亜人ちゃんとカタルシス   作:社畜系ホタテ

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ナマステ亜人ちゃん

 

 サキュバス、バンパイア、デュランはんなどなど……。この世の中には「亜人」と呼ばれる特別な性質を持つ人間がいるらしい。

 

 俺のお幼馴染もこの「亜人」に該当するみたいでバンパイアと自称しているが、今日までバンパイアらしいところを見たことがないため、似非バンパイア疑惑が俺の中で浮上している。

 

 というかバンパイアといったらなんだろうか。バンパイアらしいというのはどういったことを指すのかわからないためちょっと考えてみる。

 

 バンパイア……吸血鬼……コウモリ……ズバット? なるほど。

 

「あれっ、カズじゃん。こんなところで何やってるの?」

「さすがのエンカウント率。洞窟でもないのに出会っちゃうとかぱねぇわ」

 

 今日は欲しい漫画が発売しているだろうと直感的なサムシングで雰囲気を感じ取った俺は、本屋に足を運んでいたのだが、そこでばったりとひかりに出会ってしまった。

 

 やはり俺の幼馴染はバンパイアだったみたいだ。現時点で立証された。本当は認めたくはないが、これは認めざるを得ない。

 

「えー、なんで会って早々ぐぬぬってなってんの?」

「うるさいぐぬぬ」

「語尾がぐぬぬになってるし……」

 

 その後、本屋内でひたすらぐぬぬって言っていたせいか、何故かケロロ軍曹を購入してしまったのは仕方がないことだと思うんだ、うん。まぁ、欲しかった漫画が、実は一週間後に発売だったのでプラマイゼロってことでここは一つ。

 

 俺、ニュータイプじゃないんでやっぱり新刊発売を雰囲気で感じるとか無理だったわ。むーりぃー。

 

 ひかりはひかりで、かいけつ!!ヴァンデルセンを買っていた。懐かしい漫画だったので、古本屋で買えば? とひかりに言ってはみたものの、漫画は新しく買うに限るでしょ、と返されてしまった。

 

 なんとなくだが気持ちはわかる。またもやぐぬぬ。

 

 その帰り道。

 

「ぐぬぬ」

「まだぐぬぬ言ってんの? いい加減にしようよ」

「ぐぬぐぬ」

「言い方変えればいいってもんじゃないよ」

「ぐぬぐぬぐぬ」

「魔法陣」

「ぐるぐる……ハッ!?」

 

 嵌められたと思い、バッとひかりに目を向けると彼女は彼女でめっちゃドヤ顔していた。なんか、高低差ありすぎて耳キーンなるわ、とか言い出しそう。そこはかとなく、むかつく。

 

 俺は、動揺を悟られないように魔法の呪文を高らかと唱えた。

 

「ざ、ザムディン!」

「残念。修行1か月コースだったため、カズは尻からザザのじーさんが出てきます」

「痔、不可避ッ! 圧倒的不可避ッ!」

「そんなカズにはこれ、ボラギノール!」

 

 ひかりは、どこからともなくボラギノールを取り出した。おいおい、んなもん取り出してんじゃないよ。つーか、お前なんでそんなもん持ってんだよ。

 

「お父さんからのおつかい。ちなみにお父さんは、中にちゅーっと派だって」

「んな情報聞きたくなかったわ」

 

 全くもってどうでもいい情報ですね。本当にありがとうございました。

 

「でも、カズはこれからお世話になるんだからさ。そういえばカズは中にちゅーっと派?」

「いや、俺は外からサッと派……ってばか! ねーよッ! 俺に痔はねーからッ!」

 

 この幼馴染は俺に何言わすんだ。

 

 あと何年経てばボラギノールご用達になるのか……と、ボソッと恐ろしいことを呟いたひかりに、さっさとボラギノールをしまわせる。

 

渋々とボラギノールを懐にしまったひかりは、そう言えばと口を開いた。

 

「ザムディン! で思い出したんだけどさー。私の学校に雪女の亜人(デミ)がいてね」

「エターナルフォースブリザードッ!」

「相手は死ぬ!」

 

 話が進まなくなるのはご愛敬。

 

 ちなみにひかりがいうには、雪女ちゃんは、エターナルフォースブリザードを使うことはさすがに出来ないみたいだった。ちょっぴり残念。

 

「でも、涙とかが氷になるみたいだけどね」

「その子、飛影って名前のお兄ちゃんとかいないよね?」

 

 都会の人ごみ、肩がぶつかって一人ぼっち、とか言ってないよね。2つ丸をつけてちょっぴり大人さ、ってなってないよね。

 

「ア・リ・ガ・ト・ウ・ゴ・ザ・イ・」

「ます!」

 

 二人で微笑みの爆弾を爆発させたところで、ふっと気がついた。

 

 今更だけど亜人(デミ)って絶対数が少ないんじゃなかったっけ? こいつの学校、バンパイア(ズバット)とデュランはんと雪女がいるんですけど。

 

「あと、サキュバスもいるよ」

亜人(デミ)がゲシュタルト崩壊している件について」

 

 亜人好きの研究者がいたら楽園みたいな場所になるな。

 

 まぁまぁ、そんなことは置いといて話を進めるよ、とひかりは続けた。

 

「さっきも言ったけどユッキー……あっ、雪女の亜人(デミ)の子ね。ユッキー、涙とかが氷になるみたいなんだよね」

「うんうん」

「ということはつまり、修行すれば氷の能力操作ができる可能性が出てくるわけで」

「なるほど把握」

 

 修行の果て、ユッキーにエターナルフォースブリザードが実装されるわけですね、わかります。これは胸が熱くなるな。

 

「それに今年も暑い夏が来るみたいなんですよ」

「夏休みは、そのユッキーを小鳥遊家か斎藤家に泊まってもらって快適に過ごしたいな」

 

 そのためにもユッキーには是非ともパワーアップしてもらい、氷能力を完全に操ってもらいたい。つまりは修行。修行あるのみ。

 

 エターナルフォースブリザードを覚えたユッキー世界征服するってよ計画と今年の猛暑快適計画を実行するためのユッキー補完計画がここに始動された。

 

 ただし夏まで数か月。期間が短い。間に合うだろうか。

 

「大丈夫! 最悪間に合わなかった場合の修行1か月コースがあるから!」

「尻からブリザードは絵面的にやめていただきたい」

 

 そんな性癖、俺にはないんで。

 

 仕方ない。そうならないことを祈って、偉大なるこの呪文を唱えようではないか。

 

 

 

 

 ザムディン!

 

 

 

 

 


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