ドオオオォォォォン!!
ケイトのガンイージの背後で、リースティーアの乗っていたジェムズガンが爆発した。
その直後、ヘレンのガンイージのコクピット・ハッチが閉じる。
「危なかったぜ……………ギリギリだな…………」
モビルスーツは精密機器の集まりの為、損傷すればどんなタイミングで爆発するか分からない…………ヘレンは少し恐怖を覚えた。
「ヘレン、リースティーアも傷ついてるし、一度シークレット・ワンに戻るよ!!」
ケイトの言葉に、ヘレンは頷く。
リースティーアの事もあるが、このまま戦場に残ってもレジアの邪魔にしかならないと感じたからだ。
ヘレンは白いマグナ・マーレイと対峙するトライバード・アサルトをモニター越し見て、唇を噛みながらシートを叩く。
(負けんじゃねーぞ、レジア…………いつか私も、同じ土俵に立ってやるからよ…………)
損傷したガンイージが後退していくのを見て、レジアは胸を撫で下ろす。
そして、目の前の状況に考えを戻した。
突然現れたジェムズガン…………それと同時に動きを止めた羽根付き…………
好機と見て攻撃するか、静観して様子を見るか…………
その時…………
「きゃあああぁぁぁ!!」
ケイトの叫び声が聞こえた。
レジアは声の聞こえた方向…………正確には、ガンイージが後退したシークレット・ワンがいる方向に向けて、反射的にトライバード・アサルトを動かす。
「また電磁ネットか…………それに、あれは…………黒い羽根付き??」
黒いマグナ・マーレイを見た瞬間、とんでもない程のプレッシャーがレジアを襲う。
強い…………無意識に感じたレジアは、ヴェスバーの照準に黒いマグナ・マーレイを入れたまま、ビーム・ストリングスを放出しているレグナイトのゾロアットにビームの雨を降らせる。
「くそっ!!このガンダムは、格が1つも2つも上だ!!ゾロアットでは相手にならんかっ…………」
電磁ネットにガンイージを捕まえたままでは、トライバード・アサルトに簡単に墜とされる…………レグナイトは動けないガンイージに照準を搾り、ビームを放つ!!
その射線上に飛び出したトライバード・アサルトは、Iフィールドでビームを弾きながらゾロアットにピンポイントでビームを返す。
そのビームを、今度はリフレクター・ビットが弾き返していく。
「スマン、マデア!!高速で飛んでいたモビルスーツは、もう墜としたのか??」
「いや、倒す直前まではいったんだが…………不思議な力を持つ機体だ。危険だが、墜とすには時間がかかりそうだったので置いてきた。もう動く力は残って無さそうだったんだが…………」
F90ウォーバード…………突然光に包まれて、リフレクター・ビットの攻撃を無効にしただけで無く、離脱までしていった……………
追って行けば倒せたかもしれないが、まだ何か隠しているなら危険だし、何より今は戦艦の撃破が優先だ。
「まぁ、お前の判断に間違いは無いだろ。オレの部隊は全滅寸前だ。ガンダムは任せていいか??オレは戦艦をやる!!」
「いや…………少佐は戻った方がいい。機体の消耗が激しい上に、新型ガンダムと戦うのは得策では無い。オレとアーシィに任せてくれ」
マデアとアーシィに任せれば大丈夫か…………ニュータイプなら、1人で戦艦を墜とす事も可能だろう…………
「分かった、頼む!!」
レグナイトは、残った自分の部隊を連れて後退していく。
レジアもまた、動けなくなったガンイージに接触していた。
「ケイトさん!!大丈夫か??」
レジアの声に目を覚ましたケイトは、首を振って意識をはっきりさせる。
「ゴメン、レジア。油断した…………敵は??」
「ニュータイプ専用機以外は後退した。だから………後は任せてくれ!!」
レジアの力の篭った声に、ケイトは安心して頷いた。
「勿論、任せたよ!!私達が、ここまで繋いだんだ…………やられたら、承知しないよ!!」
ガンイージも、シークレット・ワンにさがって行く。
「さて……………レジア・アグナールか…………ハイスクール以来だな………昔は、分かり合えると思っていたが…………」
黒いマグナ・マーレイは、ビームサーベルを構えて飛び込んで来る。
「来た!!性能は白い羽根付きと同じか??」
トライバード・アサルトも、ビームサーベルで迎え撃つ!!
「トライバード・ガンダムと言ったか…………大尉が墜とした筈だが………流石はガンダムと言うべきか、しぶといな」
ビームサーベル同士が接触している為、レジアにはマデアの声が聞こえてくる。
「トライバードの名を知っている??そうか、プロシュエールがモビルスーツの情報もリークしていたか…………だが、アサルトの力は知らない筈だ!!」
レジアはトライバードのバーニアを逆に噴かせて、黒いマグナ・マーレイと距離をとった。
「ヴェスバーなら、ビットもIフィールドも貫通する筈だ!!」
可変速ビームライフルから放たれる高出力のビーム…………
「ヴェスバーか…………しかし、マグナ・マーレイなら、こんな防ぎ方も出来る!!」
マデアは、リフレクター・ビットを無数に展開し、それに向けて拡散ビームを放つ!!
リフレクター・ビットにより乱反射する全てのビームが、ヴェスバーから放たれたビームの先、ただ1点に集まっていく。
そして、全てのビームが集まった場所から、衝撃が広がった。
「ヴェスバーのビームが………掻き消された…………??」
レジアが驚くのは、無理もない。
面で合わせて防いだのではなく、点で合わせて防がれたのだ。
「強い…………とてつもなく…………」
レジアは、ジェムズガンと対峙する白いマグナ・マーレイも気になっていたが、黒いマグナ・マーレイに集中しなければ危険だと感じていた。
黒いマグナ・マーレイに敗れたニコルの乗るF90ウォーバードは、宇宙空間を漂う事しか出来ない。
光に包まれて離脱した後、完全に機能停止してしまっていた。
「くそっ!!マイも助けられない、オレもウォーバードも、ここで終わりか………」
黒い闇が支配する世界で、ニコルは絶望を味わっている。
リガ・ミリティアに参加しなければ…………ガンスナイパーに乗らなければ…………サナリィに来なければ…………
タラレバが、ニコルの頭に浮かんでは消えを繰り返す。
モニターも死んでいるこの状況で、敵にビームでも撃たれたら、次の瞬間には死んでるかもしれない…………このまま酸素が無くなって窒息するよりマシか…………
色々な考えが、ニコルを恐怖に誘い込む。
ガコン!!
突然、コクピットが揺れて、ニコルは心臓が飛び出すかのような思いをした。
「おい!!ガンダムのパイロット!!生きてるか??」
「は…………はひっ!!」
心臓がバクバクと脈打つニコルは、突然の声に返事もろくに出来ない。
「パイロット!!所属を言え!!我々は、地球連邦軍だ!!」
「自分は、リガ・ミリティアのパイロットです!!幼なじみが、脱出艇で飛び出されて、それを追っているうちにザンスカールのモビルスーツに出会って…………」
ニコルは助かるのか分からない状態でパニックになりながらも、これまでの経緯を話す。
いや、自然と口から漏れていた。
「とりあえず、話は後で聞く。ハッチを開けて、手を挙げたまま外に出ろ!!」
ニコルは言われた通りハッチを開くと、手を挙げてウォーバードの外に出る。
ウォーバードの周りには、数機のジャベリンがビームライフルを構えて取り囲んでいた……………