偶然とはいえ翔が持ってきた情報を参考にして、もう少し話し合うか」
十六夜の言葉にうなずき、もう少しだけ会議を続けた一同であった。
———吸血鬼の古城・城下街。
十六夜達に報告し、古城に戻って耀達と合流した翔。
「………で、謎は解けそうか?」
「うん。これからの探索次第だけど、何とかなりそう」
「そうか………それなら俺は少し外れてもいいか?」
「………?うん。別にいいけど………なにかあるの?」
「ちょっとな………一応皆に、外縁部には近づかないように言っておいてくれ」
「……?わかった」
耀にそれだけ告げて、件の外縁部に向かう翔。
「はぁー………とはいえ、何を基準に強さを判定するか………?」
悩みながらも、順調に歩みを進めていく。数分してようやく外縁部に到着し、そこからはゆったりとした歩調へ変えて周回し始める。古城の防衛機能の機動域を調べるためだ。一歩一歩ゆっくりと慎重に進める。
「まあ、流れに任せてその時その時に対応すれば―――」
瞬間、翔の視界がブラックアウトする。
「―――いい、か?」
「あれ、翔?何か忘れ物でもしたの?」
「………耀?はっ?嘘だろ?」
「むっ………翔にそんなことを言われる筋合いは―――」
「ああ、いや。そういう意味合いで言ってないし、まず耀に向けて言った言葉じゃないから」
はぁー、マジかぁー?と頭を抱える翔。それを見て首を傾げる耀。
「………しゃーない。何回かチャレンジするか………耀は探索、頑張ってな」
「うん。翔も何か知らないけど、頑張って」
ありえねぇー、と呟きながら去っていく翔。同じ轍を踏まないように、外縁部手前でマーカーを設置しておく。
「………よし!今度こそ!」
今度は、スケボーに乗って素早く移動をする。
再び、ブラックアウト。しかし、視界が黒くなる前に一瞬だけ、黒いレティシアのような姿が見えた。だが、攻撃手段は不明。
それでも諦めずに、防衛ギフトの攻撃手段を確かめようと挑戦する。
殺された。リスポーンする。
殺された。リスポーンする。
殺された。リスポーンする。
………殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて、リスポーンして、殺されて…………………リスポーンした。
果たして何回繰り返しただろうか。翔本人ですら記録を取っていないから覚えていない。だが、確実にゴミ箱先輩への諸々の試行回数合計よりは圧倒的に少ないだろう。多く見積もっても1000には届かない程度だ。
だが、ようやく見えた。攻撃手段が見えたのだ。途中からはもう反射のようになっていた。彼女から長槍を投げられる前から、道筋が見えているかのように避けることが出来た。
しかしその結果、最初は有頂天になって、その隙に正体不明の攻撃に意識を沈められた。そこからは試行回数の積み重ねである。彼女から決して目を離さない。それだけを心掛けた。
だからこそ、見えた。影から生み出される、無尽蔵の武具が。あれこそが、あの影こそが、彼女の最大の武器であると。
理解した翔はすぐにリスポーンして、その場から離脱した。
「………はぁー………もう、朝、かぁ………つらッ!無理ゲー!よく避けた俺ッ!!………………はぁ………ほんと、疲れるわー………」
出現と同時に地面に寝転ぶ翔。でも、ようやく終わった。終われるのだ。残るは報告のみ。
「後はここを抜け出して、十六夜に報告するだけだな」
そういって、地面に吸い込まれるように落下していく。あの防衛ギフト。古城の真下だけは範囲外のようで、安全に落下できるのだ。
スケボーに乗って、上空4000mほどから落下し続ける。無論、あの防衛ギフトから意識は外していない。だが、離れていくものには無反応のようだ。
そのことにホッとしながらも、警戒しておく。
しかし警戒虚しく、その後は何事もなく地上に辿り着いた。
【ゴミ箱先輩大量発生】
ゴミ箱先輩の大津波。翔のトラウマとなる。
ぶっちゃけ、想像しながら書いてたら鳥肌立った。
【
視認可能な範囲にいるものを移動させられる。移動は翔の一存で決められる。入るのも出るのも翔の一存。視認範囲というのは、視界ジャックでも可能。だが本人は知らない。
【ロケット】
建物に埋まって自殺コマンドをすると吹っ飛ぶ奴。ギフトで強化されて4000mくらい簡単に飛べるようになった
【床の下の翔】
私、板乗翔。今あなたの足下にいるの♪
動けないけど、音は拾える高性能盗聴器モドキ。
偶然の結果。思いのほかロケットが勢い出過ぎて、玉座一歩手前で停止。偶々聞いちゃった。
そもそも床の中を確認しない彼らが悪い!
奇跡その一。
【防衛ギフト偵察】
死にゲー&覚えゲー。ただし攻撃は全てランダム。いきなりラスボス。速度があって、距離がない。心折設計。………あれ?これ無理ゲーじゃね?
おかげで翔の動体視力が50上がって、反応速度が20上がり、精神疲労が1000増えた。
奇跡その二。
翔 「嘘………?私の死亡数、多すぎ………?」
作者「そうだね。一話の中でこんなに死んだのは、これが初めてだね。書いてはいないけど、登るときにも死んでるし。でもゴミ箱先輩の実験でもっと死んでるから」
ペスト「ハッ!いい様ね!」
翔 「お?やんのか?高く買ってやんぞ?」
ペスト「上等よ。やれるもんならやってみなさいよ」
翔・ペスト
「「………」」
翔 「テメエ!本編に出ろや!!叩きのめしてやんよ!!?」
ペスト「その言葉、そっくりそのまま返すわ!!次回を楽しみにしてなさいよ!!?」
作者「え?君らに次回の内容を決められる筋合いは―――」
翔・ペスト
「「作者も分かったッ!?」」
作者「………ウッス」
案外〝アンダーウッド〟のあたりの話が難しい。
それとヒロインについてなんですが、今のところ特に考えてないです。最初に、「ヌケーターにヒロイン?………無いな」と思って書き始めた作品なもので。何より戦闘描写よりも恋愛描写が苦手というのもあり、あまり書かないようにしています。
ですが、一応、活動報告の方にヒロインアンケートモドキでも置いておきます。選択肢にヒロイン無しもあるので、よろしければ覗いてみてください。