「あれが、連邦の戦艦…………カイラム級か??」
シークレット・ワンと連邦軍の艦は、以外と早く接触出来た。
連邦の艦もまた、ニコルを助けた後にリガ・ミリティアの艦をマークしていた為だ。
ザンスカールの目を離れた宙域で、2つの戦艦は肩を並べる。
マッシュは憧れのラー・カイラムにフォルムが似ている戦艦に、思わず見とれてしまう。
「しかし…………連邦は、新しいの開発しねぇな…………だから、ザンスカールに舐められるんだよ」
マッシュとは違い、明らかに冷めた目でヘレンが連邦の戦艦を見る。
そこに、連邦の戦艦から通信が入った。
「リガ・ミリティアの艦長さん。コッチの準備は整った。ニコルも連れて来てくれると嬉しいんだが…………」
通信の主…………エルネスティは、爽やかな笑顔を見せる。
「分かった、私とニコルとレジア…………それとミューラにマヘリアにヘレン…………6名で行く」
「了解した。リガ・ミリティアのエース、レジアくんも乗っているとはね…………これは、楽しみだ」
スフィアとエルネスティは、笑顔で挨拶を交わすと、通信を終えた。
「なかなか……………気さくな方ですね…………」
「だろ??あれで、ジャベリン隊の隊長らしいぜ…………大丈夫かね??連邦軍」
クレナが少し心配するような表情を見せ、ニコルも同意する。
「2人とも、何を言っている…………あれは、連邦の碧の閃光…………エルネスティ大佐だ…………」
「はっ??大佐??」
驚いているレジアより、ニコルは更に驚いた。
「無駄話は後にして。今、人選したメンバーは私に付いて来てくれ!!」
スフィアの後に続き、5名のメンバーがカイラム級の戦艦に入る。
直ぐに艦橋に案内されたスフィア達は、艦長にエルネスティ、それにガルドから挨拶を受けた。
「しかし…………リガ・ミリティアに、これだけ大きくて、しかも新型の戦艦が造れる軍資金があるとは…………正直、考えて無かったな…………」
窓越しに見えるシークレット・ワンの姿に、ガルドが正直な感想を漏らす。
「いえ…………これはサナリィの基地で、表向きはザンスカール帝国の為に造っていた戦艦で…………式典で飛ばす予定だったので、少し派手なのです」
メカニックの性なのか…………ミューラの説明を頷きながらも、ガルドはシークレット・ワンから目を離そうとしない。
「すまない…………彼は機械馬鹿なんだ…………それより、ミノフスキー・ドライブの件だったね…………出来れば、外部流出を避けたいと…………」
「はい。ミノフスキー・ドライブの技術が、ザンスカール帝国に渡ってしまったら、私達の勝ち目が薄くなってしまいます。情報は、どこから漏れるか分かりませんので、データを全て返して頂きたいのです」
スフィアの言葉に、一瞬の沈黙が訪れる。
「分からなくは無いがね…………しかし、黙ってデータを返せる程、我々もお人良しじゃない。一応、軍なんでね…………」
その沈黙を破ったのは、エルネスティだった。
「勿論…………他に我々が出来る事なら、協力をしたい。何か無いですか??」
レジアはエルネスティの発言に頷きながら、代替え案を尋ねる。
「エル…………面倒な物言いをするな。すまんが、ミノフスキー・ドライブのデータは返せない。何故ならば、ミノフスキー・ドライブを完成した後、君達にそれを搭載したモビルスーツを開発する体力が残らない事が予想されるからだ」
シークレット・ワンを眺めながら、ガルドが声をあげた。
そして、再び沈黙が訪れる。
ミノフスキー・ドライブが完成したとして、その運用実験、試作機の開発、量産…………
それと並行して、V計画の機体の量産計画も進めて行かなければならない。
ミノフスキー・ドライブ搭載型の試作機であるダブルバード・ガンダムは、設計図面はあれど、それを実現するには、ハイコスト過ぎる。
F90・ウォーバードでミノフスキー・ドライブの運用実験をしようにも、フレーム耐久の問題で、全開出力は試せない。
確かに、レジスタンスだけの資金では、途中で底を尽くのが目に見えている。
「でも…………アナハイムは、過去にジオンにもモビルスーツを提供していた…………ザンスカール帝国にも、技術を提供するかもしれない。そのリスクを考えたら…………」
そう、ザンスカール帝国が……………ベスパがミノフスキー・ドライブを開発したら、リガ・ミリティアに勝ち目は無くなってしまう。
何が何でも、ミノフスキー・ドライブの技術だけは、ザンスカール帝国に流してはいけない…………資金が底をついたとしても…………だ。
「そう…………そこで提案なんだが…………連邦の腐敗は、恥ずかしい話だが君達も知っているだろう??我々は、連邦を正しい道に戻したい。その為にミノフスキー・ドライブ搭載型のガンダムを旗印に、連邦に正義の心を取り戻したいんだ…………」
「エルが言うと、ガキの発言みたいに聞こえるかもしれんが……………実際、ザンスカール帝国を野放しにしていたら、連邦の沽券に関わる。そこで、君達のミノフスキー・ドライブの開発資金と人材を派遣する代わりに、我々もリガ・ミリティアと戦わせて欲しい」
ガルドの突然の提案に、リガ・ミリティアの面々が顔を見合せる。
「一気に、全ての連邦軍とはいかないだろうが…………リガ・ミリティアの動きに合わせて決起出来る部隊を根回しする。同士を募る為にも、ミノフスキー・ドライブ搭載型は必要なんだ」
その発言に、ニコルが微笑む。
「なっ!!エルネスティさんとガルドさんは、敵じゃないって言ったろ??協力してもらおうぜ!!皆で手を取り合って、戦争をとっとと終わらせるんだ!!」
「ニコル!!そんな簡単な事じゃない…………だが、悪くない。地球連邦軍の心を掴むなら、ダブルバードはガンダム・タイプにしないと駄目だな…………まぁ、ミューラさんも親父も、そこは譲らないだろうが…………」
レジアが、ミューラを見て力強く頷く。
「始めからガンダム・タイプにするつもりではあったけど……………まさか、こんな展開になるなんて…………」
ミューラは、シークレット・ワンと、その隙間から見える宇宙に視線を移す。
その宇宙に、ダブルバード・ガンダムが飛び回る姿をミューラは想像していた…………