比企谷八幡 in SAO   作:アカツキ8

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お待たせしました。
前回の続きを...と、言いたいところですが今回は話進みません。
前回の話の最後に至るまでのキリト目線の内容です。
こういう風に話が進まないときは、これから話数に小数点をつけようと思います。あと、タイトルに『』をつけます。
キリトがキリトじゃないです。

では、どうぞ。


第1,5話 『だからナンパじゃない!!』

《sideキリト》

 

俺は今、始まりの町のすぐ外の草原エリアで、さっき知り合ったクラインと云う名前のプレイヤーにソードスキルについて教えながらフレンジーボアを狩っている。何故こんなことになったかというと、こいつにベータテスターだと見抜かれて、『序盤のコツを教えてくれ』と、頼まれてしまったのだ。断るような理由もなく、現在に至る。

 

周りのプレイヤー達が街に戻っていくのを横目に見ながらフレンジーボアと戦っていると、クラインが戦いながら訊いてきた。

 

「なぁキリト、ちょっと訊きたいことが有るんだけど、訊いてもいいか?」

 

「ん、別に構わないよ。じゃあそろそろ休憩にしようか。この近くに眺めの良い場所が在るんだ、そこに行こう」

 

俺は戦っていたフレンジーボアをソードスキルで倒す。そして、剣を腰に収めて、クラインと一緒に移動し始めた。

 

「で、何が訊きたいんだ?」

 

歩きながらクラインに尋ねる。すると、待ってましたと云わんばかりの様子で訊いてきた。

 

「いや、実はな、さっきからすごい気になっててよ。モンスターって一体どうやったら乗れるんだ?」

 

.....は?モンスターに乗る?そんなの無理に決まってるじゃないか。いきなり何を言い出すんだよ。

 

クラインの質問に口をポカーンと開けると、クラインが『えっ?』と、驚いた顔をする。

 

「もしかしてキリトも分からないのか?」

 

「いや、そもそも出来ないと思うぞ。モンスターに乗ることなんて」

 

俺がそう言うとクラインは不思議そうな顔をしながら、さっきまで俺達が居たところの更に奥を指差して言った。

 

「でもよキリト。あそこに居る女の子、フレンジーボアに乗ってるぜ?」

 

「ははは....そんな事あるわけないじゃないか。多分見間違いだろ」

 

 

苦笑いしながらクラインの指差した方を見て俺は目を見開いた。

 

「.....マジで?」

 

視線のさきに居るのは小さな女の子のアバター。だが、確かにクラインの言う通り、フレンジーボアに乗って他のフレンジーボアをすれ違い様に切り裂いている。

何あれ?普通に狩るより何倍も効率いいじゃん。

 

「な?本当だろ?」

 

「あぁ、でもどうやって...」

 

俺はその場に立ち尽くしながら、ベータテストの時の事を思い出す。

確かベータテストの時には、あんなこと出来なかったはずだ。俺も一回チャレンジしたけど、暴れられて出来なかったぞ。それに、あの2ヶ月の間でフレンジーボアに乗ることができた、なんて話を聞いた覚えがない。

そこまで考えて、俺は一つの結論を導きだす。

恐らく、あれは新要素で間違いない。まさかこんなに早く新要素を発見できるとはな...。思わずテンションが上がってしまう。

さて、試しにやってみるか。

 

「クライン、ちょっと試しにやってみようぜ」

 

「だな、やってみるか」

 

そして俺達はフレンジーボアに乗るべく、先ほどまで狩りをしていた場所に戻っていった。

 

 

 

 

 

「ぐあっ!」

 

クラインがフレンジーボアにしがみついていたが、振り回されて地面に転がる。見事なやられっぷりだ。かくいう俺も先ほどからチャレンジしているのだが、乗るどころか後ろ足で蹴り飛ばされたりと、散々な目に遭った。

 

「やっぱり無理か...」

 

俺が呟くとクラインが仰向けになりながら言った。

 

「やっぱり直接本人に聞いた方が良いんじゃないか?」

 

クラインの提案を聞いた俺はうーん、と唸る。

やっぱりそうするしかないだろうか。正直な話、女の子にいきなり話しかけて、『ちょっと訊きたいことが有るんだけど良いかな?』とか言ったら不審者扱いされそうで嫌なんだけど。

だが、仕方ないか。このままじゃ埒があかないしな。

 

「じゃあそうするか」

 

「よし、早速聞きに行こうぜ」

 

クラインはムクッと起き上がり言った。

そうして俺達はフレンジーボアに乗っている女の子の方に歩いていく。

 

....大丈夫だろうか?不審者扱いされないといいけど。それよりも男二人で行ったら怖がられるんじゃないか?

なんて事を考えながら俺は周りに他のプレイヤーが居ないかを確認する。万が一、あの女の子が逃げ出しでもしたら、その様子を見たプレイヤーに通報されかねないからな。

 

どうやらこの近くには余り人が居ないようだ。見たところ、あの女の子を含めて6人しかいない。しかしこの辺のプレイヤーは何かすごいな。無表情でフレンジーボアを斬っている女の人や、周りの敵を狩り尽くしたのかポツンと座っている少女。加えて、微かにだが聞こえてくる声を聞く限り、『中二病?』と疑わざるを得ない少年に、二人で座って話している少年少女。しかも、それほど距離が離れてないところを見るに、この6人は知り合いなのだろう。よくもこんなにバラエティーに富んだプレイヤーが揃うものだ。.....もしかして他のプレイヤー達が居ないのは、この状況のせいかもな。ここは他のところよりもリポップまでの時間が短いから、自然と人が集まりやすいのに彼ら以外に誰もいない。

 

この光景を見て思わずため息をついたときクラインが俺の方を見て提案する。

 

「なぁキリト、この人達知り合いみたいだからよ。この人達を経由して訊かないか?」

 

どうやらクラインもこの6人が知り合いだと気づいたようだ。

 

「そうだな」

 

「じゃあ、誰に経由してもらう?」

 

俺は顎に手を当てて少し考える。

あの女の人がアバターの見た目的には一番年上だろうけど...。ちらっとそちらの方を見る。そこには変わらず無表情で狩る姿が映る。

.....やっぱり他の人にしよう。

一人で座っている少女に話しかけるのは結局、同じ懸念が有るからダメだな。となると中二病は消去法で消して...

 

「じゃあ、あそこにいる二人組に頼もうぜ」

 

俺はそう言いながら二人組の座っている辺りを指差す。

それと同時に俺は立ち止まり、目はそのうちの一人に釘付けになった。そして頭の中で思案を巡らす。

 

あのアバターってハチじゃないのか?いや、絶対そうだ。遠くて姿がはっきりとは見えないが、ハチとは一時期コンビだったんだ。間違えるわけがない。てか女子と話してるし.....どこがボッチなんだよ。ちゃんと一緒にやる仲間も居るじゃないか、随分と個性的だけどさ。

ベータテストの時に聞いた、『俺は、ボッチだからな』と云うハチの言葉を思い出して思わず内心で突っ込む。

 

「どうしたキリト?急に立ち止まって」

 

クラインが怪訝そうに訊いてくるが、俺は返事をせずに少し笑ってまた歩き始める。

するとまたクラインが訊いてくる。

 

「どうしたんだよ?急に立ち止まったと思ったら、次は笑いやがって.....大丈夫か?」

 

「悪い。少しここで待っててくれるか?あそこにいるやつが、実は知り合いでさ。少し話したい」

 

「え?あ、おう。分かった。じゃあ、後で俺にも紹介してくれ。それとちゃんとモンスターに乗る方法を聞いといてくれよ」

 

「分かってるよ。後でちゃんと紹介もしてやる」

 

クラインに返事をして俺はまた歩きだす。早くハチのいる場所に行こうと、少し早足になった瞬間にフレンジーボアに乗った女の子が『お兄ちゃんに向かって突撃ぃーー!』と叫んだ。するとハチが慌てて立ち上がり走って逃げ出す。

 

え?てことは...ハチがあの女の子のお兄ちゃん!?あいつ妹がいたのか!?

 

思わぬ事実の発覚に、また立ち止まってしまう。視線の先では、あのフレンジーボアに乗った女の子がハチを笑いながら追いかけ回している。ハチが『止まってくれ‼』と叫ぶが、あの女の子は『どうしよっかなー?』と考える素振りをしながら言って、走る勢いを止めようとはしない。

 

....プッ、ククククッ。

 

この光景を見て思わず笑ってしまった。いや、これは笑うだろ。あの普段無口で、自分から進んで喋ろうとはしなかったハチが妹に追いかけられて叫びながら必死に走っているんだから。そのあとも、数秒間笑っていたが目的を思い出して、笑うのを止める

さて、とりあえず追いかけるか。走り出すと、さっきまでハチの横に座っていた女の子が、横で走りながら話しかけてきた。

 

「あの、すいません。もしかして先輩の知り合いですか?」

 

「先輩?ハチのことか?」

 

「ハチ?」

 

そう言って女の子は首をかしげる。

あれ?通じてない?あ、そうか。ハチじゃなくてハチマンって言わないと分からないか。....あれ、普通に気づくよね?

内心そう思いながら俺は言い直した。

 

「悪い。ハチって言うのはハチマンのことだよ」

 

「あっ、ハ、ハチ...ハチマンの略ですか。やだなぁ、ちゃんと言ってくださいよ。分かりづらいじゃないですかぁ」

 

そう言って女の子は笑いかけてくる。しかしその顔は若干紅く染まっていた。

 

「そうかな。それよりも大丈夫?顔紅いけど」

 

「えっ!?」

 

すると女の子は立ち止まって、腕をブンブンと横に振って叫ぶ。

 

「違うんです!!これは、このゲームの描写が過剰すぎるだけです!!決して名前を呼ぶのが恥ずかったわけじゃ....」

 

そこまで言った女の子は、また顔を赤らめて俯いてしまった。

俺は、この様子を見て思った。

 

もしかしたら、この子はハチのことが好きなんじゃないか、と。

 

まだ俯いて、時折首を振る姿を見て俺は『これは間違いないな』と確信した。そして、ちょっと悪戯心が湧いてきたので更に尋ねる。この時の俺は人様には見せられないゲス顔だったかもしれない。いや、しょうがないよね?こんなに露骨に反応してくれると悪戯したくなるよ。....誰に言い訳してんだ俺。

 

「なぁ、もしかして君、ハチのことが好きなのか?」

 

俺がニヤッとしながらそう訊くと、女の子は顔全体を真っ赤にしてさっきと同じように腕を振って叫んだ。

 

「な、な、な、何言ってるんですか!?私が先輩のことを好きなわけないじゃないですか!!確かに先輩は優しいですし、さりげなく荷物を持ってくれたりもして頼りにもなったり、一緒に居て楽しかったり、素を出しても変わらずに接してくれるから甘えちゃったりもしますけど.....って何言わせるんですか!?」

 

「はいはい。ハチのことが好きなのは、よく分かったからとりあえず落ち着いて」

 

俺がそう言うと女の子は、ぼしゅん!と、頭から煙を出してワナワナ震えながら口をパクパクして、また俯いてしまった。

....確かに描写が過剰かもな。ぼしゅん!って(笑)

しかし、こんなにも露骨に反応してくれると思わず笑っちゃうな。

俺が苦笑いしてると復活した女の子は俺に指を突きつけて言った。

 

「絶対に先輩には、さっきまでの私の様子を言っちゃダメですからね!?言ったら殺しますよ!?」

 

もう俺にはバレてしまったと悟ったのか、これ以上否定はしてこなかった。...若干涙目なのは俺のせいだろうか?いや、俺のせいか。

 

「分かったよ。それよりもハチ達を追いかけないか?」

 

俺がそう提案すると、返事をしようとした女の子よりも先に後ろから声が聞こえた。

 

「おーい、いつまで待たせるんだよ。さっきの女の子、何か男を追いかけて向こうまで行っちまったぞ。って何女の子泣かせてんだよ!?」

 

やば、クラインのやつこっちに来ちゃったよ。俺が慌てて言い訳しようとすると、女の子がニヤッと不気味に笑った。そして俺にしか聞こえない小さな声で『ふっふっふ。さっきの仕返しです』と呟いた。

ヤバい、これ逃げた方がいいんじゃ....。

俺が逃げようとすると、逃がさないと云わんばかりに女の子が大きな声で言う。

 

「助けてください!この人が私のことナンパしてくるんです!」

 

そう言って泣いたふりをして、しゃくりあげる真似をする。

ちょっと待て!!涙目だから凄い信憑性増しちゃうんですけど!?

走り出そうとすると肩に手を置かれて振り向くと、そこにはクラインの顔があった。心なしか、怒っているように見える。いや、怒ってるね、これ。

 

「おい、キリト。まさかとは思うがナンパするために嘘をついて一人で行ったのか?」

 

「いや、俺はナンパなんてしてない!!嘘ついてるのは、その女の子のほうだ!!」

 

俺が叫ぶと女の子も負けじと叫び返してくる。

 

「嘘じゃありません!!その人が余りにもしつこいから...」

 

そして女の子は再び泣き真似をする。

 

「お願いだからその泣き真似やめて!!お願いします!!」

 

「おいキリト!!」

 

「何だよ!?」

 

クラインが叫んだので俺も叫びかえす。するとクラインが拳を握りしめる。

あぁ、これ殴られるやつか。まぁ、体術スキル持ってないからダメージも入らないしクラインもオレンジプレイヤーにはならないからいいか。そこの女の子が勝ち誇ったような顔をしているのは気にくわないけど。

俺が観念したように抵抗を止めると、クラインが拳を振りかぶった。

どれくらい吹っ飛ぶかな?五メートルくらいかな?

そんな事を考えているとクラインが拳を地面に叩きつけた。

え?何やってんの?女の子も俺と同じように唖然とした顔をしている。

するとクラインが叫んだ。

 

「ちくしょう!!何で俺も誘わないんだよ!?俺だって女の子と話したりしたいのに!!」

 

 

 

『は?』

 

 

 

俺と女の子の声がハモった。

 

「え、いや、何言ってるんですかこの人。今のって殴る流れじゃないんですか?」

 

女の子が俺に訊いてくるが俺にも分からない。てか、俺に訊かないでほしい。

 

「殴る流れって何だよ...。君のせいじゃないか」

 

俺がやれやれと首を振ると更にクラインが続ける。

 

「おいキリト!!何で俺も誘ってくれなかったんだよ!?てか、泣かすなよ!!引き際ぐらい見極めろ!!」

 

「いや、この子が泣いてるのナンパのせいじゃないから!!てか、そんなアドバイス必要ない!!」

 

「じゃあ何でこの女の子泣いてるんだよ!?」

 

「それは....」

 

俺が言葉に詰まって目をそらすと、クラインがまた言ってくる。

 

「やっぱりナンパじゃねぇか!!泣かしちまったんだから、この子に謝れ!!」

 

「だから違うって!!」

 

あぁ、もう!!これどうすればいいんだよ!?

助けを求めるように女の子の方に視線を向けると、彼女は『はぁ、しょうがないですね』とため息をついて、クラインに話しかけた。

 

「すいません、ナンパって言うのは私の嘘です。誤解させてしまって申し訳ありません」

 

そう言って女の子は頭を下げた。するとクラインが戸惑ったように言う。

 

「え、嘘だったのか?じゃあなんであんた泣いてたんだ?」

 

「それは.....はぁ...。キリトって言ってましたよね。後でそこの人に聞いてください」

 

投げ槍な様子でクラインに言うと、次に女の子は俺の方を見て凄い真剣な顔で言った。

 

「この人には言っちゃってもいいですけど、本当に先輩には言わないでくださいよ。本当にお願いしますよ」

 

「分かってるって。そんなに念を押さなくても大丈夫だよ」

 

俺の返事を聞くと、女の子はため息をついて頭を押さえた。どうやらさっきまでのやり取りで相当疲れたようだ。

 

「なぁ、キリト。一体何があったんだ?」

 

「ん?あぁ、実はこの子あそこにいる「ああああぁーーー!!今ここで口に出さないでください!!お願いですから!!」

 

再び顔を真っ赤にして女の子は叫ぶ。すると、女の子の様子を見て、クラインも何となく察したのか尋ねる。

 

「なぁ....もしかして色恋沙汰か?」

 

「えっ!?違いますよ!?決してあそこにいる先輩がす......ってああああぁーーー!何でもないです!!今の無しです!!忘れてください!!というか何で言っちゃうの!?私のバカ!!」

 

女の子はついに耐えきれなくなったのか、しゃがみこんで頭を膝でしまって悶絶している。

この反応を見たクラインが悔しそうな顔をして地面を何度もたたく。

 

「くそっ!何で俺には彼女が居ないんだ!?世の中不公平だろ!!何でゲームの中でまでこんな思いをしなきゃならないんだ!!俺だって、俺だってよぉ...」

 

そう言うとクラインは泣き出してしまった。泣くなよ.....お前大人だろ.....。

てか、何だよこの状況。どうすればいいんだ?

二人とも当分復活しそうにないし....置いてくか。ハチ達も追いかけっこは終わったみたいだしな。

そう決めて俺は歩きだした。

 

 

ハチ達の近くまで行くと、ハチが妹に質問しているのが聞こえてきた。そして俺は二人に話しかける。

 

「その話、俺も聞かせてもらっても良いかな?」

 

 

 

 




どうでしたか?正直今回のは書いてて自己満足してる部分があったんですけど...。
次はちゃんと話を進めます。一気に街を出るところまで投稿しようと思います。出来れば今週中に...。文字数がえげつないことになるかも(笑)
読んでくださってありがとうございました!!

では、また次の話で。

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