サキュバス、バンパイア、デュラハンなどなど……。この世の中には「亜人」と呼ばれる特別な性質を持つ人間がいるらしい。
何を隠そう俺の幼馴染の小鳥遊ひかりもこの「亜人」と呼ばれる特別な性質を持つ人間だったみたいである。最近まで知らなかったが、彼女はバンパイアの「亜人」である。なにそれかっこいい。
バンパイアといったらジョジョ1,2部を思い出すがこれといった関係性は全くない。
悲しいかなヘルシング的なサムシングも全くもって関係ない。なにヘルシング的なサムシングって。
「ヘルシング的なサムシングってめっちゃ語感良くない?」
「確かに良いけど急にどうしたの?」
今日も今日にて小鳥遊家にて絶賛ゴロゴロ中のひかりと俺。春の陽気のせいでポカポカしているせいか今日はいつもより当社比二倍で駄弁りに駄弁りたかったりする。
「語感って大事じゃん。ラップマスター的に」
「あぁ、うん。大事だね。ラップマスター的に」
「ヘイ、ヘイYO」
「うっわ……ラップ下手糞だよラップマスター」
やっぱりカズにはラップマスターの称号を与えるのはまだ早かったね、と苦笑い。
そのお顔は大変腹ただしいが言っていることはその通りだ。うん、確かにって思っちゃったぐらいに正しいです。
「というか俺はどちらかと言ったらポケモンマスターになりたいです」
「ちなみに私のスカートの中にはポケモンはいないからね」
「ま、まだ何も言ってないとです」
頬を赤らめスカートを抑えながらこちらをジト目で見るひかりにもの申す。いや、言おうと思ったけども。先に言われて動揺しているけども。
なんとか俺の内心がばれないように平常心という名の気合で誤魔化し、話題を変えるためにどこからともなくニンテンドーDSを取り出した。
「目と目が合ったらポケモンバトル!」
「おっと急だねー。しかし、私は小鳥遊家の島キング。挑戦されたら逃げないのだー!」
「小鳥遊家の島キングってなんぞ?」
「ふっふっふ、私のケッキングの錆にしてやんよ」
「無視ですかそうですか」
あと、そこはクロバットとかじゃないんだ。バンパイア的に。さすがは高火力厨。よく力こそパワーと言っていたのは伊達ではなかったみたいだ。
ちょっと待っててー、と自分の部屋にゲームを取りにいったひかりをしり目に、俺はチューチューとお茶を飲み、ひかりが買ってきたせんべいをバリバリとむさぼる。俺の好物なんです。うめー。
「あー、私のおせんべい全部食べたなー!」
「うまうま」
「話きけー!」
さっきの意趣返しだ。しかし、ゲームを持って戻ってきたひかりは俺を見るや否や絶賛おこへと変貌した。
仕様がない。やつをおとなしくさせるため、俺は仕方なく懐からトマトジュースを取り出した。
「物でつられると思うなー。まぁ、トマトジュースはもらっておくけど」
取り出した瞬間にひかりの手に握られていた空のトマトジュース。驚きを隠せない。
「え、それなんていうキングクリムゾン?」
「トマトジュースうんぬんの過程をふっ飛ばし、飲みほしたという結果が残る」
ボスの正体はひかりだった説がここで生まれた。
ということはつまり、
「あなたはドッピオですか」
「いいえ、あなたがドッピオです」
英語の教科書みたいなやり取りをした後、せっかくひかりがポケモンを持ってきたので通信対戦することに。
「くらえー、りゅうせいぐん!」
「しかし残念、まもる。そして毒死するがいい」
「あぁ、私のボーマンダが!」
二人してワイワイといつも以上に白熱した戦いが繰り広げられ、自然とテンションが上がってくる。
さすがはポケモン。
いくつになっても楽しいですね。
「楽しいけどカズの受けループにイライラが募る件」
「ごめん、知ってた」
煽り耐性ゼロなひかりはうーっと唸り、こちらを睨み付けてくる。
「特性するどいめですね」
「私のパンチは全てヒットするのだー」
いつものごとくのポコポコぱんち。高火力好きな彼女自身は、実際は低火力だったりする。
俺は胸を張りマッスルポーズでひかりのポコポコぱんちを受けきった。俺に打撃は効かん!
そんな俺の反応に何を思ったのかひかりは俺の背に回り込み、
「じゃあくすぐり攻撃じゃー!」
「かずきのこうげきとぼうぎょがさがっぎゃっはっはははははは」
「おらおらおらおらおらおらおら」
くすぐりには圧倒的に弱かったりする俺。ぶっちゃけ、笑い死ぬレベル。
無理無理。死ぬ死ぬ。あかんあかんあかん。
「おらおらおらおらおらおらおら無駄無駄無駄無駄無駄ッ!」
「ぎゃはっはっは…ちょっ待っひゃっはっははっはっははッ!」
その後、ひかりが満足するまで俺はくすぐられるのだった。
「勝利ッ! 圧倒的勝利ッ!」
「コヒュー……コヒュー……」
…………。
今度覚えてろこのやろー。