俺は大きな間違いを犯した。
やり方を間違えた。
何を間違えたのか、いや、どこから間違えたのかはわからない。
ただ、間違えた。
きっとそれは始まりは小さく、それが徐々に大きくなり、
後戻りできなくなった。
どうしようもなかった。
結局俺は独りでいるべきだった、それだけだ。
ただ、始まりに戻っただけ、奉仕部に入る前に戻っただけなのだ。
★
それは突然で、必然だった。
「比企谷くん」
「あ?」
「奉仕部はあなたの自己犠牲を求めていないわ。確かに今までは、文化祭は、上手くいったと言ってもいいわ。でも、それが果たして最善だったのかしら?」
「早く相模を連れてくるという目的に対し、俺は結果を残した。どこに文句があんだよ?」
「確かにあの時、文化祭は上手くいったわ。しかし、その結果あなたに私達が自己犠牲を強いてしまった。間違えないで欲しいのだけれど、そのことは今でも申し訳ないと思ってるわ。でも私達はそこでそれを正しいと、そうすることが最善だと思ってしまった」
「その時はそれが最善だった、それだけだろ」
「もしかしたら、そうなのかも知れない。でもそれはその時に限ってのことでしかないわ」
「お前が何を言いたいのかがわからん。結局何が言いたいんだ?」
「今まではあなたの自己犠牲で全てが、周りがうまくいった。でも今回は違うわ」
「戸部には恩着せがましい言い方になるが、俺の偽の告白のおかげで振られずに済んで、葉山のグループは壊れなかった。それでいいじゃねぇか?」
「そうじゃないよ.....そうじゃないよヒッキー。人の気持ちってそういうんじゃないよ」
「......何が違うんだ?」
「それじゃあヒッキーはどうなるの?ヒッキーは戸部っちからしたらさ、戸部っちの告白を邪魔するために自分の告白を遮って告白した最低な人なんだよ?」
「事実そうなんだから仕方ねぇよ。事実あの場面ではそれ以外何者でもないしな」
「それじゃあダメだよ......ヒッキーが何を考えてるかなんてわかんない。でもさ、少しずつ傷ついてるよ。ヒッキーがこれ以上傷つくところなんて見たくない」
「......私達ははっきり言ってあなたのやり方が気に入らないわ。全部自分で抱え込んで私達には何も言わずに全部自己犠牲で抑えようとする。あなたのそういうところ、嫌いだわ」
「別に俺はお前らに好かれたいわけじゃねぇ」
「それでも、奉仕部の部員である以上勝手は見過ごせないのよ」
「......だったらどうするんだ?」
なんとなくわかっていた。
それでも、そうはならないと思っていた。
「奉仕部部長として、部員である比企谷八幡を退部処分にするわ」
比企谷八幡は、奉仕部を退部した。