西住家物語   作:ぴかそ

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頑張って書いていきます







5.開幕

 

 

 

「なぁ」

「なんだ?」

「お前の妹めっちゃ可愛いな」

「山本、お前はいつもそんなとこしか見ていないのか」

 

 

 

今日は第62回戦車道全国大会の開会式ということで山本が翔の部屋に遊びに来て一緒にテレビ中継を見ている。ちょうど黒森峰の隊長であるまほが選手宣誓を行なっているところだ。

 

 

「まほさんって彼氏いるのかなぁ」

「いないと思うぞ」

「まじか!?じゃあ俺にもチャンスが…」

「ねーよ」

「山本君サイテー」

「うわぁ!?大和さんいつからそこに……?」

「ん?山本君が"なぁ"って西住に問いかけてたとこくらいからかな?」

「最初からかよ…」

「ちなみに俺は気付いてたけどな。冷蔵庫漁って勝手に俺のハー○ンダッツを食していることも」

「後で買ってきて冷蔵庫入れとくよ〜。でも西住の妹さんてなんか人を惹きつける魅力があるよね。山本君が好きになっちゃうのも分かる気がするわ〜」

「ぐはっ」

 

 

 

 

 

山本は力尽きた。

 

 

 

 

〜〜〜〜

 

 

 

「今日は試合ないんだっけ?」

「確か今日は開会式だけで試合はないって言ってたな。そーいえば大和って戦車道のこと分かるのか?」

「全然?やろうと思ったこともないし周りに戦車道をやる環境もなかったしね〜」

「確かにお前が戦車に乗ってるとこはちょっとイメージできないな。でも戦車道って面白いぞ?主砲を初めてぶっ放した時なんて本当に爽快だった!」

 

翔が熱く語り始めると大和が意外な反応を見せてくる。

 

 

 

「そーなんだ。主砲ってあの大砲みたいなやつだよね?あれは私も撃ってみたいかも。どっか戦車乗れるとこないの?」

「んー。この学園に戦車はないしなぁ。俺ん家行けば乗れるんだろうけどそれはさすがに…」

「じゃあ西住ん家行こうよ」

「………ん?」

「西住ん家行けば乗れるんでしょ?来週の土日に行こう。丁度部活も休みだし」

「なんだよその行動力…。てか、え!?来週の土日!?急過ぎやしません!?」

「だってそこしか休みないし」

「なんで休みなんだよ。バスケ部けっこう厳しいんじゃないのか?」

「なんでって。テスト期間だし」

 

ふぁーーーー。忘れてましたテスト期間。再来週の月曜日からテストの為明日からの1週間部活動は原則禁止となるのだ。思い出した瞬間憂鬱になる午後1時半。

 

「あれ?じゃあなんで今日はここにいるんだ?部活は?」

「今日は早朝練だったからね。ほらもうすぐ6月だし最近暑くなってきてるでしょ?朝の涼しい内にゲームとか実戦系の練習をしてその後は自主練習になるから日曜日は基本昼前には終わるの。その代わり土曜日は鬼のような基礎練が…」

 

珍しく大和が表情を曇らせる。こいつ表情を変えることができたんだと感動した翔であった。

 

 

「じゃあ勉強しないとじゃないか。戦車乗ってる暇ないぞ?」

「え、別に授業聞いてればテストとか余裕じゃない?」

「……1年3学期期末テストの順位は?」

「6位」

 

200人中6位。チクショウ!!俺より上じゃねーか!!ちなみに翔は8位だった。

 

「やっぱり天才なんだなお前………」

 

翔ががっくりとうなだれていると携帯に一件の着信が入る。相手はまほだった。

 

「どーした?」

「いや、特に用はない。開会式が終わってこれから帰るところなんだがいかんせん混雑しててな。空くまで待機してるんだ」

「そうか。選手宣誓カッコよかったぞ?後で飯奢ってやる」

「ふむ。言ったな?女だからといってあまり私を舐めないことだ。覚悟しておけ」

「はいはい。あと一つ相談があるんだけどさ。戦車に乗りたいって言ってる女の子がいてさ。うちに連れてくってなったら母さんなんて言うかな?」

「……」

「まほ?」

「彼女か?」

「ちげーよ!!隣の部屋に住んでる友達だ!」

「ほう。隣に住んでると。朝も一緒に登校していると」

「そこまでは言ってねぇ」

「なんとも言えないな。友人がうちに遊びに来るなんてことほとんどなかったし異性ともなれば尚更だろう」

「だよなぁ。まぁ母さんに聞いてみるわ」

「それはそれとしてだ」

「ん?」

「私も話してみたいのだが。その友人と」

「いや、今この場にはいないんだ(・_・)」

「もしかして今私のこと話してる?」

「こら!ちょっと静かに…」

「やっぱりいるんじゃないか。早く代われ」

「そんなこと言」

「もしもしお電話代わりました」

 

 

 

あーーー!携帯奪われタァァァァ!!

 

 

 

 

「君か。私は西住まほという。よろしく」

「私は大和桜です。よろしくお願いします」

「同じ歳だろうから敬語じゃなくても大丈夫だぞ」

「そういえばそーだね。双子の妹なんだよね?」

「そうだ。翔がなにかと迷惑をかけてそうだがよろしく頼む。それと私とも連絡先を交換しないか?」

「そんなことないよ。翔君はなんでもできるし色々と頼りになるよ。本当に?喜んで!」

 

ん?心なしか大和が笑っているように見える。なに話してるのかな?

 

話し終わったらしく大和が携帯を返してくる。

 

「なんか盛り上がってたみたいだけどなに話してたの?」

「内緒。あとまほさんの連絡先教えて」

「え」

「んふふ〜」

 

笑ってる。すんごい緩みきった顔で笑ってる。こいつこんな顔もできたんだと本日2度目の感動をした翔であった。

 

「なんだよ騒がしいな」

 

ここで翔の布団で力尽きていた(寝ていた)山本が目を覚ます。

 

「本当にお前は間が悪いな……。もうちょい早く起きてればまほと話せたのに」

「え」

「まほさんの声かっこよかったなぁ」

「ちくしょぉぉぉぉ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

山本は血涙を流しながらこの部屋から退場した。

 

 

 

 

 

〜その夜〜

 

 

「もしもし母さん?」

「久しぶりね。どうしたの?」

「戦車に乗りたいって言ってる友達がいてさ。次の週末にうちに連れて行ってもいいかな?」

「そうね…。次の土日は常夫さんも家にいるから別に構わないわ」

「え、いいの!?」

「戦車道の普及も西住流家元の務め。なにか問題でも?」

「いや、ないけど…」

「でも珍しいわね。男の子が戦車に乗りたいなんて」

「………」

「どうしたの?」

「…女の子なんだ」

「………」

「母さん…?」

「貴方も中々やるようになったわね」

「ちょっと待って!?絶対なにか誤解してる!」

「楽しみにしているわ。ではおやすみ」

「ちょっ……!」

 

 

電話が切れてしまった。

 

 

「どうしよう。全力で帰りたくなくなってきた」

 

 

 

 

そして翔は布団に倒れ込み次の週末に起こりうることを考え始める。次第に思考は夢へと変わりじきに翔は深い眠りについた。

 

 

 

 

 

 

枕の隣にあった爆音目覚ましはセットされていなかった。

 

 




次回も波乱の予感?

なるべく早く書いていきたいと思います!

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