亜人ちゃんとカタルシス   作:社畜系ホタテ

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グーテンターク亜人ちゃん

 

 サキュバス、バンパイア、デュラハンなどなど……。この世の中には「亜人」と呼ばれる特別な性質を持つ人間がいるらしい。

 

 ちなみに俺の幼馴染もその「亜人」と呼ばれる特別な性質を持っているらしいのだが、いまだにその片鱗を俺は見たことなかったりする。

 

 そろそろバンパイア的にキュッとしてドカーンを見してくれてもいいと思うのだが、もしかしたら年末の宴会芸のためにそのネタを暖めているのだと思われる。かなりの楽しみです。

 

 と、そんなことより、今日の帰り道、「亜人」を見た。「亜人」自体の絶対数が少ないので中々会う機会は少ない。

 しかも今日見た「亜人」の子は、すぐに、あっ、この子「亜人」だなってわかるような見た目をしていた。初めての「亜人」との遭遇に少々テンションが上がった。

 

 ひかり? あんなんネタ見せしねーからうちの島じゃノーカンだ。ノーカン。

 

 というわけでこの俺の鳴りやまないトキメキを幼馴染に伝えなければ!っと思い小鳥遊家に突貫しようと帰り道をダッシュしていたのだが、途中でひかりを見つけたので、おーい、と声を掛けた。

 ひかりは俺に気づいたのか振り返り、どうしたの? と首を傾ける。

 

「ひかりひかり! さっきゆっくりの亜人(デミ)とウーゴくんの亜人(デミ)を見ちゃってさー!」

「カズ、それ絶対間違ってるよ」

 

 なんかひかりに真顔でそう言われて俺のテンションがスンっと引いた。現実に戻されたとかそんな感じ。

 そのままひかりと二人で家に帰りながらさっき見た光景を説明した。

 

 そうしたらひかりから、カズが見た亜人(デミ)ってどんな人だった? と聞かれたので帰り道にみた亜人(デミ)ちゃんを思い出す。

 

「んーっと、ウーゴくん的な亜人(デミ)がゆっくり的な亜人(デミ)を抱えて下校していたところかな。ウーゴくん制服着てたし」

「カズが見たのって多分マッチーだよ。私の友達」

 

 ひかりは、そうだよ絶対間違いない、とばかりにそう言ってきた。

 

 マッチー? どっかで聞いたことがあるよーな。

 

 うーん。あっ、思い出した。確か学校の先生に恋しちゃったっていうひかりの友達か。よくよく思い出せば、なるほど。ひかりと同じ学校の制服を着ていたような気がする。

 

 そっかー。ひかりの友達のマッチーって「亜人」だったのか。スタンド使いは引かれ合うって言うけど、「亜人」同士も引かれ合うみたいだ。

 

 んっ? しかし、待てよ。

 

「そのマッチーって人は双子? 俺、ゆっくりとウーゴくん、つまりは二人見たんだけど」

「マッチー……あっ、マッチーていうのはあだ名で本名は町京子っていうんだけどね。マッチーはデュラハンの亜人(デミ)なんだよ。だから頭と体が分離してるんだって。ということで二人合わせてマッチーだよ」

 

 そう説明してきたひかりに対して俺は疑問を持った。

 

 なにデュラハンって、と。

 

 ぶっちゃけた話、俺デュラハンって知らないし聞いたことがない。「亜人」っていうのは神話や御伽噺とか空想上の生物みたいなのが突然変異で体質となって現れた人間のことを言うんだろ。ならデュラハンもその神話や御伽噺とか出てくるで生物なのかな。

 

 でも、デュラハンってなんぞ? 考えてみてもわからん。

 

 んー……、

 ……ッ!? あっ、そうか!

 全てわかってしまった。

 俺は聞き間違えたのだ。

 

 ひかりはデュラハンではなくデュランはんの「亜人」って言ったのだろう。

 

 デュランの「亜人」。ということは、ダークドレアムの親戚みたいなもんか。

 

 前にひかりはあだ名は性格や名前をもじるって言っていた。名前が町京子ってなんか京都感あるし、あだ名好きのひかりのことだからデュランはんってあだ名をつけるのもわかる。

 

 そっかー、魔王の「亜人」かー。

 

 「んーっ? え、えへへー……、どったの急に私を見つめて?」

 「べっつにー」

 

 こいつ、魔王と友達ってすごいな。ドランゴ引換券さんとは友達の友達なのだろうか。世界の半分を貰ったりするのだろうか。

 つーか、あの子、あんな女の子らしい体格をしていたのに、あの制服の中身が筋骨隆々とか戦慄せざるを得ない。

 

 「ひかり、俺、なんかお前を尊敬するわ」

 「な、何、唐突もなく……えへへ、やめてよー、気持ち悪いなー」

 「へこむから気持ち悪いだけは止めて」

 

 あーた、俺が豆腐メンタルだってこと知っているだろうに。

 幼馴染に気持ち悪いとか言われたら海に飛び込んで貝に生まれ変わりたくなるレベル。むしろ畑に埋まってミミズやオケラと生きるために土に還るレベルまでもある。

 

 「ごめんごめん。でも急に尊敬とかされても鳥肌立つだけ……ああ、もう。ごめんって。謝るから涙目になるのやめー!」

 

 う、うるせいやい。心が折れかかっているんだい。ということでこの話はなかったことにしよう。うん。

 

 ……あっ、そうだ。

 

「今度ゆっくりマッチー作るからさ。今度その子にプレゼントしてよ」

 

 ほら、貢物して日本を世紀末みたいにさせないためにもさ。今のうちに好感度あげておこうぜ。

 

 「それ貰ったマッチーのリアクションが手に取るようにわかるから却下」

 

 なんでさ。この俺が無駄に洗礼された無駄のない無駄なスキルによって最新スペックのスーパーゆっくりとして電脳世界に生誕させて上げようというのに。

 もはや伝説のスーパーゆっくりレベルでもあるというのに。ベジータがビビッて戦意喪失レベルでもあるというのに、この幼馴染ときたら……。

 

 わかってない幼馴染なんてこうしてやる!

 

「カーッペッ!」

「……なっ!? カーッ、ペッ!」

「っ!!? カァァァーッブェェッ!」

「クアァァァッッッ! ブエェェエエエッッッ!!」

 

 ……………。

 

 

 その後、ひまりが通り、この光景を見て俺たちを往来の道で正座させて説教するまであと5分。

 

 それまで俺たちはこのやり取りを続けるのであった。

 

 

 


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