「ただいまー」
「あ、お兄ちゃんおかえり〜。お姉ちゃんはもう帰ってきてるよ」
約4カ月ぶりの我が家。まだ中学生であるみほが出迎えてくれる。まほの帰省に合わせて翔も家に帰ってきたのだ。
「お、久しぶりだなみほ〜。勉強頑張ってるか?」
そう言ってみほの頭を撫でる。確かみほはまほと同じ黒森峰への受験が控えている。いくら家元の娘とはいえあそこは偏差値が高い。勉強ができなければ入学はできないはずだ。
「えへへ。頑張ってるよ〜。この前の期末試験学年で一番とったんだ〜」
のほほんとしてるようで中々やる奴である。みほとの再会を済ませたところで靴を脱いでしほがいるであろう執務室へと向かう。
「母上。ただいま戻りました」
「おかえりなさい。少し見ない間に貴方もちゃんとした言葉遣いができるようになったのね」
「お母さんを驚かせようと思ってね〜」
「そっちの方が貴方らしいわ。元気そうでなによりね。ゆっくりしていきなさい」
しほとの挨拶も済ませ自分の部屋に荷物を置いた後居間へと向かった。お盆ということで季節は夏。熊本はかなり暑い。しかも西住家は最寄り駅からかなり離れている。そんな中彼は歩いてきたのだ。タクシー使えば?という声が聞こえてきそうだが久しぶりに景色を楽しみたいということで徒歩を選択した。結果的に後悔することになったのだが…
「なんかねぇかな…」
助けを求めるかのように冷蔵庫を開ける。そしてポツンと一つ置いてある物体を彼は見逃さなかった。
「お!白くま(鹿児島発祥の氷菓)あんじゃん。いっただき〜」
「うめ〜。クーラー効いた部屋で食う白くまほど最高なものは」
「何をしている」
空気が凍りついた。恐る恐る襖の方へ振り返ると無表情だが静かなる怒りのオーラを纏ったまほが立っていた。
「た、ただいま…これもしかしてまほの…?」
「そうだ。駅から来る途中で買ったんだ。あまりにも暑かったからな」
「食べるの楽しみにしてたんだ。それがこれだ。この気持ちどうしてくれるんだ」
まほが無表情のまま迫ってくる。
(やべぇ!ガチ怒りだ…!どうしよう)
「ほら!まほ!あーん」
食べかけの白くまをスプーンですくってまほの口元へと差し出す。
「……」
「……」
パクっ
まほは白くまへと食いついた。その瞬間まほから怒りのオーラが消え去った。
「美味しい」
「だ、だろ〜?どんどん食わしてやるから!」
その後も双子の兄が無表情の妹にスプーンで白くまを食べさせるという異様な光景が繰り広げられた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
夜ご飯を食べ、お風呂にも入った3人は今翔の部屋にいる。なぜかと言うと翔がみほの勉強を見てあげていたところにまほが押し入ってきたからだ。そしてこれは丁度良い機会と翔は提案する。
「そうだ。久々に3人揃ったことだしよかったら明日みんなでどっか出かけないか?」
「ほんとに?やったぁ!」
「いやだ」
(こいつまだ昼のこと根に持ってんのか…。あ、そーだ良いこと思いついた)
「だってみほ。まほは行かないんだってさ。しょーがないから2人でお出かけしようね?」
「え」
「え〜…でも仕方ないかぁ。お姉ちゃんも忙しいもんね。お兄ちゃんと2人でデートしてくるよ!」
「待って」
みほが翔の意思を察したのか完璧なノリの良さを見せる。あとはまほが泣きついてくるのを待つのみだ。
「に、西住流にこ、こ、後退の文字はない…」シュン…
半泣きになりながら縮こまってしまっている。ここまできちゃうと可哀想だなと思い始めた時。
「し、翔!」
「私も一緒に連れて行くんだ!」クワッ!!
涙目で凄んできたため笑いながら謝罪し、ちゃんと3人で行くと約束してその日は就寝となった。
さぁ明日はどこへ行こうか。とか考えてるうちにけっこう楽しみになってきてしまって寝不足になる翔であった。
日常系の物語は書いてて楽しいですね。次回は3人でお出かけします。お楽しみに!