「また……………お父さん、いい加減にしてよっ!!ジェムズガンで私達と戦ったら、本気で死ぬわよ!!」
立ち塞がるゲルダのジェムズガンをモニター越しに見ながら、アーシィは叫んだ。
「アーシィ……………やはり、ザンスカールに協力するのは間違っている!!間違っている道に進もうとする自分の子供を正しい道に戻すのに、自分の命が惜しいなんて思う親がいるか??オレだって母さんだって、お前を救えるなら命だって捨てられるんだ!!」
ゲルダの言葉にアーシィは少しの嬉しさと、大きな不安を感じる。
ここは戦場…………そんな甘い考えで生きていられる筈がない。
殺すか殺されるか……………そんな場所だ。
「お父さん!!言いたい事は分かった。だけど、今は私から離れて!!今は…………戦いながらなんて、考えられないよ!!」
アーシィの乗るマグナ・マーレイは、ビームでゲルダのジェムズガンの動きを制限すると、トライバード・アサルト目掛けてバーニアを吹かす。
アーシィは、ザンスカールで孤独だった。
父はサナリィの技術者だが、ザンスカールの誘いを断りリガ・ミリティアに身を寄せている。
母は太陽風によるコロニー独特の不治の病に侵されており、アメリアの自宅で療養中だが、ザンスカールから支給される薬で命を永らえていた。
アーシィは、父がリガ・ミリティアにいる事を軍内部に知られながら、しかし母の為にザンスカールに在籍せざるを得ない。
親が子供を救いたいのと同じように、子供だって命を懸けてでも親を救いたい…………どんなに辛くたって、親孝行したい…………たとえ、周りが敵だらけになっても…………
アーシィはそこまで考えると、首を振る。
今、考えていても仕方ない。
敵のエース・パイロットが駆る、新型のガンダム・タイプが相手だ。
余計な事を考えていれば、やられるのは自分。
両親の事を考えないように、アーシィは集中していく。
そのガンダム・タイプは、マデアの乗る黒いマグナ・マーレイと交戦していた。
トライバード・アサルトはレジア専用機として生まれた機体であり、マグナ・マーレイはニュータイプ専用機として生まれている。
専用機として作られたモビルスーツは、当たり前だが、そのパイロットが1番操作し易いように造られおり、ニュータイプとオールドタイプというハンデを機体性能で埋めていた。
確かに、トライバード・ガンダムはボロボロになり、リニューアルしたと言っても過言では無いくらいパーツは換わっている。
それでも、メイン・コンピュータは無事であり、レジアの癖を知り尽くしていた。
逆に、マデアのマグナ・マーレイはアーシィ機のデータを流用してはいるが、実戦投入は始めてである。
実力が均衡している者同士であれば、この差は大きい。
更に、レジアはマグナ・マーレイとの戦闘経験もあり、少しずつマデアの動きを上回り始めた。
「くっ、先程のガンダムとは、力の質が違う!!このままでは押し負ける…………」
レジアのトライバード・アサルトは、拡散ビームを気にせずに追い込んで来る。
Iフィールドで防げるタイミングのビームはIフィールドで……………ビームを凝縮させてIフィールドを貫通しそうなモノは回避かビームシールドで防ぐ。
トライバード・アサルトの最強火器であるヴェスバーは防いだ。
しかし……………である。
ヴェスバーはIフィールドを貫通する…………その事をレジアは知っていた。
何度防がれても、一撃当てればいい。
逆にマグナ・マーレイの火力では、トライバード・アサルトに致命傷は与えられないのである。
「リフレクター・ビットを直接当てるしかないか…………しかし、奴はビームを気にせずビットの物理攻撃だけ気にすればいい…………レジア相手に、それで倒せるモノなのか??」
そう言いながらも、拡散ビームでビットを隠しながらトライバード・アサルトに迫っていく。
「ビットでの物理攻撃…………接近戦を嫌がっているのか??ならっ!!」
迫って来るリフレクター・ビットの1つをビームサーベルで切り払い、レジアはトライバード・アサルトを加速させる。
「速い!!しかし、これならっ!!」
マデアは、リフレクター・ビットをトライバード・アサルトとマグナ・マーレイの間に壁のように集めて、その進路を塞ぐ。
「ビットを集めたな…………狙い通りだっ!!」
トライバード・アサルトは、その瞬間にバーニアを逆噴射させる。
「その位置で、拡散ビームを集める事は出来ないだろ??ビットごと消えろ!!」
トライバード・アサルトが、ヴェスバーをリフレクター・ビット目掛けて放つ!!
スピードよりパワー重視で放たれた高出力ビームは、一枚壁になっているリフレクター・ビットの壁を容易く貫通し、マグナ・マーレイに迫る。
普通なら確実に直撃するタイミング…………しかし、マグナ・マーレイはヴェスバーの射線から逃れていた。
リフレクター・ビットが貫通される直前、プレッシャーを感じてバーニアを全開にし回避している。
モビルスーツの特徴と状況を考えて戦うレジア、ニュータイプの感覚で戦うマデア。
一瞬の隙が明暗を分ける、ピリピリする状況…………お互いのヘルメットの中を、汗の玉が浮く。
その拮抗した状況は、もう1機のマグナ・マーレイの介入で崩れた。
リフレクター・ビットを展開した白いマグナ・マーレイが、トライバード・アサルトに迫っていく…………