「後は、ニコル達の無事を祈るばかりだな」
ミリティアン・ヴァヴの艦橋に戻ったレジアは、シノーペが飛んでいった方向を眺める。
「とりあえず、無事にアメリアに侵入出来るかよね??今度補充されるパイロットが、うまい具合にシノーペを傷つけてくれると、リアリティが増すんだけどねー」
マヘリアも、宇宙空間を眺めながら呟く。
「新任のパイロットか…………腕は確かなんだろ??」
「そう…………聞いてますけど…………当たり所が悪かったら、シノーペが墜ちちゃうし…………少し心配ですね」
ヘレンの問いに、クレナが答える。
今回のアメリア侵入作戦は、ニコル達が乗るシノーペをリガ・ミリティアのモビルスーツに襲わせて、うまく損傷させてザンスカールを欺く事が出来るかにかかっていた。
パイロットを少年と女性の組み合わせにしたのも、相手の警戒心を緩くさせる為もある。
逃げ回るシノーペのコクピットに当てず、ギリギリ航行可能な程度に傷つけられるかが問題であり、それにはリガ・ミリティアのパイロットの腕が重要だ。
「墜とされる心配より、当てられない可能性を考えた方がいいんじゃねーか??ニコルにしてもケイトにしても、奴らにマジで逃げられたら、私でも当てれる気しねーぞ」
その言葉に、その場が一瞬静まり返る。
「やっぱり、マヘリアさんとかレジアに行ってもらった方が良かったかな??急に不安になってきちゃった………」
「俺達が出て、敵に捕まったらニコル達との関係がバレる。顔見知りじゃない方が、何かあった時に都合がいい。それに、リガ・ミリティアでも指折りのパイロット達なんだろ??信じよう」
ミューラの不安そうな顔を見て、レジアは少し笑顔を向けた。
「リースティーアになら、安心して任せられたんだがな………ところで、連邦の医療班は大丈夫なんだろうな??」
「ええ、ミリティアン・ヴァヴには最新の医療設備が整ってるけど、それを扱える人材がいない…………でも、連邦から派遣された人員のおかげで、リースティーアも助かりそうだって!!」
ミューラの言葉に、ヘレンは安堵の表情を浮かべる。
「ニコルなら、射撃主が下手でも上手く自分の機体に当てるんじゃない??私達は私達で、モビルスーツの整備しとかなきゃ、次に襲われたらアウトだよ!!」
マヘリアの言葉で、各々持ち場に向けて動き出した。
「さーて、そろそろ、襲われる地点だな。ここからアメリア・コロニーの間で損傷して、うまく敵さんに拾ってもらうって事だな。いい感じで当ててくれよ!!」
ニコルはモニターを見ながら、真剣な表情になる。
「来た!!ニコル!!全速でアメリアに突っ込むよ!!うまく演技するんだ!!」
モニターを見ながら、ケイトが叫ぶ。
シノーペに向かって、2機のガンイージが迫って来た。
そのガンイージから逃げるように、シノーペがバーニアを吹かす。
「どの当たりで被弾すりゃいいんだ??アメリア・コロニーで捕獲される位置で当たらなきゃ………」
高速で逃げるシノーペの後方から、ビームが飛んで来る。
そのビームを避けながら、ニコルは考えていた。
「なかなか、高精度の射撃をしてくる!!ニコル、真面目に回避しないとヤバイぞ!!」
「わーってるよ!!いい腕だけど…………レジア程じゃない!!これなら上手く被弾出来る!!」
ニコルはシノーペを操りながら、アメリア・コロニーとの距離を測っていた…………