「ええいっ!!数が多すぎるっ!!クレナ、ヘレンの援護に行ける??」
「私も手一杯で………すいません!!」
マヘリアとクレナは、10機程のラングに囲まれて身動きがとれないでいた。
マヘリアは友軍機の確認の為に、モニターに目を向ける。
少し離れた所に、ビームの閃光が飛び交うのが見えた。
おそらく、リースティーアとケイトの部隊が戦っているのだろう…………
その戦闘の、もう少し近く…………
バーニアの閃光が、3つ確認出来る。
ヘレンのガンイージが、2機のモビルスーツ…………ザンスカールの新型、ゾロアットと戦っていた。
(新型相手に、1機で戦っては危険だわ…………なんとか援護に…………)
そう思っても、ラングの壁に阻まれて、マヘリアはとても援護に行ける状況ではない。
マヘリアの予想通り、ヘレンはゾロアット相手に苦戦を強いられていた。
機体性能ではゾロアットに負けずとも劣らないガンイージだが、相手の能力が分からない以上ヘレンは突っ込めず、苦手な遠距離での戦いを強いられていたのである。
更にヘレンもまた、マヘリア達がラングに囲まれている状況に焦りも感じていた。
「リガ・ミリティアのモビルスーツも大したことないな。このまま墜としてやるぜ!!」
1機のゾロアットが、もう1機の援護射撃を受けながら、ヘレン機に突っ込んで来る。
「接近戦ならっ!!」
ヘレンはガンイージにビームサーベルを握らせて、ゾロアットを迎え撃つ!!
が…………
ゾロアットはヘレンの考えを察したかのように、ガンイージの足下を通りすぎていく。
「うわっ!!」
その瞬間、ヘレン機の右足が切断された。
「肩からビームシールドが出るのか!!何かあるとは思っていたが………」
そう…………ゾロアットの肩から展開されたビームシールドが、ガンイージの右足をもぎ取っていったのだ。
まだ何か隠された兵器がある……………そう思い、接近戦が危険と判断したヘレンは、ビームライフルをゾロアットに向けて連射する。
しかし、機体バランスが低下したヘレン機の射撃精度は更に落ち、ビームライフルは牽制にさえ使えない。
「パイロットは遠距離が苦手なようだ。このまま、遠くからなぶり殺しにしてやる!!」
ヘレンはビームシールドで、ゾロアットからのビームライフルの射撃を防ぐので精一杯になっていた。
「このままじゃ…………ヘレンがヤバイ!!私が突破口を開くから、クレナはヘレンの援護にいって!!」
「そんな事したら、マヘリアさんも墜ちちゃいますよ。レジアさんが…………トライバードが出てくるまで、なんとか持ちこたえましょう!!」
クレナの言葉は、マヘリアは頭で理解している事である。
だが……………マヘリアは自分の感情を押し殺す事が苦手な性格であった。
「それでも……………ヘレンを失う訳にはいかない!!クレナ、お願い!!」
マヘリアがラングの部隊に向けて、ガンイージを突っ込ませる。
端から見ていると特攻をしかける様な光景に見え、あまりにも無謀な行動であった。
そんなマヘリア機に、ラングから放たれるビームの雨が降り注ぐ……………
一瞬の出来事で身動きのとれなかったクレナの目の前で、マヘリアのガンイージがビームの串刺しにされる…………
と……………思われた瞬間、光の壁がラングとガンイージの間に割り込み、マヘリアに襲いかかる寸前のビームを掻き消した。
「何が…………??」
ラングのパイロット達が混乱する中、シークレット・ワンが、その神々しい姿を表す。
動きの止まったラングに、クレナのガンイージがビームサーベルを突き刺した。
「マヘリアさんっ!!無事ですか??新造戦艦が………私達の艦が、守ってくれましたよ!!」
クレナはガンイージのモニター越しに、艦大砲がラングとガンイージの間に放たれ、ビームを掻き消す様子を見ていたのだ。
「ヘレン隊を援護する!!総員、第1種戦闘配備!!」
「了解!!」
艦橋に、スフィアとニーナの声が響く。
シークレット・ワンのメガ粒子砲を牽制に使いながら、マヘリアとクレナはヘレン機に合流する。
「敵の新型……………結構手強いけど、機体性能はそれ程でもない!!あの肩…………ビームシールド以外の武器も隠されてそうだから、迂闊に接近戦が出来ないけどね!!」
ヘレンはヘルメットのシールドを一瞬開けて、頭を振って流れる汗を吹き飛ばすと、再び操縦管に手を伸ばす。
「ケイトとリースティーアも踏ん張ってくれてる!!新型を倒して、向こうの援護にも行かないと!!」
マヘリアがゾロアットに照準を合わせた、その時…………シークレット・ワンのハッチが突然開き、 脱出艇が飛び出す!!
「突然…………何なのかしら??」
クレナは脱出艇を目で追うが、すぐにゾロアットが迫って来て、それどころではなくなっていた……………