亜人ちゃんとカタルシス   作:社畜系ホタテ

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ハイサイ亜人ちゃん

 

 サキュバス、バンパイア、デュラハンなどなど……。この世の中には「亜人」と呼ばれる特別な性質を持つ人間がいるらしい。

 

 ちなみに俺の幼馴染もその「亜人」に該当するのだが、幼馴染が「亜人」という特別な性質を持つ人間であるのは非常に珍しかったりする。

 

 そもそも「亜人」という体質は遺伝というよりも突然変異によって生じることが多い。そのため絶対数が少なく、「亜人」との出会い自体が非常に限られていたりするのだ。

 

 まぁ、ひかりはバンパイア感が皆無なので必然的に特別感も皆無なのである。

 え、ひかりにはバンパイア的な八重歯があるって? いやいや。八重歯っていうのはバンパイア感というよりはツンデレキャラ感満載なので却下。

 

 確かにひかりの八重歯は可愛らしいのだが、ひかりはツンデレキャラではないわけで。どっちかっていったら妹のひまりの方がツンデレキャラっぽいのであるわけで。

 

 つまりはこういうことである。

 

「あー、ひまりが八重歯だったら良かったのに……」

「え、何その呟き」

 

 俺の呟きを目ざとく拾ったひかり。つまりはエゴサーチ芸人ならぬエゴサーチバンパイア。お酒の席でおつまみ代わりにどうですか?

 

 さっきまでひかりは俺のベッドで寝転がってグータラといちご100%を読みながら顔を赤らめていた。今日は、恋愛について勉強したい! と何やら訳の分からないことを言いながら俺の部屋に突貫してきたのが始まりだったりする。

 

 なんでも友達の恋愛を応援したいのだが、ひかり自身に恋愛経験がないためどう応援していいかわからないとのこと。いやいや、俺も恋愛経験0なんですがそれは……。

 

 なのでテキトーに近くにあったジャンプご用達のラブコメ漫画を渡して、「これを読めばすべてわかる」と決め顔100%を見せつける。俺の顔に何を思ったのか、ひかりは無言で首だけでコクンッと頷いて漫画を読み始めた。

 

 なんかシリアス的な雰囲気になったと思ったが、そんなことない。つーか、空気だけだった。ひかり、なんて素直な子。

 

 そんな素直なひかりを見て、こいつ恋愛を勉強していないで試験勉強をすればいいのにと思いましたまる。というわけで話を元に戻す。

 

「いやいやキャラと恰好の相関性ってあるだろ」

「うんあるね。清楚な東城綾にギャルギャルしい恰好は似合わない」

 

 そう言っていちご100%をこちらに見せてくる。

 そこには西野のアルバイト先の制服を着た東城綾が……!?

 

「うむ、余は満足じゃ」

「うわー……うわー……」

「マジのドン引きはやめてくれませんかねぇ……?」

 

 話が進まないんで戻しますね。

 

「やっぱり八重歯キャラと言ったらツンデレが必需品だと思うんですよ」

「それには同感。けどしかし八重歯キャラに合う属性がもう一つあると思うんですよー」

「ほう、聞こうじゃないか」

 

 俺は、続けて、という意味合いで机に肘をつき碇ゲンドウスタイルとなる。このスタイルってなんかいいよね。というか、かっこいい。

 

 そんな俺のゲンドウスタイルに感化されてかひかりはベッドに寝っ転がりながらも肘をついて、ゲンドウスタイルになった。かっこいい。

 

 二人ともゲンドウスタイル。第三者目線から見てもやっぱりかっこいいだろう。誰かこの風景を写真で撮ってくんないかな。ひまりー。ひまり帰ってきてくれー。

 

 内心こんなんだが、二人ともゲンドウスタイルなだけあって客観的に見て空気だけは重く感じる。ひかりはこの空気に合わせて口を重々しく開くのであった。

 

「妹…も八重歯に合うと思いません?」

 

 雷に打たれた、そんなショックが俺の全身を襲った。それほどの衝撃を俺は受けたのだった。

 

 そ、そうか妹、か。

 

 物語シリーズでいう阿良々木火憐しかり、俺妹の高坂桐乃しかり、八重歯といったら妹。妹といったら八重歯。大人の八重歯なんてカーッペッ!だ。

 

「この漫画のちなみちゃんを見てそう思いました」

「ひかり、ちなみちゃん妹ちゃう」

「いやいや妹じゃないけど妹キャラだよね」

 

 ぐぬぬ、確かに。妹じゃなくても妹キャラだけで八重歯合うもんな。納得ですわ。

 というわけで、このひかりの発言によって俺は一瞬で、なんか八重歯がある妹キャラっていいよね、っていう真理にさえたどり着いてしまった次第。

 

 だが、その心理にたどり着いたからこそあえて言おう。

 

「やっぱりお前の八重歯、ひまりに移植しようぜ?」

 

 たぶんその方が世界の真理的に世界平和につながる気がする。ほら、なんだがかんだで妹八重歯キャラで戦争がなくなるっていうかさ。

 

 つーか、八重歯でツンデレで妹のひまりって最強じゃね?

 

「あーなるほど。それで最初のひまりが八重歯だったらなー、なのか。納得納得」

「ほら、納得したんだったら早くお前のその可愛らしい八重歯をひまりに移植しろよ」

 

 おらおらハリーハリー、といいながら想像してみた八重歯ひまり。結構いいなこれ。そんな俺の脳内とは関係なく、なぜかひかりは頬を赤くして縮こまっていた。

 

「きゅ、急に可愛らしいとか止めてよ……」

 

 おいガチ照れやめろ。

 こっちが恥ずかしくなるから。

 

「可愛らしい……えへへー、……お、おっと。やー、確かにひまりに八重歯があったら可愛いと思うけど、この可愛らしい八重歯は私のものだから誰にもあげられないよ。この可愛らしい八重歯はね!」

 

 おい可愛らしいを強調すんな。

 こっちが超恥ずかしいだろ。

 

「お、そうだな。ところで恋愛勉強はどう? 順調?」

「平然に見せて話題を変えようとしているとこ悪いけど、カズ、顔真っ赤だよ」

 

 うっさい。

 

「わかったわかった。ていうか読んでて思ったんだけど、これ読んでもマッチーにアドバイスできないよ」

「なんでさ、全国男子学生の夢と希望がいっぱい詰まったいわば聖書(バイブル)だぞ」

 

 当時男子学生が没頭したというのに……。

 

「うーん、無理無理。だってね、私の友達の恋した相手って、

 

 

 ……先生なんだから!」

 

 

 えー……、先言ってよ。普通の学生同士の恋愛じゃないのかよ。

 とりあえず、TSUTAYA行って『言の葉の庭』借りてこようと思いました。

 

 

 

 

 


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